池田龍夫のマスコミ時評(100)◎『隠し事多すぎる「特定秘密保護法」と西山元記者が国会証言(11/25)』
◎『隠し事多すぎる「特定秘密保護法」と、
西山元記者が国会証言(11/25)』
池田龍夫(ジャーナリスト)
1972年沖縄返還を巡る日米密約をスクープした西山太吉氏(元毎日新聞記者)が11月21日、参院国家安全保障委員会に参考人招致された。西山氏は特定秘密保護法案について「外交に関する全ての情報を特定秘密に指定できることになる」と指摘し、「日本は隠し事が多く、歴史を検証できない」と述べた。
西山氏は外国人特派員協会、日本記者クラブに招かれ、秘密保護法の危険性を語っているが、今回は国会の証言台に立って、多くの問題点を指摘した。
東京新聞が適切な紙面扱い
東京新聞11月22日付朝刊・政治面に4段相当の横見出し(2段写真)を掲げ、詳報した。朝日新聞朝刊も4面に2段見出しで掲載したが、毎日新聞の5面10行のミニニュース扱いには驚かされた。かつて毎日新聞の〝密約スクープ〟が取材方法を巡って問題となり、佐藤栄作政権の怒りを買って逮捕、1978年に・有罪が確定した事件として記憶に残るスキャンダルだ。
ところが2000年になって日米密約を裏付ける米国公文書が発見されたため、05年に賠償請求訴訟が提起された。次いで06年に対米交渉当事者の吉野文六・元外務省アメリカ局長が、「密約の存在」を北海道新聞記者に明らかにしたため、形勢は逆転。09年の一審で勝訴したものの、刑事事件の有罪判決は覆らなかった。しかし、実質的には西山氏の名誉回復につながった。
以上、西山事件の経緯を振り返ったのも、西山氏の国会証言に迫真性を感じたからだ。そこで東京新聞の記事を再録して、参考に供したい。
「西山氏は11月21日、参院国家安全保障特別委員会に参考人として出席。『外交交渉で結論が出たら、全て公開して国民の理解を得なければならない。それを隠すなら民主主義が崩壊する』と、情報公開法の必要性を強調、秘密保護法案を批判した。
検証もせず、外交交渉の経緯も公開せず
さらに西山氏は「外務省密約問題やイラク戦争で大量破壊兵器が存在しなかった問題に対し、徹底的な検証を行わない政府の隠蔽体質を指摘。外交交渉のプロセスをいちいち公開する必要はないが、今回の法案は、外交交渉を全部隠して、すべて特別秘密に指定できる。これじゃあいけない。
今は隠そう隠そういう方に力点が置かれている。安倍政権の内閣人事局新設や、内閣法制局長官人事など権力の集中化など、私は戦後を見てきたが、こんな集中はない。日本版・国家安全保障会議(NSC)設置法案について、『沖縄返還交渉の際、日本はバラバラで交渉し、米国の対日要求を全部のまされ密約につながった。
もし外務・防衛が縦割りを克服して機能するなら、素晴らしい威力を発揮する」と指摘していたが、傾聴すべき警告と受け止めたい。
毎日新聞が忌まわし西山事件に気を使いすぎて、こんな貧弱な紙面扱いにしたのだろうか。同紙が秘密保護法に多くの紙面を割いて警告を発していただけに、残念でならない。
戦前の「治安維持法」に似た〝凶器〟に…
朝日新聞11月23日付朝刊で内田樹・神戸女学院大名誉教授は「秘密保護法ができれば、言論人や労働組合は抑圧され、メディアも政府批判を手控えることになるでしょう。
運用次第でかつての治安維持法のような〝凶器〟になりかねません」と指摘していたが、西山証言は同様な危惧を、自己の体験を振り返って率直丁寧に語っていたと思う。
毎日新聞11月18日付朝刊オピニオン面では、田島恭彦・上智大教授、長谷部崇男。東大大学院教授らの衆院委員会での証言を詳しく伝えていた。参考になる意見に感銘しただけに、今回の〝ビビッた〟とも誤解されかねない紙面扱いに違和感を感ぜざるを得なかった。
(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。
西山太吉元毎日新聞記者の会見
関連記事
-
-
最高に面白い人物史①人気記事再録★「日本人の知の限界値」「博覧強記/奇想天外/抱腹絶倒」➂九十まで生きて思うよう仕事を完成して、死んだら頭の先から爪の先まで売り払って乞食にいっぱいのましてやると豪語
2015/05/01 「先生は本 …
-
-
『オープン歴史講座』・なぜ日本は21世紀のAIデジタル世界で後進国に転落中なのか』★『「桜田義孝五輪相のお笑い国会答弁とゾッとするサイバーセキュリティーリスク』★『国家も企業も個人も死命を分けるのは経済力、軍事力、ソフトパワーではなく『情報力』である』★『サイバー戦争で勝利した日露戦争、逆にサイバー戦争で完敗した日米戦争』』
2018/12/02 2018/12/03世界/日本リ …
-
-
池田龍夫のマスコミ時評(48)●『原子力規制庁」発足、先延ばしに驚く(3・23)』★『「核燃料サイクル」問題の見直しを(3・21)』
池田龍夫のマスコミ時評(48) ●『原子力規制庁」発足、先延ばし …
-
-
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン』㉝『開戦2週間前の「英タイムズ」の報道/★★『ロシアが極東全体を独占したいと思っており、一方、日本は,ロシアの熊をアムール川の向こうの自分のすみかに送り返して,極東における平和と安全を,中国人、朝鮮人,そして日本人のために望んでいるだけだ』
『日本戦争外交史の研究』/ 『世界史の中の日露戦争カウントダウン』㉝ 『 …
-
-
<F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(209)> 『7年ぶりに、懐かしのアメリカを再訪,ニューヨーク めぐり(5月GW)⑥『2階建バスツアーでマンハッタンを一周』ブルックリンブリッジを通過、 イーストリバーを右手に、国連ビルを見上げ、 トランプタワーを見て、セントラルパークに向かう②
<F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(209)> 『7年ぶりに、懐か …
-
-
ナショナルジオグラフィック協会会長に就任した ゲーリー・ネル氏の記者会見(5/12)「意見よりも事実の提示を」
ナショナルジオグラフィック協会会長に就任した ゲーリー …
-
-
世界、日本の最先端技術『読める化』チャンネル- ー『 インターネットの次に来る「不可避」な12の変化とは何か? ~『インターネットの次に来るもの』(ケビン・ケリー著)を読む』●『もんじゅ「死刑宣告」で核燃料サイクルはどうなる 原子力の未来をビジネスライクに考える』●『100億円のF-35が数万円のドローンに負ける日 ISの自爆ドローン戦術に自衛隊が学ぶべきこと』●『「GDP」は残念なほど時代遅れな経済指標だ デジタル化やグローバル化で陳腐化』
世界、日本の最先端技術『読める化』チャンネル インターネットの次に来る「不 …
-
-
片野勧の衝撃レポート(83) 原発と国家―封印された核の真実⑭三谷太一郎 (政治学者、文化勲章受章者)の証言②『主権国家中心の現在の「国際社会」ではなく、 主権国家以外のさまざまな社会集団も加えた 多元的な「国際社会」を再構築することが必要だ」。
片野勧の衝撃レポート(83) 原発と国家― 封印された核の真実⑭(1997~2 …
-
-
★『地球の未来/明日の世界どうなる』< 東アジア・メルトダウン(1076)> ★『第2次朝鮮核戦争の危機は回避できるのか⁉⑥』★『石油輸出に上限=北朝鮮制裁決議を採択―米譲歩、中ロ容認・国連安保理』●『アングル:高まる非核三原則見直し論、米軍の核持ち込みで抑止維持』★『 日本で広がる核武装論…「安倍第1次内閣で米国と議論」』★『「日本、10年以内に核武装の可能性」』
★『地球の未来/明日の世界どうなる』 < 東アジア・メルトダウン(1076 …
-
-
「日韓衝突の背景、歴史が一番よくわかる教科書」①★『福沢諭吉の「脱亜論」ですべては解明されている』150年前から日本が悪いという「反日の恨(ハン)の思想」の民族意識は今後ともかわらないのでは」
日本リーダーパワー史(765) 今回の金正男暗殺事件を見ると、130年前の「朝鮮 …
