『オンライン/長寿歴史学講座』★「渋沢栄一(91歳)の公益資本主義」★『なぜ、いま渋沢栄一なのか!?。―時代の大転換期に求められるリーダーの先駆者として渋沢哲学とその巨大な業績が見直されているのではないか、』
「渋沢栄一(91歳)の公益資本主義」
今、世界は「新型コロナウイルス」のほか「地球環境異変(SDGs(持続可能な開発目標)対策」「GAFAが支配するポスト資本主義」、「超高齢社会の到来」など,これまでに経験したことのない百年に1度の大変革に見舞われており、世界中でどう対処すべきか、混乱と不安に覆われている。
2月14日から渋沢栄一を主人公にしたNHKの大河ドラマ「『青天を衝け』が始まった。初回の視聴率は20%と高く、出版物でも渋沢栄一ブームが起きている。
なぜ、いま渋沢栄一なのか!?。―時代の大転換期に求められるリーダーの先駆者として渋沢哲学とその巨大な業績が見直されているのではないか、と思う。
153年前に開国した日本。明治最初の国家戦略は「富国強兵」「殖産振興」の2大スローガンだが、富国強兵は陸海軍の整備から始まり、殖産振興はパリ万博を視察、フランスの銀行制度、株式制度を学んで帰国した渋沢が、日本で初めての株式会社をつくり、生涯に設立、関係した営利事業会社は約500社、社会事業などの非営利事業は約600社にのぼった。国内で百年越えの老舗の大企業で彼の息のかからぬ事業はなかったといわれるほどで、文字通り「日本資本主義の父」、「日本株式会社の父」なのである。
その渋沢の「右にソロバン左に論語」の「道徳経済合一主義」による「公益資本主義」の実践がポスト資本主義として再評価されている。
渋沢いわく。「論語とソロバンは一つである。道徳と経済は一体である。義の中に利を求め、利の中に義を行う、これこそ実業である。正しい事業を行い、適当の手段によって得た個人の利益は、公益と同じである」と。
その事業の成立するためには、①国家社会に有益なこと②担当者に人を得ること③それ自体で儲(もう)かること~の三点をあげ、「こんなに儲かります」という事業には決まって「国家社会に役立つのか」と質し、「こんなに有意義です」という会社には「それだけではいけない。どれだけ儲かるのか」と必ず念を押して、「論語」と「ソロバン」を一致させた。
1916年(大正5)、渋沢は『論語と算盤(ソロバン)』を著し、その中で「道徳経済合一説」という理念を打ち出した。
「論語」の思想から倫理と利益の両立を掲げ、経済を発展させ、利益を独占するのではなく、富は全体で共有するものとして社会に還元することを説くと同時に渋沢自身もそれを実践した。
リーマンショック(2008年)以降、アングロサクソン流の強欲資本主義の暴走、企業のCEOが年間ボーナスを何百億もフトコロにいれる利益至上主義が問題化した。この強欲資本主義を否定する21世紀のポスト資本主義として渋沢が実践した公益資本主義が注目された。これは資本主義+社会主義+倫理主義がミックスされたアジアで生まれた仏教資本主義といってよい。日本型の会社資本主義であり、孔子の本家である中国・習近平流の強権的独裁国家社会主義とは180度異なるシステムである。
企業の社会的な責任を自覚し、公私を峻別していた渋沢は財閥をつくろうと思えば簡単にできたが、「子孫に美田は残さず」の信念から三井、住友、三菱のような大財閥は作らなかった。自由、平等、公平、実力主義を貫き縁故主義を排して、孫の渋沢敬三(民俗学者)を第一銀行の頭取にすることも一時拒絶したこともあった。
「富は私物ではなく、社会の共有物であり、社会に還元すべきもの」と考えた渋沢は還暦60歳から数百にのぼる企業、団体での活動を徐々に打ち切って晩年の活動を「ソロバンから論語」に軸足を移した。
大正5年、75歳の時に、第一銀行の頭取を辞してすべて実業界から完全に引退し、余生は社会事業、慈善事業、社会貢献事業などに全財産を投げ出した。
その渋沢の「晩晴の哲学」はー。
「人の生涯をして重からしめるか、軽からしめるかは、一にその晩年にある。人は晩年が立派でありさえすれば、若いうちに多少の欠点があっても、世間はこれを許してもくれる。立派な晩年の生活によって、若いうちの欠点失策は、帳消しにすることができるが、いかに若いうちが立派であっても、晩年がよくなければ、その人はついに芳しからぬ人で終わってしまうものである。〝天意夕陽を重んじ、人間晩晴を貴ぶ″」と。
日本の企業家で渋沢ほど独自の経済哲学をもって、倫理的な経済実践をおこなったトップリーダーはいない。今の日本は超高齢社会となり、晩年を如何に生きるべきかを考えている人が多いが、渋沢は絶好のお手本であろう。
渋沢は90歳の頃に次のように語っている。
① 「年をとっても楽隠居的な考えを起さず死ぬまで活動をやめない覚悟をもつ」
② 「50歳からの第2の人生へ出発し、計画を立て60から90まで活動する」
➂「煩悶(はんもん)、苦悩もすべて快活に愉快に、これが私の健康法の秘訣です」
③ 「90歳になっても1日3時間以上読書を続け、体力づくりに屈身運動(スクワット)をはじめた」
、まさに100歳元気活躍時代を迎えた超高齢社会の日本のシンボルとしてその「長寿逆転突破力」に学びたいとおもう。
関連記事
-
-
『Z世代のための日本戦争史講座』★『陸軍の内幕を暴露して東京裁判で検事側の証人に立ったリ陸軍の反逆児・田中隆吉の証言⑥』★『『紛糾せる大東亜省問題――東條内閣終に崩壊せず』』
終戦70年・日本敗戦史(86)「敗因を衝くー軍閥専横の実相』の記事再録 http …
-
-
『オンライン講座・世界史を変えた北清事変(8回連載)』★『中国と西欧、日本の文明の最初の衝突』★『英、独、仏、露の北京公使館が孤立し日本に出兵を要請』★『日本が最大の部隊を派遣、福島安正参謀本部部長が「各国指揮官会議」を仕切って勝利』
明治150年歴史の再検証『世界史を変えた北清事変①』 …
-
-
『ウクライナ戦争に見る ロシアの恫喝・陰謀外交の研究⑨』日露300年戦争(5)『露寇(ろこう)事件とは何か』★『第2次訪日使節・レザノフは「日本は武力をもっての開国する以外に手段はない」と皇帝に上奏、部下に攻撃を命じた』
2017/11/19 /日露300年戦争(5) &nbs …
-
-
日本リーダーパワー史(412)『安倍首相のリーダーシップで、『今後3ヵ月(2013年末)の短期国家戦略プログラム提言』
日本リーダーパワー史(412) 『安倍首相が消費税値上 …
-
-
『オンライン講座/野口恒の先駆的なインターネット江戸学講義⑰』★ 』江戸は意外に「実力主義」の競争社会―実力主義の戦国時代から世襲制の江戸時代へ(上)
野口恒のインターネット江戸学(17)江戸は意外に「実力主義」の競争社会―実力主義 …
-
-
日本リーダーパワー史(254) 川上操六(33)『眼中に派閥なく、有為な人材を抜擢し、縦横無尽に活躍させた」
日本リーダーパワー史(254) 空前絶後の参謀総長・川上操六(33) ◎「日清 …
-
-
『日本の運命を分けた<三国干渉>にどう対応したか、戦略的外交の研究講座⑫』『1894(明治27)年12月9日 『ニューヨーク・タイムズ』の仰天ニュース/日清戦争の未来図―「日本に世界を征服してもらえば中国もヨーロッパも悪政下に苦しむ一般民衆には福音となるだろう」.
『「申報」や外紙からみた「日中韓150年戦争史」日中韓の …
-
-
『美しく老いた女性講座/作家・宇野千代(98歳)研究』★『明治の女性ながら、何ものにもとらわれず、自主独立の精神で、いつまでも美しく自由奔放に恋愛に文学に精一杯生きた華麗なる作家人生』『可愛らしく生きぬいた私の長寿文学10訓』
2019/12/06 記事再録 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(203)/記事再録ー明治150年「戦略思想不在の歴史⒁」―『明治維新を点火した草莽の革命家・吉田松陰⑵』松下村塾で行われた教育実践は「暗記ではなく議論と行動」★『160年前に西欧によって軒並み植民地にされていたアジア、中東、アフリカの有色人種各国の中で、唯一、近代日本を切り開くことに成功した最初の革命家・吉田松陰の実践教育である』
2017/11/22 /明治150年「戦略思想不在の歴史 …
-
-
『オンライン/死に方の美学講座』★『知的巨人たちの往生術から学ぶ②-中江兆民「(ガンを宣告されて)余は高々5,6ヵ月と思いしに、1年とは寿命の豊年なり。極めて悠久なり。一年半、諸君は短命といわん。短といわば十年も短なり、百年も短なり』
前坂俊之×「中江兆民」の検索結果 →69 件 #中江兆民 #大石正巳 …
