前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン』㉜『開戦2週間前の「英タイムズ」の報道/『開戦必至の情勢』―『ロシアが日本側の抑制した 要求をめない限り戦争は避けられない』

      2017/08/19

 『日本戦争外交史の研究』/

『世界史の中の日露戦争カウントダウン』㉜『開戦2週間前

1904(明治37121日『タイムズ』

『開戦必至の情勢』「ロシアが日本側の抑制した

要求をめない限り戦争は避けられない」

 

極東発の今朝のニュースは交渉によって円満な解決が達せられない場合に備えた準備に関するものばかりだ。昨日,天皇の枢密院は,緊急の際にしか公布されない勅令の草案をいつくか採択した。

これは日本の海上防衛,鉄道による兵員輸送、野戦郵便業務の組織化に関するものだ。内債を募集する措置が講じられているが,自発的な寄付金がすでに国庫に流入するほど愛国心が高まっているので,内債も迅速にさばけるに違いない。ヨーロッパ大陸から絶えず流される融和的な報道を日本人がほとんど真に受けていないことが,これで十分に示される。

 

朝鮮と中国では,それほど心強い見通しは立っていない。朝鮮政府が「再建された」という情報があるが,ともかくどの方向で再建が達成されたのかが分かるまでは,この情報から得られるものはたいしてない。朝鮮政府は「ミコーバーのように」楽天的だと言われている。

 

だが,朝鮮の兵士がもめごとを起こしているというロシアの抗議に対して勇気を奮い起こして与えた回答から見て,朝鮮政府は,「何かを起こす」のはロシアの側ではないと予想しているようだ。

ロシアには朝鮮の辺境問題に干渉する権利はないと,一朝鮮政府はパブロフ氏に率直に通告した。このような自己主張がなされたので,この熱烈な朝鮮独立の旗手はびっくりしたはずだ。これが再建の結果ならば,これは日本の政策に不利なものではなかったと見ることができよう。

地方がますます動揺しているため日本人は不安になっているが,朝鮮の新しい支配者の能力または無力さが早くもこれで試練にかけられるだろう。中国も日本と同様に,情勢が平和な結末に至るとは信じていないようだ。

 

そして.緊急事態への準備を独自に進めている。袁世凱は直隷と満州との境を防備する措置を講じる決意をしたという。また,南京と武昌の総督たちは精鋭部隊を表の指揮下に組み入れているという。袁の兵士はヨーロッパ人に訓練を受けており,公使館の解放の際に連合軍をあれほど悩ませた馬将軍の兵士よりも優秀だという評判だ。彼が26000のこの部隊を境界地帯に配したと言われているので,万一の場合にロシア軍はこの部隊を監視するためにかなりの兵力を割かざるを得ないかもしれない。

ロシア皇帝の側近の中の「大物」たちの見解と言われているものが,親露的なアメリカ紙の通信員から伝わってくるが,その報道をどのくらい信用したらよいのか判断しがたい。

しかし,実際にこの報道がペテルプルグの有力者たちの意見を示しているのなら,われわれは外交的な解決に絶望せざるを得ない。戦争か平和かの鍵を握るその人々が,「ロシアは満州を自国の領土として必要とし,要求する」ことに決めて,「朝鮮の中のロシアの利益圏(とでも言うべきもの)における日本の支配や優位をロシアは認めることができない」という結論に達しているのなら,話合いの余地はあまり残されていない。

さらに,満州の「門戸開放」に関する日本とアメリカの各条約が批准された後でも,ロシアはまだ最終的な見解を表明していないことをこの報道が示しているのなら,われわれはニューヨーク・トリビューン紙の警句的な意見に同意する。

この件では「不愉快な紛争」が持ち上がりそうだというのが,他のどの新聞よりもルーズヴェルト政府の考えをよく反映していると見られているこの新聞の

意見だ。伝えられるところでは,アレクセーエフ提督はこの対米条約によって「自分の立つ瀬はなくなる」と述べている。

 

 実際そうであるにせよ,ないにせよ,われわれが合衆国を誤解していない限り,合衆国は,ロシアが他の列強と同様に合衆国にも与えた約束に従ってこの条約が厳格に履行されるものと考えている。

 本紙は今日,消息に通じた通信員が送ってきた,ロシア皇帝が専制権力を行使する方法に関する興味深く有意義な記事を掲載する。本紙通信員は,モーリー氏が称賛を込めて引用した生き生きした逸話,想像力に富む無知の所産に過ぎないと一蹴する。

この最近の逸話は,皇帝陛下は平和のために自らの意思を頑固な官僚に押しつけようとむだな試みをしているというものだ。また,ニコライ2世は重要問題について十分な報告を受けていないことがよくあるという,それほど疑わしくはない説も否定した。

同通信員によれば,皇帝は非公式な数々の情報源を握っているので,大臣が計画的に欺こうとしても必ずばれるはずだと言う。これは,ロシア皇帝が他国の君主同様じきじきに細心の注意を払っている外務当局について特にあてはまるという。

ロシア皇帝は,その広大な領土で唯一の立法者であると同時に行政機関の首長でもある。十分に強い性格と仕事の能力があれば,帝国の立法と行政の両方を効果的に管理することができる。皇帝の同意なしに着手できる立法処置は1つとしてないが,立法は彼の職務の中でいちばんやさしいもののようだ。

 

だが行政はずっと難しい仕事に違いない。なぜなら,「通常の行政運営の中で,現在の法律や規則に例外を設けるのが望ましいと見なされると」,その件は必ず

皇帝の指示を仰がなければならないが「通常の行政運営の中で」ロシアの官僚が法律や規則に例外を設けたいと思うことは周知のようにきわめて多いからだ。皇帝はどんな問題についても,閣僚の助言や自分で選んだ者の助言を求めることができる。

あるいは「独断で」行動することもできる。しかし,決定権は彼にあり,彼にしかない。この決りは対外問題でも同様だ。ロシアにかかわるすべての問題は覚書の形で皇帝へ報告される。

覚書の中で外務省は,ロシアの利益がどのような影響を受けるかを念入りに説明して,採用すべき方針を提案する。皇帝は大臣に助言を求めることもあれば,覚書の傍注の形で大臣に命令を与えることもある。

だがいずれにせよ,「拝聴するのは従うこと」なのだ。それが決りだ。

 現在の危機が始まって以来,例外が設けられたが,この例外が有効かどうかは見たところ疑わしい。「極東総督」は,外務省を飛び越えて皇帝と直接連絡する権限を得ている。また,中国,朝鮮,日本駐在のロシアの外交代表を配下に置いている。

 

 - 健康長寿

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『稲村ヶ崎サーフィン・モンスターウエーブ動画特集⓶』★『稲村ケ崎ビッグサーフィン(2018/9/29am720-8,30)-台風24号の大波を乗りこなすサーフィンーテクニック①』★『台風19号接近中の鎌倉稲村ヶ崎サーフィン (2019/9/10am7)-ついに来ましたビッグウエーブ、約50人の命知らずのサーファーが『決闘中!』

  稲村ケ崎ビッグサーフィン(2018/9/29am720-8,30) …

『オンライン講座・大谷翔平選手と日本政治家の実力比較』★『世界中から有能な人材を超高給でスカウトし、スピーデイなリーダーシップで世界覇権を死守する米国」★『世界一の超高齢少子人口減少社会の解決に30年間も失敗連続で中進国・後進国に転落し沈没寸前の日本』★『MLBを制した大谷の実力と比べて日本の政治家は落第である」 

大谷翔平選手と日本政治の実力比較  前坂 俊之(ジャーナリスト)   …

no image
知的巨人の百歳学(106)ー農業経済学者・近藤康男(106歳)ー70才の人生の節目を越えて、以後40冊以上の超人的な研究力

睡眠健康法の農業経済学者・近藤康男(106歳)ー70才の人生の節目を越えて、以後 …

no image
『中国近代史講座』★『『辛亥革命100年で孫文を助け、辛亥革命を成功させた最大の日本人は宮崎滔天で、宮崎家は稀有な「自由民権一家」であった。(上)

2011/10/21  日本リーダーパワー史(201)記事再 …

『オンライン死生学入門』★『中江兆民(53歳)の死に方の美学』★『医者から悪性の食道ガンと宣告され「余命一年半」と告げられた兆民いわく』★『一年半、諸君は短いという。私は極めて悠久(長い)と思う。 もし短いと思えば五十年も短なり。百年も短なり。生命には限りがあり、死後には限りなし」(『1年半有』)』

      2015/03/19/『中江兆民(53歳)の死生学』記事転 …

no image
知的巨人の百歳学(157)/記事再録/鉄道王・根津嘉一郎(79歳)の「克己心」ー「己に克つ」ことこそが健康長寿法

知的巨人たちの百歳学(116) 根津嘉一郎(79歳)の「克己心」ー「己に克つ」こ …

鎌倉/稲村ケ崎サーフィン(2020/7 /5am900)-南九州に大雨を降らせた梅雨前線が通過後の荒波に苦労するサーファーたち。

鎌倉/稲村ケ崎サーフィン(2020/7 /5am900)-南九州に大雨を降らせた …

『リモート京都観光動画」外国人観光客が殺到する清水寺へぶらり散歩、五条坂からゆっくり参拝へ』★

  京都観光ー観光客で賑わう清水寺付近の二寧坂(二年坂) 外国人観光客 …

知的巨人たちの百歳学(174)記事再録/日本最長寿の徳川家三代指南役・南光坊天海(108歳)の養生訓ー上野公園内の「墓碑」で長寿健康を祈る―『 養生法・長命には粗食、正直、湯、陀羅尼(だらに)、御下風(ごかふう)あそばさるべし。』★『養生訓「気は長く 勤めは固く 色うすく 食細うして 心ひろかれ」

2015/02/05/百歳学入門(102)・   日本最長寿の徳川家三 …

no image
知的巨人たちの百歳学(111)-明治の大学者/物集高見、高量(106歳)の大百科事典『群書索引』『広文庫』の奇跡の長寿物語➂→「(人間に必要なのは)健康とおかねと学問・修養の三つでしょうね。若い時は学問が一番、次がおかね。健康のことなんかあまり考えないの。中年になると一番はなんといってもおかね。二番が健康、学問なんかどうでもいいとなる。そして年取ると・・・」

物集は膨大な日記を書いている。 それは「百歳は折り返し点」の自伝の「年表の総まく …