前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

知的巨人の百歳学(142)『一億総活躍社会』の国策スローガンを嗤うー「美食は外道なり」「贅沢はステキだ」「国策を嗤いとばし、自己流の美学を貫いた」超俗の作家・内田百閒(81歳)

   

知的巨人たちの百歳学(142)

『一億総活躍社会』『超高齢/少子化日本』の国策スローガンを嗤う

 「美食は外道なり」「贅沢はステキだ」「国策を嗤いとばし、自己流の美学を貫いた」超俗の作家・内田百閒(81歳)

前坂俊之(ジャ−ナリスト)

アベノミクスの第3弾として『一億総活躍社会」なる国策スローガン(国策標語)が飛び出した。日中戦争の始まった1937年(昭和12)ごろから『国家総動員法』なるものが成立し、すべての社会体制、経済、政治、言論、教育、産業、組合など国の命令で強引に合併,統合され、臣民(国民ではない、天皇制なので臣民)1人1人が『隣組」「愛国婦人会」などにがんじがらめに統制していく『戦時体制」が築かれた。

戦争で空襲にされた場合に備えて「ナンセンス」な防空演習、バケツリレーで、敵機の空襲は防げると軍人たちは子供、大人、女性、老人までを強制的にかり出して、『国民総動員運動」を展開した。

国策標語なるものが強制された。「(赤ちゃんを)産めよ、増やせよ国のため」「国債を買いましょう」

「ゼイタクは敵だ」「撃ちてしやまん」「ほしがりません勝つまでは」「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」

ーと新聞、ラジオで連呼された。これに対して、冷めた良識ある人々は「ゼイタクは素敵だ」「足らぬ足らぬは夫が足らぬ」と密かに笑い飛ばした。もし、公然と批判すると特高、憲兵に逮捕されたのである。

そして、あっという間の昭和16年に「大東亜戦争」に突入し、その4年後には地獄を見た。

そして戦後70年たった今、国債1000兆円以上も発行して20年にわたって経済政策失敗を続けてきたこの最後の土壇場になって、安倍首相の次々に打ち出す国策スローガンの、何と80年前のコピーと似ていることか。

国家総動員、国民総動員よろしく、経団連に企業トップを集めての「大企業の大幅な内部留保を投資に回してもらいたい」、『賃金、ベースアップをするように」に指示したり、「今度はケイタイの料金を引き下げるように」とまで、命令している。

市場経済、自由経済のもとでの企業家の自由な経済活動に独禁法、カルテル、不正経済行為以外には国家は介入すべきではなく、各省庁によるがんじがらめの岩盤規制、行政の厚い壁こそ政治力で粉砕すべきると数十年前から指摘されているのに、このガラパゴス(鎖国)官僚国家体制はアベノミクスもチェンジできていない。

日本はいつから国家社会主義体制になったのか、資本主義自由主義市場経済国家で、いちいち首相がこんな事まで強制指示している国があるか。

もともと、民主主義社会は自由主義、個人主義がベースの上に成り立つ。経済活動も、子供を産む、生まぬぬも、あくまで個人の判断であり、国がそこまで介入するのは、個人主義ではなく、国家主義、全体主義である。

国ができるのは個人が幸せに暮らせる法的な整備、環境の整備であって、個人に子供を増やせというスローガンを押し付けけることではない。

これと同じく『一億総活躍社会』なる国策スローガンは戦前の『国民総動員、総運動」の焼き直しである。活躍しようと、昼寝しようと、さぼろうが個人の自由ではないのか、個人の考えで人生を送っており、国家が個人の人生、生活に介入する権利はない。内田百閒先生が聞けば、カンカンになって怒ったことであろう。

ワシも、ちょっぴり年取って、少し起こりっぽくなったのか、もうろくしたのじゃな、だんだん、百閒先生先生と『カンシャク」がにてきたわい。先生、勘弁、かんべんな!。

さて、百閒先生のさっそうとでなく、ひょこひょこ登場ですわーーーーーーー

一九五〇年(昭和二五)五月二九日、60歳(還暦)の誕生日を迎えた百閒に対して、その友人、弟子、読者らが集まって、第一回目『摩阿陀会(まあだかい)』が東京ステーションホテルで盛大に開かれた。

黒澤明の遺作『まあだだよ』(1993)で、おじさんたちが酔って群舞する1大シーンがあるが、あれの原作である。大のパーティー好きの百閒が自の誕生日を酒の肴に飲んで大いに騒ごうというもの。

冒頭での百閒のスピーチがふるっている。

『このクソジジイ。まだ生きているのか』というのが今晩の摩阿陀会です。『まあだかい』とお聞きになるから、私は『まあだだよ』と出てまいったわけであります。

そのうちにきっと『もういいよ』と申し上げる所存でございますが、その節は御香典の御用意を、なるべくたくさんお願いします」

百閒はフロックコートに山高帽子、白い手袋にステッキで出席、酒宴が最高潮に達すると、明治の鉄道唱歌を歌いまくったり、そのうちに「まだ百閒は死なざるや」の大合唱となった。

この『摩阿陀会』は百閒が亡くなるまでの二十年間、毎年開かれたが、七回目のあいさつがまた傑作?!

「いつかは『まあだかい』が『もういいよ』となることは間違いない。今晩はそのことについてお話したい、と前置きして、1口10万円の香典保険をつくって、参加者はこの保険にみな入り、毎月小額ずつ払ってもらう、最低50人はいれば、500万円を自分はすぐおろして、

「それを片っ端から使っていって身近の用に充てる。悪くないではありませんか。へっへっへ」。

先生は1人悦に入って紅白のヒモのついた大ジョッキーを一気飲みで、グィと底まで飲み干して、一同あっけにとられてしまった。

百閒は日本の歴史上、最もモノのない太平洋戦争、敗戦の時代に、自己流の美学を徹底して貫き最高の贅沢をした人である。

焼け跡に建てた3畳の掘っ立て小屋を『3畳御殿』と称していた。

長生きや通俗的な養生法など一度も考えなかった人でもある。

大の食通であり、美食家ではあったが、今時のグルメ、美食とは正反対の位置にあって「美食は外道なり」と断じていた。

おかずの名前を知るは貧乏人なり、おいしい物しか食べぬは外道なり、おいしくない物を好むはなお外道なり」(昭和11年7月)を主義にしていた。

昭和19年には旨いものを食べたいとその品名を並べた『餓鬼道肴疏目録」を書いたり、食べもののなくなった昭和21年には「御馳走帳」まで出版している。

1971年4月、81歳で亡くなったが、百閒は、横になったままストローでシャンペンを飲んでいだ。「何があっても取り乱しちゃいけないよ」「多すぎるな、(お前が)が半分飲めよ」と夫人にいったのが最期。大往生であった。

 - 健康長寿

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代への昭和史・国難突破力講座⑯』★『戦後の高度経済成長の立役者・世界第2の経済大国の基盤を作った『電力の鬼』・松永安左エ門(95歳)の長寿健康10ヵ条」★『遺書には▶栄典類はヘドが出るほど嫌い▶死後一切の葬儀・法要は不要▶墓碑一切不用、線香も嫌い』

2019/03/27「知的巨人の百歳学」(147)記事再録再編集 「何事にも『出 …

no image
日本メルトダウン脱出法(826)「甘利経済再生相、首相の慰留を振り切り辞任 「何とか耐えて政策を進めて」と首相は慰留」●「甘利大臣“口利き問題”の背景にある 公務員制度改革の抜け穴」●「資源価格下落の利益が 企業の内部留保に吸収されている」●「逆オイルショックの衝撃は世界へ 日本経済が“真の勝ち組”となる条件は」

 日本メルトダウン脱出法(826) 甘利経済再生相、首相の慰留を振り切り辞任 「 …

『Z世代のための国難突破法の研究・鈴木大拙(96歳)一喝!①」★『日本はなぜ亡んだか、その原因を明らかにしなければ新日本建設はできない』★『3つの日本病とは「世界観」「人道主義」「無思想」である』

2012/06/19  日本リーダーパワー史(271)記事再録 昭和敗 …

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(25)』「プラハ(チェコ)は「ヨーロッパの魔法の都」息をのんだ「マラー・ストラナ地区の近く、マルタ広場にあるロココ様式のトゥルバ宮殿②」

2015/06/20  F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ …

知的巨人の百歳学(117)ー『米雑誌「ライフ」は1999年の特集企画で「過去1000年で最も偉大な功績をあげた世界の100人」の1人に、日本人では唯一、浮世絵師の葛飾北斎(90歳)を選んだ』(上)

『世界ベストの画家・葛飾北斎(90歳)の創造力こそが長寿力となる』★『北斎こそ世 …

no image
★『オンライン百歳学入門動画講座』★『鎌倉カヤック釣りバカ人生30年/回想動画記』/『母なる鎌倉海には毎回、大自然のドラマがあり、サプライズがあるよ!

私も今年はどうやら古希(70歳)らしい、ホント!、ウソでしょうと言いたくなるよ。 …

『リモートワーク/京都世界文化遺産/外国人観光客へお勧め/豊臣秀吉ゆかり醍醐寺をぶらり散歩動画(2016/09/04 /30分)』★『桃山時代の面影を残す秀吉ゆかりの古刹』★『秀吉が設計した三宝院の庭園の天下の名石・藤戸石』★『秀頼の作った西大門から入り広大な伽藍に向かう』★『本堂の金堂(国宝)は秀吉の命で紀州湯浅から移築、本尊の薬師如来像がある』★『西大門の仁王像、運慶、快慶以前の現物残る傑作、なぜ国宝でないのか』

★⒑外国人観光客へお勧めベスト①『京都古寺・醍醐寺」のすべて➀桃山時代を残す秀吉 …

no image
百歳学入門(57)スルガ銀行創業者・岡野喜太郎(101歳) 『欲を離れるのが長寿の妙薬』

  百歳学入門(57)   スルガ銀行創業者・岡野喜太郎(101歳)健康長寿法 …

『 F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(102)』★『パリ・モンパルナスぶらぶら散歩(2015/4/30-5/3)』★『モンパルナス地区の南方、メトロMouton-Duvernet 駅近くの食料品店は早起き、カラフルでアートな商店街とその陳列を楽しむ>』

逗子なぎさ橋珈琲テラス通信(2025/10/10/pm430) 2015/05/ …

no image
知的巨人たちの百歳・臨終学(143)『生死一如、生きることは毎日死に向かって行進中。「生き急ぎ、死に急ぎ、 エンディングストーリー」を考える』

知的巨人たちの百歳・臨終学(143) 生死一如、生きることは毎日死に向かって行進 …