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速報(261)『ベトナムの原子力発電への夢は様々な疑問があるにも拘らず花開きつつある』「ニューヨーク・タイムズ」(3/1)

   

速報(261)『日本のメルトダウン』
 
ベトナムの原子力発電への夢は様々な疑問がある
にも拘らず花開きつつある
』「ニューヨーク・タイムズ」(3/1)
 
F国際ビジネスマンのから「ニューヨーク・タイムズ」の翻訳が送られてきました。
「日本の報道機関では、この程度の調査報道も出来ていないのではないでしょうか。原発事業は、商売優先でやってはならないことが福一大災害で思い知らされたにも拘らず一過性のビジネスに従来通り性懲りも無く拘っている。東芝、日立、三菱重工の反省が足りない。原発プラント輸出は絶対に許されないと思います」とのコメント。
 
以下はF氏のコメントです。

1. 福一大災害の原因と対策が十二分に整理され、総括されていない中、ベトナム向け原発プラント商談で東芝を始めとするプラントメーカー、霞ヶ関の経産省を始めとする関係省庁の要請に負けて、日本政府は受注支援を継続し、一基内定に漕ぎ着けているが、日本国の原子力発電事業の対外受注方針は過去の延長で本当に良いのか? 国家の責任と云う観点から見直すべきではないかと、いう。
 
2. 原子力発電事業は、優れたハードの供給が必要であるが、運転開始後の30~40年に亘るソフト面、全ての不測の事態に対応できる危機処理能力の準備、組織・人材の確保、科学的な知見を全てに優先させヒューマンエラーの排除能力の育成などがより重要。日本の原発運営体制に大きな疑問が提起されている現在、ベトナムへの指導力に不足ありとみるべきではないか?という。
 
3. 受け入れ国ベトナムの今の人材レベル、組織レベルでは日本の欠陥も含め、現在の計画期間内で、ベトナムの原発事業に完璧な安全を組み込むのは難しいのではないか?日本が商売優先で独走すると、結果的に不測の事態が起きベトナム国民の信頼を失う事になりはしないか?という。

 
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2012/3/1 NYT ー東京 by NORIMITSU ONISHI
 
『Vietnam’s Nuclear Dreams Blossom Despite Doubts
ベトナムの原子力発電への夢は様々な疑問があるにも拘らず花開きつつある』
http://www.nytimes.com/2012/03/02/world/asia/vietnams-nuclear-dreams-blossom-despite-doubts.html?ref=norimitsuonishi


 
「ハノイ、ベトナムー ここ原子力科学技術大学では暖房のない教、室の中で、約20名、スタートしたばかりのベトナム原子力産業界出身の政府系エンジニア達が冬用のジャケットを脱がずに、放射線に関する10日間の勉強会の最初の朝を迎えていた。やこの勉強会は、半政府系の日本原子力機関がスポンサーとなり、放射線医療101としてスタートしている。学生達は当時、日本の専門家の援助を得て、放射線治療のサンプルを集め、日本に建設して貰った実験室で、それらを分析した。
 
’’原子力はベトナムのエネルギー確保の為には重要であるが、これは火の取り扱いと同二つの側面がある’’と学生の一人、Nguyen Xuan Thuy, 27才は云う、’’更に我々はこの良い側面を如何に上手く活用するかを学ばなければならない’’と。
 
ベトナムが世界でも最も野心的な原子力発電計画の一つをこれから始めようとしている時、原子力発電プラントを運転し管理するのに必要な専門家集団をゼロから育て上げるのは、とても間に合わない。ベトナム政府は、各大学での原子力エンジニア育成のプ
ログラムを強化し、若手技術者の数を増やして海外に送り込んでいるが、その政府が云うには、ベトナムは、2020年に原子炉を1台でスタートし2030年には10基まで増やす計画だが、原子力産業を安全に経営出来る優秀な専門家を有する様になるだろう、と。
 
しかし何人かのベトナム人や外国の専門家は云う、信頼できる正規のプラントを完成するには余りにも時間が少なすぎる、特に広範囲に汚職の拡散した国では、安全基準が貧弱になり情報の透明性にも欠ける、と。又彼らは云う、過度に野心的なタイムテーブルはある種の弱い規制に繋がり、昨年日本の福島原発で起きた大災害をもたらした規制当局と会社の共謀的な結合にも繋がる。
 
Hien Pham Duy、ベトナムの最も上級の原子力科学者の一人であり原子力を監督する政府機関へのアドバイザーでもあるが、その彼が云う、ベトナムに原子力をもたらすのは彼の長年の夢であったと。しかし、と彼は云う、政府の計画は、原子力に固有の問題について積極的な評価がなされないまま行われ、特に低開発国に生ずる問題へのアプローチが不十分であると。
 
多くのベトナム人同様、Hien氏、彼はDalat原子力開発研究所の元所長、この研究所にはベトナムの実験用原子炉があるが、その彼がこの国のあらゆる活動分野に浸透しているい安全文化の最も顕著な例として、ベトナムの交通事故の高い発生率を指摘する。
 
Tran Dai Phuc氏、フランス系ベトナム人で、彼はフランスの原子力産業で40年間働き、今はベトナムの科学技術省、原子力はここが所管しているが、ここのアドバイザーとなっている、その彼が云うには、潜在的な問題は原子炉技術に関するものではなく、個人の責任感や、品質保証や設備に関する全般的な安全の文化、そして環境への影響に留意する化などと同様、デモクラシーの欠如に関連することである、と。
 
ベトナム政府は、国家の強力な経済成長が、原子力発電プラントのエネルギー供給を失って危機に陥ることを恐れている。水力発電に多くを依存しているベトナムは、2015年にはエネルギーの純輸入国になると予想されている。ベトナムで原子力発電の導入を
急ぐ理由の一つは、輸入を含め、原子力以外の旧来の燃料供給源が不足していることだ、と Le Doan Phac氏、政府の主要な原子力研究開発機関、ベトナム原子力局の局長代理、がEメールのメッセージで語っている。
 
ロシアと日本がベトナムの最初の二つのプラント建設の入札に勝っている、韓国は三番目に選ばれると予想されている。日本にとって、この契約は日本政府と原子力業界による長年のハイレベルなロビー活動の賜物であった、日本国内では、昨年の福一原発危機以降原子力発電への国民の強力な反対運動により、受注活動を脅かされていたが。

約500名のベトナム人が2001年以来、日本の原子力機関の支援による集団実習の全課程を終了している。プラントメーカーの東芝もまた、建設の契約を獲得する為に2006年以来一ヶ月コースの教育実習を提供して来た。
 
最初のプラント建設に必要な資金を供給する為、ベトナム政府に約80~90億ドルの借款を約束したロシア同様、日本は海外協力銀行を通じて低利の一括借款の提供を期待されている。日本は原子力発電プラントの運転をサポートする為に必要な道路、港湾、その他
のインフラ建設の為、日本の海外発展支援体制を動員することを期待されている。
 
福島原発大災害の記憶が未だ生々しい日本では、ベトナムの様な発展途上国に対する原発プラントの売り込みで、日本政府が積極的な役割を担っていることにたいして厳しい非難が寄せられている。
批評家達はいう、日本政府と原子力業界の連携の努力は、福島原発大災害をもたらした政府と原子力産業のある種の共謀的な結び付きを思い出させる。日本政府の低利の借款ー 納税者の金だがー これはただ政治的に繋がったプラントメーカーだけを利するに過ぎない、と彼らは、云う。
 
原子力発電プラントを販売すると言う様な事態になると、それはもう商業的には成り立たなくなる、従って常に公的資金の注入が必要となる、と国際環境NGO、Friend of the Earth Japan とメコン・ウオッチ両方の研究員を兼ねるKanna Mitsuta氏はいう。
 
批評家達は、日本や原子力に強い各国は、未来経済における原子力ルネッサンスの夢が福島大災害の発生以来、消滅しているので、低開発国に対して必死で売り込んで来た、という。
 
福島大災害の後で、東京の日本政府は日本国内で2030年までに14基以上の原子炉を建設するという計画を放棄した。日本は福一災害の前には54基の原子炉を持っていたが、国民の反対で今では2基を除き全て停止している。日本が国内で拒否されるものを発展途上国に一生懸命輸出するのは何故なのか理解できない、と原子力科学者、Hien氏は云う。
 
日本の輸出を支持する人たちは云う、ベトナムの様な発展途上国は何十年前の日本がそうであった様に、彼等の経済を拡大する為に原子力発電を選ぶ権利がある、と。Tadashi Maeda氏、日本国際協力銀行の公務員で内閣への特別アドバイザーであるが、日本がベトナムに原発プラントを売らない事を決めれば彼らは他の国からすぐに買うだろう、という。

 福島大災害は、ヒューマン・エラーが一因となった、Maeda氏は云う。しかしと彼は付け加えた、福島で老朽化した原子炉を使っていた日本と違い、ベトナムは、その技術と安全性のレベルが完全に異なる現在到達水準で最高のものを受け取る事となる。
 
しかしTran氏、仏系ベトナム人アドバイザーは云う、日本の技術力については全く疑いを抱かない、と。我々が悩んでいるのはそう言う事ではなく、原子力と言う世界の最も複雑な産業の一つを管理し、統制する能力がベトナムにあるかどうかと言う事です、と指摘する。原発事業の経営政策をどうすべきかに悩んでいる、原子炉が稼働している時、規制監督者は独立し毅然とし警戒を怠らない様にしなければならない。
 
ベトナムは, その原子力産業を規制する為には長年の経験豊富な専門家、数百人を必要とする、とTran氏は云う。ベトナム放射線・原子力安全局、国の主要な規制当局であるが、ここでは、専門家の助けをk借りながら安全報告書を分析する資格のあるものは、目下たったの30名しかいない、と彼はいう。
 
日本の原発向けの立地として選ばれたベトナム中央部にある村、TaiAn で数名の住民に行き当たりばったりにインタビューをしてみた、彼らは2、3マイル北の場所に700家族の村を移転させなければならない計画に関し心配していた。殆どが漁師かぶどう栽培農家である村民達は云う、農業からの稼ぎは、Tai An が近くの新しい貯水池と接続されて以来、ここ数年急激に増えている、と云う。また彼らは云う、村ごと移動する新立地は原発プラントに近いが、ここがぶどう栽培や漁業に危害を加えないか、恐れている、と。
 
原発プラントについては、私は何も知らない、とPham Phong、43才ぶどう栽培農家はいう、彼は東南アジアの収入増大の最も典型的な例の一つで、安い中国製のオートバイから、昨年末ピカピカで真新しい日本のヤマハに買い替えているが。しかし、テレビで福島の惨状を見て、心配している、と。
 

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