前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

名リーダーの名言・金言・格言・苦言(19)『出るクイを求む』(ソニー・盛田昭夫)「経営者は“五つの蓄積”である」(早川徳次・シャープ)

   

<名リーダーの名言・金言・格言・苦言
・千言集(19)            前坂 俊之選
 
 
 
☆出るクイを求む
 
  盛田 昭夫(ソニー社長)
 
 この精神が、オリジナリティに富んだ新製品を次々に生んで、世界のソニーを作った。
強烈で個性的な人間を集めて、思い切って創造的な仕事をさせたのである。
 積極的に何かをやろうとすると「やりすぎる」と、足を引っ張られるのが、日本の企業
社会の特徴になっている。アイデアを育てる人はなかなかいない。逆に、理屈をつけてこ
わす人はたくさんいるのが現状。
 
 ソニーが“出るクイを求む”との広告を出して大評判となった。
 「ソニーは腕と意欲に燃えながら、組織の壁に頭を打ちつけている有能な人材を求む」
 自己申告し、チャレンジし、適材適所を上司に見つけてもらうのはでなく、自分の責任
で志望する。
 
 これが、盛田の考え方であり、社内外から、ドシドシ“でるクイ”を求め、ソニー躍進
の人材を集めた。
 
 

怖いのは失敗することではなく、失敗を恐れて
何もしないことだ
 
  本田宗一郎(ホンダ創業者)        『俺の考え』
 
 人は座ったり、寝たりしている分には、倒れることはないが、何かをやろうとして立っ
て歩いたり、駈け出したりすれば、石につまづいてひっくり返ったり、並木に顔をぶつけ
ることもある。
 
 だが、たとえ頭にコブを作っても、膝小僧をすりむいても、座ったり寝ころんだりして
いる連中よりは、少なくとも前進がある。大ケガをして病院へ担ぎこまれて、たとえ振出
しに戻されたところで、この次はあんなヘマをやらずに、かけてみせようという意義のあ
る経験になるわけだ。
 
 世の中では座ったり、寝ころんだりしている人間がケガをしたり、コブを作ったりする
人間を見て、嘲笑するようなことがあるけれども、これは大変なお門違いなことである。
そういう連中は、最後に嘲笑されることを、知らぬバカ者なのである。

 


◎不況を乗り切るには重心=損益分岐点を下げる
 
立石 一真(オムロン創業者) 『人を幸せにする人が幸せになる』
 
 生物は環境の変化に、適応できなければ亡びる。企業も同じで政治、経済、文化、技術
などの変化に適応できなければつぶれる。
 オイルショックにより、高度成長経済から、一挙に減速経済に体質が変わってしまった
のだから、企業もその体質を変えねばならぬ。この場合、変わり身が早ければ早いほどよ
いことになる。
 
 企業を船にたとえたら、オイルショックの後の、不況の荒海を乗り切るには、何をおい
ても、船がひっくり返らないように、重心を下げねばならぬ。企業の積荷の諸経費、人件
費コストなど思い切って海に捨てねばならぬ。
 
 企業の重心である、損益分岐点(BEP)を下げることである。同時に、損益分岐点を
相対的に下げる努力も必要である。それには、商品のレパートリーを増やし、売上げを増
やすこと、同じ商品でも“売る創造”により、売上げを増やすこともできるのである。
 
 

◎経営者は“五つの蓄積”である
 
  早川 徳次(シャープ創業者)
 
 一 信用を蓄積せよ―信用は、一朝一夕に得られるものではなく、絶えざる継続が確固
   とした信用を生む。販売にも技術面にも、常にまごころを念頭に置くべし。
 
 二 資本を蓄積せよ―事業は資本の蓄積によってさらに信用が裏付けされる。収支の両
   面によく均衡のとれた健全な経営を行い、蓄積の実を上げねばならない。
 
 三 奉仕を蓄積せよ―企業は社会や人々から、数多くの恩恵を受けて生活している。会
   社は世間から預かっているのであり、何らかの形で、社会へ還元せねばならない。
 
 四 人材を蓄積せよ―事業の運営は人にある。まず、自己を修養し深めていき、自身の
   蓄積から始めよ。人間はそれぞれ長所を持っている。それを活かしていけば、自然
   と人材が蓄積される。
 
 五 取引先を蓄積せよ―相互に助け合い、信じ合って絶対迷惑をかけないこと。この信
   条で顧客もこちら側もともに栄える。取引先の蓄積が、百年の事業を保証する。利
   益の自己独占は永続しない。

 


◎失敗の“しぶり”に器を見る
 
  後藤 清一(三洋電機相談役)
『経営のトップ一〇〇人が綴る 人の見方・育て方』
 
 新入社員はスロースターターの方がよい。始めから上の者の顔色を見たり、早合点する
者はケガや失敗を多くする。小器用は成長の敵といえる。
 
 では、スロースターターのどこを見るか。ズバリ、彼の失敗の“しぶり”である。失敗
は歓迎である。しかし、失敗は一度目はご愛敬である。二度目は正念場、そして三度目は
仏の顔も三度までという言葉もあるが『ヤツはあの程度か』と烙印を押されてしまう。
 勝負は二度目である。二度目でリカバリー(失地回復)出来れば、この失敗は「成功の
因」である。三度目からは、失敗は失敗の因にすぎない。
 
 『あの男は、どういう失敗のやり方をするのか』―私はそこをじっと見ている。「今日
は失敗してしまった。しかし、人生、明日があるやないか、明日から頑張ろう」とよく人
は言う。耳ざわりがよい。だが、どっこいそうは問屋が卸さない。世間はそれほど甘くな
い。
 
 
 
◎人材育成の基本は“叱って育てる”
 
  永守 重信(日本電産社長)
『経営のトップ一〇〇人が綴る 人の見方・育て方』
 
 私の人材育成の基本は「叱って育てる」ということである。すなわち「百回叱って一回
ほめる」が信条である。
 
 ただ、叱る時は「口」で叱り、ほめる時は「手紙」でほめる。この意味は一回ほめた手
紙を本人が百回読んでくれれば、百回叱って百回ほめたことになるからである。
 叱りがいのある社員は叱れば叱るほど伸びてくる。反対にいくら叱っても進歩がないと
いうのは、叱りがいがないといえる。
 
 私の経験から、いくら叱っても叱る価値のない社員像とは―
 
 一 叱っている本質を十分理解せず、言い訳ばかり並べる社員。
 二 叱られたことに対して、心の底から反発心を持たない馬耳東風的社員。
 三 他人の叱られていることに全く無関心で、自分の中にそれを取り入れられない社員
 四 他人を叱ることの出来ない社員。
 五 プライベートな部分をあからさまに公開できない社員。
 
 
 
◎ニーズがあるところにダイエーあり
 
中内 功(ダイエー創業者)         『わが安売り哲学』
 
 ダイエーの歴史は、消費者のニーズを追い求める歴史である。お客のニーズに応じて行
動するのが一貫した根本原則であり、ダイエーの行動は、全てこの一点から説明出来る。
 
 一九五一年(昭和二十六)、薬品現金問屋・サカエ薬品(ダイエーの前身)を創業。伝
統ある大阪・道修町に入れず、隣りの平野町で間口一・八メートル、広さ五平方メートル
の店舗を開いた。
 
 サカエ薬品は客に値段を聞きながら売った。客が欲しいものを欲しい値段で売るという
ことをそのまま実行した。客が買うという値段を聞き、仕入れを工夫する。ニーズがある
ものは必ず売れるのだから、仕入れの工夫さえできれば、販売は無限に伸びていく。
 
 客がくると、注文を聞いてしばらく待ってもらう。弟が道修町の問屋へ走る。ニーズ主
義そのまま。ダイエーの売価決定方法も、リンゴ一個何円なら客は買うか。十円と決まっ
たら八円で仕入れる。始めから売れることを、前提に品を決め、価格を決めるのだから、
ダイエーの品が売れないはずがない。
 
 
 
◎自分から“かける”あいさつは、“返す”あいさつ
の何百倍もの価値がある
 
 福富太郎(ハリウッドチェーン社長)   
 
 『人を立てれば蔵が立つ』
 
 『戦艦大和ノ最期』の中で、著者の吉田満が、あいさつのエピソードを紹介している。
 
 吉田が海軍に入ったばかりの時に、船の中で上官が向こうからくるのに出くわした。直
立不動で敬礼しなくてはならない。それがイヤで物陰に隠れた。ところが、上官に見つけ
られ、ぶん殴られた。

上官いわく。相手が気づかないだろうと避けて、それで本当に気持

ちがよいのか。苦手な相手が来たからといって避けるより、すすんであいさつした方が、
自分もどれだけ、気持ちがよいかわからないではないか、と。
 
 確かに、今日は気分がよくないからとか、面倒くさいとかいって、あいさつを怠ってい
たのでは自分も気分がよくない。それよりも、むしろすすんで『やぁ、こんにちわ』と言
った方が、ずっと爽快な気分になれる。言われた相手も、自分を身近に思ってくれる。そ
れだけで相手は、自分に声をかけてくれたと、気持ちよくなるものだ。
 
 
 
  
◎一度生んだ子は完全に育てる義務がある
 
豊田 喜一郎(トヨタ自動車創業者)     『豊田喜一郎』
 
 喜一郎は一度採用した以上、“終生の友”である、という考え方に徹していた。

社員は上下の隔てなく愛し、面倒をみるのはもちろん、退社した人の住宅の世話などについても

心配した。自宅の女中に対しても同じで、メンバーが不足して、麻雀卓に座っていると、
かわりに喜一郎が風呂を沸かしたこともあった。
 
 戦後、合理化の嵐が吹きまくり、トヨタも首切りを計画したが、その話を聞いた喜一郎
は怒り「必要だから入社させておいて、いらなくなったら首切りとは何事か。そんなこと
だから事業がうまくいかない」と担当者をドナリつけた。
 
 一九五〇年(昭和二十五)にどうしても合理化せざる得なかったが、「一緒に苦労した
子の首を切るより、私がやめる」と、さっさと社長の座を下りた。
 
 「一度生んだ子は完全に育てる」は喜一郎の哲学で、人も自動車の製造でも、あてはま
った。トヨタが自動車の国産化に成功したのは、喜一郎の人を大事にする精神と、取り組
む以上、やり遂げるという不屈の精神であった。
 
 
◎人を使うには“四つの縛りつけ”に注意せよ
 
  伊庭 貞剛(住友総理事)
 
 伊庭は住友の近代化を成し遂げ、住友財閥の基礎を固めた人物である。彼は“心の人、
徳の人”として、住友精神の体現者として、その伝記「幽翁」は今も住友人に読み継がれ
ている。
 
 伊庭は総理事に就任した時、幹部に対して、部下を使う心得を訓示した。
 
 一 しきたりとか、先例に従えといって、部下のやる気に水を差すな。
 二 自分が無視されたといって、部下の出足を引っ張るな。才能のない上役ほど部下が
   新しいやり方をしたり、積極的にいい仕事をすると、逆に足を引っ張ったりする。
 三 何事も疑いの目で部下を見て、部下の挑戦欲を縛りつけるな。
 四 注意をほどほどに。くどくど注意して、部下のやる気をくじくな。
 
 この“四つの縛りつけ”を厳重に、戒めたのである。
 
 
 
 

 - 人物研究 , , , , , , , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
世界リーダーパワー史(940)ー注目される「米中間選挙」(11/6)と「トランプ大統領弾劾訴追」はどうなるのか、世界がかたずをのんで見守る(下)

注目される「米中間選挙」(11/6)と「トランプ大統領弾劾訴追」はどうなる(下) …

no image
『鎌倉釣りバカ人生30年/回想動画録』⑰★『コロナパニックなど吹き飛ばせ』★『10年前の鎌倉沖は豊饒の海だった』★『美しい鎌倉海』で海の恵みをいただいて「天然生活」ー釣った魚をおいしく食べる。

    2016/06/23 &nbsp …

no image
下村海南著『日本の黒幕」★『杉山茂丸と秋山定輔』の比較論

2003年7 月 前坂 俊之(静岡県立大学教授) 明治国家の参謀、明治政府の大物 …

F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ㊻』余りにスローモーで、真実にたいする不誠実な態度こそ「死に至る日本病」

    2014/03/21  記事再録 …

no image
『百歳学入門(214)』-加藤シヅエ(104歳)『一日に十回は感謝するの。感謝は感動、健康、幸せの源なのよ』★『「感謝は感動を呼び、頭脳は感動を受け止めて肉体に刺激を与える』

『百歳学入門(214)』 加藤シヅエ(104歳) 日本の女性解放運動家。日本初の …

no image
★『リーダーシップの日本近現代史』(77)記事再録/ 『 朝鮮宮廷(政府)の「親清派(事大党)対「朝鮮独立党(日本派)」 の争いが日清戦争へ発展!,50年後の太平洋戦争への遠因ともなった』

 2015年7月11日/終戦70年・日本敗戦史(108) <歴史とは現 …

no image
世界も、日本もメルトダウン(960)『シベリア鉄道の北海道延伸を要望、ロシアが大陸横断鉄道構想 経済協力を日本に求める』●『シリア停戦崩壊、米ロ関係かつてない緊張へ』●『ロシア「アメリカは事実上のテロ支援国家」』●『比ドゥテルテ大統領「オバマ地獄に落ちろ」、兵器は中ロから購入と断言』●『北朝鮮幹部2人、日本に亡命希望か 官房長官は否定』

  世界も、日本も本メルトダウン(960)   シベリア鉄道の北海道延 …

『オンライン/明治外交軍事史/読書講座』★『森部真由美・同顕彰会著「威風凛々(りんりん)烈士鐘崎三郎」(花乱社』 を読む②』 ★『川上操六陸軍参謀次長と荒尾精はなぜ日清貿易研究所を設立したのか』★『鐘崎三郎は荒尾精に懇願して日清貿易研究所に入ったが、その「日清貿易研究所」の設立趣旨は欧米の侵攻を防ぐためには「日中友好により清国経済の発展しかない」という理由だった』

    2021/06/01  日本リー …

no image
日本リーダーパワー史(618) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』 ⑫『福島安正のインテリジェンスが日清,日露戦争の勝利の主因①わが国初の国防書「隣邦兵備略」を刊行、清国の新海軍建設情報 を入手、朝鮮を属国化し大院君を強引に連れ去った

日本リーダーパワー史(618)  日本国難史にみる『戦略思考の欠落』 ⑫ 『福島 …

no image
★『2018年(明治150年)の明治人の歴史復習問題』-『西郷どん』の『読めるか化』チャンネル ➂<記事再録まとめ>◎『山県有朋から廃藩置県(史上最大の行政改革)の相談を受けた西郷隆盛は「結構です!」と一言の基に了承し、即実行した』◎『西郷の大決心を以て事に当たったからこそ 用意周到、思慮綿密なる大久保や木戸の危んだ 廃藩置県の一大事を断固として乗り切ることができた。 西郷こそは民主主義者である(福沢諭吉の言葉)』③

 ★『2018年(明治150年)の明治人の歴史復習問題』- 『西郷どん …