前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

書評 「静岡連隊物語―柳田芙美緒が書き残した戦争」静岡新聞社編 静岡新聞社刊(2009年7月刊)

   

書評「静岡連隊物語―柳田芙美緒が書き残した戦争」
静岡新聞社編 静岡新聞社刊(20097月刊)
 
                                                             前坂 俊之
                                                         (静岡県立大学名誉教授)
 
                                  静岡市の中心部に位置する駿府公園。

この場所には1945年(昭和20年)夏まで、「歩兵第三十四聯隊」があった。1897年(明治30年)に創設された部隊は歩兵第34連隊で日露戦争(1904年-05年)に投入され、昭和になって中国との戦争では上海を皮切りに、中国大陸を転戦した。

太平洋戦争が激化する中、独立歩兵第13連隊、歩兵第230連隊、歩兵第118連隊などの部隊が相次いで編成され、ガダルカナル、サイパン島、レイテ島などで全滅に近い悲惨な犠牲を出した。

柳田英美緒(1909年(明治42年) 85日、焼津市大覚寺で生まれ)は、この静岡連隊に出入りを許された戦友カメラマン兼ジャーナリスト。

1933年(昭和8年)頃から連隊本部にも出張所を置いて、入隊間もない若い兵士や部隊幹部のスナップを撮影・販売した。部隊と共に中国大陸やジャワ・スマトラを駆け回り、一時期は中国・南京に支店を開設、従軍期間は八年にわった。

柳田は庶民のカメラ目線から昭和史をこれだけ記録した例がないというほどの膨大な写真と文章を残しており、これまで講談社刊「戦友-静岡連隊写真集」など2冊の写真集にまとまっている。

本書は柳田芙美緒の生誕100年を記念して、静岡新聞論説委員の小笠原康晴氏が同紙に連載したもの。柳田の戦友カメラマン人生を追いながら、残された柳田の文章、遺稿、写真もたくさん収録し、静岡の戦争史を多角的な視点から浮き彫りにしていて、大変興味深い。
 

 - 戦争報道 ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(3)記事再録/日本国難史にみる『戦略思考の欠落』③「高杉晋作のインテリジェンスがなければ、明治維新も起きず、日本は中国、朝鮮の二の舞になっていたかも知れない」

     2015/11/22&nbsp …

『クイズ?Z世代のための日本最強のリーダパワーを発揮した宰相は一体誰か?②』★『原敬首相の「観光立国論」』★『周囲の猛反対を押し切って皇太子(昭和天皇)をヨーロッパ観光に旅立たせた国際的決断力』★『日本帝王学の要諦は ①可愛い子には旅をさせよ ②獅子はわが子を千尋の谷に突き落とす ③昔の武士の子は元服(14、15歳)で武者修行に出した』

「逗子なぎさ橋通信、24/06/16/am720] 2017/09/23 &nb …

no image
リクエスト再掲載/日本リーダーパワー史(331)空前絶後の参謀総長・川上操六(44)鉄道敷設,通信設備の兵站戦略こそ日清戦争必勝のカギ 「坂の上の雲」の真の主人公「日本を救った男」

日本リーダーパワー史(331)空前絶後の参謀総長・川上操六(44)鉄道敷設,通信 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(102)記事再録/『明治以降、日中韓(北朝鮮)の150年にわたる対立、紛争、戦争のルーツは『朝鮮を属国化した中国」対「朝鮮を独立国と待遇した日本(当時の西欧各国)」とのパーセプション、コミュニケーションギャップの衝突である』★『 明治9年の森有礼と李鴻章の『朝鮮属国論』の外交交渉の見事なすれ違いにルーツがある』

 2017/03/16日本リーダーパワー史(780)記事転載 前坂俊之 …

no image
日中ロシア北朝鮮150年戦争史(45)『日本・ロシア歴史復習問題』★「日清戦争後のロシアによる満州強奪」―西欧列強のアジア経営と米国の極東進出、ロシアのチベット問題の謀略

  日中ロシア北朝鮮150年戦争史(45)『日本・ロシア中歴史復習問題 …

no image
『リーダーシップの世界日本近現代史』(279)★『新型肺炎の国家リスクにどう対応するか」★『 帝国ホテル・犬丸徹三が関東大震災で示した決断/実行力 に学ぶ>

 2011/04/03   日本リーダーパワー史( …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(244)/記事再録★『日本の「戦略思想不在の歴史⑮」ペリー来航45年前に起きたイギリス東洋艦隊の「フェートン号」の長崎港への不法入港事件」★『ヨーロッパでのナポレオンの戦争の余波が<鎖国日本>にも及んできた』

  記事再録 2017/12/10  「 …

『バガボンド』(放浪者、漂泊者、さすらい人)ー永井荷風の散歩好きと野垂れ死考①

  『バガボンド』(放浪者、漂泊者、さすらい人)ー永井荷風の散歩人と野 …

『オンライン現代史講座/2・26事件とは何だったのか』②ー『日本最大のクーデター2・26事件(1936年/昭和11年)は東北大凶作(昭和6ー9年と連続、100万人が飢餓に苦しむ)が引き金となった』(谷川健一(民俗学者)

 昭和11年に起きた日本最大のクーデター2・26事件の原因には東北大凶 …

no image
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑳ 『日本帝国最後の日(1945年8月15日)をめぐる死闘―終戦和平か、徹底抗戦か⑤』8月13日の首相官邸地下壕

  『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑳     『日本の最も長い日―日本帝国最後の …