『オンライン/新型コロナパンデミックの研究』-『国産スーパーコンピューター「富岳」が8年ぶりに世界一へ』★『コロナ防止対策の世界的な競争力ランキング(23カ国・地域の指導者の比較評価)で、日本の指導力は最下位に』★『『ガラパゴスアナログジャパン』の安倍政権の実行力はガラパゴス諸島に唯一生息する絶滅種族のゾウガメのノロイ歩みと重なって見えた』(7月15日)
『国産スーパーコンピューター「富岳」が8年ぶりに世界一へ』
前坂 俊之(ジャーナリスト)
新型コロナウイルスの「パンデミック」で、世界、日本の将来への不安心理、恐怖指数が再び高まってきた中で、 国産スーパーコンピューターが8年半ぶりに世界一を奪還したニュースは久しぶりに国民に明るい希望を与えた。
6月22日にスパコン国際会議が発表したスパコンの計算速度ランキング「TOP500」では理化学研究所・富士通が共同開発した「富岳」が1秒間に41・5京(京は1兆の1万倍)回の計算能力を示し、2位の米「サミット」(同14・8京回)に3倍もの大差をつけてトップに輝いた。
「アプリのプログラム」「AI処理能力」「超大規模グラフの探索能力」「ビッグデータ分析性能」など4部門でもトップとなり、史上初の「四冠王」に輝いた。
計算速度(京回/秒)のベスト5位までの順位は
1位 日本 富岳 41.6、
2位 米国サミット 14.9、
3位 米国 シエラ 9.5、
4位 中国 神威・太湖之光 9.3、
5位 中国 天河2A 6.1、
日本勢が首位を奪うのは旧民主党政権下の事業仕分けで立憲民主党の蓮舫副代表が「2位じゃ駄目なんでしょうか」と追及した先代の「京」以来9年ぶりの快挙。
先代の京は世界一を獲得したが、使い勝手が余りよくなく、利用は広がらなかった。これを反省して、開発費1100億円以上をかけて「使いやすいオンリーワン」のスパコンを目指して開発に取り組んだ。名前も、富士山の裾野のように末広がりに利用が広がるという意味を込めて「富岳」と命名した。
「富岳」プロジェクトのリーダーの理研・計算科学研究センターの松岡聡センター長は、「市販のCPUを購入し、スパコンを作っていたら、この成果は達成できなかった。京の40倍の性能で、電力増加はわずか2.2倍。従来の米国製CPUの3倍の性能だ。汎用性があるCPUを開発したことで、日本の技術力を示すことができた。このCPU開発は日本の半導体産業の復活と言える」https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1260899.html
と胸を張った。
また、松岡氏はこれまで創薬は約10年の時間がかかり、従来のスパコンが候補薬をフィルタリング(データー類別)するにも、1~2年を要していたが、富岳はこれを劇的にスピードアップすると、述べた。
その富岳の超スピードで、世界で初めて既存の2128種類の薬を対象にシミューレションを行なつたが わずか10日間で寄生虫の駆除に使われる「ニクロサミド」など数十種類の薬が新型コロナウイルスの増殖を抑える効果があることを突き止めた。今後、理研は「富岳」の利用を世界の研究所、大学、製薬会社や研究者らにオープンに開放しながら、治験、知見を共有し早期の新薬開発を目指す方針で、世界中から引き合いが多数寄せられている、という。
ところで、今回のコロナ防止対策の世界的な競争力ランキング(23カ国・地域の指導者の比較評価)で、安倍首相らによる日本の指導力評価は最下位となった。日本国民の厳しい評価を反映したものといえる。https://www.jiji.com/jc/article?k=2020050800721&g=int
5月1日から開始された10万円の個人特別定額給付金の支給率をみても、2ヵ月たった7月1日現在で全国平均74,4%で、まだ3分の1の人々に届入いていない。中小企業への給付金、補助金についても書類申請の複雑さ、ハンコ行政、ネット対応不備によって、各国と比較するとそのスピードは最低ランクであろう。
毎年の予算編成ではITデジタル化推進のスローガンが打ち上げられ、科学技術立国宣言(1996年)、電子政府構築宣言(2003)、電子政府構築(2003)、地方創成(2014)、世界最先端IT国家創造、「官民データ活用推進基本計画」(2017)、百歳元気時代など陳腐化した看板を取り換えるのみで、その実行ススローモーぶりにはあきれ返る。
世界のトップリーダーの指導力、実行力を問う世界共通テストが毎年発表される「世界デジタル競争力ランキング」(IMD)である。1990年代には総合順位で連続1位を続けてきた日本だが、2019年の総合順位をみると転落の一途で日本は63ヵ国中の第23位、アジア太平洋地域でも14ヵ国中8位と順位を下げ続けている。
で世界のトップ5は米国、シンガポール、スウェーデン、デンマーク、スイスの順。アジア太平洋地域のトップはシンガポールで、それに香港、韓国、台湾、オーストラリア、ニュージーランド、中国、日本と14か国中の8位と最低水準に落ち込んだ。日本は「平成のベンチャー精神を失なった30年」で、ついにデジタル後進国に転落してしまった。
ITデジタル、スパコンの基礎はなんといっても数学であり、科学である。科学技術立国宣言(1996年)から24年、これまた失速する日本の研究力、論文数(人口あたり)や研究者数(FTE)など、いずれも先進国で最低のレベルへと低下した。英科学誌ネイチャーによる2019年の大学、研究機関の研究力ランキングでも、日本勢は東京大の11位が最高で、37位が京都大、1位は5年連続で中国科学院。中国勢は新たに2機関がトップ10にランク入した。
これらのランキングが示しているのは、日本憲政史上最も長い8年目に入った安倍政権の「アベノミクスの改革力」は看板倒れで世界からの落第点をつけられたといってよい。ところが、7月7日のニュースを見ると、政府は、デジタル化を社会変革の原動力とする「デジタル強靭化社会」の実現を目指すIT戦略案をまとめ、来年(2021年)の通常国会で、法改正を目指すという。
『ガラパゴスアナログジャパン』の安倍政権の実行力はガラパゴス諸島に唯一生息する絶滅種族のゾウガメのノロイ歩みと重なって見えた。
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