前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『リーダーシップの日本近現代史』(10)記事再録/「日露戦争・戦略情報の開祖」福島安正中佐④副島種臣外務卿が李鴻章を籠絡し前代未聞の清国皇帝の使臣謁見の儀を成功させたその秘策!

   

日本リーダーパワー史(554)

      2015/03/16

fukushima 日本リーダーパワー史(554)

「日露戦争での戦略情報の開祖」福島安正中佐④

副島種臣外務卿、榎本武揚支那公使のインテリジェンスを見習って

「対中国(支那)への軍事外交の築いたインテリジェンスー

李鴻章を籠絡し前代未聞の清国皇帝の使臣謁見の儀を実現させた

副島種臣外務卿の秘策とは!?・・。

                     

                         前坂 俊之(ジャーナリスト)

 

「インテリジェンスとはスパイの戦いではなく「智慧の戦い」である」「敵を知り己を知り、万事体験が駆け引きのコツ」(榎本の言葉)

1883年(明治16)3月、福島安正中尉(30歳)は大尉に進級し、正式に北京駐在公使館付武官を拝命した。この時の任務は清国全般の調査、特に清国軍に関する情報収集の仕事に当ることで「隣邦兵備略」の補備修正作業に従事した。北京駐在公使はオランダ海軍に留学した経験を有し、当時、政府きっての国際通であった榎本武揚である。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A6%8E%E6%9C%AC%E6%AD%A6%E6%8F%9A

福島安正中尉は榎本から数々の政治、外交、軍事インテリジェンスを教わった。

明治初期外交の数少ない成功例の1つは明治6年3月に当時の外務卿(大臣)副島種臣卿が支那(中国)始まって以来の前例を破って、直接、清国皇帝の拝謁を賜わったケースである。

「歴史的にみても支那皇帝が外国使臣の下役の者に直接、会見することは皇帝の権威、威厳の上からも絶対に有り得なかった。と榎本公使は説明し、当時のヨーロッパ列強の米英仏の公使でさえ未だに拝謁を許されないのに、誕生したばかりの小国日本の外務大臣が修好条約締結の打ち合わせに来訪したに過ぎないのに、いの一番に直接皇帝が拝謁を許されたので、当時の西欧外交官たちに大ショックを与えた。

この時の副島卿の秘策を榎本公使から聞き出して記録していた。

以下は榎本公使の証言である。

『現在も当時も同じだが、清国宮廷に最も信頼を得ている人物は季鴻章.http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%8E%E9%B4%BB%E7%AB%A0

である。

この李鴻章という政治家は学識も極めて高いといわて自他共にこれが自慢の種であった。しかし、いかに学識が高いといっても限界があり、恐らく評判程のことではなかろうと副島卿は見当をつけて1計を案じた。

副島卿も日本では漢書に造詣が深い中国通の第一人者だが、自分自身も評判ほどでないことを十二分に自覚しており、この種の評判と実際の乖離をよく心得ていた』<島貫重節著「福島安正と単騎シベリヤ横断」(上)(原書房1979年)>

 

交渉術①「相手の誇り(プライド)をくすぐれ」

『そこで副島卿は支那で有名な言葉や比喩、絶句、それに古来からの名訓の数々を、すっかり暗記していって、李鴻章に会ったときに彼にぶっつけた。

「学識の高いことで有名な閣下ならば良く御判りの事でございましょうが・・」

というと、季鴻章は大きくうなづいて「もちろん皆よく判っている」という。

次に副島卿が、これまた達筆を揮って漢書の名文をすらすらと書いて、「閣下はどれが御好きですか」と尋ねた。

李鴻章は書道を褒めた後に、質問には答えず、副島卿に対して語った。

「貴方のように学識の高い方は、この清国にも私の外には指を数える程しかいないと思う」と大いに賛辞を呈した。

実はこの書の中に全く意味のないものを故意に入れてあったのだが、副島はこの返答に李鴻章のインテリジェンスレベルを見破ったのである。いささかも表情を変えず、さらに李鴻章を褒め上げて

「貴方が清国宮廷から最も信頼を得ているわけは御人格の外に、やはり学識が高いためであると私は従来から信じていましたが、今回このように御会いできて、その判断の正しいことを確認できた点は、私の最も大きな収穫でありました」

と伝えると李鴻章はまんざらでもない様子だった。

副島卿はさらに畳みかけて「日本の高官が清国を訪ねたのは末だ僅少であり、そのため閣下が清国第一の知識人で清国皇帝から格別の御信頼を得ているという事実を見た者がいないのは残念であります。外務卿である私が今回清国を訪問した最高の目的は、閣下が皇帝に信頼されている事実をこの目で確認して帰国し、日本の高官たちに伝えることであります。是非、このむねを皇帝に秦上していただきとうございます」と請願したのである。

気を良くした李鴻章は早速、皇帝に秦上し、「日本の賢人を皇帝が引見なさることは皇帝の御高徳を一層日本にも普及することになりましょう」と李鴻章の立会のもとに、ここに前代未聞の皇帝の使臣謁見の儀が実現したというのである。

<参考、引用―島貫重節著「福島安正と単騎シベリヤ横断」(上)(原書房1979年)8285

                                     つづく

日本リーダーパワー史(423)『日中韓150年対立史⑨「ニューヨーク・タイムズ」は中国が 侵略という

「台湾出兵」をどう報道したか②困難な日中外交を切り開いたのが副島種臣外務卿(外相)の外交力。

http://www.maesaka-toshiyuki.com/history/1379.htm

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ ウオッチ(232)』-『3/30午後、東京を代表する目黒川周辺の桜並木は満開の<春爛漫>、ビユーティフル・ワンダーランド』

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ ウオッチ(231)』- 3/30 午後 …

no image
日本メルトダウン脱出法(776)「大阪ダブル選挙圧勝! 橋下維新「恐るべき強さ」の謎を解く」●「香港からも欧州からもいなくなる中国人観光客、 年末、年始は日本に殺到か?」●「貧乏老大国が目前の中国、夢も希望も捨てた韓国 アジアの少子高齢化(3)~国家消滅の危機にも」

日本メルトダウン脱出法(776)    「大阪ダブル選挙圧勝! 橋下維 …

no image
『葛飾北斎の現代版富嶽三十六景』のYoutube傑作版①4K撮影/『葛飾北斎の現代版富嶽三十六景』ー富士山絶景に中国人観光客も大はしゃぎ(11/15)-大涌谷から見た冠雪した富士山』★『-鎌倉光明寺裏山からみる大荒れの鎌倉海と霊峰富士』』

 現代版葛飾北斎の「富嶽三十六景』(6/16am9 )-鎌倉光明寺裏山 …

★『お笑い、そして悲しき日本文学史』③「歌人・若山牧水」『生来、旅と酒と寂を愛し、自ら三癖と称せしが命迫るや、 静かに酒を呑みつつ44歳の生涯を閉じたり・』●「人の世に楽しみ多し然れ共 酒なしにして何の楽しみ」●「幾山河越えざりゆかば寂しさの はてなむ国ぞけふも旅ゆく」

★『お笑い、そして悲しき日本文学史』③ 「歌人・若山牧水」 『生来、旅と酒と寂を …

no image
日本メルトダウン脱出は可能か(597)「経済の珍病には大胆な治療法必要」(英FT紙)◎「日本の総選挙:同レース、同馬」(英エコノミスト誌)

       日本メルトダウン …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(156)』『シャープ、新たに偶発債務 の浮上、契約延期、呆れて絶句です』焦点:シャープ偶発債務、鴻海再建案に不透明感 精査結果カギに』●『アベノミクスは最後の正念場を迎えているーGPIFの運用実績が政権にとって懸念材料に』●『コラム:共和党指名争い、トランプ氏「勝率9割」の理由』

  『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(156)』   『シャー …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ ウオッチ(192)』ー『人工知能 病名突き止め患者の命救う 国内初か | NHK』◎『近い将来、人工知能は人間の手を離れる 機械の未来を予測した哲学者が警鐘を鳴らす理由』◎『人工無脳とは何か』◎『トピック「人工知能」のまとめ324件』◎『Microsoftが人工知能でGoogleに勝てる理由とは?』

   『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ ウオッチ(192)』 …

no image
日本リーダーパワー史(32)巨人伝説―日本最強の戦略家・杉山茂丸の謎・・②

日本リーダーパワー史(32) 巨人伝説―日本最強の戦略家・杉山茂丸の謎②・・・ …

ヨーロッパ・パリ美術館ぶらり散歩』★『ピカソ美術館編➅」ピカソが愛した女たちー《ドラ・マール》の傑作2点の明暗

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(117)』  &nb …

日本リーダーパワー史(604)『安倍・歴史外交への教訓(10)「世界史の中での日韓関係のパーセプションギャップ⑤」ー「日本の対中国、対朝鮮外交は、ほとんどウソで固められてきたといって過言でない。これを知ったうえで、戦後の外交を再検討、再出発する必要がある。(大宅壮一)

  日本リーダーパワー史(604) 『安倍・歴史外交への教訓(10) 「世界史の …