日本が初の議長国となった20カ国のG20首脳会議(6/28/29日)の結果はー首脳宣言では2年連続で「保護主義ついての文言」は米国の反対で盛り込めず、代わりに入ったのが『自由』、『公平』、『無差別』、『透明性』、『予測可能』な『安定』した貿易」と、単語を六つ重ねて反保護主義を強くにじませる苦肉の文言。
2019/07/26
G20首脳会議の結果は
日本が初の議長国となった20カ国のG20首脳会議(サミット)が6月28、29日の2日間、大阪市内で開かれた。29日には注目の米中首脳会談が開催され、トランプ大統領は5月から中断していた米中協議を再開し、中国からの全輸入品に関税をかける第4弾の制裁発動を見送ると発表、ファーウエイの米国企業からの輸入も一部を認める決定を下した。
これに対して、習近平国家主席はトランプ氏の選挙地盤などの農家から大量の農産物を輸入することで、「ビッグディール」(取引)が成立。ひとまず、米中全面貿易ハーウエイ戦争は一時的に回避された。トランプ氏は大統領再選に向けてのサプライズ演出は続き、北朝鮮の金正恩氏にツイッターで板門店での会見を呼びかけ、金氏が応じ、提案からわずか1日で会談の運びとなった。米朝首脳は38度線の軍事境界線上で「平和のための握手」を交わし、現職米大統領として初めて北朝鮮側に入るド派手なパフォーマンスが世界中のテレビ、ネットで中継された。これまで何度も見た「トランプ・サプライズ・マジック外交ショウ」である。
トランプ氏は朝鮮半島の緊張緩和を自らの外交成果としてアピールし、今後、膠着状態の非核化交渉を再開するが、米朝間のミゾは深く、協議を再開しても完全非核化の展望は簡単には開けていないと思う。
一方、米中貿易戦争は2035年まで続く、との見方もあり、習氏は毛沢東の「長征」から学ぶ「持久戦」を国民に呼びかけている。米国が問題視する産業補助金は、ハイテク産業の振興や地方の雇用維持に欠かせない中国の核心的利益政策の柱で、変えるわけにはいかないもの。貿易摩擦の影響で今後、米景気が落ち込み、来年11月の大統領選挙でトランプ氏が再選されるかどうかを見極めながらかけ引きが続くものとみられる。
一方のトランプ氏も大統領選に向けて、米国経済への影響を最小限に食い止めながら、中国の産業、覇権争いにダメージを与えて、法制度を改革を促すあの手この手でディールとツイッターで揺さぶる戦略だ。今回の米中の一時休戦は両国の経済、安保の基本的な部分での隔たりが大きすぎるため今後とも貿易関税対立、覇権争いは長期戦になる見通しに変わりはない。
ところで、肝心のG20首脳会議(サミット)はこの何度目かのトランプディール暴風で、半んば吹き飛ばされた形だ。安倍首相が議長役として極力調整した首脳宣言では2年連続で「保護主義ついての文言」は米国の反対で盛り込めず、代わりに入ったのが「『自由』、『公平』、『無差別』で『透明性』があり『予測可能』な『安定』した貿易」と、単語を六つ重ねて反保護主義を強くにじませる苦肉の文言。米国対中国、EUとの決定的な対立、決裂を何とかさけたい一心の日本側の斡旋、調整がひとまずは実を結んだ。日本の提案の海洋プラスチックごみの削減について、初めての国際的な枠組みをつくることでも合意し、共同声明を採択した。
このほか、議論されたテーマの➀世界貿易機関(WTO)については「機能改善に必要な改革への支持を再確認した。②海洋プラスチックごみ対策では「2050年までに新たな汚染ゼロをめざす」という「大阪ブル一・オーシャン・ビジョン」を共有したが、各国の自主的な取組に重点が置かれ、数値目標は見送られる緩やか合意となった。
一方、③気候変動ではパリ協定をめぐり、米国とそれ以外のメンバーとの意見の相違が埋まらず、両者の立場を併記せざるを得なかった。マクロン仏大統領は前回のG19より後退した、と批判している。④データ流通では「信頼性のある自由なデータ流通」の文書を明記。ルール作りの枠組み議論、「大阪トラック」の開始は有志国のみの合意となり、宣言の外枠になった。
➄デジタル課税は「巨大IT企業への課税方法を20年までに合意する方針を承認した。この問題での米国、EUの対応論は全く異なっており、来年までの決着は難航しそうだ。
今回、辛くも世界の経済の分断をつなぎとめたこのG20サミットは自由主義的な貿易枠組みを守る最後の首脳会議となるのではないか、そんな気が一瞬、頭をかすめた。
会場の大阪の気象状況は前日に台風3号が突然発生し、大雨、強風の嵐が吹き荒れた。ヨーロッパ各地も熱波に襲われドイツ、フランス、ポーランドなどでは最高気温が38度から45度までに上昇し6月の観測史上最高を記録した、という。これは地球からの資源を食い尽くし環境を破壊続けている人類への警告、悲鳴に聞こえてきた。地球環境異変、地球温暖化は確実に悪化しており、国際会議で「会議は踊る、されど決せず」の先延ばしを続けている場合いではない。持続可能な開発目標(SDGs)に向けて一刻もはやくスタートしなければならない。地球の恵みを破壊し自国の利益にだけにとらわれている限り、22世紀の地球、世界の未来は開かれない。
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