前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

新刊発行<『座右の銘』―人を動かすリーダーの言葉>『日本経済を再建した創業者たち80人の名言』

   

新刊発行<『座右の銘』―人を動かすリーダーの言葉>
    前坂俊之編著       新人物文庫   667円+税

 
 
『日本経済を再建した創業者たち80人の元気の出る名言・格言・訓言』
 
                    前坂俊之(静岡県立大学名誉教授)
 
いまのビジネスマンの座右の書といえばドラッガーであり、ハーバードビジネスクールのテキストであり、『ロングテール』の著者が描く21世紀の経済モデルのクリス・アンダーソン『フリー:〈無料〉からお金を生みだす新戦略』なのかもしれない。また、今回の大震災でポンと私財100億円を寄付した超人・孫正義(ソフトバンク創業者)の経営学も大いに読まれていることであろう。
それにしても、日本の経営者でかくも多額の寄付をした例はなく、孫正義の決断力と器量の大きさには瞠目する。
日本の経営学というと、どうしても米国からの翻訳が主流となりがちだが、明治維新によって世界に経済の門戸を開いた『日本資本主義の父』渋沢栄一は「右手にソロバン、左手に論語の「道徳経済合一説」の理念を唱えた。

これはリーマンマンショックを引き起こした米国の収益至上主義的なビジネスモデルとは明らかに対極にあるものであり、きわめて日本的な経営哲学であり、勤労態度といえるであろう。いわば、武士だった渋沢が刀をソロバンに持ち替えたとは言え、商売の本質は公共に尽くすものという武士道精神が根底に強く流れていたのである。
 

この渋沢哲学が約150年たった現在まで、ベンチャー経営者、サラリーマン経営者、中小企業経営者までその背骨に連綿と受けつがれてきたことは間違いない。現在、日本の経営者、サラリーマン精神はいわば武士道、儒教、仏教的なものがミックスされて日本的な経営学と米国流とのハイブリット型であるいってよい。
 
日本のビジネスマン(商人)の歴史をたどってみると、古代にまでさかのぼる。建国230年のアメリカよりもはるかに古いのはいうまでもない。奈良時代には都の東西に物々交換などの官立の「市」が立ち、商人が生れる。鎌倉時代から室町時代にはいると商工業や流通も盛んになり、本格的な行商人が地域を超えて活動し、各地の物産をもちより、市や「座」もふえ、貨幣流通もさかんになった。
 
戦国時代に入ると、各戦国大名は自らの城下町の繁栄のために商工業者の来住を歓迎し、便宜を与えたが、市や座といういまのマーケット、商店街を作った。織田信長が特に熱心で人、物、金の妨げとなる通行税や課税していた座を廃止した、楽市、楽座をつくり商人はあらそって楽市に集まった。
 
徳川時代には江戸はパリをしのぐ当時世界一の100万都市として、消費経済が花開き、各地に豪商や近世商人が誕生し、大名よりも力を持った三井、三越、住友、鴻池組、大丸などや、河村瑞賢、銭屋五兵衛、紀伊国屋文左衛門らの巨富を得る投機的な大商人も現れる。いまでいうベンチャービジネスの成功者である。
ところで、明治まで日本を支配した武士たち、リーダーたちの言行録の古典といえば上野館林藩士の岡谷繁実(おかのや しげざね、天保6年(1835年)― 大正8年(1919年)12月9日)が、16年の歳月をかけて完成した大著『名将言行録 (全8冊)』(明治2年初版)がある。
これは武田信玄,上杉謙信,織田信長,明智光秀,豊臣秀吉,伊達政宗,徳川家康など戦国時代の武将を中心に192名の名将の名言、言行を浮き彫りにした名著である。
明治以来の日本は『富国強兵』の政策をとり、この150年の歴史は「日本株式国家』であり、『日本官僚会社国家』でもあった。その代表的な企業家、リーダーの言行録について岡谷の『名将言行録』なものはない。
 
このため、私はあえて岡谷の経営者版に挑戦し、明治以来、平成までの150年間にわたる日本経済を世界一に届くまでに発展させた
代表的な企業家、創業者、リーダーたちを渋沢栄一から岩崎弥太郎、
大倉喜八郎、豊田佐吉、野村徳七、大原孫三郎、出光佐三、

松下幸之助、本田宗一郎、井深大、現代の孫正義、三木谷浩史まで500人を網羅した『名企業家言行録』(経営名言千語)なるものを書き続けて「ビジネス名言海」など何冊かの本に出版した。

本書はその中から、約80人を選んで珠玉の経営名言、経営訓と、簡単な解説をつけて並べたものである。

本書は明治以来のトップの企業家の経営哲学のエッセンス、事業成功、発展のトラの巻の集成であり、経営のキーワード集ということもできる。
こうして並べてみると明治、大正、戦前、戦後と時代や環境、社会は大きく違い、各企業の発展の経緯は異なっていても成功のノウハウは変わっていないことに気づく。
成功、発展、衰退、倒産には不変的の原則が存在するといってよい。

 それは本書を読んでいただければわかるが、ほぼ次の三点に集約できる。
 
① 「事業は人なり」。事業が成功するかどうかのカギはなんといっても人である。どのような困難な仕事や小さな企業でも、いい人材を得れば発展していくし、逆に一部上場の大企業でも経営者に人を得なければ組織は疲弊し倒産の危機にあう。事業を興すのも滅ぼすのも人である。
 
② 人を得て、さらに時代の流れを的確につかめば事業成功、発展は間違いない。明治以来の企業の栄枯盛衰をみると、わずか二、三〇年で個人企業から日本を代表する大企業にのしあがった企業家、起業家は、数多くいる。そのためには人材と同時にニーズをいかにつかむか、という点が勝負のわかれ目になる。
 
③ 人材、ニーズの両輪がそろうと組織がいかに活性化して、成長のスピードを加速するかである。組織の活性化、時代の変化に適応できるかどうかがカギとなる。組織が大きくなり、中、大企業となって安定してくる積極策から安定指向、官僚化が必然的に生まれ、大企業病に陥る。これは『死にいたる病』である。ダイエー、日本航空など日本一となって潰れた会社も少なくない。大きいもの、強いものが生き残るのではなく、状況に適応したものが生き残る。強者生存ではなく、適者生存原則である。
以上の三点だが、本書の中の各先人の教えの中には含蓄に富んだ言葉が数多い。日々の経営やの中で悩み考え、苦闘しているビジネスマンに「読めるクスリ」「名言のクスリ」となればこんなうれしいことはない。
 
 
 
日本を代表する創業者たち80人
 
青井 忠治浅野総一郎安藤 百福池田亀三郎石川一郎石橋 信夫飯田 亮井植 歳男石本他家男市村 清出光 佐三岩井勝次郎岩切章太郎岩崎弥太郎伊藤忠兵衛伊藤 雅俊稲盛 和夫井深 大牛尾 治朗馬越 恭平江崎 利一大倉喜八郎大塚 正士大原孫三郎岡田 卓也岡野喜太郎小倉昌男小林 中、小林 一三渋沢 栄一嶋田 卓爾下村彦右衛門小原鉄五郎鹿島守之助小菅 丹治鈴木 修鈴木三郎助孫 正義立石一真、田路 舜哉辻 信太郎堤 康次郎坪内 寿夫豊田幸一郎鳥井信治郎中内 功中島董一郎中山 素平永野 重雄永守重信西本 貫一根津嘉一郎藤原銀次郎堀 威夫野村 徳七服部金太郎早川 徳次福富 太郎堀場 雅夫本田宗一郎松下幸之助、三木谷浩史三島海雲宮崎甚左衛門宮島清次郎森 泰吉郎森 矗昶盛田 昭夫安田善次郎柳井 正矢野 恒太、山内山下亀三郎山田 晃山田 光成山本 猛夫吉田 忠雄米山 稔渡邊美樹

 - 人物研究 , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本リーダーパワー史(34) 良心のジャーナリスト・桐生悠々の戦い②<個人誌 『他山の石』での批判活動>

  日本リーダーパワー史(34)     …

★「コロナ騒ぎの外出自粛令で、自宅で閉じこもっている人のためにお勧めする<21世紀を予言したスーパーパーソン>抱腹絶倒の人物伝>超面白いよ」★『ノーベル賞を超えた『日本の知の極限値』ー「地球環境を守る/エコロジーの先駆者・南方熊楠先生だよ』!

「世界的日本人びっくりクイズ①」 <日本の歴史上の人物で、最大の世界的な天才とは …

日本リーダーパワー史(615)世界が尊敬した日本人(85)関東大震災の復興、「横浜の恩人」の原三渓ー今も天下の名園・三渓園にその精神は生きている。

  日本リーダーパワー史(615)ー世界が尊敬した日本人(8 …

『日本の運命を分けた<三国干渉>にどう対応したか、戦略的外交(外交の要諦 )の研究』㉑』★『三国干渉』後に川上操六はインテリジェンスをどう組み立てたか『日英同盟締結に向けての情報収集にエース福島安正大佐 をアジア、中近東、アフリカに1年半に及ぶ偵察旅行に派遣した」

2019/09/29 『リーダーシップの日本近現代史』(65)記事再編集 前坂  …

no image
日本風狂人列伝(33) 世界的数学者・岡潔は『数学は情緒なり』の奇行の人なり

日本風狂人列伝(33) 世界的数学者・岡潔は『数学は情緒なり』の奇行の人 前坂  …

no image
   ★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟はなぜ結ばれたのか」➂ 1902(明治35)年2月14日『英タイムズ』-『日英同盟の意義』●『日英同盟がイギリス植民地、米国で受け入れられたことは,極東,太平洋と南洋全域,進歩を阻んできた嫉妬と誤解を解消していく。』★『中国に味方する者の多くは,日本は革命国家で,わけのわからぬ,他人に言えぬ意図を秘めた国家と見てきた。だが、日英同盟にそうした警戒感は消えていくだろう』

               ★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同 …

no image
『知的巨人の百歳学(159)記事再録/ 「シュバイツァー博士(90歳)の長寿の秘訣」★「世界的チェロ奏者のパブロ・カザルス(96歳)」の「仕事が長寿薬」

百歳学入門(104) ー天才老人になる方法— 『会社』には定年があって人生に「定 …

no image
 日本リーダーパワー史(181)<百年前にアジア諸民族の師父と尊敬された犬養毅①>大アジア時代の先駆者

 日本リーダーパワー史(181)   <百年前にアジア諸民族の師父と尊 …

no image
日中韓異文化理解の歴史学(5)(まとめ記事再録)『日中韓150年戦争史連載70回中、52-62回まで)『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』(59)『(日清戦争開戦3週間後)- 日本の謀略がすでに久しいことを論ず』★『もし朝鮮から中国勢力が排除されたならば,すぐさま ロシア艦隊が出現し,その国土にもロシア兵が到来するだろう。 ロシアは日本が朝鮮半島でわがもの顔に振る舞うことを許さない(ニューヨークタイムズ)』●『日清戦争開戦4週間後、日本の朝鮮侵略(英タイムズ))』

『英タイムズ』からみた『日中韓150年戦争史』(52)「浪速(東郷平八郎艦長)の …

no image
記事再録/知的巨人たちの百歳学(135)-勝海舟(76歳)の国難突破力―『政治家の秘訣は正心誠意、何事でもすべて知行合一』★『すべて金が土台じゃ、借金をするな、こしらえるな』(これこそ今の1千兆円を越える債務をふくらませた政治を一喝、直ぐ取り組めという厳命)

2012/12/04 /日本リーダーパワー史(350) ◎明治維新から150年- …