日本近代史の虚実「山県有朋の外交音痴と明石元二郎伝説➀」ー「安倍/プーチン/ロシア外交と100年前の山県外交との比較インテリジェンス」★『戦争に備える平和国家スウェーデンのインテリジェンス』
2018/06/01
「日本の政治を牛耳った山県有朋の外交音痴と明石元二郎伝説」
前坂俊之(ジャーナリスト)
以下は木村毅著「続まわり灯籠」(井上書房、1961年)のロシア大革命と日本」(202-208P)を参考にした。
1914年(大正3)4月に発足した第2次大隈内閣(1916年10月まで)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC2%E6%AC%A1%E5%A4%A7%E9%9A%88%E5%86%85%E9%96%A3
は立憲同志会(野党系)と組んで組閣しただけあってそれまでより自由に、派手に、少々無軌道にふるまった後に、登場したのは山県有朋推薦の「ピリケン(非立憲)」寺内内閣である。
寺内内閣
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BA%E5%86%85%E5%86%85%E9%96%A3
は大正デモクラシーと徹底して対決する。寺内は大隈内閣とは正反対の生真面目な石橋を金槌でたたいても、渡らない、決断できない小心翼々、器量の小さい宰相だった。
寺内が首相になって半年たつかたたずで、ロシア革命という大嵐に直画したのだから、日本は肝ッ玉(金玉)のでんぐり返るほど、びっくりし仰天したのも無理はない。
寺内内閣のできたのは大正五年十月だが、その二カ月前の七月に、大隈内閣の手で、日本は帝政ロシアとの間で軍事同盟(第3次日露協商)にも等しいもの
http://www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/2334/nogi02.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jarees/2015/44/2015_44/_pdf
https://www.nippon.com/ja/column/g00377/
を調印しており、寺内内閣はそれを受けついでいた。
この新協約がほんとうに大隈の腹から出た案なら、寺内内閣はいい加減に冷遇することができたが、これは大御所の山県有朋が大乗気で発案し石井菊次郎外相のケツをひっぱたいて調印させたものだったので、尊重せざるを得なかった。
寺内は、山県が目の中に入れても痛くないほど可愛がった子分であった。
長州閥の大ボスで、1909年(明治42)10月にハルピンで安重根に伊藤博文が暗殺されて以降は1人大元老となった山県有朋が「日本を牛耳」っていた。陸軍卿時代の山県は部下でフランス帰りの桂太郎を可愛がり、その多智多才の手腕を愛し、後継者にするつもりでいたが、桂は山県のイエスマンにならず、日露戦争時の戦時宰相となると山県と対立する。
さらに日露戦争の勝利によって大先輩・山県と同格の公爵にまでに栄進した桂に、山県は嫉妬して遠ざけてしまった。
その点、小心翼々でイエスマンの忖度男の寺内をことのほか寵愛した。その山県公が大自慢の案だから、この日露協約を粗末にはできず、後生大事と守っているところへロシア革命の勃発で、日露協約は紙くずとなり果てた。
●山県の外交音痴と恐露病の正体!
中野正剛と松岡洋右
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E9%87%8E%E6%AD%A3%E5%89%9B
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E5%B2%A1%E6%B4%8B%E5%8F%B3
の二人は、アメリカから帰ってくる船の中で、日露新協約の結ばれたことを電報で知ってショックを受けた。
「日本国民はどうかしている。こんな大へんな世界戦争(第一次世界大戦)のまっ最中ではないか。世界の将来がどうなるかは神様でもないかぎり予見できないのに「同盟にひとしい協約を、ロシアとの間で結ぶとは軽率きわまる。
元老以下の浮いた気分になっているのも、にがにがしいが、ちょうちん行列までする国民の浮わっいた調子にもあきれかえったものだ」と2人は憤慨し、山県公に談判することになった。
松岡洋右は同郷の大先輩山県公の知遇を得ている。そこで古稀庵を早速訪問して話した。山県公はこの案は自分のものだと自慢気に話したので、2度びっくりした。
松岡は自己の体験をふくめてこう語った。
「私の見るところでは、欧州大戦も、もはや峠が見えました。戦争が終わるまでには、遠からず、ロシアは大動乱におちいってロマノフ家は滅亡するに相違ありません。第三次日本露協約の締結に当っては、かかる予見を勘定に入れられたのでありますか、どうでしょうか。』と短刀直入に質問した。
すると、この質問に山県公は非常に驚いて身を乗り出して、
『何や?』と長州弁丸出しになって、
『そりやどひょうしもない(大変な)ことをいうが!?』
と驚いたので、今度はあべこべに松岡の方がショックをうけたという。
松岡がロシアにいたのは大正三年の一年だけであった。しかし、スラブの東漸に関しては、16、17歳の頃から研究していたので、その一年の間に、いままで読んだ書物から得て抱いていた結論を、一
1つ1つロシアの事情に照らし合わせてみて、その内情に通じて、当分ロシアに極東の備えなしとの確信を持ち、ついでアメリカへ渡ったのであった。
松岡は、山県公にこの結論に達した理由を3,40分説明したという。
『ロシアではクリミヤ戦争と日露戦争の時に、2度も革命がくわだてられたが、二度とも、失敗すべき理由があったので失敗に終ったが、今度こそ、この戦争がおわるまでに革命は必ず成功します。
俗に、当るも八卦、当らぬも八卦といいます。いわんや私は、八卦見はありません。もし、私の予言にして当らなかったならば、それは人類史上の驚くべき錯誤であり、奇跡です。けれども、二十世紀そのような奇跡はありません』と断言した。
山県公は松岡の談話中、緊張して聞いていたが、終わりになる程、ますます緊張して目を閉じ、眉を八の字によせて考え込んでいて、
話がすんでもなお暫くはそのままでいた。
やがて眼を開き、まっすぐに松岡の眼を見て、
「どうもそう見ざぁなるまいな。(見ざるを得まいな)』
と吐き出すようにかたった。
日本の政治を思いのままに動かしていた山県公が、ロシア革命の切迫について、これほど無知、無関心であったということは、一体何を物語っているか。
コラム:戦争に備える平和国家スウェーデン
https://jp.reuters.com/article/apps-sweden-idJPKCN1IX3CI
つづく
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