★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟はなぜ結ばれたのか④」1902(明治35)年2月14日『仏ル・タン』- 『英日条約』(日英同盟の意義)
2016/12/01
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」-
「日英同盟はなぜ結ばれたのか」④
1902(明治35)年2月14日『仏ル・タン』–
『英日条約』(日英同盟の意義)
英日条約は,外交の長期にわたる変遷からして当然予測された論理的な帰結であるとともに,最も重要な変革の1つであり,ある意味では国際的な新時代の出発点をなすものだ。
中日戦争が終結して以来・そして下関での交渉をめぐって,イギリスが他の列強諸国の政策とは別個の立場をとることを明確に示して以後,大英帝国と日本の緊密な歩み寄りを信じ,強固で明確な親交の樹立を予測することは十分に可能だった。
義和団の暴虐行為と各国公使館の包囲がやむなく実施させた干渉の際に,何よりも示唆的だったことは.この両国があらゆる点で,それも外交官の間だけでなく,軍人たち-司令官も兵士も-の間でさえ,協調を絶え間なく維持したことだ。
イギリスの新聞は「ちっぽけジャップ」たちの偉業を好んで取り上げ,これら野蛮人と言われる者たちの非の打ちどころがない行為と自称文明人の一部がなした行為とを対比してみせた。
キリスト教宣教師たちの虐殺に対する賠償要求の際に,正教のロシアが協力せず,これ見よがしに距離を置いて無関心を標ぼうしたのに比べて.仏教徒で非キリスト教徒の日本が西洋と共同戦線を張って協力し,その誠実ぶりを見せたことは称賛に値した。
今日,両国の互いの熱意が,協約の締結となって結実した。確固とした目標を持ち.明確な条件を備え,はっきりと期限を定めた協約だ。
これこそ,これまでの動きが行きつくべくして行きついた結果であり,両当事者の国際政策における一種の革命でもある。
日本については言うまでもない。日出ずる帝国は,半世紀の間に巨大な歩みを実現した。50年前には,日本は死のごとき暗闇の中にあって,野蛮国のうちでも最も閉鎖的で最も排他的な国の1つだった。
3000年にも及んだ孤立の強固な壁は,オランダ人とポルトガル人の通商の働きかけによって辛うじて開いていただけだった。
だが,文明の大砲が,とっぴな先駆けとして日本の諸都市の面前でとどろいて以来,日本は長足の歩みで西洋に追いっいた。
日本が1世代の間に,物質面,精神面,政治面,経済面など.あらゆる領域で見せた不思議な変化ほど.目覚ましく,驚くべきものはない。
双頭の封建帝国から立憲国家となった日本は,フランスで言えばピピンやカールたちが末期メロヴィング朝の宮事として壮大なカロリング朝の基礎を築いた時代と同じ状況から,-一足飛びに議会制政体の時代へと移ったようなものだ。ヨーロッパの文化.科学,懐疑主義,戦略,活発な生産,必死の戦争というものにたちまち通じ,日本は列強の中によい位置を占めるようになったのだ。
もちろん,日本には,国際社会の中で自分が占める地位に応じた国際的な役割を演じたいという野心がある。
中国との戦争は,その軍事的な立場を有利にした。ヨーロッパ-むろんイギリスは除く-が下関会議に介入し,勝利者の要求を取り下げさせようとしたのは,日本の力に対する敬意の表明-間接的ではあるが-でもあった。
以来,大英帝国と日本が東洋で持つ利益の明らかな一致,双方の見解の共通性というものが全く自然に両国を同盟に導いた。防衛的な同盟とはいえ,それは1つの危険,たった1つの危険-それが何であるかは周知の通りだ-を対象にしている。
こうして,世界政治の舞台へ.いよいよ日本の登場だ。それは,ロシアに対抗し,ロシアが朝鮮,満州.モンゴルに対して持つ野心に立ち向かうという形でなされる。
今や外交は2つの新しい要素を考慮に入れねばならなくなった。1つは,ついに闘技場に降り立った合衆国であり,もう1つは,イギリスが手をつないで大国のクラブに入会させた日本だ。
均衡の秤におもりがさらに1つ投げ込まれたことを,この条約は荘重に世界に告げているのだ。
イギリスにとってもこれは重大な新局面だ。大陸のかっての同盟システムフランス革命,ナポレオン帝政の戦争の際の諸連合,これらをさんざん利用し乱用したあげく,イギリスは1815年以降,このような長期にわたる約束ごとには徹底的な不信ともいうべき態度を示してきた。
ベルギーなどいくつかの国にしぶしぶながらも中立の保障を与えたのを除けば,イギリス政府はチェンバレン氏が「栄光ある」と形容した孤高の態度を育ててきたのだ。
ピール,アバディーン,ノヾ-マストン,ダービー,クラレンドン,ダランヴィル.ディズレーリ,グラッドストーンらは,いずれもためらうことなくこう主張した。すなわち,イギリスはもともと島国であり,島国は島国としての政策をとらねばならない。
それはいかなる約束も,いかなる義務も,いかなる長期協定をも避けるべきであり.決して特別な友好関係を求めることなく,すべての者とよい関係を保つことに満足し,明確な対象を持つ限られた期間の提携以外は結んではならない,という主張だ。
このようにしてイギリスは4分の3世紀を生きてきた。クリミア戦争の際のフランス.トルコ,イタリアとの一時的な協商はこの政策の一休みであり,あくまでも例外だった。
だが,徐々に新しい考えが生まれる。帝国主義の進行とともに.この考えは成長した。侵略と征服の積極政策の方法は,平和と取引と普遍的善意の政策とは同じではない。「栄光ある孤立」を吹聴しながらも.孤立からの脱却が始まったのだ。
チェンバレン氏は,この急激な底流の変化に織り交ぜて,ほとんどすべての列強に対し,いくぶん目立っ歩み寄りを見せた。新聞はロシア,ドイツに対する接近の試み-ある程度は本物であったり.観念的であったり-について次々と騒ぎ立てた。
この時期,イギリスでは,政府も新聞も国民も,長らく恩知らずの子供だった合衆国の善意に正規の包囲戦を行った。
すでにこれまでに指摘したことのある事件にもう1度戻って言えば,米西戦争の際に列強各国が果たす役割について,ベルリンの内閣とタイムス通信員が次官のクランポーン卿とともに交わした論争は,まさしくこの作戦に結びついている。
1900年11月に,中国の保全についてドイツとの合意が締結されたのも,この新しい傾向に基づくものだ。ついでに言えば,中国の保全と独立のためのこの古い方式の出現ほど,オリエントでの古い問題と同様の問題が極東に到来したことを明確に告げるものはない。
英日条約の重大な点は,それがイギリスの極東政策の目的-すなわち中国の保全-に全く変更がないことを公言しながらも,手段の変化を告白していることにある。
日本がドイツにとって代わるということから次のきわめて重要な結果が生じるのだ。
つまりこの防衛同盟がロシアを対象にし,そのことをロシアに明確に示唆するものなら,そのための条件として,中華帝国を見守る二者連盟の中で日本癖ドイツと入れ替わるということだ。
この合意が目標とするところ,すなわち中華帝国の保全と独立という点でこれがどのような影響をもらたすかは,これから検討しなければならない。
国際的な視点からすれば,この合意がはらむものは,日本の登場,堅い同盟の政策へのイギリスの復帰,1900年11月の合意を作ったカップルの
ドイツから日本への交代,そして最後にこのデュオに代えて三国同盟もしくは極東トリオを作ろうという,合衆国に対するきわめて直接的な誘いだ。
この外交的なできごとに世界的規模というべき意味合いを与えるのは,これが「現状」のすべての枠組がきしみ,揺れ動いているときに生じたことそしてまた三国同盟そのものが仏霧同盟という対抗のおもりに制約され,ドイツの首相自身によっても軽んじられているばかりでなく,利害の対立,関税をめぐる争い,民族感情のあっれきなどの緊張のためにしだいに緩みつっぁると副こ起こったことだ。
今,ヨーロッパと全世界は将来の均衡を支える新しい組合せが出現する前夜の段階にある。国際物質がこのような不安定と擾乱の状態にある中で・新しい星座が形成されるとなれば,さまざまな推測や注釈が生まれるのは当然のことだ。
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