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●「 熊本地震から2ヵ月」(下) 『地震予知はできない』ー政府は約3千億円を つぎ込みながら熊本地震まで38年間の『 巨大地震』の予知にことごとく失敗した。(下)<なぜ地震学者は予知できないのか。ゲラー氏は 『地震予知は科学ではない』という>

   

  「 熊本地震を考える」

『地震予知はできない』ー政府は約3千億円を

つぎ込みながら熊本地震まで38年間の『

巨大地震』の予知にことごとく失敗した。(下)

<なぜ地震学者は予知できないのか。ゲラー氏は

『地震予知は科学ではない』という>

 

前坂俊之(静岡県立大学名誉教授)

なぜ地震学者は予知できないのか。ゲラー氏は『地震予知は科学ではない』という。

「地震予知学者は、特定の断層において、エネルギーの蓄積と解放が、同じ間隔と規模で周期的に地震が繰り返される、という周期説をもとに予測モデルを打ち立てています。しかし、現実には自然界のどういう現象が地震につながるかわかっていません。その客観的な基準を知ることなく、周期説を唱えても無意味なのです」

つまり、物理科学の場合、ある仮説を立てて、実験を繰り替えし、データーをあつめて、その通りやれば同じ結果が出る≪再現性≫が証明されれば、科学的な証明、予知科学といえるが、逆に余地現象の裏図けデータが取れなければ、それは科学的な因果関係がないことになる。地震がある周期ごとに起こる科学的な証拠はないのである。十数億年の地球誕生からの地殻変動、千年、万年単位の大地震の歴史を、気象庁のもつわずか100年ばかりのデータで周期説を立てるのは土台無理な話なのである。

5・・・ゲラー氏はこうも語る。

「地震予知を信じる研究者たちは『地震は予知できる。前兆現象は存在する。プレートのずれは起きる』との3点の仮説モデルで、観測しているが、何も確認できなかった。これはあくまで希望的観測モデルであり、間違っていたことが実証されたのです。地震が起きるプロセスは十数億年の時間の地球期の中で、地球的規模で起こる「複雑系」のものであり、わずか数十年単位の周期説やプレートのズレが『空白域』と『蓄積されたエネルギーのヒズミと破弾』によって引き起こされるという単純なものではない」

「前回起きた地震は××年だ。そろそろ次の地震が起きる」という説は、サイコロを5回投げて1の目が全然出ないからといって、「次は絶対に1が出る」と信じるようなものだ。』と批判。

 

今回の震度7が2度続けて起きた点について、気象庁は最初は16日が余震といったのを「16日(マグネチュード7・3)の地震は余震でなく本震、14日(マグネチュード7)は前震だった」と言い換えた。気象庁の『予知情報』の失敗だが、「余震は本震より小さいものと教えられていた住民は最初の避難場所や乗用車から安心して自宅に舞い戻り、28時間の本震(7・3)で、自宅が倒壊して多数の犠牲者を出すに2次災害を起こす事態となった。

 

この点に関してもゲラー氏は『最初が前ぶれの揺れ、それから本震、続いて余震が来るというのは予知学者の勝手な推測であり、何が起こるか人智を超えている。巨大地震のメカニズムはまだわかっていないので、地球的に連動した地殻変動のメカニズムを日本の一部の地域の東海地震、南海トラフ地震と勝手に限定して『地震予知』しようという問題設定が間違っている。科学でも何でもない、信仰、予知神話そのものなのです』と一刀両断する。

6・・・この地震予知にすでに3000億円もの巨費がつぎ込まれた。

多くの人々に間違った予測情報(雑音)を流し、人々を油断させる『ハザードマップ』がなぜ作られるのか。そこには原発事故でも露呈した『政治、官庁、大学、研究者』の癒着した『ガラパゴス日本』の腐敗構造がある。

  • 多くの研究者がさまざまな点(予算配分、委員ポストなど)で癒着している。
  • 政府決定には名目上の審議があるが、審議会は官僚が指名する委員から構成されている。
  • 説得力のある批判は新聞、雑誌などで取り上げられることもあるが、テレビではほとんど無視されるために、インパクトが乏しい。
  • 政府は「記者クラブ」制度を介して、直接マスコミにその見解を伝えることができるが、報道記者は科学的な知識に乏しく、発表された間違った情報をそのまま垂れ流す。

その結果、『ハザードマップ』での地震の確率が低いところの人々、自治体は安心して本気で対策を立てない油断を生む。『大規模地震対策特別措置法』(1978年施行)の見直しを検討すべきと、ゲラー教授は主張する。(ロバート・ゲラー著「日本人は知らない「地震予知」の正体」2011年刊 双葉社)

ゲラー氏は「地震は予知できるものではない」と訴えているが、地震にそなえる『防災対策』を怠ってよいと言っているわけではない。地震に対して科学的な防災対策の必要を訴えているのである。日本ではこれまで、地震予知計画に3000億円にのぼる予算を投入してきたが、その実用的な地震予知が実現する見込みはまったくない、という。

そのためには「地震学者は一体何をすべきなのだろうか」と問いかけて、次のように提言をしている。

①  地震は不意にやってくる。残念ながらこれからも避けられない。だが、災害を軽減することはできる。地震の予知はできないが、地震が起きてから、なるべく早く正確な情報を政府や一般の人々に伝えること。

②  地震のメカニズム、地球内部構造、地震波の伝播など地震学の基礎研究を進めて建築物の耐震構造への応用をすること。こうしたデータや数値シミュレーションを、耐震構造の設計基準に活用すれば、災害が起きても被害を軽減することができる

③  現在、気象庁や文部科学省、国立大学や国土地理院などに観測網の設置運営が分割されている。これらも一本化する。

④  地震予知計画の蓄積してきたデータは、国家のものなのに、実質的に予知関係者の私物となっている。記録されたデータは、すべての研究者、国民に公開すべきだ。

⑤  国内に限られていたこれまでの観測に、国外や海底のデータも盛り込む必要がある。測定器、記録装置などの見直しも必要だ。

(以上はロバート・ゲラー著前掲書)

 

 

7・都市地震から身を守る究極の脱出法 11か条

 

 

ゲラー氏のいう如く、地震の予知はできないにしても、世界の巨大地震発生の約2割が日本近辺で発生している『地震列島日本』に住む、日本人にとって、政府自治体の「安全・安心対策」「防災訓練」をうのみにせず、個人個人で自分の身は自分で守る防災対策を考えることが一番大切なことなのだ。

結局、「あらゆる可能性を想定外にせず」準備する以外にないが『週刊ポスト』(5月13日号)の「究極の選択があなたの生死を分けるシュミレーション」特集は大変参考になる。

 

①  高層ビルにいた場合―「高層ビルの外壁や窓ガラスは強化ガラスなので、揺れても割れないように作られている。揺れのためにビル内にあるものが動いてぶつかる場合があるのでガラスから離れ、建物の中心部寄りに避難する」

 

②  オフィス街や繁華街で大きな揺れに襲われた場合―看板や窓ガラスの破片など、頭上からの落下物で大怪我をする恐れがある建物に逃げ込む

③  超高層ビルと低層ビル、どちらが安全なのかーそれよりも、そのビルが古いか新しいか、つまり1981年以降の新耐震基準で建てられた建物に逃げ込む方がよい。

低層ビルしかなかったら、建物の中に入ってすぐに柱をチェックすること。柱にⅩ状もしくは斜めの亀裂が入っていたら、余震で建物が潰れる可能性があるので、すぐに別のピルに移る。

④  地下街にいたら、地上に逃げるか、地下にとどまるかー地震動は地下では3分の1ほどに減衰される。揺れている問は地下にいるほうが安全、地下街には火災や煙に巻き込まれる危険性がある。

 

⑤  スーパーの立体駐車場では、地上に降りるか、とどまるかー立体駐車場自体は軽量鉄骨で作られている場合が多いので、倒壊する可能性は少ない。平らな場所にいるならスロープを下って地上に降りようとせず、そこにとどまるのがよい。

 

⑥  階段で逃げるか、エスカレーターかー「エスカレーターは段差が大きいので転びやすく、将棋倒しが起こりやすい。乗っている時に揺れを感じたら、いったんしゃがみこんで将棋倒しを避ける。前提として、逃げるときは階段を選ぶこと。

 

⑦  体育館では、中央に集まるか、壁際に移動するかー「体育館の中央に集まるのは危険です。まずは壁際に移動するか、屋外に逃げるべき」 大空間では基本的に中央にいてはいけません」

 

⑧  エレベータに乗っている時に大地震に襲われ、閉じ込められてしまったらどうが優先される。レスキュー隊が助けに来てくれるまでには、ある程度の時間がかかるかもしれないのだ。

 

⑨   ただし、首都高速道路の高架橋部分を走っている時は別だー首都高は崩壊する可能性

がある。減速、停止までは同じですが、車はほったらかしにして、一刻も早く非常口から下に降りましょう」

⑩  電車は先頭に乗るか、後方に乗るかー脱線事故の死傷者のほとんどは先頭車両と2番目 の車両。そのため、電車に乗る時は必ず3両目以降に乗る。

⑪  満員電車ではドア近くに立つか、奥に立つかー「中央のほうが危ない、満員電車の中央にいると、電車が急停止した時に前方向に流されて将棋倒しになり、圧死する危険性がある。一方、ドア付近なら、座席の脇に隠れる格好になり、衝撃を受けにくい。

 

⑫  地下鉄では、車内にとどまるか、外に出るか-地下鉄がストップしたら、怖くて車両の外に避難したくなりそうだが、基本的に出ないほうがいい。

 

おわり

 - IT・マスコミ論, 人物研究, 現代史研究

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