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池田龍夫のマスコミ時評(53)●「国会事故調、東電会長の無責任発言に驚く」◎『沖縄に新たな難題『オスプレイの直接配備』

   

 池田龍夫のマスコミ時評(53)
 
国会事故調査委員会、東電会長の無責任発言
に驚く(516
◎沖縄に新たな難題『オスプレイの直接配備』
(5・14)
 
池田龍夫(ジャーナリスト、毎日新聞OB
 

国会事故調査委員会、東電会長の無責任発言に驚く
 
 
 国会の東京電力福島第一原発事故調査委員会(黒川清委員長)は5月14日、参議院会館で第12回会合を開き、勝俣恒久・東電会長から参考人聴取を行った。勝俣氏は東京電力のトップとして、2002年10月から社長、08年2月から会長を務め、05年6月 から2008年6月までの3年間は電気事業連合会長の要職にあった。〝電力業界のドン〟の勝俣氏は、事故原因のポイントについて「知らぬ存ぜぬ」を繰り返すばかり。午後6時から3時間に及ぶ質疑を傍聴して、余りにも倣岸・無責任な姿勢に驚かされた。
 
                                                   「電力事業者」として、お粗末過ぎる
 
 午後9時半からの記者会見に臨んだ黒川会長は、「原子力を担う巨大な電力会社の経営トップとしての覚悟があったかどうか…」との感慨を率直に語った。黒川会長が指摘した問題点を踏まえ、当夜の質疑のポイントを報告したい。
①      子力事業者としての責任と当事者意識=勝俣氏は「原子力発電所の安全に関する一義的な責任は電力事業者」と述べる一方、「現場の判断を優先すべきだが、総理が対策本部長だったから止むを得なかった」と発言した。
これは、3・11事故直後に菅直人首相(当時)が現場を視察し、吉田昌郎所長(同)らが対応に追われ、視察後にも携帯電話で吉田氏に問い合わせをしたことを批判したもので、「現場責任者が指揮すべき緊急時の対応を遅らせた」との発言は他人事のようだ。勝俣氏は事故当時中国旅行中で、清水正孝社長(当時)も東京を離れており、「会長、社長不在」という失態には「止むを得なかった」と言い逃れるだけで、原子力を扱う組織としての責任と覚悟の欠如には呆れた。
  ② 津波に関する重要なポイント=原子力安全・保安院が2006年、スマトラ沖大地震・津波を教訓にシビアアクシデント対策を打ち出したにもかかわらず、電気事業連合会の抵抗により対策が実現されなかった。
 
「保安院が『電源喪失が起こり得る』と東電社員に伝えたのをご存じか?」との追及に対し、「存じません。(原子力事業)本部長どまりだったことは今後の課題です」と、逃げの答弁に終始。事故の原因については、「事故については東京電力自らも検証中である」と発言したものの、想定外の津波が主原因との主張を改めなかった。想定を超える津波のリスクについて、勝俣会長は「そのような津波は起こり得ない」判断して対策を指示しなかったことを白状せざるを得なかった。
 
 ③ 規制に関する問題点=無責任な弁明に終始した勝俣証言に不満は残るが、耐震バックチェック、シビアアクシデント対策などの対応を怠っていた責任が洗い出された意義は大きい。目先の企業利益に走って、安全対策をサボった社会的責任は大きい
。今回の質疑を通じて、電気事業連合会のロビー活動の行き過ぎも明らかになり、原子力を担う巨大な電力会社の経営トップとしての責任と覚悟がなかったことに唖然とさせられた。
 
                                        独立性の高い「原子力規制庁」発足を急げ
 
 国会事故調は6月に最終報告を出す予定だが、関係者の証言収集をさらに進めてもらいたい。併せて、原子力行政を監視するため独立性の高い「原子力規制庁」設置を目指すことを切に望みたい。
 
 
 
沖縄に新たな難題『オスプレイの直接配備』(5・14)
 
 
 
 
 普天間飛行場に新たな問題が浮上、沖縄県民の怒りが高まっている。日米両政府は、米軍・新型輸送機MV22オスプレイ12機を、7月中旬に配備することを決定した。試験飛行や安全点検を実施したうえで、10月に普天間飛行場(宜野湾市)に実戦配備する方針という。
 
                                                               事故続発の〝欠陥機〟
 
 両政府は当初、沖縄の地元感情に配慮し、本州に一時駐機させた後に普天間に配備することで大筋合意。キャンプ富士(静岡県)岩国基地(山口県)などを候補としていたが、地元自治体の反対によって計画を断念、沖縄直接配備に切り替えてしまった。
 そもそもオスプレイは開発段階から墜落事故を繰り返し、危険性が指摘されてきた。先月もモロッコで4人が死傷する墜落事故を起こしたばかりで、〝欠陥機〟とすら酷評されている。
 
                                                           沖縄県知事・那覇市長も猛反発
 
那覇軍港に持ち込まれて組み立て作業するとの決定に、翁長雄志・那覇市長は猛反発。「人口密集地の那覇周辺で試験飛行するとは、もってのほか」と厳しく抗議している。仲井真弘多・沖縄県知事も11日に上京した際、「普天間飛行場は宜野湾市のど真ん中にある。オスプレイは開発期間中にいくつかの死亡事故を起こし、最近も運用トラブルがあった。
 
人の良い沖縄県民でも分かりましたとは言えない」と述べ、さらに「本当に安全な機種なら、日比谷公園か、新宿御苑みたいな所に持って来られるのか。いくら同盟関係にあっても非常に無理がある」と語気鋭く記者団に語っていた。
 
仲井真知事は9日の記者会見でも、「米軍基地と自衛隊基地の違いを、本土の人は分かっておられない。米軍基地は、基本的に日本の法律を守らなくてもいい。これを県民は40年以上も味わってきた。沖縄が言い過ぎだと思っているなら、この違いを認識してほしい」と訴えていたが、〝沖縄差別〟への強い怒りと受け止めたい。
 
                                                             日米安保体制が揺らぐ恐れ
 
 琉球新報5月13日付社説は、不条理なオスプレイ配備決定に、両首長と同様の問題点を指摘。「オスプレイが安全とする科学的根拠を示さないまま、県民の意向を一切無視して配備を強行しようとする。日米両国が掲げる民主主義や人権尊重が、それこそ聞いてあきれる。このままでは米軍基地の安定的運用が困難となり、日米安全保障体制が大きく揺らぐのは目に見えている。普天間飛行場への配備計画そのものを即刻、撤回すべきである」と主張していた。
 
平板な取り上げ方しかしていない本土各紙に比べ、米軍基地重圧に悩む沖縄県民の怒りを痛感させられた。それだけに、「オスプレイ問題」の処理を誤れば、一大事になる可能性を孕んでいる。
 
(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。著書に『新聞の虚報と誤報』『崖っぷちの新聞』、共著に『沖縄と日米安保』。

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