前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『百歳学入門』(229)-『 ルノアールの愛弟子の洋画家・梅原龍三郎(97)の遺書』★『「葬式無用、弔問、供物いずれも固辞すること。生者は死者のために煩わされるべからず』

   

  

『百歳学入門』(229)

洋画家・梅原龍三郎 97歳(1888・3・9~1986・1)

明治末期から大正初期に渡欧、ルノアールの影響を受け、帰国後は戦前・戦後を通じ西洋画壇の重鎮として君臨した梅原龍三郎。その華やかな色彩と大胆なタッチが特徴の作品は今なお世界の人々から愛され続けている。

梅原龍三郎が師と仰いだルノワール〜「拝啓ルノワール先生―梅原龍三郎が出会った西洋美術」展に寄せて
http://adcculture.com/journalist/shiratori-34/

 

ルノワールの、日本人の弟子といえば、梅原龍三郎。梅原は明治42年(1909)、南仏にルノワールを訪ねている。絵は手でなく眼で描くものだ、と教えられた。

「まず見ること、夕日をあびた立木がいかに美しいか。どう描くかは、私にもわからない」

ルノワールは夕食の時、もっとも陽気で、よく語り、歌った。梅原に、こんな話をした。「ナポレオン一世は、ある機械の発明者を銃殺した。機械は人から仕事を奪うからだ。手を働かせるより精巧な機械はない。今の品物が美を欠くのは、手の働かせ方が足りないせいだ」

大正7(1918) 年、帰国していた梅原は、ルノワールから手紙をもらった。「私は老いを感じ始めた。しかし、まだ眼はよい。それが老人には天の恵みである」

翌年12月3日に、ルノアールは逝った。

(出久根達郎「養生のお手本」清流出版(2005年、76-77P)

梅原は若い頃からヘビースモーカーだった。フィルターなしの煙草を常に口にくわえキャンバスに向かっていた。

その集中力は尋常ではなく、洋服に煙草の灰、火が落ちようともなかなか気づかなかったという。彼にとって絵とは「押さえ込まないで、引きずり出すものである」というように、まさに格闘だったのである。

「私の健康法」を昭和9年(1934)に発表している。

  • 酒を少量飲んで熟睡をはかる。

  • 日が長くなれば昼寝をする。

  • 腹が減るのを待って、食事は常に腹8分目から9分目にしておく、

    というもの。

梅原は美食家で、鰻と中国料理が大好物であった。鰻は、二人前食べた。おなかをこわした時は、鰻を食べ、牛乳を飲むと、たちまち治ったという

格闘のあとの一服はウイスキーである。ストレートをガブガブ飲んでは疲れを癒した。

さらには中華料理など油っこいものを好んで食べた。なかでもフカヒレとナマコ料理には目がなかった。こんな生活を送っていたのだから、誰もが「梅原は長生きはしないだろう」と見ていたが、97歳の長寿を全うした。

そして人生訓として

「一流のものを見よ、旨いものを食べよ、生き生きと仕事をせよ」

と教え子たちに言い聞かせた。

大胆にして繊細な作品と同様、性格も豪快でさっぱりしていた。梅原は将棋が好きで、自宅にプロの棋士をよく招いては勝負を楽しんだ。賞品は彼の作品である。高価な彼の作品を手中にした棋士は数多い。

また、浮世絵などを多数収集していたが、亡くなる前にすべてを美術館に寄付している。そうした彼ならではの遺書が冒頭の言葉である。

<前坂俊之著「百寿者百語―生き方上手の生活法」海竜社 2008年>

 

酒、ビフテキ、ウナギで長生き、西洋画の大家・梅原龍三郎

http://diamond.jp/articles/-/152085

 - 人物研究, 健康長寿, 湘南海山ぶらぶら日記

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『リーダーシップの日本近現代史』(310)★『明治維新の元勲・大久保利通の性格は典型的な武士気質の「寡黙不言・決断・断固実行型」―

     2014/10/01 /日本リ …

『オンライン講座/日本を先進国にした日露戦争に勝利した明治のトップリーダーの決断力②』★『2011/ 3/11から2週間後に書いた記事- いまリーダーは何をすべきかー「海軍の父」山本権兵衛 から学ぶ』★『山本権兵衛は歴代日本宰相のーのベスト3に入るリーダーパワーを発揮した『坂の上の雲』の真の主人公>

    2012/05/27 &nbsp …

★⑩歴代弁護士の奇人ナンバーワンは誰でしょうかー米国伯爵を授けられたと自称した山崎今朝弥(やまさき・けさや)はハチヤメチャ

  奇人弁護士のナンバーワンは誰だ・・山崎今朝弥   山崎今 …

no image
平田カメラマンの『横浜名所』ぶらリ散歩(11 /15)>横浜山手イタリア山庭園、外交官の家、ランドマークを望むミナト横浜

     <『横浜名所』ぶらリ散歩はステキ!(11 …

『鎌倉釣りバカ人生30年/回想動画録⑫『10年前の鎌倉沖は豊饒の海だった』★『鎌倉は春だよ!カヤックフィッシングー春告魚(メバル)、大アジ、 カワハギ、キューセンと遊んだよ』<鎌倉海を丸かじりする方法は>

 2012/04/20  <鎌倉釣りバカ・アホ日記 …

no image
『オンライン/新型コロナパンデミックの世界』(2020年12月―21年1月15日)★『 コロナ第3波に襲われた世界、バイデン新大統領の就任式(1/20日)、東京五輪はどうなるか!(上』)

・               前坂俊之(ジャーナリスト) &nbsp …

no image
NHK「花子とアン」のもう1人の主人公・柳原白蓮事件(8)『安田(善次郎)は刀で、俺は女の筆で殺された』「東京日日(現毎日)」

 NHK「花子とアン」のもう1人の主人公・柳原白蓮事件(8) 伊藤伝右 …

no image
日本リーダーパワー史(679)日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(58) 『戦略情報の開祖」福島安正大佐ー 明石元二郎の「明石謀略」は裏で英国諜報局が指導、福島、宇都宮太郎(英国駐在武官)がバックアップして成功した。

  日本リーダーパワー史(679) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(58) …

no image
★5外国人観光客への鎌倉古寺社ガイドー「キツネ」佐助稲荷神社(Sasuke-inari shrine)が最高のワンダーランドだよ

★5外国人観光客への鎌倉古寺社ガイドー「キツネ」佐助稲荷神社 (Sasuke-i …

no image
日本リーダーパワー史(800)ー『明治裏面史』★『 「日清、日露戦争に勝利』した明治人のリーダーパワー、リスク管理 、インテリジェンス⑯『明治裏面史』ー『桂首相の辞表提出と伊藤の枢密院議長就任、日露開戦内閣の登場』★『その裏で「明治の国家参謀」と言われた玄洋社/頭山満の盟友/杉山茂丸の暗躍した』

   日本リーダーパワー史(800)ー 「日清、日露戦争に勝利』した明治人のリー …