記事再録/知的巨人たちの百歳学(142)ー「最後の元老・西園寺公望(90歳)-フランス留学10年の歴代宰相では最高のコスモポリタン、晩年長寿の達人の健康十訓」★『 まあ生きてはいるがね、涙が出る、はなが出る、いくじがなくなって、 これも自然でしかだがない』』
百歳学入門(80)
▼「最後の元老・西園寺公望(90歳)はフランス留学10年の歴代宰相では最高のコスモポリタン、晩年長寿の達人の健康十訓」
西園寺公望の健康長寿10か条
① 中江兆民の貧乏の味は知らないが、金については行詰っても失態に陥らない
だけの用心はした。
② 高利貸にも金は借りたが、返す当てのないような借り方はしない。
③ 外交、パーティーでは金は惜しむ(パリ講和会議)
④ 健康長寿のための養生法などない。
⑤ 運動はせず、不養生法ならいろいろやったが、養生の方には無関心であった。
⑥ 医者というより、医学をさほど信用していない。
⑦ 近ごろ酒は、昼は、ワイン100グラム、晩は日本酒三百グラムを飲む(83歳で)
⑧ ワインは元詰めで、びんのコルクに製造元の封印のあるものがよい。
⑨ まあ生きてはいるがね、涙が出る、はなが出る、いくじがなくなって、
これも自然でしかだがない。
⑩ 面会を求める人も多いが、なるだけ御免蒙っている。
前坂 俊之(ジャーナリスト)
以下は「西園寺公望自伝」(小泉策太郎筆記、木村毅編)講談社(1949年)より、
貧乏と健廉法
問 〔小泉策太郎〕 西園寺公、万事に通す、但し貧乏の味には通ぜざるべし。
答 中江兆民などのような貧乏の味は知らないが、いつでも貧乏でね、しかしわたしは乱暴でも金のことには始終用心した。行詰っても失態に陥らないだけの用心はした、
高利貸にも金は借りたが、清水という高利貸があって、他の人からはひどい高利を取り、やかましく催促もしたが、わたしが借りに行くと、利息も安くして、何時でも快く貸してくれたが、返す当てのないような借り方はしない。
借りたのは千円か二千円ぐらいすつ、遊蕩費さ、その時分だから、遊蕩費といっても大したことではない。住友には家の事では世話になったが、金は貰わない、ただ講和会議(パリ講和会議)に行く時、こっちから云わなかつたが、出してくれたとてあんなことでは足りない、わたしはフランスに旧友が多いし、殊にあんな時に金をおしんではだめた、一度宴会をするにも千円はいる。
それにパリの金のつかい方を知っているから、自分の気のすむだけのつきあいをした。しかし金のかからないやりかたも知っている。上に限りなし、下にも限りない、その真ん中の使い方もある。オーストリアなどでは、上下の間が短かいから、たって使おうとしても使いようがなく、倹約しようとしてもぬけ道がない。
(問) 〔小泉策太郎〕
和漢洋古今養生を説く者、数限りなし。公の疑り性なる、想うにこれ等の書をも究められしなるべし。公の寿福、自ら一家の養生法に因らるゝにあらずや。
(答)
それを度々人から聞かれる。中にはどういう食事を取るか、胚芽米を食うか.とか、半つき米を食えとか、いろいろ問われたり、勧められたりするが、実は一家の養生法といぅようなものはない、政友会を去って後の二十年来は、自然の必要から,漸次、飲食の加減にも意を用いるが、その以前は、興に乗ずれば酒はあびる程、夜を撤して飲む、規律立った運動はせず、不養生法なら自ら一家の風をなしたとも云えるが、養生の方には無関心であった。
(小泉注―公は大酒にて、酔うて典に乗ずれば丸はだかとなり、杯洗などにて鯨夜を徹せりと、灘萬の老婦の話である〕
医者には湛山友人があります。医者のドイツ留学が盛んであった時分、丁度わたしがドイツの公使をしていた。その時分の留学生がいずれも大家となったから、たくさん友人があります。しかし、実は医者というより、医術を左程信用しない。外科の治療は進歩した。内科の方も進歩したに違いない。感心もしているが、自分のことになれば、実はあまり信用しない。
香水を作るには麝香が原で、草花の香料もあるが、……西洋の薬はモルヒネに基くのではないかと思う。と、それを服用することに全部の信用は置かれない
医者の方でもわたしの心持を知っていて、西園寺に薬を飲よせるといやな顔をすると云って、なるたけ薬を飲ませぬようにしてくれる。
医術の進歩ということも、ある意味からはいい加減なもので、良い医者は、どうもそう思っているようだ。
近ごろ酒は、昼は、ぶどう酒100グラム、晩は日本酒三百グラムをもちいている。
ぶどう酒を日本で求めるのは、選択が面倒だ。樽詰め輸入をいいように云うけど、あれは詰めかえる時に香気が逃げるのである。元詰めで、びんのコルクに製造元の封印のあるものが一番安全だから、日本で求めるなら.あれに限る。
京都で病気してから全快を待たないで帰った加減か、どうも調子がすぐれない。まあ生きてはいるがね、涙が出る、はなが出る、いくじがなくなって、これも自然でしかだがない。
いよいよだめだ。面会を求める人も多いが、なるたけ御免蒙っている。先日も岡崎邦輔がわざわざ出てきだが、でも突然のことで、折角ではあったが、少し頭痛もするし、腹工合もわるかつので、気の毒であったが断った。
近頃、竹越 与三郎にあったのが口あきで、時々客にあう。昨日医者がきたが、どこもわるくないという。しかし、弱った。年だから
(と言いながら上機嫌で元気なり、昭和8年6月13日に記録)
関連記事
-
-
『鎌倉紅葉チャンネル』鎌倉大仏を見物に行くなら、すぐ先の800年 前の錦秋の「大仏切通」(古道)を 見に行こう(12/07)」
『鎌倉通―鎌倉紅葉チャンネル』 ≪鎌倉大仏を見物に行く …
-
-
速報(388)『日本のメルトダウン』●『“死後硬直”が戻ってくる前に急ぐ安倍首相』●『焦点:深刻化する中国の大気汚染』
速報(388)『日本のメルトダウン』 ●『“死後硬直& …
-
-
『Z世代のための昭和史失敗復習講座』★『ガラパゴス・ジャパン・シンドローム(日本敗戦病)の研究』★『国家統治中枢部の総無責任欠陥体制ー太平洋戦争下の『大本営』『大本営・政府連絡会議』『最高戦争指導会議』 『御前会議』のバカの壁』★『今も続く『オウンゴール官僚国家の悲劇』
逗子なぎさ橋通信(24年/7/14/pm800富士山はお隠れ 20 …
-
-
日本リーダーパワー史(195)『真珠湾攻撃から70年―山本五十六のリーダーシップ』ー海軍大将・井上成美が語るー
日本リーダーパワー史(195) 『真珠湾攻撃から70年―山本五十六 …
-
-
『オンライン講座/ウクライナ戦争と安倍地球儀外交失敗の研究』 ★『 欧米が心配する『安倍ロシア朝貢外交の行方は!?』★『プーチンの恫喝外交に再び、赤子 の手をひねられるのか!?北方領土』★『★『戦争終結後に非戦闘員3700人を大虐殺』●『軍人ら約60万がシベリアに送られ、強制労働に従事させられ、6万3000人が死亡した』』の悲劇―ロシアの残虐殺戮、無法占領の責任を追及せず、 2島返還で経済援助までつける安倍外交の失敗』
2016/11/10 日本リーダーパワー欠落史(748 …
-
-
『リーダーシップ・無料電子図書館を読む』―宰相「伊藤博文公」(国民新聞編、1930年刊、94頁)
『リーダーシップ・無料電子図書館を読む』― 「知行合一」『文武両道』で鍛錬し、書 …
-
-
百歳学入門(58)江戸城無血開城で百万人を救った勝海舟(75歳) 『長寿法などない」「南光坊天海(107歳)を論ず」
百歳学入門(58) 江戸城の無血開城で百万人の江戸ッ子を救った勝海舟(75 …
-
-
速報(452)●『米国が日本との貿易協定を支持すべき理由」●『今の日本の経営者は、しょうもなさすぎる』
速報(452)『日本のメルトダウン』 ●『米国が日本と …
-
-
終戦70年・日本敗戦史(135の続)「国を焦土と化すとも」と国際連盟を脱退する外交大失敗を冒した荒木陸相、森恪、松岡洋右のコンビと新聞の不見識
終戦70年・日本敗戦史(135の続) <世田谷市民大学2015> …