『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』㉜ 日中韓のパーセプションギャップの研究ー近交遠攻説(戦争、外交の鉄則)
2015/01/01
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』
日中韓のパーセプションギャップの研究』㉜
1888(明治21)年12月11日光緒14年11月9日「申報」
近交遠攻説(戦争、外交の鉄則)
ある客が私に次のように尋ねた。「戦国時代には七雄が並び立ち互いに相譲らず争い合ったが.ついに一国が傑出することはありませんでした。秦王は「范雎」(はんしょ)の策を用いて,遠国と交わり近国を攻めてから,蚕食鯨呑の計略を実行し,数年もたたないうちに六国を併合し,中華世界を統一して,初めて始皇と祢しました。
これは始皇帝自身の力でなしとげたわけではありません。統一の後は徳政を修め焚書坑儒を行わなかったら,強盛な秦は滅亡しなかったでしょう。
だから横暴な秦は滅んだけれども.「范雎」(はんしょ)の策は現在でも口々に称賛されています。商●(革に央)は木を立てて信頼を示し【南門に木を立て,北門に移した者に金を与えるといい、実際に金を与え民に法の実行を信用させたこと】,その後ついに法を作りました。は商●(革に央)は後に自ら法を破り車裂の刑に処せられたが.秦人はその法を守り続け失いませんでした。
秦が富強となったのは実はこのおかげなのです。君子は人物によってその人の意見を退けたりはしません。実行すべき意見ならたとえ行商人や子供であっても、たいしてすぐれた議論ではないなどと卑しんだりしないのです。今天下はちょうど戦国群雄の天下のようです。人それぞれに富強を図り,皆他を併呑しようと考えています。私には将来必ず天下が統一される日がくることはわかっていますが.その変化がいつから始まるかわからないだけです。
もし事前の計を考えるなら,秦王の行いに倣って「范雎」(はんしょ)の旧策を用い,「遠交近攻」を先務と考えるが,いかがでしょうか」と。
私はこれを聴き黙って考えたが,驚き恐れながら言った。「否.そうではありません。そのときとこのときでは別なのです。戦国の世は七国に分かれたといっても,実際は中原の地の内のことです。
各国の領土が交わり接しており,いわゆる近くとは全くの隣近所のことで,いわゆる遠くといっても数千里離れているに過ぎません。隣近所にはもともと親密な関係があるはずであり,秦人はその不意を突いてその郷里に侵攻したため.まさに事態が急で防ぐ暇がなかったのです。これが六国が秦に併合された理由です。さて秦の欺きが郷里に及べば-列国はこれを聞いて必ず義憤を抱いて問罪の師を起こすでしょう
以上のように「范雎」(はんしょ)の計は秦において用いるのはよいが,他の時代はうまくいかないのです。いわんや現在の遠近の分け方は宋の時代と違うのです。
だからさらに古い時代の漢の楼蘭や戦国の斉楚燕趙韓魏と同列に論じられるわけはありません。フランスはドイツの近くにあります。先ごろフランス人はその近隣であるドイツを攻撃したが.ついにナポレオン3世は敗北し,ほとんど滅亡寸前にまで至りました。このことからも近攻の策が現代では再び使えないことがわかります。
日本が琉球を滅ぼしたことも,近くのことと言えます。しかし近いといっても門戸の内のようなものであり.慰撫することができなかったので,その不意に乗じ一撃で滅ぼしたのです。日本にとって是非の正大,光明なことなどは.言うに足りないのです。日本が朝鮮を狙ったことはすでに1度のことではありません。朝鮮は微々たる一国で,全く政教も号令も行われず微弱で哀れむべきものです。
それなのに日本人がその望みをとげられないのは.日本人が攻撃を不得意とするからではなく,攻撃対象が近国なので,近国の人は備えを心得ていて遠い隣国と結び.救援してもらえるので攻撃側は方策が尽きてしまうのです。
イギリスはヨーロッパの西に位置しているが,その付近を次第に蚕食することができるにもかかわらずそれを顧みず.遠く南洋に至り島伝いに点々と拠点を築き,ついにインドの重鎮な地を領土とすることができたのです。
フランスは兵を乱用して武を汚したが,遠くサイゴンを取り.また遠くトンキンを取ろうとしています。だが,フランスの近隣諸国はあえてその後の策を議論しませんでした。思うにこれらはまさに「「范雎」(はんしょ)の策の反対ではないでしょうか。ここで使われているのは近交遠攻の策です。近くにいるのに親睦しなければ,必ず独仏両国の禍を招くでしょう。
だからフランスにとってドイツは代々の仇だが,常に防備を考えているので,ついにあえてドイツに攻撃をしかけなかったのです。ロシアが黒海から1歩出て,遠国を攻めることができないのも・また近交の策を知らずにトルコを虎視耽々と狙っているからです。ロシアはトルコに最も近く.黒海を出ようとするとき必ず経由するところです。
だからロシア人はなんとしてもトルコを取ろうとするのだが,英仏諸大国は皆全力でトルコを保護し,ロシア人に望みをかなえさせないのです。諸国がこうするのは.トルコを愛するからではなく.実はロシアを憎むからなのです。ロシアは土地が諸国の数倍以上大きく,もし再びロシアに黒海を通行させれば・どんどんと進出し再び抑えることはできなくなり.ヨーロッパ各国は皆その被害を受けることとなります。だから諸大国は皆トルコを助けロシアを助けないのです。
諸大国はつまり近交の策を知っており,ロシアはこの策に暗いのです。これがロシアが数年たってもついに成果がなく,かえって諸大国の疑いと嫉みを起こした理由です。ヨ一ロッパの大局は将来必ず変動がある。そして中国の最も備えをなすべきものはロシアであると言う者がいます。
思うにロシアはすでに近交の策を知らず.領土を広げようとしており,中国はロシアに最も近く,ロシアから●(王に軍)香と黒龍江には朝発って夕べに着く距離で.小舟で簡単に渡ることができます。ロシアが近くを攻めるのを恐れれば.中国は近くで防がなければならないのです。だからロシア人の失策もまた甚だしいのです。
近隣を攻めようとすれば,近隣国はこれに備えるから.攻めてもなんの益があるでしょうか。ただ恨みを買うだけです。英仏両国のやり方と比べると.巧拙千里の隔たりがあります。わが中国がそのや
遠国を攻めようとしなければ.外国人もあえて蔑祝しません。これが知っておくべき現在の急務です。あなたの言ううことは必ずしも古に照らさずとも現在に照らせば,すでに役に立たないことは明らかです。古に拘泥する者とは,共に功業を立てようと図ることはできないものですよ」。客は「はい.おっしゃるとおりです」と言った。
関連記事
-
-
速報(98)『日本のメルトダウン』『事故4ヵ月、次々に未知なる混乱状況がうまれ、混迷の一途。50年単位で考えよ』
速報(98)『日本のメルトダウン』 『事故から4ヵ月、次々に未知な …
-
-
『オンライン/-『早稲田大学創立者/大隈重信(83歳)の人生訓・健康法] 『わが輩は125歳まで生きるんであ~る。人間は、死ぬるまで活動しなければならないんであ~る』
2018/11/27 記事再録/知的巨人たちの百歳学(112)- …
-
-
知的巨人の百歳学(148)ー人気記事再録 『長寿経営者の健康名言・グリコの創業者 江崎利一(97歳)『 健康法に奇策はない』『事業を道楽にし、死ぬまで働き学び続けて』『 面倒をいとわないと、成功はあり得ない』『健康哲学ー噛めば噛むほどよい。』
2012/03/12 /百歳学入門(35)―『百歳長寿名言 …
-
-
「チャットGPT」で「リープフロッグ」せよ』★『AI研究の第一人者・松尾豊・東大大学院教授は「インターネット時代には日本は遅れたが、AI時代には「リップフロッグ」(カエルの二段とび)でフロントランナーなれる」★『絶好のチャンス到来で、デジタル日本経済の起爆剤になる』
前坂俊之(ジャーナリスト) 「チャット GPTの出現で、「ホワイト …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ㉙』ロボット開発に必要な要素技術は日本に一番集中しており、医療、介護ロボットが 現実化
『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ㉙ …
-
-
速報(103)『日本のメルトダウン』ー『世界は破滅が待っておりー日本は原発放射能の被曝を待っているのか!?』
速報(103)『日本のメルトダウン』 『世界は破滅が待っておりー日本は原発放射能 …
-
-
日中北朝鮮150年戦争史(44)『来年(2017)はアジア大乱、日米中の衝突はあるか」●『120年前の日清戦争の真相ー張り子トラの中国軍の虚像を暴露』(上)
日中北朝鮮150年戦争史(44) 宮古沖で日本を挑発する中国の狙いは「日中開 …
-
-
オンライン/新型コロナパンデミックの研究』-『米大統領選挙とサイバー戦争』★『強いものが生き残るのではなく、状況に適応したものが生き残る。『適者生存の原則』(ダーウイーンの法則)を見るまでもなく、米国のオープンソース・オープンシステムには復元力、状況適応力、自由多様性の組み込みソフトが内蔵されているが、3千年の歴史を自尊する中国の旧弊な秘密主義システム(中華思想)にはそれがない』(6月15日)
米大統領選挙と「サイバー戦争」 前坂 俊之(ジャーナリスト) …
-
-
日本リーダーパワー史(753)–『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争を英国『タイムズ』米国「ニューヨーク・タイムズ」は どう報道したか」を検証する①(20回連載)」★『6ヵ月間のロシアの異常な脅迫、挑発に、世界も驚く模範的な礼儀と忍耐で我慢し続けてきた 日本がついに起った。英米両国は日本を支持する」』
日本リーダーパワー史(753)– 『日本戦争外交史の研究』 世界史の中の『日露 …
