『Z世代のための日本風狂人列伝①』★『 日本一の天才バカボン・宮武外骨伝々』★『「予は危険人物なり」は抱腹絶倒の超オモロイ本だよ。ウソ・ホントだよ!』

2009/07/12 、2016/03/31/記事再録編集
生涯、やることなすこと、権力をからかい、既成の権威や習慣に挑戦して、筆禍や名誉毀損などでブタ箱に入ること四回、通算服役約四年間、罰金、発禁は合計二十九回を数えたが、それにもめげず約二百点近い新聞、雑誌、書籍を出し続けた。明治以来のジャーナリストで筆禍の最多のチャンピオンであると同時に、自ら十六人のメカケをもったと称し,結婚すること五回、最後は七十四歳の時に再婚するほどの精力絶倫で宮武ほど逸話の多い人物は少なくい。
●外骨の名前の由来
外骨は一八六七年(慶応3)一月十八日、江戸の奇才といわれた平賀源内と同じ讃岐国(香川県)阿野郡の庄屋の四男として生まれた。亀四郎と名付けられたが、この名前がイヤで十八歳の時に、自分で外骨(がいこつ)と戸籍上の名前も変えてしまった。
理由は「亀は外側に骨(甲羅)があり、内側に肉がある」という『玉篇』という中国の辞書の記述から「外骨」と改名した。骸骨、ガイコツ、「人間ではないぞ。人間をこえたものだ」という名前に人を驚かせて楽しむ彼一流のハッタリがうかがわせる。
こうして外骨が本名となったが、世間ではふざけた戯号と思われて「本名は何というのですか」とよく尋ねられた。旅館でも宿帳に書くと、必ず「どうぞ御本名を・・」、裁判所では「これが本名か・・」と聞かれ、区役所では「本名でないと認めぬ」と叱られ、名前のトラブルがたえない。腹を立てた外骨はハンコを二つ持つことにした。
外骨のハンコと、もう一つのハンコ「是本名也」(これ本名なり)というのを作って、外骨のハンコの下に押していた。
廃姓については身分制度の廃止を訴え、差別を厳しく拒否、平等を説いていた外骨は「姓などないほうがよい、姓は無用なもの」という考えであった。「外骨」「廃姓外骨」「外骨(旧姓宮武)とさまざまに使い分けていた。
手紙であて名が「宮武外骨」などと書いていると、返事は出さなかった。自らも「外骨」で通しており、人を訪ねても、相手が「宮武さん、・・」とでも言おうものなら、さっさと帰ってしまった。著書の奥付けにも外骨と書き、その横に「是本名也」との朱印を押してあった。ただし、銀行では金の引き出しの認証では廃姓論も認められず、銀行側となんどもやりあった結果、仕方なく一度だけ宮武外骨と署名した。
●奇人の定義
鳥谷部陽太郎著『大正奇人伝』三土社刊(大正14年刊)によると、「外骨は未曾有の機智、頓智の持ち主であり、変態知識学者としても実に天下独歩の観がある。それに氏は又、俗世に超然たる気骨稜々の士である」と紹介しているが、外骨は自ら奇人の定義をこう述べている。
「奇をてらうものは真の奇人ではない。真の奇人は天稟、天性のつむじ曲がりか、これが科学的神秘主義に発達したものでなければならぬ。それで自然に価値のある風刺、価値のある滑稽が生まれ出る。予は自らつむじ曲がりをもって任じ、そのヒネクレ根性を一代の生命としておる者で、予自らは真の奇人と信じている」
外骨五十一歳の時、東京・谷中警察署長から「あんたの性格はいつからそうなったのか」と尋問された。「はい、五十年前からです」「すると、一歳からか・・!!??」署長はけげんな顔をしたが、外骨は自分の性格は生まれた年の「おかげ参り」「ええじゃないか」の踊りが原因だ、と説明して煙に巻いた。
「生まれた慶応三年は照皇天皇のお札が降ってきたというのがもとで、四国や阪神の民衆が熱狂的に踊り狂った。十数人が一体となって豪農に押し掛けて土足のまま座敷に上がって『ええじゃないか、ええじゃないか』と踊りまわり、台所にいっては酒やメシを『酒を飲ませてもええじゃないか』といって踊り狂った。
外骨の家は庄屋で、こうした連中が次々に一ヵ月ばかりやってきて、メチャメチャに荒された。外骨は生まれたばかりの赤ん坊なので、居間にいると踏み潰される。恐れた家族が小さいふとんに包んで押入れに入れた。こんな騒然とした年に生まれたので『ええじゃないか』の気分が外骨の性格となった。カンシャクも色気もええじゃないか、過激もワイセツもええじゃないか、廃姓、民法違反もええじゃないか、講演脱線もええじゃないか」とまことにエェかげんな説明をした。
●投稿マニアの外骨は原稿料500円を得て上京
十代半ばから当時の「風刺滑稽雑誌」を愛読していた外骨は投稿マニアで『団々珍聞(まるまるちんぶん)』『驥尾団子(きびだんど)』といった雑誌などにさまざまなペンネームで原稿を送った。外骨と改名した翌一八八五年(明治18)には五百円を懐に入れて上京、
本郷春木町の進文学舎に学んだ。進文学舎は東大への進学塾として知られ、後に早稲田大学総長になった高田早苗などが講師をしており、森鴎外なども通っていた。その後、浮木堂という個人出版社を作り、亀の甲羅に似た六角形の本を処女出版した。このアイデアが当たり、大いに売れた。これに気を良くして、明治一九年四月、自ら発行人となり中々尾茂四郎(なかなかおもしろ)の名前で、念願の新聞『屁茶無苦新開(へちゃむく))』を発行し、外骨一流のパロディで自在に筆をふるったが、たちまち発禁処分を受け一号で廃刊してしまった。
二十歳になった時、五百円をフトコロに全国旅行に出かけた。ちょうどその頃、日本に初めての自転車が輸入されて大評判となった。人の意表をつくことに生きがいを感じている外骨は八方手をつくして、やっと神戸の外人から大枚三百円をはたいてこの最新式の自転車を購入した。
●自転車サイクリングに日本第一号。
得意満面の外骨はこれに乗って周囲に見せびらかしながら東海道を旅行し、東京に向った。サイクリングを行なった日本第一号は外骨である。東京の友人宅に転がり込んだ外骨はまたイタズラを思いついた。東京中を自転車で乗り回し、百人の女性のほほをなでようというもの。
友人も同調して、二人で自転車に乗って、道端の女性の頬を次々になぜて回った。いよいよ、記念すべき百人目なので、向島の飛びっきりの美人のほほをなぜたのはよかったが、その側に夫がいて二人に鉄拳の雨を降らせ、ノックアウトされてしまった。

関連記事
-
-
日本メルトダウンの脱出法(539)●『日本の「非生産的な文化」を見直そう』●「必要なのは「成長幻想」を捨てること』
日本メルトダウンの脱出法(539 …
-
-
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 米国、日本メルトダウン(1048)>『トランプ大統領は弾劾訴追されるのか』★『トランプは大恩人のFBI長官解任で二度、墓穴を掘った』●『中国まで心配するトランプ「反科学政策」の現実離れ』★『どこが違う? トランプ・ロシア疑惑とウォーターゲート』★『トランプ降ろし第3のシナリオは、副大統領によるクーデター』★『北朝鮮危機が招いた米中接近、「台湾化」する日本の選択』
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < アメリカ、日本メルトダウン(10 …
-
-
●『エンベッド従軍とイラク戦争の報道』
1 平成15 年5 月1 日号 新聞通情調査会報<プレスウオッチ> …
-
-
『昭和史キーワード』終戦直後の東久邇宮稔彦首相による「1億総ざんげ」発言の「 戦争集結に至る経緯,並びに施政方針演説 』の全文(昭和20年9月5日)
『昭和史キーワード』 終戦直後の東久邇宮稔彦首相による「1億総ざんげ論」 (戦争 …
-
-
新著刊行しました !★『人生、晩節に輝く(長寿逆転突破力)』(日経新聞出版社 2022年6月刊 1700円+税)★『渋沢栄一は「人の生涯を重くするか、軽くするかは、一にその晩年にある。人は晩年が立派でありさえすれば、世間はこれを許してくれる』
前坂俊之著『人生、晩節に輝く(長寿逆転突破力)』(日経 …
-
-
日本メルトダウン脱出法(884)『日銀の苦悩:金融緩和が壁に突き当たるとき』 (英エコノミスト誌)●『注目のトランプ「外交政策」、やはり中身はなかった 粗雑な孤立主義を米国の識者が厳しく批判(古森義久)』●『[FT]中国は「トランプ大統領」を望んでいる』●『AlphaGoは人間を超えたのか~脳科学者・茂木健一郎氏×ドワンゴ会長・川上量生氏』
日本メルトダウン脱出法(884) 日銀の苦悩:金融緩和が壁に …
-
-
『ジョーク日本史・禅語の笑いはお腹のジョギング』★ 『一休さんは頓知の名人で不老長寿『一笑一若・一怒一老』
ジョーク日本史・禅語の笑いはお腹のジョギング 一休さんは頓知の名人で不老長寿 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史]』(23)記事再録/日本リーダーパワー史(76)辛亥革命百年(14)中国革命の生みの親・孫文を純粋に助けたのは宮崎滔天
2010/07/20 /日本リーダーパワー …
-
-
百歳学入門(76)日本長寿学の先駆者・本邦医学中興の祖・曲直瀬道三(86歳)の長寿養生俳句5訓を実践せよ
百歳学入門(76) 日本長寿学の先駆者・曲直瀬道三(86歳)の長寿養 …
-
-
百歳学入門(242)―『健康長寿歴史学入門」-目ざせセントナリアン(百歳人)へ、データー満載編(2008/2/27)
百歳学入門(242)― 『健康長寿歴史学入門」-目ざせセントナリアン(百歳人)へ …

