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『2011年、世界は一体どうなるか』―日米中100年興亡史は・・・<超大国中国の勃興と日本沈没中!・・>

   

2011年、世界は一体どうなるか』―日米中100年興亡史は・・・
<超大国中国の出現・米国覇権の終焉・日本は沈没中!>
 
前坂 俊之(静岡県立大学名誉教授)
 
年1回の忘年会でかっての仲間とサイチェン!。大手の新聞記者OB。1人はワシントン特派員だった経済部記者、もう1人は韓国特派員から北京支局長という米中ウオッチャー。それに政治部から論説委員のベテラン前期高齢者3人組。めっきり酒も弱くなった記者連もこの日ばかりは「来年の世界をピタリと当てるぞー」とばかり、ビール、酒、焼酎を飲むわ、飲むわ。オオ、ヤバ!、そのうち大声、酩酊の『3酔人経綸問答』ならぬ「やぶにらみ日米中3国志大放談」とあいなった次第じゃ。
 
 
辛亥革命(1911)から百年、真珠湾攻撃(1941)から70年
 
A)「日米中三国志でいうと、今年(2011年)は孫文が清朝が倒し中華民国を作った辛亥革命(1911)からちょうど百年目、太平洋戦争の真珠湾攻撃(1941)から70年目という大きな節目の年ですね。その中国は今年、GDP(国内総生産)が日本をぬいて世界第2位となり、いまや中国の大驀進に世界中が引っ張ってもらっている状態。21世紀はG2(米中)の時代といわれる。かたやこの百年の覇権国・米国は今や中国の援助なくしては立ち行かないほど弱っており、世界経済戦争での日米の敗北、中国の勝利、大国の興亡、明暗を象徴しているね。その中で1人負けしているのが日本の哀しい現実だよね」
(B)「そうだね、1979年にハーバード大学教授のエズラ・ヴォーゲルは『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を出版してベストセラーになった。30年経った今、『チャイナ・アズ・ナンバーワン』と逆転した。『ジャパン・アジア・ナンバー2』は一体どこまで転落するのか。韓国、シンガポール、上海などはある面では日本をはるかに凌駕している。英『エコノミスト誌』(2010年11月20日号)は『未知の領域に踏み込む日本』の大特集を組んでいる。この『ジャパンシンドローム』(日本病)が果たして死亡診断書になるのか、サバイバル診断書になるのか、最後の岐路に立っていうることは間違いないよ」
(C)「どんな内容なの?」
B)「日本は世界史上最速ペースで高齢化に突き進んでおり、今後40年間で人口は3800万人減少し、2050年までに65歳以上が40%に達する。先進国では最大最悪の900兆円もの財政赤字を抱え、労働力不足と人口減少をストップでできなければ「債務」「赤字」「デフレ」の3重苦で日本は沈没する。それなのに日本は目先の問題に右往左往してこの難題に取組んでいない。ただし、真剣に①女性の社会進出②移民の大幅受け入れ③規制緩和⑤政治の強力なリーダーシップ―を回復すれば世界の高齢化最先端モデルになれと明るい展望も最後にチョッピリ示しているよ」
(A)「確かに超高齢化、人口減少は昔から言われているのに①問題先送り②すべてがスローモ―③問題解決意欲なしの『日本病』であらゆる問題が停態している。高齢化はいずれも世界病なので、しっかりした処方箋を実行すれば逆転のチャンスもなくはない。どやしつけたい心境だよ」
(C)「そうかな、私は悲観的だね。20年間、経済活性策に失敗を続けてきた。この1年の政治、経済、外交での混乱、敗北は目を覆うばかり。政治家は口先の評論家ばかりになった。リーダーシップゼロの菅政権・民主党の先行き余りも期待できない。政界のどこにもリーダーがいなくなった“真空状態”こそが真の日本病、船長もナビもないまま日本丸は『未知なるゾーン』を漂流している。ただし、オバマも胡錦濤も世界中がリーダー不在のドングリの背比べで似たり寄ったりだけどね」
(A)「相変わらず辛辣だな。では中国はどうなるか。今後、より強固な覇権を握るのか、アメリカとのG2の時代はくるのか・・・」
(B)「これには両論あるよ。経済的には確かに巨大になってはいる。既に米国民の6割は中国が米国を抜いたとみる調査データもある。ただ、尖閣問題からは中国の高圧的な態度が逆効果になって反中国包囲網を作ってしまった。世界覇権では疑問符をつける識者が多いね。『フォーリン・アフェアーズ』でジョセフ・ナイ・ハーバード大教授は『 今後の世界を左右するのは中国ではなく、スマートパワーだ。アメリカは制度と価値の多くを共有するヨーロッパ、日本との連帯を強化すべきだ』と持論を展開しているよ」
G2の時代はくるのか・中国異質論の台頭
 (C)「同じく『誰もが唯一の超大国として中国が台頭を心配しているが、そうはならない』と言っているのはキショール・マブバニ・シンガポール国立大学行政大学院院長 らだな。なぜなら、中国は尖閣諸島やレアーアース問題などで反発を買い、アメリカ、日本、インド、ベトナム、オーストラリアを結束させてしまったね。アジアは多極化し、中国の覇権は実現しないと思う」といっているね。中国は十三億人の生活水準を上げるため死に物狂いで、世界中でトラブルを起こしている。劉暁波(りゅうぎょうは)のノーベル平和賞に対する中国のヒステリックな反応は国際世論から顰蹙をかったよね。私は中国に長年いただけに、長い目で付き合う必要があると思っているけど、今回の中国のにわか成金的な態度は“中国異質論”を噴き出す結果となった。相変わらず共産主義独裁国家、人権低国、非民主主義、独裁統制経済であって、覇権国などとんでもない、自ら後進国を暴露したよね」
(A)「アメリカでも、オバマのブレーンのキッシンジャー元国務長官、ブレジンスキー元大統領補佐官らのグループが、米中二カ国による国際秩序の形成(G2論)を唱えていたが、結局、政治体制、価値観の相違、中国の高圧的な態度にごうを煮やしてふたたび中国封じ込め路線に転換したといわれる。エリザベス・C・エコノミー米外交問題評議会アジア研究部長の『フォーリン・アフェアーズ』の「ゲームの切り替え装置」との論文がその引き金となっているらしい」
(B)「そのエリザベスが指摘しているのは『野放しの経済成長のツケ、最悪の汚染と環境悪化、はびこる汚職、失業率の増大、年間十万件を超える国内各地のデモ暴動などなど、国の経済覇権主義の裏側はボロボロでひどい状態だよ。バブルの海岸部と内陸部の貧富の格差は天文学的に膨れ上がっている。ドバイの不動産バブルと同じく、中国のバブルも必ずはじける。資本主義、自由主義経済に全く無知な共産党幹部がこれをコントロールできるわけがない』。
(A)「2011年の中国経済は1,2年前より『複雑+困難になる』と中国政府高官は言っているね。不確実性がより増して『困難』な問題が山積してくるという意味だ。一方、米国経済も2015年にはGDP比債務残高は100%に達する恐れがあり、現在のギリシャ並みの借金に膨れ上がる。ドル暴落の可能性さらに上がる、世界はますます無極化していくわけだ」
 
GDP至上主義の問題

(C)「結局、すべての問題の根本にあるのはGDP(国内総生産)万能主義の弊害というか、失敗が今回の不況の原因でしょう。GDP成長ばかりを追い求めれば、所得格差、環境悪化の問題が深刻化するのは当たり前で、GDPの増大が人々の幸福感につながらないのは日本ではすでに実験済み。いかに金利を下げて消費を促しても、高齢者の多い先進国は自分の欲望に聞いてみればよいわけよ。70歳近くになると胃袋、食欲、性欲、物欲、消費欲も若者の半分以下になる。金はあっても使いたい気持ちがなくなるんだよ。年を取ってみないとわからないじゃろうがね。つまりGDP成長主義は無理ということ。こんな初歩的な経済が分かっていない」
(B)「来日したシュベツェール・仏ルノー名誉会長は日本の閉塞感について聞かれて、『成熟した先進国にとって本当の進歩とは何かを考える時期に来ているのではないか。これからの日本で重要な役割を果たすのは文化と思う』と述べているが、まさしくその通りとおもうよ」
(A)「そうだね。GDPが発展途上国家、新興国、若者国家の経済指標とすれば、日本のような成熟国家、老齢国家はGHP(国民の幸福度、満足度指数で日本90位、)へ尺度を切り替えるべきだということだね。そして、ICT(インターネット・コミュニケーション・テクノロジ)の最大限の利用で、超高齢化社会の遠隔医療・介護、在宅勤務、電子政府による公務員の半減など実現できるのに・・・20年前からいわれているこの情報最先端国家づくりも“情報原始人”の政治家、役人どもで規制緩和が全く進まず、アジアでも下位へ転落、情報指数は下がりつぱなし・・トトホだね、日本は『国家戦略室』がまだない国、頭がない国、ホントにバカ国家だよ(大笑い)」
情報世界民主主主義へ、


(B)「その問題も含めて考えると、2010年の最大のニュースは『ウイキリークス』の出現でしょうね。『ウイキリークス』こそ今後の世界を変えていく最大のファクターになると思うよ。クラウドコンピューター、iPadアイパッド)、ツイッターなど新しいツールがどんどん生まれているが、『ウイキリークス』は全く新しいコンテンツというわけだよ。これまでの国家、企業を超えたグローバルで21世紀の新しい理念(真実、情報公開、公共の利益)を追及した『ニューヨーク・タイムズ』などを超えた新しいジャーナリズムなわけよ。旧式・秘密主義に固まった各国は米国務省の公電25万通を暴露する行為を無政府主義と非難しているが、ボーダレスで、グローバルにタダで真実の情報をばらまく世界メディア、世界政府を目指しているので当然、反発される。しかし、われわれ古い頭の人間、社会、国家が追い付いていけないだけの話、今後も次々に『ウイキリークス』現象が現れると思うよ」

(C)「エリック・シュミットグーグル最高経営責任者が『インターネットと相互接続権力の台頭』で『フォーリン・アフェアーズ』(2010年10月号)に書いている。インターネットで、政府の力を弱め、市民の力を強めるバーチャル・コミュニティー(相互接続権力)が誕生し世界各国の社会を変化させる。低開発社会では政治的緊張が高まり、より閉鎖的で抑圧的な社会が出現する。民主国家政府は変革をもたらす原動力の企業や非政府組織を尊重しなければならない』とね」
(B)『日本が『20世紀の大量生産消費製造大国』から『21世紀のインターネット情報社会』への脱皮ができず沈没寸前のように、共産党一党独裁の中国はインターネット・グーグルを敵視し、国の透明化、情報開国を拒んで今後はますます混乱し、経済のみが1本調子に発展していくとは考えられないということかね、どうかな』
 

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