前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟の影響」⑫ 1902(明治35)年8月27日『ノース・チャイナ・ヘラルド』★「満州の将来ーロシアは満州から撤退すると中国に約束したが,その約束を実行しない限り、日露戦争は避けられない』●『ロシアの植民地獲得の常套手段は、まず軍事的な行動で占拠し、強引な居座り、条約無視、人口を増加させて、商業経済を活発化させ、軍事基地を建設して、自国の領土に組み込む。交渉しても満州からの撤退は絶対あり言えない。』

      2016/12/01

    

★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」-

「日英同盟の影響」⑫

 1902(明治35)年8月27日『ノース・チャイナ・ヘラルド

『「満州の将来』は開戦半年前にロシアの居座りによる日露戦争を予言』

➀ロシアは占領を続け、新しい鉄道を敷設し、在来鉄道を強化し,いたるところに商業拠点を作り,

利益を10倍にも増やし、政治家たちもジャーナリストたちもロシアの撤退は不可能だ

と考えるようになってしまうまで撤退を引き延ばすことだろう」

日本が本気でやるつもりだと思ったならロシアは譲歩するだろうし、日本はロシアが体面を失わずに撤退できるように計らうことは間違いない。(日本の対応の教訓ー日本の対ロシア戦の決意を明確に述べて、譲歩しないことだが、譲歩し続けた。

➂ロシアの植民地獲得の常套手段は、まず軍事的な行動で占拠し、強引な居座り、条約無視、人口を増加させて、商業経済を活発化させ、軍事基地を建設して、自国の領土に組み込む。交渉しても満州からの撤退は絶対ある言えない。

④北方領土交渉が12月10日にプーチンが来日して行われるが、ロシアのこの常套手段によって、経済の食い逃げをされるのが落ちであろう。今後は、経済交流、両国民の興隆の結果、北海道までロシアが侵出してくることを注意しなけれなならない。

 

最近,ブリティッシュ・コロンビアの某新聞が,ドーウォード将軍との会見記を掲載した。この会見でこの勇将は自分の意見を次のように述べている。

すなわち、ロシアは満州から撤退すると中国に対して約束したが,その約束を忠実に実行しない限り、日露間の戦争は避けられないというのだ。

この発言は極東に関する多大の関心を引き起こした。ただし,アメリカの新聞に掲載された会見記に,公式発言の権威を認めることはできないということを.忘れてはならない。

当地で発行されているフランスの新聞エコー・ド・シーヌは昨日一欄を割いて,この問題を論じている。この新聞がどこまでロシアの立場を代弁する資格を持っているのかは問うまい。

ただ,ドーウオード将軍の発言とされている内容についてこの新聞が述べていることはなかなか興味深く一読に値する。筆者はまず皮肉な調子でこう書いている。

 

「ちょうどイギリスがエジプトから撤退すると約束したのと全く同じように.ロシアは満州から撤退すると約束した」。

ロシアの満州占領と,イギリスのエジプト占領との間になんの類似点もないことは,言うまでもない。しかし・いわゆるイギリスのエジプト占領なるものの真相を調べてみようとしない人々にとっては.エコー・ド・シーヌ紙の記述は十分に説得力を持っている。

この新聞はさらに続けて言う。

「満州には常に義和団や馬賊がうようよいてロシアは占領を続けるための言訳に事欠かない。

占領を続けている間に,ロシアは新しい鉄道を敷設し、在来鉄道を強化し,いたるところに商業拠点を作り,利益を10倍にも増やし、政治家たちもジャーナリストたちもロシアの撤退は不可能だと考えるようになってしまうまで撤退を引き延ばすことだろう」。

 

またその間、東清鉄道は大連および旅順からあらゆる種類の物資を輸入税なしで満州に運び続けるだろう。

中国海関は海路運ばれてくる商品に関税をかけるだけで.鉄道で入ってくるものは全く関与しないからだ。

エコー.ド・シーヌ紙はさらに筆を進めて,ドーウォード将軍は満州に駐留しているロシア軍の兵力を8万と見積もっているが、満州の防衛に直接間接に費やされているロシア軍の兵力の正確な概念を示すには,その4倍に見積もるべきだ,と述べている。さら

に言う。

 

「小さな日本人たちの好戦的な気分は,総体的に日本の政治家たちによって。よく制御されている。国民は戦争をしたがっているかもしれないが,政府は国民より賢明だ。戦争という冒険に引きずり込まれることはないだろう。ロシアはたぶん戦争したいのだろうが,これは日本帝国の発展にとって致命的な一撃になりかねない。

実際の話.戦争になった場合,まず最初に日本が味わう挫折は,イギリスに見放されるということだろう。

このことを予見するのは容易だ。イギリスは同盟を承諾するが、それを求めるわけではないからだ。

 

日本の軍隊が満州に上陸しても,最初の一冬しか持ちこたえられないだろう。ロシア軍によって餓死させられ,凍死させられてしまうだろう。

 

おそらく,まともな戦闘を.1回も交えないうちに,気候の犠牲となり、全滅してしまうだろう」(このフランス人の筆者は,ニコライ1世がクリミア戦争で連合軍は気候のために全滅すると患っていたのに,あてが外れたという史実を忘れたのだろうか)。

 

ロシアは日本をもっとよく監視するため,そして,日本の激情に水をさすため,北海道を占領するだろう。そして北海道を日本に返還するのは,満州を中国に返還するのと同時になるだろう。

イギリスはインドを監視することになるだろう。したがって自分の問題に忙殺されて、日本のことなどかまっている暇はないだろう」

 上記の通り翻訳したこの記事がはたしてどれだけの価値を持?かは,これが単にイギリス嫌いにかかった1人のフランス人ジャーナリストの推測に過ぎないのか、それとも,極東におけるロシアの政策を決定している人々の本心を表しているかにかかっている。

いずれにせよ確かなのは,ロシアが約束したにもかかわらず満州から撤退するつもりはほとんどなさそうだ,ということだ。

 

下院議員ヘンリー・ノーマン氏は,先ごろロシア国内を旅し,ロシアのすべて」(AlltheRussias)と題する非常に興味ある著書を公にしたが,その中でノーマン氏は,ロシアに対する賛美を率直に述べている。そして,イギリスはロシアに対する掃疑心を捨てて,健全かつ恒久的な了解に向けて歩み寄るべきだと主張している。

イギリスにおいては.この了解を達成するのに重大な障害となっているものの1っは,ロシアの中国における行動にあると考えられているが,中国においてロシアはすでに欲しいものをすべて手に入れた、なわち満州を支配し,外洋に面した要塞化された湾に至る自由に使える鉄道を手に入れたのだ,とノーマン氏は言う。

 

同氏はその才能に加えて,アジアの政治情勢を綿密に観察することによって,下院の中でアジア問題の権威と目されるようになっている。ノーマン氏は満州についてのロシアの全くの約束不履行を,むしろ満足しているように見受けられる。

これに対してドオウォード将軍は,かかる重大事を軽々しく語るような人物ではないが,次のように言ったと伝えられている。

 

もしロシアが満州から撤退しなければ,日本はそれを戦争挑発と受け止めるだろう。事態が戦争の方向に進み,フランスが同盟国ロシアを助けることになれば,英日協約は自動的に発効する。

 これは考えただけでも深刻な事態だ。しかしながらこれら4か国のうち,どの国もどこかと戦争したいと思っもていないことは確かだろう。

 

日本が本気でやるつもりだと思ったならロシアは譲歩するだろうし、日本はロシアが体面を失わずに撤退できるように計らうことは間違いない。

ロシアの責任ある地位にある人々が,日本と戦った場合一冬で日本軍を全滅させ,北海道を領有できるなどと,一瞬たりとも考えているとは想像しにくい。

ノーヴォエ・ヴレーミャ紙のアフガニスタンについての提案は,ロシアの満州における行動から,イギリスの注意をそらそうとしたものかもしれない。

 - 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本リーダーパワー史(692) 『中国/朝鮮行動学のルーツ⑦』中国紙「申報」の論説から日中韓150年戦争史の原因を読み解く(連載70回)①第1回-10回まで、福沢諭吉の『脱亜論」の理由、中華思想、小中華と日本主義の対立の背景

日本リーダーパワー史(692) 『中国/朝鮮行動学のルーツ⑦』中国紙「申報」の論 …

no image
●「日本の新聞ジャーナリズム発展史(下)-『 昭和戦前期 ・軍ファシズムと新聞の屈伏』★『新聞と戦争「新聞の死んだ日」』★『 昭和戦後期・占領時代の検閲』★『「60 年安保からベトナム戦争まで」』★『「安保で死んだ新聞はトベトナム戦争でよみがえった」』

「日本の新聞ジャーナリズム発展史」(下)   2009/02 …

『オンライン/ウクライナ戦争講座⑨』★『ウクライナ戦争勃発―第3次世界「見える化」SNS大戦へ(上)』★『植民地時代の恫喝・武力外交を相変わらず強行するロシアの無法』★『テレビ戦争からYoutube・SNS戦争へ』★『無差別都市攻撃・ジェノサイドの見える化」の衝撃』』

  ウクライナ戦争―第3次世界「見える化」SNS大戦へ(上) 前坂俊之 …

『Z世代のための百歳学入門』★『物集高量は(元朝日記者、大学者、106歳)は極貧暮らしで生涯現役、106歳の天寿を果たした極楽人生の秘訣③』★『物集高量の回想録②、大隈重信の思い出話』★『大隈さんはいつも「わが輩は125歳まで生きるんであ~る。人間は、死ぬるまで活動しなければならないんであ~る、と話していたよ』

    2021/05/28 &nbsp …

『オンライン/国難突破力講座』★日本リーダーパワー史(39)『日本敗戦の日(1945年8月15日)、森近衛師団長の遺言<なぜ日本は敗れたのかー日本降伏の原因を追究する必要がある>

  2010/02/10 記事再録  前坂 俊之( …

『オンライン講座/新聞記者の冤罪と誤判・死刑追及の旅➂』『山口県内で起きた『無実を訴えて62年』―加藤新一事件の再審で無罪判決が下る』

2010/03/16   無実を訴えて62年―加藤新一事件の …

no image
速報(186)『日本のメルトダウン』●『女性を活用しない人材浪費国!ニッポン』☆『インターネットの世界を変えるHTML5』

速報(186)『日本のメルトダウン』   ●『女性を活用しない人材浪費 …

no image
大阪地検特捜部の証拠改ざん事件参考・再録『冤罪でなぜ警察・検事・判事は処罰されないのか』

  大阪地検特捜部の証拠改ざん事件を読み解くために 再録『冤罪でなぜ警 …

no image
日本メルトダウン脱出法(767)「米英の分断に成功し、英国を絡め取った習近平/人民元の国際化を英国が後押し、日本円はさらに厳しい立場に」●「原発の被害と恩恵、世界の専門家はこう考える ベラルーシで開催された原子力被害の勉強会から」

  日本メルトダウン脱出法(767) 「米英の分断に成功し、英国を絡め取った習近 …

no image
<日中韓三国志・新聞資料編>『台湾出兵』(1874明治7年)についての英『タイムズ』報道』<尖閣列島問題の参考記事>

<日中韓三国志・新聞資料編>   『台湾出兵』(1874年・明治7年) …