前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(599)『安倍・歴史外交への教訓(6)「世界史の中での朝鮮の保護国化(その後の日韓併合)のパーセプションギャップ①」

      2016/01/07

 日本リーダーパワー史(599)

『安倍・歴史外交への教訓(6)

「世界史の中での朝鮮の保護国化(その後の植民地化)

パーセプションギャップ①」

日本と韓国との関係はどうなっているかというと、軍事や経済

の面では、日本が断然優位にあったけれど、歴史や伝統の

上では、韓国のほうがむしろ上だと、韓国側では考えていた。

前坂俊之(ジャーナリスト)

慰安婦問題での日韓の局長級の話し合いが再開された。しかし、もめ続き、ねじれにねじれたこの問題がそう簡単に決着はつきそいにない。

慰安婦問題、日韓で意見の隔たり…局長級協議

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20151111-OYT1T50134.html

日韓首脳会談が一部日本メディアに「筒抜け」の裏事情 韓国メディアは、なぜ裏が取れないのかhttp://www.j-cast.com/2015/11/11250397.html

ソウルで日韓局長級協議 慰安婦問題蒸し返さぬよう“接点”模索http://www.sankei.com/world/news/151111/wor1511110018-n1.html

 

韓国との慰安婦問題の背景には日韓のパーセプションギャップ、戦争、外交失敗の歴史がある。私は明治以来の日中韓150年戦争史という連載をこのブログで、5年ほど前から書いている。そのために、日中韓の外交史、戦争史、コミュニケーション史などの歴史文献をいろいろ読んで勉強しているが、なかなか平易に書かれた良くわかる本がない。徳富蘇峰の「近世日本国民史」などはその最適本だが、文語体なので読みづらい。福沢諭吉の中国、朝鮮論なども、尾崎行雄の中国論も同じく文語体なので読み読みづらい。

そんな中で大宅壮一の「炎が流れる」(第3巻、文芸春秋社、1964年)を読んで、これが一番良くわかると感心した、『昭和のマスコミの帝王』と言われた大宅壮一だけに『日韓併合の舞台裏』「朝鮮統治の2つの世論」「根強く残る対日敵意」など150Pにわたって、分かりやすくデータ豊富に日韓500年対立史「反日のルーツ」をまとめている。そのポイントを紹介する。

「島国からの脱皮」ーー大宅壮一の「炎が流れる」(第3巻、文芸春秋社、1964年)

『1905年(明治38)から43年まで、韓国は日本の〝保護国″ということになっていた。いまでは(1964年の段階)、世界じゅうの旧植民地がほとんど独立してしまったし、〝保護国〃〝保護領″〝従属国〟などと呼ばれている地域も、アラビア半島などに、ほんの少しばかり残っているにすぎないが、明治末期には、このような形の半独立、半主権の地帯が多かった。

〝保護国〟というのは、第三国からの侵略を防衛する義務や外交の権利が、保護する立場にある国にゆだねられている国のことである。〝従属国〟というのは、内政の両ではあまり干渉をうけないが、外交関係は宗主国にまかせている国のことである。どっちにしても、たいしてちがいはなく、この時代には、世界各地に、こういった準禁治産的な国がたくさんあった。

この関係は、資本主義の発達した強大国と、半未開の原料国とのあいだに成立するのが普通である。しかし、フランスとモナコ、イタリアとサンマリノのように、文明国相互のあいだでも、国力、国土、人口などの点で、格段にちがっている国が隣接している場合に成立することもある。

当時〝保護国″の見本のようにいわれていたのは、北アフリカのチュニジアである。国王はあってもないようなもので、軍事・外交は一切フランスにぎられているばかりでなく、内政面においても、九人の閣僚中、七人までがフランスの任命したフランス人であった。それでいて、この〝保護せられた独立国〃とフランスとの関係は、「一種特別の政治的催眠術」にかけられたような状態にあった、とう。

だが、その後まもなく、ここでも反仏独立運動が起こり、何回も血を流したあげく、1957年には、ついに王制をも廃止し、有名なプルギバが初代大統領に就任した。

世界各地に属領や保護領をもっとも多く持っていたのはイギリスで、これらの統治に驚嘆すべき能力を発揮したのもイギリスである。それというのも、もともと英本国そのものが、アイルランド、スコットランド、ウェールズとの〝複合国家〟としてスタートしたからであろう。

このなかでアイルーランドは本土と海をへだてていること、海外移住者の多いこと、反抗心の強いことで〝イギリスの朝鮮〟ともいうべきものだが、これまた果敢な独立運動をつづけ、武装郡蜂起までして、ついにその大部分が英本国から分離し、一九四九年「エール共和国」と名のって完全な独立国となった。

日本と韓国との関係はどうなっているかというと、軍事や経済の画では、日本が断然優位にあったけれど、歴史や伝統の上では、韓国のほうがむしろ上だと、少なくとも韓国側では考えていた。

また他の国々との比較において見ても、古い学問・文化では、日本は清国(中国)に劣るし、新しい学問・文化では、日本は欧米諸国と比べものにならなかった。そういった点からいうと、当時の日本にはまだ韓国を〝保護〃する資格がなかった。琉球や台湾の場合とは、まったく条件がちがっているのだ。

現在〝衛星国〟と呼ばれているのは、〝保護国〟の形をかえたものである。第二次大戦後、ソ連はその周辺に多くの〝衛星国〃をつくった。これらはいずれも、イデオロギー的に結びついているということになっているが、実はソ連の武力のクサリでしぼりつけられているのだ。

そして、これらもまた、だんだんとソ連からはなれつつある。少なくとも独立性を高めてきている。

これらの〝衛星国〟が独立していく過程を見ると、②つのコースがある。①はソ連と地理的に直接つながっていない国々、つまり、ソ連の軍事的圧力を直接にうけていない国々の場合である。ユーゴやアルバニアがそれだ。もう②は、歴史、伝統、生活水準などの回で、ソ連に劣らないというよりも、むしろ上位にあると見られる国々である。ポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニアなどがこれにあたる。

 - 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『オンライン/新型コロナパンデミックの研究』-『時代は、時代に後れる者を罰する』(ゴルバチョフ)ー今、冷戦崩壊に次ぐ、2020年の「withコロナ」時代、「地球温暖化・第3次デジタル世界大戦」に突入した。この時代の大変革に乗り遅れた国家、企業、個人は,明日の世界で生き残れないだろう。

  『時代は、時代に後れる者を罰する』ー     …

no image
日本メルトダウン脱出法(721)「訪日外国人2000万人は今年達成!? インバウンドブームの舞台裏」●「中華民族の偉大なる復興」は リアリティを持たない —東京大学名誉教授・北岡伸一×加藤嘉一」

 日本メルトダウン脱出法(721) 訪日外国人2000万人は今年達成!? インバ …

「オンライン・日本史決定的瞬間講座⑨」★「日本史最大の国難・太平洋戦争敗戦からGHQ「日本占領」と「単独講和」を乗り越えて戦後日本の基礎を築いた吉田茂首相の<国難逆転突破力>④』★『76歳でこんどこそ悠々自適の生活へ』★『1963年(昭和38)10月、85歳となった吉田は政界から完全に引退したのです』★『最後までユーモア精神を忘れず』★『享年八十九歳。戦後初の国葬で送られた』』

  こんどこそ悠々自適の生活へ 1954年(昭和29)12月、「造船疑 …

no image
百歳学入門(180)★『人類が初めて遭遇する「寝たきり100歳社会」の悪夢〈医学の勝利が国家を亡ぼす』●『富士通 経営者フォーラム 「100歳社会への挑戦~リンダ・グラットン教授を迎えて』★『「平均寿命100歳を超える社会」にどう備えるか』

百歳学入門(180) 富士通 経営者フォーラム 「100歳社会への挑戦~リンダ・ …

no image
日本最強の参謀は誰か-「杉山茂丸」の研究③伊藤博文の政友会創設にポンと大金をだし、金融王・モルガンを煙に巻く

 日本リーダーパワー史(477)     …

no image
日本のメルトダウン(271)【4号機の危機】そうなると使用済み燃料の膨大な放射能が防壁もないから噴き出す(小出裕章)」ほか

          &nbsp …

no image
速報(464)『日本のメルトダウン』ビデオ座談会●『米英仏のシリア攻撃で9/8日、東京五輪開催決定はどう影響するか?』

     速報(464)『日本のメルトダ …

昭和戦前期に『言論の自由」「出版の自由」はあったのか→谷崎潤一郎の傑作「細雪」まで出版を差し止められた『出版暗黒時代』です①

昭和戦前期に『言論の自由」「出版の自由」はあったのか→ 答えは「NO!」ーー19 …

no image
リーダーパワー史(40) 中国共産革命を実現した毛沢東と周恩来のコンビ

リーダーパワー史(40)   中国共産革命を実現した毛沢東と周恩来のコ …

no image
片野勧の衝撃レポート(48)太平洋戦争とフクシマ(23『なぜ悲劇は繰り返されるのかー 沖縄戦と原発(上) 

片野勧の衝撃レポート(48)  太平洋戦争とフクシマ(23)     『なぜ悲劇 …