前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『Z世代のためのウクライナ戦争を知るための日露戦争講座』★『日露開戦2週間前の『仏ル・タン』報道ー『日本国民は自分たちの力と軍事力に対する節度の感覚を失っている。中国に勝利して以来,日本はロシアにも簡単に勝てると思い込んでいる』★『対露同志会がメンバーを旅順や満州,ウラジオストックに派遣して,極東におけるロシアの状況を調査している』

   

  『世界史の中の日露戦争カウントダウン(35)』再録

『開戦2週間前の1904(明治37)120

   『仏ル・タン』『ロシア・レポートー画家ヴェレシチャーギンと露日戦争』

 Wiki ヴェレシチャーギン

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%AC%E3%82%B7%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%82%AE%E3%83%B3

スコベレフの友人で,ロシア・トルコ戦争でその勇気を十二分に証明した有名な画家であるヴェレシチャーギンは,日本に対する戦争にきっぱりと反対の立場を表明した。

 彼はロシア政府が満州を放棄するように勧めるのみならず,東清鉄道も売却し,その返還の見返りとして,ウラジオストクと旅順をつなぐことのできる帯状の土地を要求してはどうかと進言している。

「でも,ロシアの愛国者たちは反対するのではありませんか。ロシアは鉄道を建設して,それを売るような事業家ではないと……」「そんなことはないですよ」とヴェレシチャーギンは答えた。

「そもそも,わが国には前例があるのです。アレクサンドル2世がアラスカにあるロシアの領土がかえって国にはじゃまになると気づいたとき,彼は簡単にそれをアメリカに売却したことがあります。

満州の鉄道も役に立つよりも,むしろロシアを苦しめています。厄介払いすべきなのです。ただし.できるだけ有利な方法でね」

 ヴェレシチャーギン氏の話には裏づけがある。彼は満州と日本を旅して帰ってくると.全世界の関心を呼んでいる事件が進んでいるその現場で得た感想をペテルプルグのノーヴォスチ紙に発表している。

 『シプカでは,すべて平穏!』という有名な作品の作者は,中国が正式に参戦することはないだろうと考えている。中国は,ロシアの鉄道と軍隊によって占領されている地方を取り戻す希望をすべて失ったわけではないからだ。

 むしろ敵対関係をはっきりさせた場合に,満州を決定的に失ってしまうことを恐れている。

 中国が参戦したとしても,義和団による攻撃に限られるだろうし,中国政府は必要とあらば彼らを反乱兵として扱い,自国の兵とは認めないだろうという。

 日本の態度はまた別問題だ。ヴェレシチャーギン氏は次のように言う。

「私はこの国に行ってきたばかりですが,大変すばらしい.印象を持ちました。美しい国で,実に文明化されています。国民は活気にあふれ,すぐれた能力を持っているのみならず,大変な知性と本物の芸術的趣味を備えています。

 ただ残念なことに.この国民は自分たちの力と軍事力に対する節度の感覚を失っています。中国に勝利して以来,日本はロシアにも簡単に勝てるだろうと思い込んでいるのです。

どんなに説得してもこの傲慢な確信を揺るがすことはできないでしょう。

日本の世論はあまりにも興奮し過ぎていますから,政府は何か思い切った手を打って,その興奮を静め,ありのままの現実の方に引き戻してやることがどうしても必要でしょう。

 日本で最も大きい組織の1つに「対露同志会」というのがあります。この協会は自費で旅順や満州,さらにはウラジオストクに委員を派遣して,極東におけるロシア人の状況を調査しています」

 ヴェレシチャーギン氏はこの派遣団の報告書の教範を引用する。
「ロシアには石炭が足りない。65000トンしかないのに,鉄道だけで月に15000トンも消費している。ロシアは決して日本の艦隊を攻撃しようとはしないだろう。その軍隊も水兵もそれを知っているから,意気消沈している。
 ロシアの将校はすぐれているが,兵士は訓練が行き届いておらず.愛国心にも欠けている。中国兵と同じ程度だろう。こんな兵士をもってしては,ロシアは何もできず,日本は思うがままの成果を上げることができるだろう。
 ロシアが唯一気にかけていることは,旅順に避難所をしつらえて,日本の手の届かないところにその艦隊をかくまうことだ。さらに,日本人は戦争が長引かないことを確信しており,南アフリカの戦争で起こったこととは反対に,ロシアは日本がその首都に進撃するのを待っことはないだろうから,日本軍が満州からロシアを追い払えば,直ちに講和条約を締結しようとするだろう」

 ヴェレシチャーギン氏は,この点で日本は幻想を抱いており,何をもってしてもこの幻想を打ち砕くことはできないだろうと考えている。

このロシアの画家はなんとか説得を試みてみたが,むだだった。日本の軍事的優位の確信は深刻な痛手を負わない限り,崩れそうにもないという。

 あらゆる可能性を考えてみて,日本が朝鮮に上陸したとしても.ロシアはそのとき,あえて宣戦布告しなくても,日本軍を兵糧攻めにし,何百万という金を浪費させ,ついには降伏させることができるだろうという。

 ヴェレシチャーギン氏によれば,日本軍が満州に上陸すれば.その状況はさらに危うくなるだろうという。海からの退却が保証されない上に,ロシアの2つの要塞に挟まれてしまえば,状況はまさに危機的になるだろうし,満州に入り込めば入り込むほどそうなるだろう。

それにもかかわらず,ロシアは満州の荷を降ろして,中国との友好を得た方がずっと有利でしょう」とロシアの画家は考えている。    M・プラディーヌ

 – 健康長寿

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

★『日本経済外交150年史で、最も独創的,戦闘的な国際経営者は一体誰でしょうか講座①(❓) <答え>『出光興産創業者・出光佐三(95歳)』ではないかと思う。そのインテリジェンス(叡智)、独創力、決断力、勝負力、国難逆転突破力で、「日本株式会社の父・渋沢栄一翁」は別格として、他には見当たらない』

  『戦略的経営者・出光佐三(95歳)の国難・長寿逆転突破力①     …

『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座(51)』★『日本最強の外交官・金子堅太郎のインテジェンス⑦』★『ルーズベルトの和平講和工作―樺太を占領せよ』★『戦争で勝ち、外交戦で完敗した日本』

日露戦争は日本軍の連戦連勝のほぼ完勝に終わったが、その裏には、川上操六前参謀総長 …

『オンライン/吉田茂のリーダーパワー国難突破力講座』★『最後まで日本の戦争を回避する努力をしたのは吉田茂ただ一人。日本の政治家に勇気のある人は一人もいなかった』★『首相なんて大体バカな奴がやるもんですよ。首相に就任するや否や、新聞雑誌なんかの悪口が始まって、何かといえば、悪口ばかりですからね、』

2011-09-25 08:42:55 日本リーダーパワー史(194)<国難を突 …

no image
日本リーダーパワー史(175)『辛亥革命百年の真実』『孫文を助けた大アジア主義者・犬養毅らの熱血支援』

日本リーダーパワー史(175) 『辛亥革命百年の真実』 『孫文を助けた大アジア主 …

『Z世代のための 欧州連合(EU)誕生のルーツ研究」③』★『欧州連合(EU)の生みの親・クーデンホーフ・カレルギーの日本訪問記「美の国」③★『子供心に日本はお伽話の国、美しさと優雅の国、同時に英雄の国であった③』

2012/07/06  日本リーダーパワー史(275) 前坂俊之(ジャ …

no image
   日本メルトダウン( 979)『トランプ米大統領の波紋!?』ー『2017年に「トランプ大暴落」は起きるのかー 「トランプショック」の本番はこれからだ』●『米国自動車市場を襲うトランプリスクの暗雲 日系メーカーは「米国一本足」で大丈夫か』●『対トランプ外交。安倍政権が主導権を握るための交渉術を教えよう 実は、アベノミクスに興味津々!? 』●『日本経済、トランプの政策で「好循環が逆回転」のシナリオ』●『トランプ大統領誕生は、日本がアジアの主役になる絶好のチャンスだ 自分の手と足で、考えるべき時が来た』●『日銀の極秘レポート入手! 株価1万3000円割れも… 衝撃の試算結果 日本経済「12月ショック」に備えよ』

   日本メルトダウン( 979) —トランプ米大統領の波紋!? & …

「30年間カヤック釣りバカ老人の鎌倉海定点観測」-『海を汚染、魚を死滅させる有毒マイクロプラスチックが食物連鎖で最終的に魚食民族・日本の食卓を直撃する』★『プラスチックを規制し、1人年40 枚にレジ袋を減らす規制をしたEU対1人が年300枚のレジ袋を使う日本はいまだ規制なし』

「老人と海」-海を死滅させるマイクロプラスチックの脅威 30年間鎌倉カヤック釣り …

no image
渡辺幸重の原発レポート⑥★☆ 『今こそ原発を全機停止し、総力で事故収束へ』

渡辺幸重の原発レポート⑥ 『今こそ原発を全機停止し、総力で事故収束へ』      …

no image
記事再録/知的巨人たちの百歳学(135)-勝海舟(76歳)の国難突破力―『政治家の秘訣は正心誠意、何事でもすべて知行合一』★『すべて金が土台じゃ、借金をするな、こしらえるな』(これこそ今の1千兆円を越える債務をふくらませた政治を一喝、直ぐ取り組めという厳命)

2012/12/04 /日本リーダーパワー史(350) ◎明治維新から150年- …

no image
終戦70年・日本敗戦史(66)A級戦犯指定の徳富蘇峰が語る『なぜ日本は敗れたのか』⑯ 日本の教育が日本を亡国させた。

                                        …