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日米野球史「ベーブ・ルースを超えた二投流・大谷翔平」と「日本の野球の神様・川上哲治監督の「巨人9連覇達成」

      2023/09/01

 

エンゼルスの大谷翔平選手のペースがますます上がってきた。6月は月間MVPを取ったが、7月のオールスター戦以後の後半戦でも好調を持続している。7月17日、宿命のヤンキース戦では3試合連続の本塁打35号を放ち、昨シーズンの34本を超えて年間60本ペースになってきた。神がかった35号にニューヨークファンも狂喜乱舞。MLB公式ツイッターで「彼はMLB史上最高のオーラを持っている」と賛辞が相次いだ。パイレーツ戦(22日)では投手として苦しみながら8勝3敗を上げ、24日の同戦では36号をマークした。「大試合に強く」、「決定的場面で必ず結果を残す」彼の姿に私は「野球の神様」の光臨を見た思いだった。

大谷の「二刀流」「投打走の三刀流」はどれほどスゴイかは、サッカー選手で、エースアタッカーのメッシと最強のゴールキーパーの1人2役を兼ねた存在とみればよくわかる、しかも年間で約2日に一度の162ゲームを行うMLBで、常時出場しているのだ。しかも今期の打撃成績は二冠王(本里打、塁打数、打点)から、三冠王、さらには五,六冠王を狙うトップに立ち、投手でもサイヤング賞も取る可能性もある。

スポーツ界で100年ぶりに現れた「ユニコーン」「人類ではない、異星人だ」という表現が決してオーバーでないことがわかる。今後の活躍を維持していくためには「ケガをしないこと」「スランプをさけること」を祈るばかりだ。

 

7月19日のヤンキース戦で昨季62本塁打を放ちア・リーグMVPを受賞したヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手は大谷について「信じられないよ。彼がこれまでに成し遂げてきたことに興奮するし、これからどんなことをしてくれるのか楽しみだよ」。記録については「記録は超えるためにあるんだ。記録はただの記録。もしかしたら60本以上打つかもしれないしね」とエールを送った。

さらに「(自己の本里打が)リーグ記録の61本塁打が近づくにつれて(マスコミの過熱報道やフアンの大声援で)試合に集中するのが難しくなり、重圧を感じていた。(記録更新を狙う大谷には)「メンタルが重要。雑音を封じるべきだ」とアドバイスを贈った。

MLBの頂点を目指す大谷が世界のスポーツ界を変えつつあることは間違いない。

  • 日本の「野球の神様は川上哲治

そこで、日米野球史を振り返ってみたい。日本のプロ野球は1934年にベーブ・ルースらの米大リーグ選抜チームが来日した2年後の

1936(昭和11)に巨人、阪神、中日、阪急など前身7球団が集まって日本職業野球連盟を結成、誕生した。それ以来97年の歴史で「和製ベーブ・ルース」大谷選手が日米野球の歴史を塗り替える瞬間を近づいている。

MLBの『野球の神様』がベーブ・ルースとすれば、日本での「野球の神様」は川上哲治(93)であろう。川上選手は現役引退までに最高殊勲選手3回、首位打者5回、ホームラン王2回、球界初の2000本安打などの記録を作り〝打撃の神様〟と呼ばれた。また監督としては巨人の黄金時代を築き上げ、1965年から73年までにV9(セリ―グ9年連続、日本一)を達成した。

 

1960年、川上が巨人の監督になった最初のシーズンでは負けが続き、ドン底のスランプに陥った。禅の教えを受けていた正眼寺の梶浦逸外老師から川上に電話があり、開口一番「おめでとう」と言う。川上がア然として、言葉に窮していると、「スランプはしめたと思いなさい」と励ましたのである。

しばらくして、川上はこの言葉の真意がやっと理解できた。ドン底ということは、もうこれ以上落ちない、あとは上がるだけだ。チーム全員が必死になって立ち向かえばカベはうち破れる、「スランプに感謝する」、とはそういう意味だとやっと気がついた。

王選手の一本足打法によるホームラン王への道も、スランプを克服するための特訓の中から生まれた。人一倍熱心な王選手は、一日三百球から四百球も打った。スランプの壁を感じたら逃げてはいけない。トコトン練習して突き破り脱出すべきで、スランプを克服するたびに一回りも二回りも大きく成長する。スランプこそ飛躍のチャンスなのだ。

川上の打撃の秘訣は「むだ打ちをなくせ」にあった。200打数で60安打の3割バッターは逆に140本のムダ打ちをしている。2割5分のバッターは150本のムダ打ちである。3割と2割5分の差は結局、ムダ打ちが10本多いか、少ないかの差につきる。この10本を確実にものにすれば、2割5分から3割バッターになれる。「何としても打ってやろう」という気魄、気力、精神の集中、一球一球をムタにしないことが、この差を生むのである。

もう1つの川上打法はダメ押しだけではダメで、ダメ押しのダメ押しの、さらにダメ押しをおせ」というのがある川上はマスコミから〝非情の監督″とか、冷酷とかいわれたが、勝つためには不評など一切気にしなかった。五点、六点もリードした試合でも、スクイズで加点した。大差のゲームでもダメ押しの点を取った。相手チームにやる気をなくさせ、「なんともいやらしいチームだ」との印象を植えつければ、それだけ精神的優位に立てる。

常勝ジャイアンツをサイ配しながら、川上監督の心は変化していった。1961~63年ごろは、ただただ「必勝」 の精神に燃えた。65、66年は「常勝」の精神で戦い、67、68年と勝ち進むにつれて「常勝」は「不敗」にかわり、つづく5連覇、6連覇で「不敗」は「無敗」の精神にかわった。以後は「無敗」の精神に貫かれて9連覇を達成した。日本のプロ野球で空前絶後の名選手であり、名監督である。

 - 人物研究, 現代史研究, IT・マスコミ論

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