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日本リーダーパワー史(383)児玉源太郎伝(5)明治日本の奇跡を興した「インテリジェンスから見た日露戦争」

      2016/03/05

  日本リーダーパワー史(383

児玉源太郎伝(5

  5年後に明治維新(1858年)から150年を迎える。1819世紀の欧米各国によるグローバリズム
(帝国主義、植民地主義)に対して、『明治の奇跡』を興して、軒並み植民地化されたアジア、
中東、アフリカの有色人種各国の中で、唯一独立を守り通したのが<明治日本>なのである。

  世界的歴史家のHG・ウエルズヤアーノルド・トインビーは『明治日本の躍進は世界史の奇跡で
ある』として賞賛しているが、肝心の日本は自国の歴史を知らず、自画像を喪失している情況
である。

  <明治の奇跡>が<昭和の亡国>に転落していく<日本の悲劇>のダイナミズムを知らずして、
明日の日本、未来像は見えてこない。

 

前坂 俊之(ジャーナリスト)

 

「インテリジェンスから見た日露戦争」

 

 

「日本人と戦略思考、インテリジェンス」について考えてみたいと思います。

日本には元々、「情報戦略」という場合の「情報」(インテリジェンス)と『戦略論』『ストラジティ』という概念はなかったと思います。

strategy(ストラジティ)とはギリシア語が語源で「戦いの計画を準備し、決定的な諸地点に軍をおき、勝つために最大量の兵力を運ぶ場所をさぐる技術」というのが原義で、広義には「兵站」の意味です。勝つために最大量の兵力を要所に集結させる。


そのためには他国、敵国、相手民族の調査、研究、住民心理の観察、その慰撫、地理、地形、地図の偵察、把握、兵器、軍事的技術はもちろん、輸送の方法、経済的、技術的なシステマティックでな計画と効果的な展開をするという概念です。

 

これは、古代ローマ帝国(BC753-1453)が戦争によって領土の拡大、植民地獲得、諸民族の併合によって地中海全域を支配する世界帝国になった歴史の中で生まれた。大兵力の移動、食糧、軍事物資の輸送などの『ストラジティ』(兵站)をうまく機能しないとあれだけの大帝国が築けるはずはありません。

 

さらに、この大帝国が千年以上も長続きできたのは 軍事力、経済、政治、行政のハードパワーと表裏一体となった情報力、異文化コミュニケーション力、言語力、情報力、ソフトパワーが「他民族異文化共生国家」の動脈としての「大ローマ帝国」の元気を持続させたのです。

 

地続きのヨーロッパのような大陸国家ではたえず戦争、統合、分裂、紛争の興亡の繰り返しで、相手国、隣国を知るための情報戦(スパイ)や、対外、異文化コミュニュケーション力、交渉力、語学力を備えていなければ生き延びてはいけません。戦略のない国家、コミュニケーションスキルのない民族は周辺の大国からの犠牲になるだけです。

こうした2千年以上のヨーロッパの民族、国家の興亡の歴史で磨かれた「戦争哲学」こそが「戦略論」で、マッキャベリーの『君主論』、クラウゼビッツの「戦略論」などがその古典でり、古代中国の春秋戦国時代(BC770-403孫子による兵法も同じものです。

 

ところが、これと正反対なのが地政学的な日本の位置と歴史です。

 

海にかこまれた外敵から守もられていた島国の日本では千年間以上、蒙古来襲と秀吉の朝鮮出兵以外は、明治になるまで国内の同じ日本人同士の戦争しかしか知らなかった。

 

大陸から遠く離れた島国国家の日本はほぼ単一の日本民族(全体の90%以上)、日本語の単一言語、宗教も仏教儒教の同一宗教という、<多民族・多宗教・多文化混在国家>が大部分の世界の中では、きわめて例外的国家なのです。鎖国して外敵と戦う必要のなかった日本では、対外戦争にあけくれた大陸国家とちがって、『戦略論』は必要なかったのです。

しかも、歴史的には徳川鎖国時代が二三〇年間続いて、よりガラパゴス化が強くなっています。こうした地政学的、歴史的な経緯が重なって、日本では戦略概念、戦略的な思考、インテリジェンスは育たなかったといえるのではないでしょうか。

黒船のたった4隻の外圧によって「戦略思想」のなかった徳川幕府は崩壊したが、明治維新となった日本が初めて戦った対外戦争が『日清戦争』(明治27年)、『日露戦争』(同36)です。この両戦争には果たして、戦略思想はあったのでしょうか。

太平洋戦争(19411945)と比較してみましょう。太平洋戦争では開戦1年前1940年(昭和15)の米国のGNPはほぼ1千億ドル、日本は92億ドルで約11倍です。日米の重要物資生産量では、日本を1として米国はアルミの6倍、銑鉄、鋼鉄は12倍、石油は500倍、自動車生産450倍、平均して78倍もの格差で、このGNPの上に国家総戦力がおこなわれるので、最初から敗北は見えています。

しかも、米国からの輸入に全面的に頼っていた石油が経済制裁で禁止になり日本は崖っぷちに追い込まれた。ここで日本は冷静に計算する前に思考停止をおこし『戦争によるほかに打開の途なし』と本末転倒の結論に達する。まだ戦争遂行のため海軍の石油ストック(10ヵ月分)があるうちに、『座して死を待つよりも、清水寺から飛び降りる気持ちで・・』(東条英機首相の言葉)で、開戦に踏み切ったのです。「戦略思想」どころではありません。

 

 これとくらべると、「日清・日露戦争」の勝利は全く奇跡といっていいものです。日本がいきなり巨大中国、そしてロシアを続けて破ったのですから世界も驚愕しました。

サッカーWカップに初出場して、いきなりランキングトップをやぶったのと同じ事です。それまで、日本など歯牙にもかけていなかった西欧列強は日本に一目置いて、出る杭を打てとばかり「三国干渉」で日本の戦利品を奪い取ったのです。張り子の虎がばれた中国は列強の餌食となったのです。当時は弱肉強食が支配する帝国主義の時代です。日露戦争2年前に結ばれた「日英同盟」にしても、英国が南アフリカボーア戦争で、手が取られてアジア、中国での利権をロシアから守るために、日本をアジアの子分として手を結んだというわけです。

                                (続く)

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