地上デジタル放送のメリット・デメリット
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地上デジタル放送のメリット・デメリット・ <2003,12>
静岡県立大学国際関係学部三年 海老原 薫
Ⅰ.地上デジタル放送におけるメリットとは何か
2003年12月1日から地上デジタル放送が開始された。現在のアナログ放送と比
較した場合のメリットとして、以下のような点が主に挙げられている。
① アナログ信号に比べてデジタルは雑音や障害物によるゴーストに影響されに
くく、送信電力の節約にもなり、高品質な画像が保たれる。この事は、移動端
末へのデータ送信にも言えることであり、従来のようなチラツキの多い画像で
はなく、携帯電話や移動車両等でもきれいな放送が受信できるようになる。
② 受信機にコンピュータ機能が内蔵されている場合は情報を蓄積する事ができ、
その中から個人のニーズにあった番組を選択して好きな時に視聴する事がで
きる。(テレビ番組がいつでも取り出せる『番組の缶詰』と表現される)デジタル
は伝送・蓄積・複製による劣化が少ない。
その場合でも通常の放送と差のない画質で見ることができる。インターネットと
接続する事により、クイズ番組への視聴者の参加も可能になり、投票やアンケ
ートの回答といった視聴者の側からのアクセス、放送コンテンツの補完などに
よる放送事業者からの働きかけも可能になる。
③ デジタル化すれば、どんな情報も0・1信号に変換されるので、映像・音声・デ
ータ等を統合していわゆるマルチメディアで編成できるようになる。これは放
送事業者にとって大きなメリットとなる。
情報の検索・加工・編集が容易となり、編集時間の節約、番組制作の効率化
が図れる。複製・蓄積による劣化がほとんどなく圧縮も可能である事から番組
内容をパッケージメディアに2次利用できる。
④ 視聴者にとってのメリットは映像番組に字幕放送を組み合わせることで、番組
情報の字幕・解説サービスが可能になる。音声速度の変換や点字用機器の
利用で高齢者や障害者のニーズをより満たすことができる。
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経済効果、メーカーへの波及効果はさらに大きい。
2011年7月のアナログ放送終了までに、地上デジタル放送に対応した受信機、チ
ューナーを購入せざるをえないので、借り換えの市場規模は巨大なものになる。総務
省の予測では、放送事業者側の広告収入と有料放送やモバイル向け放送などの新
規放送収入、それから通信・出版・金融関連産業への幅広い波及効果は10年間で2
12兆円になるとみられている。
これに相当する雇用創出効果は、711万人と推測。地上放送に限っていえば、現
在の市場規模2.9兆円(うち、民放の広告収入が約2.3兆円、NHK受信料収入が
約5,500億円)から2010年には16兆円になると推計され、関連市場も含めれば3
5兆円になると皮算用さている。
2…放送番組の海外提供、国際市場進出を促進
もう1つ忘れてならないのは経済波及効果も重要だが、欧米とほぼ同時期に地上放
送のデジタル化を進める事により放送番組の海外提供等、放送番組の国際市場進
出を促進することが可能になる点である。
現時のアナログ放送において、世界には、韓国・アメリカ・日本などのNTSC方式、
イギリス・ドイツなどのPAL方式、ロシア・東欧などのSECAM方式という3つの大きく
異なる方式が存在し、カメラから受像機に至るまで互換性がなく映像番組の交換にも
課題があったのだが、同時にデジタル放送に進む事で技術を共通に採用する事が可
能になり、方式間の互換性が確保できるようになる。
1994年にアメリカで衛星デジタル放送が開始されて以来、デジタル放送の導入は
国際的な課題として各国で積極的に取り組まれており、1998年9月にイギリスが世
界で初めて地上デジタル放送を開始し、同年11月にはアメリカも地上デジタル放送
を開始するなど国際標準化への取り組みは着実に進んでいる。情報格差をなくし相
互理解を深める為にも、システムや番組交換技術の共同開発は重要である。
3・・・世界各国の地上デジタル放送の状況
. 1999年:スウェーデン(4月)
. 2000年:スペイン(4月)
. 2001年:オーストラリア(7月)、フィンランド(8月)
韓国(11月)
3
. 2003年:オランダ(4月)、日本(12月)
. 2004年:フランス(12月予定)
Ⅱ.地上デジタル放送におけるデメリット、問題点について
① 地上デジタル放送についての問題点として、第一にアナアナ変換問題があげ
られる。アナアナ変換(アナログ周波数変更)とは日本の混み合ったチャンネル
を地上デジタル放送のために整理をする作業の事である。
地上デジタル放送は20チャンネル台を中心に放送されることになるが、現在のア
ナログ放送ですでに20チャンネル台を使用している場合、アナログはチャンネル
を移動しなければならないという事になる。
② 日本は地形の複雑さから中継局が隣接し、電波に余裕がない。デジタル放送
との混信を避けるためにアナログ電波を移動させたとしても、その移動先にも
すでにアナログ電波があり、次から次へと玉突きが必要となる。アンテナの取り
替え、方向変更等の作業が必要となり、それには視聴者が国に申請し、総務
省が地元に業務委託する。
③ このアナアナ変換作業に政府は約1800 億円をかける。しかし、視聴者の意見も
聞く必要がある。今年8月のNHK放送文化研究所などの調査では地上デジタ
ル放送について「聞いたことがない」、「まったく知らない」が約4割強。
作業申請の事前告知をしても、その内容を理解できないかぎり、全ての世帯が
申請を行なうとは考えられない。実際に申請用紙を配布された地域で、期間内
に応答した世帯は約半数しかなかった。
この点でも、総務省の認識はさ甘く、テレビの宣伝力を使って申請の促進を図る
ことで解決できる見通しを出している。
④ さらなる問題点はデジタル電波の到達問題。多くの民放ローカル局は、県庁所
在地に親局を置き、大都市に大規模局、市町村に中小局、そして山間・離島な
どにミニサテライトを置く事で電波を届けているのだが、小さい局になるにした
がってカバーする世帯数は減少し、ミニサテライトでは数百世帯以下となる。
中継局は一局デジタル化するのに数千万円必要で、民放の財政を圧迫する。
一局で県人口の60%近くをカバーできる親局や大規模局のデジタル化を優先
させる事はやむを得ない。僻地にある中継局は後回しにされ、2011年までの
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中継局デジタル化の計画が予定通りに進むかどうか危惧される。2011年に間に
合わない地域は、地上デジタル放送だけではなく、アナログ放送も見られなくなって
しまう可能性もある。
⑤ デジタル電波の到達問題は山間・離島だけでなく、都市部のビル郡密集地域
でも難視聴の問題が発生する。現在のアナログ放送は中継局の周りに、後か
らビルが建設される事で難視聴が発生してきたため、基本的にそのビルの建
設者が補償を行って、ケーブルなどによる再放送で対応してきた。
しかし今回のデジタル放送で生じる難視聴エリアは、ビル側ではなくデジタル化
を「国策」といえる形で行ってきた国側の責任と考えられる。アナアナ変換に引
き続き、ここでも公費の投入が必要になる。しかしアナログ放送と比べてみると、
ビルによる難視聴エリアは従来の3割程度になるようだ。
⑥ この電波の到達問題の解決方法が3つ。1つはFTTH(光ファイバー)を利用し
た映像配信、2つ目はケーブルテレビのデジタル化、3つ目は衛星放送の利
用。
私は、衛星放送の利用に興味を持った。JSAT社と住友電気工業が共同で開発
した衛星マルチ受信レンズアンテナがまもなく出荷されるのだが、このアンテナは
従来のようなお皿型ではなく、ボウルを被せたような半球体レンズが付いており1
基で複数の衛星から発信される電波を受信する事ができる。
小規模中継局のエリアを衛星でカバーすれば、中継局デジタル化にかかる費用を
数十億円分も削減できる。視聴者にとっても、この新アンテナ(2万円以下)を購入
するほうが費用は従来の半額程度に抑えられる。
Ⅲ.まとめ
地上デジタル放送は現在、多くの課題を残したまま放送が開始されてしまった。しか
しメリットの面に書いたような経済効果が実際に生まれるとするなら、多少強引でも推
し進めていった方がよいのかもしれない。
何よりも今必要なのは、少しでも早く全国民が地上デジタル放送の現状を認知し、費
用の面などでも協力や理解を得ることなのではないかと思う。またデジタル放送対応
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テレビの販売を伸ばす為にも放送事業者が意欲的に、魅力あるデジタルならではと
いうコンテンツを作成していく事が重要であると考える。
2003.12. 10
参考文献
情報地上デジタル懇談会
(http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/pressrelease/japanese/housou/981026d701.html)
地上デジタル放送の行方(http://www.fulldigital.co.jp/03-12/topics12/chijoha12.pdf)
楽しい楽しい地上デジタルテレビ放送
(http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/whatsnew/digital-broad/)
地上デジタル放送市場
(http://www.nri.co.jp/opinion/r_report/itnavi2006/pdf/itnavi2006_34.pdf)
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