前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

百歳学入門(53)清水寺貫主・大西良慶(107歳)の『生死一如』10訓-人問いつか死によるんやから、死ぬことなんか考えてないの』

      2015/01/01

百歳学入門(53)
 
 
清水寺貫主・大西良慶(107歳)の『生死一如』10訓-
ほっといたって、人問いつか死によるんやから、死ぬこ
となんか考えてないの!』
                      
 前坂俊之(大愚釣人)
 
①  人間おおむね「漸機」と「頓知)」ー近道を考えると大けがする。
② 頓知にはやらず、ゆっくりゆっくり
③  ゆっくりしいや。
④  ほっといたって、人問いつか死によるんやから、死ぬことなんか考えてないの!
⑤ 長生きの秘訣は三つ。「よく食べる」「よく眠る「よく働く」
⑥ ありがとう、というて、生きることが極楽やの。
⑦ 「血眼(ちまなこ)になってする努力なんて、しないほうがいいんだよ」
⑧ 「もっとゆったり、のんびり、おおらかに生きなさい」
⑨ 「こだわらずに生きなさい」
⑩ 「花は咲き、鳥は鳴き、虫ははい、すべて〝いま″に満足している。
やっぱり〝いま〟が最高やな」
 
大西良慶 おおにしりようけい 百七歳 1875・12・21~1983・2・15京都清水寺の元貫主。日露戦争で従軍憎として出征した後、日中仏教交流の道を開き平和運動に尽力したほか仏教界の要職を歴任。
 
 大西良慶は奈良県生まれ、号は「無隠」。奈良の興福寺に入り、法隆寺などで学んだあと、京都・清水寺貫主を長く務めた。良慶節と呼ばれる独特の説法を清水寺で朝六時から開いていた。「うらぼん法話」で、一九一五(大正四)年八月から延々と続いた。
 いつもにこやかに語り、「内臓にまで、気持ちよく、スーツと通る」法話として絶大な人気を博した。平和問題にも積極的に発言し、学生にも親しまれた。日本初の五つ子の名付け親にもなった。
 
そんな良慶法話のひとつ。
   
ー休宗純(そうじゆん)は「頓知の一休さん」として、古くから親しまれてきた。「頓知」という言葉はもともと仏教からきており、仏が悟りの世界に到達する道の、頓行と漸行からきている。すぐさま悟りにつながるのが「頓の行」であり、ゆっくり一段ずつ上ってゆくのが「漸の行」。
 
つまり、エレベーターやエスカレーターで昇る「頓」か、階段で一歩一歩ゆっくり上る「漸」である。
 では今の世の中、どちらを選ぶかと問われれば、大部分の人が「頓」を選ぶであろう。
しかし、人間には、それぞれの器量がある。頭の回転が速く物事をサッサと片付ける頓の器量の人もあれば、コツコツと着実に処理していく「漸」 のタイプもある。漸機のものが、いくら頓機のマネをしても、ケガをするだけである、と良慶さんは言う。
 
 これは仏教の修行に限った話ではない。人づき合いでも商売でも、他人の成功話や大もうけした人の話をきいて、マネしても大損するだけ。「頓智」にはやらず、ゆっくりゆっくり、しいやというわけだ。
 
 
 
「ゆっくりしいや。ほっといたって、人問いつか死によるんやから、死ぬことなんか
 考えてないの!」
 
長生きの秘訣とはいったい何だろうか。良慶さんは、次の三つを強調していた。
二 よく食べる。
二、よく眠る。
三、よく働く。
 
「よく食べる」というのは、「おいしくいただく」こと。おいしいと思って食べれば、よく消化され、身につく。それも一つのものをたくさん食べずに、少しずつ二つ三つの品を食べるように心がける。食物の味は「辛い」「甘い」「酸っぱい」「苦い」のうち、良慶さんは重視した。
 
 お年寄りの中には「濃い茶に念仏」と言って、お茶をたくさん飲む人がいるが、実はこれが年寄りの養生に大いに役立つ。
 良慶さんは肉よりも魚を好み、基本的には粗食。百歳を迎えるころも「(朝のお勤めのあと)粥(かゆ)の朝食をとる。おかずは梅干し、塩昆布、漬物。畳はうどんかパンと牛乳、晩はやわらかい御飯とホウレン草のおひたし、魚の自身、豆腐など。
 
 二つ目は「よく眠る」。良慶さんは夜十一時半ごろに就寝し、朝四時半に起きた。年をとるとよく眠れなくなるといわれるが、常に仏さまに生かされていることを忘れず、渡る前に必ず仏と対話する日記を書き、心を落ち着けた。
 最後の「よく働く」とは、仏さまの行をすること、人さまのために尽くすという意味だ。
この三つがうまく回転してこそ信仰生活がよく保たれると思い、自らも規則正しい生活を実践した。
 
ありがとう、というて、生きることが極楽やの。
 
太平洋戦争中、一人で清水寺を守っていたが、そのときの孤独な良慶さんを助けた二十三歳の女性と結ばれた。七十二歳で男の子が誕生した。良慶さんの生命力のたくましさに、京都の人は心底驚いた。八十歳を超えても「祇園ちゅうところはおもろいところやなぁ」と周りの人を誘っていたという。
 
晩年、訪ねてくる人には「ゆっくりしいや」と口癖のように語りかけていた。
「ぼちぼちいこか」とか「あまりガツガツしないでいいんだよ」と言っては周りを和ませた。
 
 
「血眼(ちまなこ)になってする努力なんて、しないほうがいいんだよ」「もっとゆったり、のんびり、おおらかに生きなさい」
 
 平凡から非凡になるのは、努力さえすればある程度のところまで行けるが、それから再び平凡に戻るのが難しい。「こだわらずに生きなさい」「あんまり偉うならんでもいいのとちゃうか」と語り、平凡に、そして健康で長く生きることが仏の教えだ、と説いた。
 
 百歳を過ぎたころ、清水寺を訪れたノーベル賞受賞者の作家、パールバック女史に「一生で一番よかったのは~」と問われ、「そうやなあ、今がいちばんええなあ」と答えたという。
 体は思うように動かないし、耳は聞こえず、目も白内障で見えない。それでも、今を生
きているこの一瞬の命への感謝と喜び。そのことをおろそかにしないような生き方をすれば、充実した人生を過ごせるというのだ。良慶さんはいつも言う。
                       
「花は咲き、鳥は鳴き、虫ははい、すべて〝いま″に満足している。やっぱり〝いま〟が最高やな」

 - 健康長寿 , , , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

★『鎌倉釣りバカ人生30年/回想動画記』➀(2011年から10年間)」★『Severe winter in KAMAKURA SEA』と『老人の海』=『ラッキー!大カサゴのお出ましじゃ』

    2011/02/13 「鎌倉カヤ …

百歳生涯現役入門(176)『生涯現役/晩年の達人の渋沢栄一(91歳)①』晩年(70,80,90歳代)の人生を充実し、生涯現役で、元気で働いて『傍楽(はたらく』、臨終定年の『ピンコロ』人生こそ理想』★『日本資本主義の父・渋沢栄一(91)の「百歳生涯現役・晩年の達人」のノーハウ』

 百歳生涯現役入門(176)   平均寿命ではなく『健康寿命』とは「健康上の問題 …

『オンライン百歳学入門講座』★『一怒一老、一笑一若、少肉多菜 少塩多酢 少糖多果 少食「多岨(たそ)この字が正確 、少衣多浴 、少車多歩 少煩多眠 少念多笑、少言多行 少欲多施(渋沢秀雄)』★『世界最長寿の122歳を全うしたフランス人女性/カルマンさんの健康長寿法とは』

  2010/01/21 百歳学入門(3)記事再録 前坂 俊之 &nb …

no image
『百歳学入門』(225)-『60,70歳から先人に学ぶ百歳実践学②』-『長寿は芸術であり、創造者は長寿となる』★『 長寿の秘密「長寿遺伝子」のスイッチをオンにせよ』★『日野原先生流は「腹7分の1日1300キロカロリー」の食事減量』★『三浦敬三・雄一郎親子の運動、スクワット、筋トレの実践』

  『百歳学入門』(225) 『長寿は芸術であり、創造者は長寿となる』 &nbs …

no image
百歳学入門(24) 『画家は長生き』・奥村土牛(101歳) 「牛のあゆみ」で我が長い長い道を行く

百歳学入門(24)『画家は長生き』奥村土牛(101歳)「牛のあゆみ」で我が長い道 …

no image
日本リーダーパワー必読史(742)『歴史復習応用編』ー近代日本興亡史は『外交連続失敗の歴史』でもある。明治維新の国難で幕府側の外務大臣(実質首相兼任)役の勝海舟の外交突破力こそ見習え➊『各国の貧富強弱により判断せず、公平無私の眼でみよ』●『三国干渉くらい朝飯前だよ』』●『政治には学問や知識は二の次、八方美人主義はだめだよ』●『国難突破力NO1―勝海舟(75)の健康・長寿・ 修行・鍛錬10ヵ条」』

2016年10月28日/ 日本リーダーパワー必読史(742) 明治維新 …

 『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(102)』「パリぶらぶら散歩(2015/4/30-5/3)②―モンパルナス地区の南方、メトロMouton-Duvernet 駅近くの食料品店は早起き、カラフルでアートな商店街とその陳列を楽しむ②>

逗子なぎさ橋珈琲テラス通信(2025/10/11/am700) 2015/05/ …

no image
知的巨人の百歳学(156)/記事再録/『東洋一のビール王・宣伝王・馬越恭平(78歳)ー『心配しても心痛するな』★『元気、勇気、長生き、腹のおちつきーの<四気〉がいずれの事業を行うにしても必要で、これこそすべての原点』

日本経営巨人伝⑪東洋一のビール王・宣伝王・馬越恭平『心配しても心痛するな』 &n …

no image
『オンライン/新型コロナパンデミックの研究』ー『世界は6月、新型コロナウイルスと共生するニューノーマル(新日常生活)に恐る恐る一歩踏み出した』★『新型コロナ後の世界政治地図はどうなるのか』

  新型コロナ後の世界政治地図はどうなるか。              …

no image
日本リーダーパワー史(955)大隈重信の人格と人心収攬術、談話と交際の名人、125歳まで長生きするという智慧

日本リーダーパワー史(955) 物集高見(107歳)の思い出話は超リアルだよ。 …