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戦後80年・現在の自民党の生みの親・政界の最長老ともいうべき古島一雄の敗戦の弁を聞く』★『大東亜戦争敗戦の原因である軍閥・官僚統制国家を改革できなかった政治の責任を反省する』(昭和20年10月8日の手紙)

   

   日本リーダーパワー史(177)記事再録再編集
 

政治家必読<国難リテラシーを養う法

前坂 俊之(ジャーナリスト)
 
古島一雄(こじま かずお)1865-1952とは・・いまの自民党を作った「政界の最長老」であった。1945年8月、敗戦後の自民党総裁に推されたが、吉田茂を推挙した、以後、その相談役を務めた。いわば、自民党生みの親である。鳩山一郎も吉田茂、緒方竹虎も古島の教え子であり、現在の自民、民主党の2,3世議員はその孫の孫といってよい。いかに、70年前の日本はつぶれていったのか、古島ひいじいさんの話をきこう。
 
明治~昭和期の新聞人・政党政治家。兵庫県(但馬国)生れ。雑誌「日本人」、新聞「日本」「九州日報」「万朝報」などに関係。正岡子規が新聞社「日本」に入社した当時の編集主任。古島一念と名乗っていた。犬養毅の知遇を得て行動をともにし、第10回総選挙から衆議院議員に6回連続当選。
護憲三派内閣の成立、立憲政友会と革新倶楽部の合同を斡旋。第二次大戦後も鳩山一郎自由党総裁の後任に吉田茂を推すなど、政界の黒幕として知られた。1945年8月、敗戦後の自民党総裁に推されたが、吉田茂を推挙した、以後、その相談役を務めた。
 古島一雄の敗戦の弁
敗戦の理由も今となっては明白となったと思うが、何と言っても大きな理由は文武の不一致と陸海軍の対立が最後まで続いたことだ。
この事は他日、歴史的に記録すべきことと思う。
 

さらに回顧すれば,満州事変以来、軍閥に便乗したる官僚政治の失敗である。戦争を利用して国内改革を行おうとした二本立の計画が翼賛会となり、総動員法によりて立憲政治の外掘を埋め統制により政冶形態の変化させようとしたが、下剋上の風は帰するところがなく、闇の流行は道義の退廃をきたし法令百出、事務渋滞によって、かえって天下の不信を招き、一方,戦争の不利となると共についに極端なる暴圧政治を以て国民の耳目をおおうに至った。

われらもこれらの点に関しては忠告も進言したこともあったが、効果なく、たまたま具体的に公言すれば直に舌禍を招く。

 
僕が第一次近衛内閣の時、信濃教育会において講演したため憲兵に呼ばれた事があった。当時はまだ、威嚇的、宣伝的なりしが、その後、陸軍の臨時費の乱費によって志士浪人の骨を抜き、憲兵の跋扈によって、言論界(ジャーナリズム)の口を封じたのみならず、個人の会合もゲーペーウー式(ヒトラーナチの暴力政治)の監視によって、手も足も出ぬ様になった。
現に東条内閣の末路にいたっては、吉田茂前英国大使(牧野伸顕伯の女婿、戦後総理大臣)が近衛公と会合したことで遂に憲兵本部に逮捕されたようなことは実に陰険、悪辣を極めたり。
 
敗戦の原因は憲兵政治によりて、事実の真相を一切国民に知らさなかったことにあり、そのことが如何に重大なる誤りであったかを知る必要がある。
 
 戦況が不利となっていることはガダルカナルに至ってよく識者の間に知られ、サイパンを失うに至っては、海軍部内において陸軍に追随する海相を殺すべしと、激昂せる内情もあり次第に前途の失望を感じて、レイテ、硫黄島に至ってはほとんど大敗を予言するものも少なくなかった。
 
一方、カイロ会談の真相が伝えられて、皇室不安の念が起こったことにより、平和運動は地下で各方面に行なわれるようになった。
 
 東条内閣に対する不平不満の声はしばらくして激烈となって、倒閣をもって和平運動の前提となすに至り、東条はこれを目してバドリオ内閣の出現を計るものと重臣に憲兵をつけるようになった。もっとも平和論者中には種々の主張あり、先づロシアを利用すべしとするもの、英国を動かすべしとするもの、直に米国との談判を謀るもの、先づ、第三者の中立国を通してわれ立場を説明せしむべしとする者、あるいは近衛を起用すべしというもの、広田を派すべしと説くもの、さまざまあった。
 
要するにわが皇室の保存さへ出来れば、如何なる犠牲を払うのもやむむを得ずとするもの多数なり。僕も皇室なき日本の存在は無意味なれば、相手の真意の明白なるまでは戦を続けるしかないと激励したり。
 
 鈴木内聞の出現は無論、和平の目的のためだったが、万事、手後れのためついにポツダムの宣言となり、さらにロシアの最後通牒となり、原子爆弾の使用となり、ついに大詔(終戦)を仰ぐ結果となった。われらも満洲事変以来の事情はよく知っていた。しかし、軍閥と一戦する勇気もなく、なにもせず生きてきただけで空しく大詔に泣いた。
 

先輩に対して愧(は)づるのみならず誠に上下に対して自責の念にたえない。81歳の老骨を惜む程の命ではないが、セメテ再生日本の輪郭だけでも見て死にたいと思っている。

無論、太平、平和の世の中を開くのが主の目的なのはもちろんだが、平和々々の末が骨抜民族にならねばよいがと心配する。
 
かってからいっているように、日本国民は世界において最も幸福なる温帯に生活し、自然の大勢力に抵抗する必要もなく、従って支那人(中国人)のようにネバリもなく、また火山国民の特性としてアングロサクソン流の強靭性にも乏しく、さらに従来の教育が精神を主として、科学方面をないがしろにしたため戦争最後の切札が、わが肉弾と彼の原子爆弾によって表われたるが如き、皆もって最も戒めとするにたるであろう。
 
平和を説くにも国の間には根本に大差あるを知らねばならない。彼がデモクラシーを説き特にミリタリズム(軍国主義)の絶滅を叫ぶのはいいとして、(中略)日本再教育のねらいもここのところにある。ただこの度、無条件降伏受諾に当り、彼等が予期した紛争が鶴の一声によってピタリとやんだ実情を見ていまさらながら日本における天皇の偉大なる力に驚き、将来、統治上の利用価値ありと思ったに過ぎない。
 
さればコソ、マッカーサーの比較的、寛容な政策となり本国における新聞の反対を受けるようになった。マッカーサーは今、このジレンマにかかっている。従ってわれわれはこの真相を知って万事処理すべきである。従って再生日本は決して生まヤサシキ事業ではない。米兵が投下するチョコレートにアリがたかるような光景を見ては、目下、喪心状態にある国民が果して真実を基礎とする道義的精神を樹立し得る大元気ありや。コソナ事を思うと死にたくもあり、死にたくもなし。
(昭和二十年九月十六日の手紙より)
 
 (前略.既にラジオにて御承知のことと思いますが、昨日、幣原喜重郎より、入閣の上、援助を強要されたるも、老人の出る幕でなしとの趣旨にて拒絶した。組閣本部の吉田茂も友人の間柄なり。まことに内政には殆んど不案内なる幣原氏に対しては気の毒なりしも、何分目下の政情は急進に対して反動の起るは必然の勢いなり。
 
したがってこの際の起用の人物は頭の人より、むしろ肝(はら)の人を選ぶべきだ。幣原氏の陣容にては法制的な知識の人は揃へ得ても盲判を押し得る人がなくては、大革新をやることはできないとの意味の忠告をして交渉を打切ったものなり。(後略)
(昭和二〇年十月八日の手紙)
 
 <出典 鷲尾義直著『古島一雄』日本経済研究会1949年より> 
羽田空港展望台から撮影(2025/08/16)

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

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