前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『Z世代のための昭和政治史講座/大宰相・吉田茂論②」★『<国難を突破した吉田茂(84歳)のリーダーシップ』★『吉田茂は戦争反対で憲兵隊に逮捕されたが、そういう政治家でないと本当の政治家ではない。佐藤栄作、池田勇人は吉田学校の優等生だが、彼らは政治上の主義主張で、迫害を受けて投獄されて屈服しなかった本物の政治家じゃない』★『ところが80年たった今や自民党の2,3,4世の政治屋家業が約30%、江戸時代に逆戻したかのような政治状況と化している』(羽仁五郎)』

   

 2024/06/05 の記事再編集

マルクス主義歴史家の羽仁 五郎(1901-1983)のおもしろい「吉田茂論」がある。(『昭和宰相列伝』現代評論社、1980年刊)戦後、参議院議員となった羽仁は政敵としての吉田の土性骨を高く評価して、次のように語る。


戦時下の吉田茂の抵抗ー★今の政治家で国策原発に反対、抵抗した者が何人いるのか)

ぼくが最初に吉田茂に強い印象を受けたのは、1945(昭和20)年3月に、ぼくが北京で捕まって東京へ護送されて来て、警視庁の地下二階に監禁されていたんだが、その四月に吉田茂が憲兵隊に逮捕されたということを開いたときだ。そのとき、日本の政治家のなかにも同志とは言わないけれども同志に近いというか、とにかく軍国主義に対して抵抗する人間がいたということで、非常に強い印象を受けた。

いま日本にいるフランソワ―ズ・モレシャンというフランス人のファツションの専門家だけど、「日本に来て、日本にはこの間の戦争にレジスタンスがなかったということを聞いて、非常に驚いた。自分たちフランス人なんかはずい分レジスタンスで活動した。」というんだ。

モレシャンがびっくりするまでもなく、日本で戦争に抵抗する運動が起こらないということには、非常に不満を感じていたね。現にぼくのところで勉強していた、世間の言葉で言えば弟子たちでも、ぼくのあとに続いてレジスタンスをやれる人が全然いなかったというわけじゃないが、少なかったよ。

大学教授であれ新聞記者であれ、戦後を担って民主主義の名の下で活動している人でも、共産党員として活動している人でも、当時戦争に抵抗していた人は非常に少ないんだよ。だからそのなかで、吉田茂が憲兵に捕まったという報に接して実際、驚いた。『評伝吉田茂』にもかなりよく出ているが、つまり最後まで日本の戦争を回避する努力をしたのは吉田茂ただ一人だといっているように、日本の政治家に勇気のある人は一人もいなかった。

みんなが戦争に反対なくせに、軍部にたいして戦争反対だということを断言する勇気のあるやつは一人もいなかった。自分一人だった、というんでしょう。自分一人断言したから、自分一人憲兵隊に捕まったという意味だろう。

  • ペラペラ、感情丸出しでテレビや記者たちに、失言する最近のお粗末政治家とはハラ、土性骨が違う。

吉田茂が憲兵隊に捕まった、時にはほかのことは何もいわないで-葉巻を彼は愛飲していたんだね。サンフランシスコの会議に日本の全権代表として行ったとき、アメリカの新聞に、「日本から来た首席全権というのは葉巻のあとをついて行く小さな男だ」という漫画が出たというんだ。憲兵隊に捕まった時にも、葉巻のことしかいわないで、間もなく帰ってくるけれども葉巻を乾かしちゃうといけないからといって、葉巻の箱のなかに一枚一枚青い木の葉を入れておくという、そういう男だというようなことをいっていたよ。

猪木正道君が書いている本を見ると、一九三二年に国際連盟を脱退するときの松岡洋右が外国に行くときに、吉田茂が「脳病院に入って水でも浴びて気を鎮めてから出かけるんだな」と忠告したそうだね。相当のことをいうんだよ。

それから戦後もいち早く田中角栄にたいして「田中角栄というやつはしょっちゅう刑務所のへいの上を歩いているような男だが、不思議なことに中へ落ちないで、外へ落ちる」という、そういうのにもあらわれているように、現在、日本の保守党の政治家のなかで、政治家らしい政治家の最後の人だったんじゃないか。

牧野伸顕の娘が吉田茂夫人だから、そういう意味では反対だ。それで吉田はついに戦争の過程で外務大臣とか総理大臣という道を歩まないで、憲兵隊に逮捕されて投獄されるという道を歩んだ。そのことが、戦後になって吉田が首相になったという結果になり、広田弘毅は絞首刑、刑場に命を落とすことになった。

この間、中川一郎君(青嵐会、自殺)と『週刊読売』で対談した時に、自民党の腐敗ということは中川君も嘆いているんだが、この腐敗を脱却するためには自民党が野党になったほうがいいんだと。そのためにいまの革新野党に政権を譲るということがいいんだが、そういう気になれないか、といったら、絶対なれないというんだ。

そこでぼくは「君は一体野党になったことがあるのか」といったんだよ。いまの自民党の代議士は政治家じゃない。野党になったことがない。それから汚職とか破廉恥な理由でなく正常な理由で獄中生活を耐えしのんだことがあるかというと、もちろん中川君はない。「野党になったことはない、政治上の理由で投獄されてもたたかうといった体験もないというんじゃ、君は政治家としては一年生だ」といったら、彼は下を向いているんだ。

結論としては、吉田茂が憲兵隊に逮捕されても、戦争を防ぐためにたたかったというような、そういうのでなければ政治家ということはできない。佐藤栄作とか池田勇人とか、いわゆる吉田学校の優等生だというんだが、しかし彼らは実際は、そういう政治上の主義主張でもってたたかって、迫害を受けても投獄されても屈服しないという政治家じゃない。しかしいま日本が当面している問題にたいして、それぐらいの決意を持っていなければ、政治家ということはできないと思うんだ。いまだんだんそういう状態に近づきつつあるんじゃない?」 羽仁五郎(歴史学者)

以上は30年前の話。そして、3/11国難に遭遇した現在に登場したのが野田ドジョウ内閣、ノ―サイド総理大臣。もともと、政治哲学、政治上の主義主張にノ―サ―ドなどあり得ない。政治的サイドをはっきり打ち出すのが政党であり、総理大臣は政策を実行するためには一方のサイドに立って決断せざるを得ない。ノ―サイドはあり得ないのだ。

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(264 )/『日本画家・奥村土牛(101歳) は「牛のあゆみ」でわが長い道を行く』★『スーパー長寿の秘訣はクリエイティブな仕事に没頭すること』★『芸術に完成はあり得ない。要はどこまで大きく未完成で終わるかである』

     2019/01/11 知的巨人 …

no image
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 米国、日本メルトダウン(1048)>『トランプ大統領は弾劾訴追されるのか』★『トランプは大恩人のFBI長官解任で二度、墓穴を掘った』●『中国まで心配するトランプ「反科学政策」の現実離れ』★『どこが違う? トランプ・ロシア疑惑とウォーターゲート』★『トランプ降ろし第3のシナリオは、副大統領によるクーデター』★『北朝鮮危機が招いた米中接近、「台湾化」する日本の選択』

 ★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < アメリカ、日本メルトダウン(10 …

『Z世代のための日本最強の宰相・原敬のリーダーシップー研究③』★『藩閥政治の元凶・山県閥をどう倒したか②<立憲民主党は100年前の大正政変・大正デモクラシーを見習え>』

  2012/08/03  日本リーダーパワー史(290)記 …

no image
速報(11)『日本のメルトダウン』(3・11)を食い止める!17日目ー福島原発東芝元設計部長のコメントほか、情報

速報(11)『日本のメルトダウン』(3・11)を食い止める!17日目 福島原発東 …

『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座㊳』★『 児玉源太郎の無線・有線インテリジェンス戦争』★『日露戦争最大の勝因は日英同盟の中の極秘日英軍事協商(諜報(スパイ情報)交換)である』★『諜報同盟(ファイブ・アイズ「UKUSA」(ユークーサ)にはインテリジェンス欠如の日本は入れない』

 日露戦争最大の勝因は日英軍事協商(諜報交換) 日露戦争でこれまで余り …

no image
『異文化コミュニケーションの難しさ―< 『感情的』か、『論理的』かーが文明度の分かれ目>①

     月刊誌『公評』7月号―特集『実感』 『異 …

no image
日中北朝鮮150年戦争史(8)『陸奥外交について『強引、恫喝』『帝国主義的外交、植民地外交』として一部の歴史家からの批判があるが、現在の一国平和主義、『話し合い・仲よし外交』中心から判断すると歴史を誤る。

日中北朝鮮150年戦争史(8)  日清戦争の発端ー陸奥宗光の『蹇々録』で読む。 …

『オンライン講座/日本興亡史の研究⑧』★『児玉源太郎の電光石火の解決力④』★『明治32年1月、山本権兵衛海相は『陸主海従』の大本営条例の改正を申し出た』★『この「大本営条例改正」めぐって陸海軍対立が続いたが、児玉参謀次長は即座に解決した』

 2017/06/01  日本リーダーパワー史(8 …

no image
速報(119)『日本のメルトダウン』<敗戦の8/15を迎えて>『新たな小粒総裁選びで大同団結して,日本再生は可能なのか』―

速報(119)『日本のメルトダウン』 <敗戦の8/15を迎えて>   …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(75)』『音楽祭に「オザワ」の冠小澤征爾80歳への決意」『佐世保少女、暴走放置した父の世間体」 

     『F国際ビジネスマンのワールド …