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高杉晋吾レポート(9)闇に隠された「ふげん配管ひび割れ隠蔽」のショッキングな証言—森田渓吾の原発建設段階で話②

   

高杉晋吾レポート(9)
闇に隠された「ふげん配管ひび割れ隠蔽」のショッキングな証言
森田渓吾、原発建設段階での黒い話—②
       
         インタビュー・高杉晋吾(ジャーナリスト)
 
 
 
大地震を隠す浜岡原発、三つの偽装とは
 
浜岡原発の問題では谷口雅春という人が『自分は浜岡原発圧力容器内の担当をしていた。その方が、浜岡原発の1972年5月ごろの会議で、各部門が集まる会議で、ある担当者が「いろいろと数値を計算してみたが、浜岡原発は岩盤が弱く地震が来るともたない」と発言して集まった担当者たちにショックを与えた。
150年前に大地震が起きていて、ひび割れだらけだ、という事実もある。ところが会議では『データを、地震に耐え得たように偽造しよう』と結論を出し、「地盤の強度を測定しなおしたら実は岩盤は強かったのが分かった」『原発の建築材料を実際より強く見せかける」『地震の周波数を書きかえる』という偽造を行ったと云うんです。全く森田さんの経験の通りのことが浜岡原発でも行われているんですね。
 
M、私も、福島第一の事故が起きるまでは、正直、ここまでの事故が日本で起きるとは想像していませんでした。また、津波の想定についての経緯を知るにつれ、その酷さにあきれましたが、過去に私が関与したクラックの隠蔽も同じくらい酷いものだったことに改めて気がつきました。現場にいて、「これくらいいいだろう」と思う事の蓄積が、福島の事故を起こしたのだと思います。
 
T、森田さん、私はダムの問題について30年以上も前から取材してきました。巨大な構築物を河川や渓谷に作ることを許可する国の有り方についての批判をしてきました。原発の許可をする国の在り方についてもダムの許可をする国の許可も同じですね。
この地域で起こった最大の地震や津波はこの大きさだった。これから来る津波もそれで予測しよう。それを防ぐことができる施設を作ればよいと。
それがいわゆる治水や地震の予測ですよね。ところが地球が起こす現象は予測などできない。次から次へと『予測を超えた現象』が発生する。地球は人間の浅知恵で測り知れるものではない。
 
企業は人命よりも利益などの数量化でしか動かない
所が近代化社会では人間は巨大施設で地球活動に逆らおうとする。巨大施設を作るのは巨大企業です。企業は決められた数量でしか事業の展開ができない。
企業はどんな商品を作るにも、材料、購入、設計、製造、検査、納品、融資、すべてが定量化していなければ動けません。国の建設費用の予算はいくらある?じゃあ、その範囲で利益を出そう、ということになる。企業が事業化するということはそういう数量的計算に基づく。
ダムも防波堤も同じです。ダムを作る場合でも、企業は発注者に「どんなダム計画か、そのダムはどんな規模か」と聞きます。これが治水プロジェクトに関わる企業の絶対条件です。しかし、東日本大震災での津波被害を見れば分かるように、どんな規模の津波が襲ってくるかどうか、実際は予測できない。したがって、水害規模の定量化もできない。数量的に予測がつかない地震や津波に対して、数量を決めて造る施設を許可することなど出来っこないはずですよね。より膨大な津波が襲っているぞ。そうかでは限りなくでっかい防波堤を作ることにしよう。そんな国家予算も行政の予算もない。数量的に考えると無限の地球災害に人間は対抗できないはずですよね。
しかし現実にはダムや防波堤が国や自治体によって許可され、企業がどんどん治水施設を作っています。国は予測できない洪水や津波を「予測した」と称して、許可を与えているにすぎません。谷口さんの経験で分かるように、原発を作ることを至上課題にして予測しないで許可を出しているとしか言いようがありません。
M、その通りですよ。予測できない地球の現象は定量化できないのに、定量化しなければ事業にならない企業のプロジェクトが許可されるのは矛盾です。だからいろいろと嘘を重ねることになる。
国が原発建設を許可する基準は原子力安全委員会が決めている「原発の安全設計審査指針」があり、詳しく原発建設の時、どうやって安全設計をするのか、という条件を規定しています。地震、津波、洪水など自然現象についての安全設計の条件が、
『指針2、自然現象に対する設計上の考慮』
という項目で書かれています。その内容をかみ砕いて書くと
「原発を洪水、津波、風、凍結、積雪、地滑り等から守る。そのために、過去のこれらの災害記録をくわしく調べて、どんな過酷な災害にもそれぞれに対応できる設計をする」
と書かれているのです。さて、この指針に書かれていることが守られたのかと言えば先述のように津波の歴史を調べていさめた岡村信行さんという産業総合研究所活断層研究センター長の貞観(じょうかん)地震の事実について提言を「えい!原発促進の邪魔をするな!」とばかりに鼻の先であざ笑って無視し福島第一原発が設計され建設されたというわけですね。
 
原発推進が錦の御旗、安全設計指針など守ったら原発はできない
 
 
T、35メートルの台地だった福島第一原発の敷地をわざわざ25メートルも削って原発敷地を造成し、15メートルの津波に襲われて大被害を出し、住民を果てしない死と逃げ惑う恐怖にさらし続けるというのは、まったくコスト削減という企業の定数化の原理によるものです。しかしそれは安全設計指針に反することです。しかし命の安全と定数化による企業論理とは相容れません。それでも、これらを許可した国の原子力安全委員会は、大企業が「原発を建設する」と云ったら何も言わずに許可してきました。
 
「安全設計に関する指針2」などは、偽善も甚だしいお飾りだったのです。というのはこの基準を作ったのは経済産業省ですが、これを破ったのも経済産業省であり自民党等の政治です。自分で作って自分でこれを無視し、指針を破棄してしまうのですから、この事実を知れば自分たちは悲喜劇的な愚者に支配されていることに改めて怒りを覚えるでしょう。そのことを証明したのが今回の大津波であり、人間が証明したのではなく、地球が証明してくれたのです。
 
M、その通りですね。原子力は潜在的に大きな危険性を内在していることは、従来から解っていたことです。今回はそれが顕在化してしまいました。
 潜在的な危険を顕在化しないためにさまざまな工夫が取られていることは事実です。それらは、英知の結晶と言っても良いと思います。しかし、それらの英知は残念ながら、営利主義のもとで、ズタズタにされています。目先の利益に追われ、狡をして嘘をついているからです。
 
おそらく、狡や嘘がなければ、かなり事故は防げると思います。しかし、原子力の分野に限らず、人間はまだ、おそらく永遠に、狡や嘘を防ぐ方法を見いだすことは出来ないのだと思います。
でも、潜在的な危険が桁違いに大きい原子力に限っては、狡や嘘を防ぐことがどうしても必要なのです。その点が原子力の特殊性です。
 そんな大変な思いをしなければならない原子力を人類は選択する必要性はありません。もっとコストの安いエネルギー源はいくらでもあります。少なくとも、原子力に注いだ英知をもってすれば、その方が合理的であることは明らかです。それこそが科学の進化だと思います。
                              (おわり)
 

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