明治150年歴史の再検証『世界史を変えた北清事変⑧』-服部宇之吉著『北京龍城日記』(大正15年)より④』★『服部の目からウロコの中国論』●『科学的知識は皆無で迷信/虚説を盲信して夜郎自大となった清国。一方、西洋人は支那を未開の野蛮国として、暴虐をくわえて義和団の乱、北清事変に爆発した』
2017/08/29
明治150年歴史の再検証『世界史を変えた北清事変⑧』
ここにおいて、また例の論法によりて、その裡面になにか別に意味あるべしと捜し求めて、ついに西人(西洋人)は小児を殺して春薬をつくり、病院にては死者の脳をとりて謎薬(これは小児を誘拐するのに用に供すと称せらる)を製し、また眼晴をとりて、写真術、冶金術などに必要なる薬品の材料となすなどの説をなせり。
これらのことは、呉徳芝の紀事、魏源
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%8F%E6%BA%90
の『海国図志』、夏變の中西紀事などに載せられて人口に膾炙し、また支那人をして西教を疾悪せしむるの一因となりぬ。
なにごとにても容易に信じ、また科学的知識に乏しき支那人のこととて、これらの妄説およびこれに類する幾多の妄説は、今もなお西教に関していい伝えられ、また信ぜられつつある。
以上はすべて謬見(誤謬)に基づくものなれども、西教(キリスト教)反対の理由としては相当に有力なるものであり、ことにその反対が教義に関するよりは、宣教師、一歩を進めては、西洋人その人に対する嫌悪の情を惹起せるものとしては、今回の事件(義和団の乱)の遠因のと見るべきもであろう。
前述のような理由により、西教反対の気焔は当初より盛んであったが、伝教以来、歳月がすでに久しく経過したにかかわらず、未だ多数のキリスト教徒を得ることが出来ず、
そのうえ、すでに得た教徒は、少なくもその十の九は、中流以下の社会に属する者で、今日においては、キリスト教いまだに中流以上の社会に入り込むことができていない。
このようにキリスト教が、わずかに中流以下の社会にのみ行なわれていることは、一般人民や官吏らが、キリスト教とその宣教師、教徒とを疾悪仇視(しつあくきゅうし、 憎悪して仇のように敵視する)になった原因でもある。
そのゆえは、支那人の実利を愛する性質より打算するに、かりに西教(キリスト教)が、支那従来の教義、風俗、慣習などと撞着することなしとしても、もっぱら真理のために真理を愛すなどいうことは彼らに望み得べきにあらず。
ここにおいて教士らは、実利をもってこれを招誘する必要を感ずべし。
しかるに、前述のごとき理由にて、中流以上の人士は、その多少読書の素養ある者は、西教と支那、従来の教導との撞着をみて西教をしりぞけ、しからざる者は、教士の与え得べきほどの実利は、多くはすでに他の方法によりてこれを得おるより、実利によりて誘われる者はきわめて少なし。
原来、支那にては、行政・司法の執行は、その第一着、すなわち人民と直接に関係する部分においては、一に地方官の手裏において伸縮自在なるゆえ、実際において、人民の生命財産に対する保障は皆無の有様なるも、また一方には、別にある範囲において、これが保障を得るの途あり。
すなわち、古来学問を重んじ学士を尊ぶ国柄のこととて、秀才、監生、官吏などは、その秀才たり監生たり官吏たるのゆえをもって、生命財産に対するある度の保障を与えられる。
清朝にて国初捕納
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/155613/1/JOR_67_4_646.pdf
の例を開き、爾後、国帑欠乏のゆえをもって、ますますその例を増拡したれは、多少の財産ある者は、金穀を納れて監生となり、または官吏の資格頂戴を買うを常とす。しかるに中流以下の者には、この方法を利用し得る老少なきより、教士の保護によりて己が生命財産の安全をはからんとす。
支那にては地方官が、行政・司法の執行につき意外に大なる権力を有し、法を伸縮し得るゆえ、もし地方官を凌駕抑圧する勢力を有する者あらは、その人は実際において一地方に雄視横行するを得べし。
いま教士は、外国人たるのゆえをもって、ある特権を有し、かつ本国政府の後援をたのみて隠然、地方に雄視するをもって、地方官に対して相当の勢力を有す。
ここにおいて、その勢力を利用して教徒を保護せんとし、小民はその保護を利として西教に入る。教士が教徒を保護する事情は、もとより一様ならざ
れど、支那においてもっとも恐るべき民刑訴訟、もしくは徴税のことに干渉容喙することもっとも多し。
因襲の久しき教士は、その勢力と自国公使館または領事館の後援とをたのみて、理非曲直のいずれにあるを問わず、まげて教徒を保護し、教徒は、教士をもって護符となし、郷曲に武断するの極に陥りしも
の少なからず。これ一般人民および地方官吏らが、教士および教徒を疾患するに至りし所以なり。
(中略)
また支那在留の西欧人中には、支那を未開の蛮国と一般に見なし、したがって支那人に対して、文明国人としてはなすを恥ずべき暴虐を加えて怪しまざる
者少なからず。これまた洋人(西洋人)に対して悪感情を懐く所以の一なり。かつ前述の事情より容易に見得べきがごとく、洋人が支那にあるがため、洋人と支那人との間に事端(事件の発端)を醸すこと少なからずーそのつど地方官も人民も多少の迷惑を感ずるより、自然に洋人なからましかばという念を起こきしめたり。
しかして従来の歴史において、支那人は自分よりも文化の程度高き人民に接したること少なく、ことに古(昔)にありては、支那の文化ははるかに四隣の種族の文化に優りしゆえ、自然高く自ら標置するのふうをなし、ついに習い性となりて、今もなお夜郎自大(やろうじだい、自分の力量を知らずに、いばっている者のたとえ。「夜郎」は中国漢の時代の西南の地にあった未開部族の国の名。「自大」は自らいばり、尊大な態度をとること。)http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CC%EB%CF%BA%BC%AB%C2%E7
のふうあり。
かつ支那人は、一般に自ら足れりとする性質を有するをもって、自国以外に求むることはなはだ少なし。
今日、支那人に第一の短所とすべきは、科学的知識の欠乏と、科学の応用によりて起こりし工業のほとんど皆無なることにあれど、学者の多数は、屈するを好まざる個性と、知力の粗大にして毫釐(ごうり、ごくわずかなこと。ほんの少しの意味)分析する推理力の発達せざると、道徳、政治など人事を目的とするもののほかに、学問と称すべきものなきがごとく思える偏見とより、西洋のいわゆる科学なるものは、その源みなわれにあり(周易、墨子などの書をさす)といいて自ら満足し、深く研究せんとたさず、
一般人民は火車、火船、電信機などをもって、ほとんど玩具と同一視して、またその性質構造などに心をそそがず、かくのごとき風をもって、いたずらにわが自らみとめて長所となすを知るのみにて、わが短と彼の長とを知らず、己れをもって足らずとして他を求むるの念薄し。
この心理は支那人をして、一方にては、中国が彼(西欧諸国)に求むるところなきに彼(西欧諸国)しきりに中国に貿易を求むるところあるは、一は彼が足るを知らざる虎狼心(ころうしん、 欲が深く、残忍なことのたとえ)あるにより、一は、かの国が他に求めなければならないほど劣等の国なるによると思わしめ、他方にては、外洋と交通を絶つも、われに損するところなしと思わしむるに至れり。
これに加うるに、古来容貌威儀を重んじ、外面の相貌と内部の知徳の間には離
るべからざる関係ありと信じ、中国人の容貌威儀をもって、もっとも高尚なるものとし、最高の知徳を表するものなりと自信せることゆえ、洋人の容貌服飾が、古来蛮夷として賎しめたりし人種のそれに近似すると見ては、単にこの一点よりしても、洋人(西洋人)に対して敬愛の念を起こし得ざるなり。
以上は支那人が、宣教師および延いては一般の西洋人に対し悪感情を懐き、もしくは、少なくも好意を有せざる理由の大略なり。
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