前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

ジョーク/ミステリ―?日本史(7)明治のトップリーダーは超人、奇人、変人ぞろい<アルコール中毒で妻を切り殺した疑惑が浮上した2代目首相・黒田清隆>

      2016/04/11

ジョーク/ミステリ―?日本史(7)

明治のトップリーダーは超人、奇人、変人ぞろい

アルコール中毒で妻を切り殺した疑惑

が浮上した2代目首相・黒田清隆」>

 

前坂俊之(ジャーナリスト)

 

★「フリー電子図書館<白柳秀湖の「黒田清隆」論>
=【親分子分政党編】(千倉書房1932年刊 85161P

http://book.maesaka-toshiyuki.com/book/detail?book_id
=127&article_id=4386

 

★「フリー電子図書館「快傑黒田清隆」(1ページ/10ページ)

http://book.maesaka-toshiyuki.com/book/detail?book_id=124

 

黒田清隆(2代目総理)が妻殺し? 原因はアルコール中毒!?

二〇〇九年二月、ローマで開催されたG8の蔵相会議で、麻生太郎首相の盟友・中川昭一財相が酔っ払ってのヘロへロ会見で、世界に恥をさらし辞任に追い込まれた。「政治は宴会で動き、酒と女から生まれる」--明治以来続く日本の「宴会政治」の悪しき伝統の中でのスキャンダルである。

大蔵大臣の酒スキャンダルでは、昭和二十三年(一九四八)十二月、吉田首相時代に「トラ大臣」と異名をとった泉山千六蔵相が、酔っ払って国会内をふらふらと千鳥足で一升瓶を持って歩き回って、女性議員に抱きつきキスをしたセクハラ事件を起こしてクビになった。明治政府のスキャンダルでは、もっとでかい事件がある。

明治二十一年(1888)に第二代首相になった黒田清隆は『少年よ、大志を抱け」

で有名なクラーク博士を招いた北海道開拓使長官を務め、また参議でもあった。

その黒田の酒乱ぶりは有名で、明治十年、親友の西郷隆盛が非業の霧を遂げて以来、特に酒量が増えた。その黒田が酒にのまれて妻殺し(?)のスキャンダルを起こしたのは、開拓便長官時代のこと。

黒田は酒が入ると、突然人が変わったように乱暴狼籍をはたらき、からんだり、どなったり、刀をふり回すくせがあった。毎晩のように飲み歩いて、帰って来ない。

新橋あたりに何人もなじみの芸者があって、入りぴたりで酒と女に狂っていた。

夫人は旧幕府旗本の中山勝重の娘お清で、十五歳で黒田家に嫁いできたが、病弱で二人の子供は夭折した。二十歳のお清はこの時、三人目を妊娠中でお腹が大きくなっていた。このため、黒田の遊びは一層激しくなっていた。

事件が起きたのは明治11年三月二十八日。東京・芝神明の待合から泥酔して麻布の自宅に帰った黒田は、夫人がすぐに出迎えなかったことや、嫉妬がましいことをいったとかで癇癪をおこし、いきなり床の間にあった日本刀を抜いて夫人を斬り殺した、というウワサが流れた。

この夜、周辺の人々から女性の悲鳴を聞いた、血染めの着物が焼き捨てられた、などのうわさが大きくなった。「蹴り殺した」とも巷間伝えられたが、この一件は闇から間へ葬りされようとした。政府はこの事件の新聞掲載を禁止したが、官武外骨の『団団珍聞』や各新聞が黒田とは特定しなかったものの、「某参議の家庭素乱」、「国法ついに大臣に及ばず」と書き立てた。

政府も黙殺できず、大臣会議を開いて協議して、最も親しい友人の大久保利通が責任をもって処置すると言明した。

指示された川路大警視は「病死か変死かは、遺体を検分すればわかる」と翌日墓地に行き、夫人の墓からお棺を掘り出して、死体をさっと検分し「皆よくみろ、他殺の形跡はないではないか」と、すぐに元の通りに埋めめ戻してしまった。

この二ヵ月後に大久保は暗殺されたが、その斬好状にはこの事件をもみ消した点もあげられていた。

また、別の証言もある。千坂高雅の証言で、明治四十三年十月十九日の『報知新聞』に掲載された。

「おれの娘が、お清の妹と親友で、その晩に泣き込んで来た。黒田が女房を殺したという。すぐ黒田邸へかけつけると、蹴殺したものには間違いがない。黒田の帰ったのを見てお清がうるさく云うから、黒田は酒気に任して何だと怒鳴ったかと思うと、ドタンパタンと音がして、女房はキヤーと言って倒れた。起こして見ると、血を吐いて死んでいた。おれが行って見ると、黒田は真っ青になっていて、女房は蒲団の上で血を吐いて死んでいる。

医者を呼んで吐血して死んだという鑑定にさして診断書も書かした。そして、

すぐそれを埋葬してしまった。大久保内務卿はその時留守であったが、騒ぎを開いて帰ってきた」

「内閣会議を岩倉具視公の屋敷で開いた。議長は三条(実美)公さ。伊藤(博文)も死骸を発掘して真相を糾せという。司法卿・大木喬任は発掘すると政府の威信に関するという。大久保はただ黙っている。

最後に、ようやくロを開いて、『世間では大変やかましいそうだが、女房を殺した形跡はない、どういう証拠からお調べなさる。私は全然、不同意である。黒田とは同郷で親友ですから、自分の身に引き受けて、保証いたします。大久保をお信じ下さるなら黒田をもお信じくだれ』と、ピーンと一言やった。

猛り立っていた参議連中も、この一言で黙ってしまった。議論屋の伊藤もすっかり黙ってしまった。三条公は『内務卿のお言葉に御疑惑はありませんか』と言われたが、『皆が疑惑はありません』と頭を下げた。自然と世の中の議論が鎮圧されてしまった」(佐々木克編『大久保利通』講談社学術文庫、65-69P)

 

この黒田清隆夫人の死に関する話は、『報知新聞』に十月二十七日掲載された大久保利通の連載「十四人を知るの明」の記事のあとで、「記者の筆記に誤りがあった」という理由で、全部取り消されているのは何ともミステリーである。

<以上は「痛快無比ニッポン超人図鑑」前坂俊之 新人物文庫(2010年)>

 - 人物研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本メルトダウン,カウントダウン(905)「舛添問題は金にケチな人格などではない。 政治家に一番必要な『危機管理能力」の全くない東大(無灯台)組が 『無防備都市・TOKYO」のトップに居座っていること」★『政府は約3千億円を つぎ込み熊本地震まで38年間の『 巨大地震』の予知に全部失敗した<ロバート・ゲラー東京大学理学系教授の 正論>』

  日本メルトダウン,カウントダウン(905) ①舛添問題は金にケチな人格などで …

no image
速報「日本のメルトダウン」(519)東京都知事選に脱原発めざし「細川・小泉元首相タッグコンビ」が出馬か、大歓迎する。

  速報「日本のメルトダウン」(519)   ★☆ …

no image
★『アジア近現代史復習問題』・福沢諭吉の「日清戦争開戦論」を読む(2)ー「北朝鮮による金正男暗殺事件をみていると、約120年前の日清戦争の原因がよくわかる」★『脱亜論によりアジア差別主義者の汚名をきた福沢の時事新報での「清国・朝鮮論」の社説を読み直す』★『金玉均暗殺につき清韓政府の処置』 「時事新報」明治27/4/13〕』

 『アジア近現代史復習問題』 ・福沢諭吉の「日清戦争開戦論」を読む(2)ー 「北 …

no image
日本リーダーパワー史(343) 『最強のリーダーシップー西郷隆盛の国難突破力』 『情においては女みたいな人』(大久保利通の西郷評)

日本リーダーパワー史(343)  ● 『最強のリーダーシップ …

『Z世代のための世界現代史入門講座』(23年4月20日まで)ー『混迷する世界と「チャットGPT」●『トランプ前米大統領の裁判』●『プ―チン氏の戦争犯罪』●『習近平氏と台湾有事』●『日本の話題はWBCと大谷選手に集中』★「チャットGPT」が日本の救うのか』

  混迷する世界と「チャットGPT」   『米国+NATO+ …

no image
『鎌倉釣りバカ人生30年/回想動画録』⑰★『コロナパニックなど吹き飛ばせ』★『10年前の鎌倉沖は豊饒の海だった』★『美しい鎌倉海』で海の恵みをいただいて「天然生活」ー釣った魚をおいしく食べる。

    2016/06/23 &nbsp …

<まとめ>日本最強の外交官・金子堅太郎ーハーバード大同窓生ルーズベルト米大統領を説得して いかに日露戦争を有利に進めたか

<まとめ>日本最強の外交官・金子堅太郎について①― 金子堅太郎はハーバード大学同 …

no image
日本リーダーパワー史(414)『魔王と呼ばれた明治維新の革命家・高杉晋作』<歴史読本(2013年1月号)に掲載>

 日本リーダーパワー史(414) 『魔王と呼ばれた明治維新の革命家・高 …

no image
日本リーダーパワー史(44)国家戦略・リーダーシップ・インテリジェンスの日露戦争と現在の比較論①

  日本リーダーパワー史(44)   国家戦略・リーダーシッ …

no image
「昭和史決定的瞬間/名シーン』-『1941年(昭和16)12月3日の山本五十六連合艦隊司令長官の家族との最後の夕餉(ゆうげ、晩ご飯)』★『家族六人一緒の夕食で山本も家族も何もしゃべらず無言のまま』(日本ニュース『元帥国葬」動画付)

山本五十六の長男が回想する父との最後の夕餉(ゆうげ) 昭和十六年(1941年)1 …