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日本リーダーパワー史(394)ー尾崎行雄の「支那(中国)滅亡論」を読む(下)『清国に戦闘力なし』―目からウロコの日清戦争論

   

    日本リーダーパワー史(394

 

日中韓150年対立・戦争史をしっかり踏まえて対中韓

外交はどう展開すべきか➂

ー尾崎行雄の「支那(中国)滅亡論」を読む(下)

1901年(明治3411月「中央公論」掲載)

『清国に戦闘力なし』―目からウロコの日清戦争論

(古代から変わっていない戦法)

 

前坂 俊之(ジャーナリスト)

 

 

この『清国滅亡論』の全集第4巻(1955年)収録の【解説】によると、次のように書いている。

1884年(明治17)年秋、尾崎行雄は25歳で、報知新聞特派員の名義で支那(中国)に遊び、上海を中心として支那及び支那人(中国人)を観察して帰国した結果、征清論(日中戦争論)を主張した。

支那(中国)は当時清朝の支配下にあったが、その実体の無力、無秩序なるにもかからず、支那人は尊大自負(中華思想)で、一方の日本人は過度な支那心酔(中国崇拝)に陥っていた。尾崎が征清論を唱えたのは清国(中国)と一戦を交えてその無力、無秩序を暴露すれば、支那人の尊大自負と日本人の過大な支那心酔とを一挙に是正する効果ある、と考えたためであった。

 しかし、尾崎の征清論は当時一笑にふされ、熱心にこれを唱えた尾崎はクレイジー扱いされたほどであった。ところがその後十年を経て日清戦争が起ると、日本軍は大勝し、果して尾崎の観察の正しかったことが証明された。

 この文章は支那観に関して行われた演説の大要であって、1901年(明治3411月号の中央公論に掲載された。(尾崎咢堂全集第4巻に収録、1955年刊)尾崎は愛国心、戦闘力、政治能力の三つが国家発展の基であるが、清国にはその何れもないので滅亡への途をたどらざるを得ないとの結論を下して、まさにその通りになったのである。

 

さて、この尾崎の対中国論が発表されてから、現在110年を超えた。

今再び、日中関係は尖閣問題をめぐって軍事緊張が続いている。110年前の中国認識は大きく変わったのか、清国の中華思想、中華優越思想は未だに続いているのか、
一党独裁共産主義国家(非議会民主主義)皇帝支配の封建主義と変わりないではないのか、国際法を相変わらず順守せず、大国意識丸出しの、汚職大国の恐るべき実態も改善されたのか、張子の虎の軍隊の実態も変わったのかー『日本議会政治の父』「憲政の神様」尾崎が中国にわたって上海に2ヵ月間、生活した中での迫真の対中国レポートである。

  

        支那に戦闘力なし

 

 第二の戦闘力、是は説明の必要はない、日清戦争の有様でわかって居る。又昨年の義和団の時にても分って居る。

少しも戦をなす力といふものがない。それ故に何れの国でも戦いさへすれば徒手で取れる。ロシアが満洲を攻むれば満州はロシアのものとなる、ドイツが膠州湾を攻むれば膠州湾はドイッのものとなる。

 

英国が威海衛を攻むれば威海衛は英国のものとなる、支那には戦闘力、防御力がない。その外国の所有となる。この一事を見ても支那に戦闘力の無いといふことは明かなことであります。

 

なお一方より少しく論ずるなれば、今日支那に戦闘力のないといふのみならず、支那には昔から無かったのである、

さらに適切に謂へは戦闘といふことは無かったのであります。三国志や漢楚軍談なぞを見れば、非常の景気で戦ひのことが書いてある。流血杵を漂はすといふ恐ろしいことが書いてある。

 

いづれの戦も、戦毎に支那の戦争には餅春道具を持って出たものと見えて(笑)、持春道具は支那の戦争には関係があったかは知らぬが、戦いといふものは支那

には昔しからなかったのである。何故ないかといふことを証明するに、戦ふには道具がなければ戦われない、最もクビライの元寇の戦などもありましたけれども、これも吾々のいふところの所のいわゆる戦ではない。吾々の戦争なるものは必ずや一撃の下に人を殺すやうな武器を以てしなければならぬ。

 

元寇の役もかくの如き武器を以てした戦争でない。一撃の下に人を殺すやうな武器が支那に有ったかといふに私は無いと信ずるのである。

 

 支那には昔から武器らしき武器がなかつたから戦争といふもののあらう筈がない。先づ支那に就て武器と名づくべきものを求むるに外国から這入ったものはありますが、支那には固有の武器がない。

 

外国の武器は現にわが国の鉄砲であるとか日本刀であるとかは何十萬といふを輸入した。然し国有の武器にして強いて名を附くべきものはどんなものであるかといふと、遊就館(靖国神社)に大分陳列してありましょう。

大きな青龍刀のごとき二三人かかりでかついでも大きなもので、人を斬ると云うような便利なものでない。二人三人で振廻はす所でない、かついですら重いといふ武器では人を殺すことに就きましては不便なものと言わければならぬ。

その構造はは大抵何れも大きなもので、その刀すら多くは掌で振廻はせませぬ。四本芸五本の手を借りてきて振り廻はす位のものに作ります。殊に可笑しきはその武器に力を用うるのは、青龍刀なり剣なりその他、皆その刀と柄の継合の所、鍔許に大変注意をしておる。

 

 

日本の刀は人を斬る故に鍔許を大変に堅くすることを注意致しまするが、支那はそれの反対である、できるだけ緩くするやうに注意する、そしてその間に鳴金を入れる、緩くして鳴金を入れるからして、ガチヤガチャいう、それが即

ち戦争をするときの道具である。ガチャガチャと非常に大きなものを持ってきて、敵が見て恐れるように作る。それが支那人のいふ武器といふものである、

その外になお大切な武器あります。旗・太鼓、どら、皆、支那では非常に大切なものとして、殊に旗などは日本の兵士が国に帰って分配したところの数から見ても、支那の軍営は呉服屋のやうに旗が並べてあるのである。

 

日本の兵隊はどこへいっても大変に旗を持って帰っております。日本では三井の呉服屋でありましても、あれ程の旗をとることは出きません。支那の兵営ににはこの通りの旗がある、これは何を意味するかといふと、支那の戦いの道具は刀は鋭利でない、刀は大きくして鳴らしさへすれば宜い、鉄砲も青龍刀も大きな音さへすれば宜いやうに作られてある。(哄笑)どうしても人に見られるやうに旗を大きくして立てなければならぬ、ドラもやかましく鳴らなければならぬ、旗、銅鑼・太鼓といふものの如きは、吾々の鉄砲よりは支那の軍法に於て必要なるものである。

 

 支那の行軍を望みますると、干流の旗を押し立てるように見えます。実際において兵隊は旗持ばかり占めておる。兵隊の中で約3割以上は戦の用に足らぬ。貴方型が遊就館(靖国神社)に行ってご覧の如く中々大きい非常の旗がある。風でも吹いた時には旗下に四、五人位おらなければ進めません。それをあの通り押し立てる。その下に中隊旗というべきものがある。

嵐に吹かれるときは吾々の如き弱いものには中隊旗すら持って行く勇気はない。その下に小隊気旗がある。これも大きい、その小隊旗は殆んど全軍悉くもっておるといふことであるが、3人に1人位もっている。

何でも大したもので、各各、旗を持ち大きな青龍刀を持ち、戟をも銅鐸・鼓・鉄砲を持って参ります。しかしながら千手観音でない以上はその鉄砲は撃つことは出来ない、これが支那の兵隊組織になっている。

 

 

この兵除は陣営に臨んで如何なることをするかといふと、旗竿千里掩ふ、第一満目・山も野もことごとく旗を以て満つるといふ程、たくさんの旗を押し立てる、さうしてその上に青龍刀、戟といふものを陣頭に並べ立てる、則ち剣戟林の如く建てるのである。それから鼓を鳴らし、銅鑼をドンく鳴らして行く者で、さうすると先づ、旗の少い鑼鼓の少い方は徐々に逃げる。敵が逃げるから味方が追ふ、それが支那の戦である。それより外には昔から支那の戦はなかったのである。

 

道具がないから戦のできようはずがない。或は支那には大変な名剣の有ったといふことであるが、併しながら是は考吉学者の取調べた所に依ると銅の剣であったといふことである。

 

銅の剣といへば先づ豆腐屋で豆腐を切る庖丁に少しきの利いた鋭利の物と見て違ない。木の刀、若くは石の刀の時代には、銅の刀でも非常に鋭利のものとして使ったもの故、それと比べれば鋭利のものである。

                 

 支那の剣術の法を見ても、斬れるといふもののないのがよくかに分る。大抵、刀をどこにつるすすかといふと多くの兵隊は抜刀をつるしておる。これが鋭利ものなら大変である。支那の剣術の第一義は敵の刀を左の手ではらつて右の手で自分の刀を以て敵を突くのである。

若しこれが日本の刀なら大変である。左りの素手で敵の刀を拒げばその手はたちまち斬落される。ただ支那の刀でもどこが傷位つくものと見えるが、握っても、はらっても、怪我をせぬのが剣術の法で、そういう風の仕組に教へて居るから、これを以て見ても支那には鋭利なる刀のないということは分つておる。

 

かういう有様なので支那では戦らしき戦は古来どうしても出来ぬ。支那人はこの事につては昔からいっております。ただ吾々の書物の見方が悪い、支那のことを吾々は誤解しております。支那人は正直に白状しております。

 

両軍決戦の有様を「旗鼓相当」と書いてある。旗と鼓が相当たる、旗と鼓の競争でその多い方が勝つ、同数であれば戦が決せぬ、昔からの戦争は旗と鼓と相戦うたのである。(拍手喝采) かくの如き有様で支那には昔から戦というものはなかったので、今日もなお戦うことは出来ぬ。何れの国が攻めても徒らに逃げるから国をとられてしもう。

 

先年の日清戦争に於ても、昨年の義和団の騒ぎにおいても、義和団は詰らぬ百姓一揆の如きものでありましたけれども、是も直接後楯には端郡王もあり、其の奥には女帝であるところの先の西太后であるとか、その他清朝の官衛全国五十万の猛将兵を通じておったのである。

 

その場合において西欧列国の進入した兵隊というものは、日本・ロシアなどその兵隊は皆合せて五、六万に過ぎぬ、それも烏合の兵である。列国各々制度を異にしたる兵隊を以て50万の兵と朝廷及び全国の民心に関係を得ておるところの義和団なるものが、ご存じの通り見苦しき結末となったのはわずか四、五ヵ月の間である。五十万の常備兵あるにかかわらず戦えば必ず潰れてしまうのはどうしてなのか。この国民は敵国外患を防ぐといふことはどうしても出来ぬ、さすれば第二の柱というものはない。(喝采)

 

                         つづく

 

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