前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

世界史の中の『日露戦争』⑳『サハロフ・ロシア軍参謀総長の日本軍への認識の甘さ』『タイムズ』1904//3/12

      2021/11/04

  世界史の中の『日露戦争』⑳


英国『タイムズ』米国「ニューヨーク・タイムズ」

は「日露戦争をどう報道したか」⑳

 

『日露戦争-サハロフ・ロシア軍参謀総長の

日本軍への認識の甘さ

【開戦33日】<タイムズ1904(明治37)年312 >—

<インテリジェンスの教科書としての日露戦争

 

『この記事を読むと、いかにタイムズの軍事専門記者の専門的な知識による分析力が鋭いか、そのインテリジェンスには舌を巻く。

日本のジャーナリストで日露戦争、昭和戦前の太平洋戦争までの陸海軍担当、従軍記者、昭和戦後から現在までの防衛担当記者を含めてこれにかなうような記者は残念ながらいない。英国が世界の覇権を握ったのも、軍事・外交・通信のインテリジェンスと同時にこうした優秀なジャーナリストの活躍によってである。

 

 <タイムズ(本紙軍事通信員の記事)>

ロシア軍参謀総長で臨時陸相のサハロフ将軍に関するフィガロ紙の有能なる記者の報道が正しいなら,ロシア陸軍省は祖国に対し重大な幻想を提供しつつあると結論せざるを得ない。

同将軍によれば,日本の現役陸軍は156000,予備役は取るに足らず,日本が戦線に投入できる兵員はせいぜい20万という。それにもかかわらず同将軍は,ロシアは少なくとも40万の兵員を集めるよう努めなければならぬと言い,これは日本に敬意を表したものに達いないが.それだけの兵力の輸送に時間がかからないかと問われて,何か月もかかるだろうが,それは問題ではないと.涼しげに答えている。

フランス参謀本部の公式機関誌・ルヴユ・ミリテール・ド・レトランジェ誌2月号は,予備役を含めた日本陸軍の現役動員兵力を,将校7900人,その他331300人,馬7万匹とし,これらに留守部隊と在郷軍を加えると日本陸軍の動員可能兵力は,将兵52万人‥馬101000匹,大砲1368門になると記している。

 サハロフ将軍の態度も,まさに驚くにあたらないというのは,ロシア側には.同国が直面する大変な問題を必要な技能.ないしは科学や知性をもって研究した形跡がまだないからだ。

今やそれらすべて,またそれ以上が必要だというのは,今次の戦争ほど,すべての事実を整理して,時間、距離、数量の一切の複雑な要因を算出するため,陸軍ないしは国の最良の頭脳を着実に用いることを要求してやまない戦争はかってなかったからだ。

ロシア側から見れば,それはなんといってもビジネスの計算,幾重にも複雑な参謀の作業であって,極端に精密な計算と調整だけでなく,国家の半ダースはどの大省庁,つまり陸軍,海軍,大乱鉄道,内乱外務などの正確な仕事をも要求するものであり,これらいくつもの役所の組織がすべて順調に作動して,割り当てられた課題を実行しなければ,成功は難しいどころか,絶望的なのだ。

 ロシアの一般大衆の言分はさらにもっと単純だ。ロシアは世界一の大陸国家ではないか?われわれは13000万の国民ではないか?軍隊は400万人もいるではないか?それで負けるはずがあるか?「証明終わり」とロシア人は言う。

 だが、今日問題になっているのではない。問題は,太平洋から5000マイル離れたロシアが,海を閉ざされ,唯一の連絡手段が1本の粗末な鉄道という状態で,日本の,科学的原則により組織され装備も優秀で,愛国心旺盛な5000万近くの国民に支持されて祖国の近くで戦う50万の兵を破ることができる軍隊を,いかにして戦場に派遣し維持しようというのか,ということなのだ。

ロシアのラクダはいかにしてシベリア越えの針の穴をくぐろうというのか?ロシアの解決方法は,ラクダのこぶの大きさをあれこれ考えるだけで,こぶが大きいほどラクダにはチャンスがなく,針の穴にも負担がかかるという事実を無視している。

 シベリア横断鉄道の輸送能力は,ロシア軍40万を年末までに東アジアの前線に置けるかどうか疑問であり,アムール川の航行が秋の終りに閉ざされれば,この軍隊を食べさせることができるかは,疑問どころでなくなる。

日本ではもとより,だれも.ロシアがこれだけの兵力を満州に維持することが物質的に可能だと信じる者はなく,また日本の過去10年間の軍事方針はあげてロシアを必ず打ち破ることに向けられてきたし,東アジアのロシア部隊の兵力はいくらかだけでなく,宣戦後はどれほど増援軍を投入し食べさせることができるかも研究されてきた。

日本の計算が当たるか外れるかはこれからの問題とはいえ,こういうわけで.以上が日本の秀才らが考え出した意見なのだ。日本は10年間ただひたすら,他の大事をほぼ一切抜きにして,この国家目的に取り組んできた。そして時が来て,国家再編成の時期が完了したとき,不可避の戦争が始まったのだ。

 - 戦争報道 , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代のための日本戦争史講座』』★『パリ五輪で総合馬術団体で92年ぶりに銅メダル獲得』★『1932年(昭和7)、ロサンゼルス大会馬術で金メダルを獲得した国際人・西竹一選手の偉業を偲ぶ』

パリオリンピックで7月28日、総合馬術の団体で日本が銅メダルを獲得した。日本が馬 …

no image
終戦70年・日本敗戦史(96)『大東亜戦争とメディアー『発表報道=客観報道という名の悪しき<現実追認主義>』

      終戦70年・日本敗戦史(96) 『大東亜戦争とメディアー戦争での最初 …

「Z世代のためのウクライナ戦争講座」★「ウクライナ戦争は120年前の日露戦争と全く同じというニュース]④」『開戦32日前の「英タイムズ」―『日英同盟から英国は日本が抹殺されるのを座視しない』●『極東の支配がロシアに奪われるなら、日英同盟から英国は 日本が抹殺されたり,永久に二流国の地位に下げられる のを座視しない』

    2017/01/12  『日本戦 …

『世界史を変えるウクライナ・ゼレンスキー大統領の平和スピーチ』★『日露戦争に勝利した 金子堅太郎の最強のインテジェンス(intelligence )⑨終』★『ポーツマス講和条会議始まる』★『大統領に条約案をみせて相談、ー『償金やめて払い戻し金に』●『談判決裂を心配したル大統領―3人委員会をつくる』

  2017/06/28  日本リーダー …

no image
日中ロシア北朝鮮150年戦争史(44)『日本・ロシア歴史復習問題』★ 「日清戦争後のロシアの満州進出」が日露戦争の原因になった。

日中ロシア北朝鮮150年戦争史(44)『日中歴史復習問題』★ 「日清戦争後のロシ …

『オンライン講座/日本/明治大正昭和/150年興亡史』★『憲政の神様/日本議会政治の父・尾崎咢堂が<安倍自民党世襲政治と全国会議員>を叱るー『売り家と唐模様で書く三代目』②『総理大臣8割、各大臣は4割が世襲、自民党は3,4代目議員だらけの日本封建政治が国をつぶす 』

  日本リーダーパワー史(236)記事再録」 『売り家と唐模様で書く三 …

最高に面白い人物史➄人気記事再録★「日本最強の参謀・戦略家は日露戦争勝利の立役者―児玉源太郎伝(8回連載)』

日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(62) 『世界史の中の『日露戦争』ー <まと …

no image
『忘れ去られた近現代史の復習問題』―『日清戦争の引き金の1つとなった『明治19年の長崎清国水兵事件とは何か』

  『忘れ去られた近現代史の復習問題』― 日清戦争の引き金の1つとなった『明治1 …

no image
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』㉜終戦時の決定力、決断力ゼロは「最高戦争指導会議」 「大本営」の無責任体制にある

     『ガラパゴス国家・日本敗戦史』㉜ 『来年 …

no image
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑯『開戦4ゕ月前の「仏ル・タン」の報道』- 『極東の紛争』『露仏同盟のフランスはシベリア鉄道によると特権をもつロシアの満州占領を擁護』『アレクセイ提督の極東総督府を創設した段階で,それを放棄する意向があると見なすのは的外れというものだろう』

 『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑯   1903( …