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「日中韓150年戦争史』★『日清戦争の原因となった東学党の乱の実態と朝鮮事情について〔明治26年6月4日 時事新報〕

   

東学党の乱の実態と朝鮮事情、〔明治2664日 時事新報〕    .

朝鮮の東学党は一時解散したが、その勢いすこぶる猖獗にして.決して軽視すべからざるものあるがごとし。

目下同党は主に忠清道報恩の辺に在るよしなれどもども慶尚道の聞慶にして、その党に入るものはいずれも頭に青巾を約もて目印となし、既に間慶付近の地方に於いては、官府の倉を破りて兵器を奪いたることもあるよし。

勿論その兵器とは弓箭(ゆみや)、錆刀の類ならんなれば、実際の用には適すべからす、何も恐れるに足らざるも、ひとたびその仲間に投じて青巾の目印を付くるときは、役人輩はこれをは近寄らず、下がって納税を促される事もなく、

 

至極気楽なる故に、地方の豪家などにもこれに入るものありて、次第に四方に蔓延し、既に幾万人の多くに及びたりという。

 

これよりさき、朝鮮政府は状況視察のために魚允中氏を,暗行御史に任じて同地方に出発せしめたり、そもそも暗行御史は一種、特別の役目にして国王殿下より直かに命令を受けて国内の州郡を微行し、地方政のいかんを窺い、民間の苦楽を察して国王に報告するのみならず、実際に生殺与奪の権を育して、その処置に就いては政府の大臣と雖も嘴(くちばし)を容れることあたわざるものなり。

 

かくて魚允中は視察の上、東学党は力を以って威服すべからず、恩を施して。これせ懐(なず)くべしとの意見を上申せしに、韓延の廟議は強硬を主として、允中の軟論を容れざのみか、或いは允中はひそかに賊に通ぜり、之が疑いを懐くものさえもなきにあらずして、断然討賊の令を下し、1大隊400人の兵は既に京城を発して賊地に向かいた由なるが、

さて、その400人の兵はいかな者なりやと云うに、その名こそ堂々たる官兵なれども、平生の衣服さえ十分ではない上に、本来、一定の規律さえなきが故に ひとたび地方に出ずれば、脅迫、掠奪到らざる所なきの常態なり。

青巾の賊はそね勢い猖獗なりと云うも、ただ空手にて横行するのみなれども官兵はこれに反し、相応の武器を所持して乱暴を逞しうすることなれば、人民のこれを怖れること賊よりもはなはだしく、およそ官兵の過ぐる所は老幼婦女ことごとく荷担して逃るるの有様なりと云う。

人民の難渋想い見るべし。こうして東学党の実相はいかんと云うに、今を距ること32年、白巾の賊なるもの起り、あたかも今回の騒動と同様にして一時猖獗を極めたれども、元来烏合の衆にして、統率の首領なかりしが故に、官兵のために破られ直ちに鎮静したることあり。

 

今度の青巾の賊も果して烏合の衆なれば深く患うに足らざれども、一概にしかりとのみ見るべからざるものあるは外ならず、その党より政府に差し出だしたる請願書の中に、京城在住の日清商人を開港場の居留地に退去せしめたし云々の個条を掲げたるの1事なり。

もしも真実に事理を解せざる頑民輩の集合体ならんには、ただ一途、外人の排斥を唱うはずなかりしに、しからずして-開港揚に退去せしむべしなど、その輩に似合わざる穏当の口気あるより見れば、

或いはこれが謀主たるものありて、ひそかそかに策を授けるにあらざるやずとの疑いもなきにしもあらず。

兎に角に注目すべきは、退去云々の1事にして、もしも果して、今回の青巾賊は前年の白巾賊と同視すべからずして、今の韓延のため容易ならざる大患と云わざるを得ず、我輩は今後の挙動に就いてはこれをトせんとするものなり。

一方には東学党の形勢容易ならざるその上に、現政府の内情をいかんというに、財政の困難は既に極点に達して、困難というよりもむしろ紊乱と称して可なるがごとし。

造幣局の無茶苦茶ぶり、国王の所得になるその例を申せば、京城に典嚢局なるものあり、これは国王殿下直轄

の造幣局にして、国内に通用せしむべき銅銭の鋳造に従事し、この収益は国王の所得に帰するものの由なるが、

ここにまた平安道の平壌に一の鋳銭所あり、もっぱら粗悪なる銅銭を鋳造するの場所にして、政府にては何故にかかる怪しき所行を許すやと尋ぬるに、 

なんぞ図らん右の鋳銭所は、王妃殿下の所有にして、同所の監司閔丙爽氏がこれを司り、改造のために利す収益は王妃の手許に納むるものなりと云う。

驚き入りたる次第なれども、朝鮮人はこれを怪しまず、白日青天にあたかも政府の特権を以って悪銭を造るが故に、正当なる旧銅銭は次第に隠れて国中ただ悪銭の蔓延を見るのみ。

或る外国の商人などは、旧銅銭を潰して地金の姿となし、右の鋳銭所に売却して非常の利を得るものもあるよしなるが、当局者は悪銭の改造に満足せず、更に鉄銭を鋳造せんとの計画がありて、既に日本に銑鉄の注文をなしたりと風聞するものあり。

 

通貨の性質かくのごとく粗悪なるに至れば物価の騰貴するは自然の勢いにて

 

いかんともすべからざるものなるに、政府は威力を以ってその騰貴を禁じ、また悪銭の授受を嫌うものは罰に処する等、圧制到らざる所なきを以って、人民の困難苦痛一方ならず、商売取引もほとんど行われざるの姿なりと云う。

 

財政の紊乱極まれりというべし、国内の始束既にかくのごとし。

朝鮮立国の未来を想像すれば、はなはだ覚束なき次第なれど.未来の事は兎も角として、差し当り我が国人の注意すべきは日本人民の安全を保護するの一事なり。

 

かの同の事情、右の通りの次第なれば、イツ何時いかなる事変を生じて、我が人民の生命財産に危険を及ぼすやも図るべかからず予め保護の手段を講ずること必要なるべし。

 

兵隊を京城に置いて不虞に傭うるは最も安全の計なれども、天津条約の存する以上致し方なし。

 

或いは多数の巡査を派遣するも可なれども、こしれにも自ら員数の限りありたれば、警備艦の数を増もて有力なる軍艦一、三隻を常に仁川.その他に碇泊せしむることともなれば.いささか意を強うするに足らんか。

兎に角に不虞の備は、決して怠るべからざるなり。

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