日本リーダーパワー史(44)国家戦略・リーダーシップ・インテリジェンスの日露戦争と現在の比較論①
日本リーダーパワー史(44)
国家戦略・リーダーシップ・インテリジェンス
の日露戦争と現在の比較論①
前坂俊之(ジャーナリスト)
前坂俊之(ジャーナリスト)
「大本営」といってもいまの人にとっては大時代的な死語であろう。そんなものは自分たちや、現代人にとっても全く関係ないものと別のページをクリックしようと思われようが、チョット待ってほしいね。
「大本営」というのは戦争で設置される陸海軍の最高統帥機関のことである。その「大本営」の意味も日清戦争、日露戦争、支那事変以降では全く変わったものになってしまったが、本来は天皇がいる場所、宮中が大本営となる。明治憲法では天皇に統帥権があり、大元帥だからである。
だから戦争が始まれば宮中に侍従武官部、陸軍部、海軍部が置かれ、参謀本部はその間、閉鎖される形となる。日清戦争では「広島大本営」を置いて明治天皇も東京から広島に行き、大本営で指揮を執った。これは天皇に統帥権があるという点では当たり前のことで、別の面では昔は天皇によるシビリアンコントロール(軍部独走、暴走を抑止するという意味で)が少しは効いていたのである。
なぜこんな古い「大本営」なんてことを書くかと言うと、現在の問題とダブるからです。鳩山首相、民主党政府の迷走、経済的、外交的な混乱と失敗がもたらすものは・・・!、日本丸(国)の沈没であるとの心配が日日に高くなってくる。
いま国の借金時計(インターネットで検索すればそく見える)を見ればショック死するような危機的水準で、しかも刻一刻、「日本丸」は浸水して10年後には間違いなく国家破産、国民生活の破綻となるのではないか。
まるで、タイタニック号が沈没する前のように、乗客は不沈の巨船なので、船室で贅沢においしいものを食べながら遊興に興じているあの映画と全く同じ状況が今の、われわれの日常生活ではないのか、と船底のネズミが逃げ出す情景とダブってきます。
昔の戦争は確かに、軍事力、大量破壊兵器によるによる殺し合いの戦争だが、いまは平和時のソフトな戦争、経済戦争による国家間の競争で、富を奪い合いの競争を行っている。その経済政策の失敗によってはギリシャの金融危機、かつてのアルゼンチンのような悲劇が起きるのです。
経済政策の失敗、敗北によって累々たる国民の犠牲がでるのは・・例えば太平洋戦争で敵の銃弾、爆弾によって殺された犠牲者と同じくらいに、食糧や生活物資の欠乏によっての餓死、病死者、子供、幼児、老人の犠牲者の続出した状況と酷似したものになっていくのではなかろうか。平和時でも国家政策の失敗によって国家は破たんして、死者累々の惨状を呈するのです。
そのような悪夢を再現させてはいけません。
このよう考えてくると、「大本営」を検討することは大きな意味をもってきます。
ここで、「大本営」というのは戦争指導の最高機関であり、平和時でいえば内閣、国家最高司令室、国家戦略本部。今でいえば鳩山首相率いる政府そのものが「日本丸」の舵をにぎっており、鳩山首相がキャップテンとして号令をかけ、戦争の場合は最高指揮官として「大本営」で指揮をとる役目なのです。
ところが、鳩山首相、民主党政治の混乱、ドタバタ、迷走劇、言うことがころころ変わるお粗末な鳩山、小沢らの指揮ぶりを毎日見るにつけ、国民はうんざり以上に、この国はどうなるのか沈没するのではないと、日本丸のキャップテンの無能ぶりに不安感を募らせているのです。
ただ、民主党の混乱はその前のから延々続いてきた自民党政治(私はこれを自民党幕府政治と命名しています)でも全く同じだったので、昭和戦前までの「大本営」なるもの、国の最高統帥機関に匹敵するものが、昭和戦後は一貫して不在だったということです。
かじ取りは官僚任せ。防衛はアメリカ任せ、基地は沖縄まかせで、東京一極集中の江戸市民、本土人は何も考えずに鎖国状態を意識だっのです。
かじ取りは官僚任せ。防衛はアメリカ任せ、基地は沖縄まかせで、東京一極集中の江戸市民、本土人は何も考えずに鎖国状態を意識だっのです。
民主党になってにわかに「国家戦略室」なるものをでてきましたが、こんな恥ずかしいことはありません。
なぜなら、国に頭脳がなかったこと、自分はバカだった告白するようなものだからです。しかし、これも本当だから仕方ない。確かに1千兆円ものサラ金を借り続けても経済再生に大失敗して、いまだにどうしたらよいのかわからない、右往左往している状態なのですから、バカだったことにはまちがいない。戦略思考のない人間、国家が一時的に成金バブルで成功しても、先々を考えて手を打たないので、いずれはバブルにうかれては、失敗か破綻、サラ金地獄で倒産か夜逃げしか待ってはいません。世界史の中での大国の興亡の歴史を見れば、国も永遠の繁栄は有りはしない。日本の繁栄はすでに終わり、20年前の絶頂から転落の一途なのです。
戦略思考のない日本人たちが太平洋戦争の敗北以来、廃墟と飢餓と無一文、無所有の中で、ただ空腹をみたすという原初的、動物的にがむしゃらに働いて営々と富を築いた段階で、バブルが20年前にはじけた。
考えない、戦略的な思考力がないゆえに、バブルの解決、日本経済を再生する難問題も解けるわけがない。一方の国の防衛の問題、日米安保にしても国をどう防衛していくかでも、自分の国を自分で守っていくという当たり前のことを、世界の情勢に合わせて戦略的に考えいくことを忘れて、思考停止を半世紀以上続けてきたツケがたまりにたまって今回出てきているのです。
現在の日本の最高意思決定のシステムがどうなっているのか、最高統帥機関の不在、国家戦略室なるもののお粗末な存在を考えると、かつての国家プロジェクト(戦争は最大の国家プロジェクトクトであり、国家財政をいかに健全に立てなおし、経済を再生し発展せさるのも現今の緊急最大の国家プロジェクトである)とそれに取り組んだ戦略本部、参謀本部、リーダーたちの戦略思考、インテリジェンスの過去と現在を、それらを歴史の中での連続性と、非連続性でとらえなおして、総合的に比較、検討する必要が出てきます。
前置が長くなりましたが、、日露戦争での「大本営」の設置とリーダーたちの対応ぶり、メディアとの関係などについて考えていきたいのです。
(つづく)
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