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日本リーダーパワー史(853)ー『来年(2018年)には米朝開戦か、北朝鮮を核保有国と認めて 「核シェアリング」で核抑止するかーギリギリの選択を迫られる 』(上)

      2017/11/11

 

『来年(2018年)には米朝開戦か、北朝鮮を核保有国と認めて

「核シェアリング」で核抑止するかーギリギリの選択を迫られる 』(上)

            前坂俊之(ジャーナリスト)            

安倍首相は9月28日の臨時国会冒頭に「国難突破解散」を行った。

どうやらその背景の1つには米朝関係の緊張は『来年には最悪のケースになる』という判断から、民進党らの敗のスキをついた奇襲解散といわれる。10月中旬は中国の第12期全国人民代表大会全人代、国会に相当)でて習主席の権力掌握から目を離せない。

11月のベトナムでのAPEC首脳会議へのトランプ大統領の出席、安倍首相、習近平ト会談など、スケジュールが目白押し、それを避けての解散で支持率回復を狙って打って出たが、希望の党の出現で裏目に出たともいわれる。

国際政治の混乱が日本の政治情勢の流動化を引き起こした。小池旋風はどうなるか、米朝チキンレースの行方は米朝開戦となるのか。

  • なぜこのタイミングなのか、「国難突破解散」の真意!は・・

「『読売』(9/26日付)、月刊誌『選択』(2017年10月号)などを総合すると、トランプ氏は、11月10から2日間、ベトナムで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議に向かう途中に、日本には5~7日に来日する。APEC中には習近平主席と首脳会談を予定、対北朝鮮へ制裁圧力の効果を検証し今後の対応について協議する予定だ。もし、この会談が不調に終われば、軍事圧力もオプションに入る、という。

8月26日、北朝鮮が短距離弾道ミサイル三発を発射。29日早朝には、北朝鮮が発射した弾道ミサイルが日本列島上空を通過し、太平洋上に落下した。安倍首相は大統領トランプと電話会談を重ねたが、『北朝鮮に対話の用意がない』ことを確認した。

9月1日、民進党代表選で勝利した前原誠司氏は山尾志桜里氏を幹事長に内定したが、「週刊文春」の不倫報道スクープで一転して離党に追い込まれた。ここを低迷していた支持率回復の絶好のチャンスとみた安倍首相は一気に勝負に出た。

 山尾氏が離党した9月7日夜、安倍首相は党に世論調査を命じ、8日から9日かけて実施した。その結果は、安倍の予想が当たった。自民党は現有議席288から「マイナス12~30」程度にとどまるという安倍政権の落ち込み回復を示す高数字だった。

これで、安倍首相は10日夜、安倍は東京・富ヶ谷の私邸に麻生太郎副総理を呼び、解散の決断を伝えた、というわけです」

 「この間に、北朝鮮の挑発は続いた。9月3日に北朝鮮は水爆実験にも成功し、アメリカにも届く核搭載ICBMにも成功したと豪語した。国連でのトランプ大統領が『ロケットマン』と金委員長を揶揄したのに対して、金正恩は激怒『宣戦布告だ、史上最大の最強硬措置を考える』と応酬し、世界に一層の戦慄が走った。

こうした緊張をうまく利用しながら、外務省からの「北朝鮮への制裁の効果が出るまでの今後、数ヵ月間は米軍も軍事行動に出る可能性は低い」との情報を計算。

来年になれば北朝鮮では何が起きるかわからない。米国も我慢の限界が来る。この一瞬をついて間に解散に打って出るしかないと決断し9月28日、『国難突破解散』と命名、臨時国会での『加計学園の追及をかわすため』にも冒頭に解散に踏み切った、というわけです」

 

「つまり、安倍首相は民進党の混乱に乗じた『奇襲解散』は一見、成功したかに見えた。ところが、小池都知事は直ちに『希望の党』を立ち上げ、党首に就任して反撃に出た。前原氏も小池氏と前から打ち合わせていた通り、民進党をそっくり合流させることに成功した。

と、安倍が攻めてきたところを奇襲の挟み撃ちにした。

週刊誌、テレビは一斉に『自民党は過半数を大きくわれて、早々と安倍退陣』などという見出しが躍って、総選挙での「自民圧勝」の目論見が一気に崩れた。外では北朝鮮問題、うちでは少子超高齢化のまさに国難突破解散ではなくて、国難到来解散だね、選挙後の政局の混乱、混迷が心配ですね」

「小池都知事はもともとテレビキャスター出身で演出のプロを自任する。お茶の間、芸能ワイドショー的なテレビ劇場、SNS選挙を盛り上げる演出は図抜けている。新党発表の日に、小池氏は反原発の象徴でもある元首相小泉純一郎氏とも会談して小泉人気を追い風に「原発ゼロ」を打ち上げた。

小池のキャッチフレーズ「しがらみ政治を壊す」『政治をリセットする』などというおいしいそうなキーワードをならべて、有権者の心に訴えるしゃべりのプロで、技術にたけてはいるが、政策、中身がないと批判されている。

憲法改正、安保では自民党と変わりはない補完勢力で、安倍首相を引きずりおろすためだけのもの。『希望の党』は新人の寄せ集めで民進党が合流してもベテラン、プロ政治家が少ない。小池一人政治芝居党の感じが強いね」

(C)「これは週刊朝日のオンラインニュース(10/3)では『自民党単独で100議席減と情勢調査、 安倍首相退陣が現実味、どうする小池都知事?』の大見出しが踊った。これは全国47都道府県の選挙区、比例区の情勢調査で「自民党単独100議席前後減の可能性濃厚」という数字が上がってきたため。読売の全国世論調査(7、8日)では、自民32%、希望の党、13%(前回19%)に下がり、立憲民主党が7%となっている。

これから選挙当日まで3,4回ほど各新聞、テレビが一斉に世論調査を行うので、まだまだ変わる。国難到来混乱選挙となる確率も高いですよ」

  • トランプ対金正恩の「悪口雑言」で米朝開戦となるのか?

「『HUFFPOST(9/20)』によると、トランプ氏は19日、米ニューヨークで開かれた国連総会の演説で『ロケットマンは自殺行為だ。米国と同盟国の防衛を迫られれば、北朝鮮を完全に破壊せざるを得ないだろう』と批判した。

『ロケットマン』とはミュージシャンのエルトンジョンの1970年代のヒット曲『ロケット・マン』をもじったもので、米国のテレビではバラエティー番組でこじつけられるなどして話題になっているものです。」

「これに北朝鮮が激しく反発した。金委員長自ら声明を出して『トランプ』を「老いぼれ」などと何度も呼び捨てにし『過去の米大統領たちが決してしなかった無礼でばかげた演説だ。宣戦布告に対する史上最高の超強硬措置を真剣に考える』と述べて、挑発合戦はヒートアップした」

「この発言の史上最高の超強硬措置とは一体何かについては、北朝鮮の李外相は『過去最大級の水素爆弾の実験を太平洋上ですることになるのではないか』といったので大騒ぎとなり、世界中に恐怖と不安をばらまいた。

しかし、よくその発言を吟味すると金正恩は超強硬措置を『真剣に考える』と述べている。すぐ実行するとはいっていない。また、李外相は『どんな措置をとるかは、金正恩委員長が決めることなので、よく分からない』と断わった上での発言です。

実際、水爆実験を太平洋上で行うことはそんなに簡単にできることではない。ハッタリとしか思えませんね」

『ただし、脅しにしても度が過ぎている。『ならずもの国家』そのものです。「包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)」によると、もし太平洋上で核実験を行えば、日本に放射性物質が到着するのは10日後で、2週間で北半球が放射性物質の雲に包まれる。昭和29年に米軍が太平洋上のビキニ環礁で行った水素爆弾実験に巻き込まれ「第五福竜丸」船員のように急性歯茎からの出血、脱毛、嘔吐感などの放射線症をのみ民間人が激増すると警告している」

「いずれにしても、ロシアのラブロフ露外相がこの非難合戦はまるで『幼稚園児のけんか』と批判し、『ほてった頭を冷やして(関係国は)連絡を取り合わなければならない』『安保理理事国と合理的で、感情的ではないアプローチをとる努力を続ける」と言ったのは正論ですね。日本も、マスコミもふくめて冷静に感情過多にならずに対応すべきです」

「ところが、トランプの挑発発言ツイッターの<常習癖>は一向に直おらない。依然として、このツイッターによる政権内部の混乱、対立、不祥事が続いおり、プライス厚生長官が9月29日、辞任した

10月1日、ティラーソン国務長官は習金平との会談後に『われわれは、対話をするのか、北朝鮮に尋ねており、平壌と意思疎通できる2~3個のチャンネルを開いている。パイプがない状態ではない」と話した。これに対し、トランプ氏は早速、ティラーソンの対話は『時間の無駄だ』とツイートした。

さらに、『25年もロケットマンに優しくしたが、うまくいかなかった。なぜ今ならできる? クリントンが、ブッシュが、オバマが失敗した。私は失敗しない』と強硬姿勢を誇示したのですから何おかいわんやです』

「とにかく、この件をみても、『戦争か』『対話か』の二重外交の米国のメッセージが混乱している。トランプとティラーソンの発言も真っ二つで、どちらが方針なのかよく見えない。2人が呼吸を合わせ『太陽と北風』の役割を果たして情報操作しているとも見えない。

ティラーソンはすぐ切れるトランプ発言のしりぬぐいに追われて「トランプはバカ」と言ったとか、言わないとかマスコミから追及されて、相変わらず政権内部のゴタゴタはおさまらない。メディアも戦争の可能性と、開戦になった場合の韓国、日本、米国の被害者数の最大値を報道するので、人々の不安と混乱はますます募るばかりです」

  • では、米中会談の行方はどうなっているのか

(A)「中朝関係も複雑でねじれにねじれている。習近平と金正恩との関係も最悪だ。しかし、中朝関係にも日米同盟に類似した軍事同盟(中朝友好協力相互援助条約、略して中朝同盟条約)がある。

その中朝同盟条約第2条には、「いずれの一方の締約国に対するいかなる国の侵略をも防止する」とある。

これは北朝鮮が先制攻撃された場合には中国は自動的に参戦するが、逆のケースの北朝鮮が先に攻撃した場合には中国は参戦、防衛義務はないという条文です。つまり、日米同盟の参戦条項よりも中国の防衛義務はより強固なのです。

中国はこの中朝同盟をタテに、北朝鮮と米国双方に先制攻撃の自制を求めている。北朝鮮が先制攻撃すると助けないよ、アメリカにも先制攻撃すると中国は自動参戦して米中戦争に発展するぞと警告している。

北朝鮮もこのことを良く知っているので先制攻撃するぞと、激しく「口撃」しても、実際には口だけのハッタリで、米国もこの条項で先制攻撃はしてこないとタカを食っているわけです」

 「つまり、中国の手の上(中朝同盟条約)で、米朝とも両手を縛られたうえで,口角泡と飛ばして、互いに罵倒しているパフォーマンスというわけか。そうみると、トランプとティラーソンの共同の「北朝鮮対話引き込み作戦」(?)がよくわかるが、果たして、暴れ者のトランプがこの名演技を果たしてできるかどうか、だね(笑)」

(B)「こんな話もあるよ。中国通の遠藤誉氏(ジャーナリスト)によると、仰天の米中協同、北朝鮮攻撃の密約が進んでいるという。金正恩度重なる無礼と裏切りに、習近平は激怒しており、金正恩を絶対に許さない、中朝同盟条約を守る気はない。

水爆実験によって隣国中国は大きな被害をこうむっており、戦争になれば多数の難民が流入してきて人的、経済的な被害は莫大だ。北朝鮮は説得しても耳を貸さない。このため、アメリカと対話、協力して、中国はアメリカとは絶対に敵対しないと見ているのです。

遠藤氏の情報では米中間は密約中で米国の北への武力攻撃が始まろうとする寸前に、中国が北朝鮮への武力攻撃をする計画だ。「いざとなったら」協力的に武力を断行し、北を敗退させた時の中国の「分け前」を確保する狙いという。(ニューズウイーク日本版10/2日付)

それと、朝鮮半島統一の処理、非核化の問題、中国の安全保障の問題、韓国駐在の米軍の存在、戦後復興のための協力など様々な問題と、米中の貿易不均衡の是正、経済協力関係、東アジアの安全保障体制の全体的な構築なども含めて水面下で協議中といわれている」

 

(A)「たしかに、米中の協力関係の進展によって国連の北朝鮮の制裁決議後に、中国は即座の9月23日に北朝鮮への石油精製品の輸出制限など制裁措置を履行し、『天然ガス液』や繊維製品の輸入も全面停止しましたね。中国の4大銀行も北朝鮮人名義の新規口座開設や送金、入金などの取引停止を実行するなど、これまでとは違ってきた

 

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