池田龍夫のマスコミ時評⑪ 「日米同盟」再構築の道 両国首脳の政治理念、具現化を
「日米同盟」再構築の道 両国首脳の政治理念、具現化を
一月誕生したオバマ政権、九月スタートの鳩山政権はともに〝チェンジ〟をスローガンに掲げて長期保守政権を倒して躍り出た「民主党」同士。9・11テロ以降の大混乱と、リーマンショックで破綻した市場原理至上主義からの脱皮を目指して〝船出〟、荒波と闘いながら操船しているのが、両政権共通の姿だ。しかし、ブッシュ政権・麻生政権が残した〝負の遺産〟清算の特効薬はなく、体制建て直しの前途は厳しい。
従って今回の首脳会談で、「普天間問題に関する閣僚級作業グループ設置」に合意し、「早期に結論を出す」と取り決めた点を〝一歩前進〟と評価したい。「問題の先送り」と批判する声もあるが、米軍基地についての再検証・再構築を日本側が求めることは当然なこと。現在、普天間移転に関する両国の主張は異なっているが、対等な交渉を通じて、着地点・妥協点を見出す努力こそ肝要である。
この再編計画は、米軍の世界戦略見直しの一環で、米国主導で強引に進められたもので、「沖縄駐留の海兵隊八千人を削減、二〇一四年までに完了させる」と決定。しかし、これは普天間移設とパッケージにしたもので、海兵隊のグアム移転の日本側経費負担約七千億円を押し付ける強引さだった。
オバマ大統領の訪日はその共同作業をキックオフする機会として捉えるべきではないか」との田中均・元外務審議官の提言(『毎日』11・5夕刊)のような将来展望を、メディア報道に望みたい。
一九七八年に金丸信・防衛庁長官が経費の一部を肩代わりすると表明、「思いやり予算」と言われるようになった。発足時の予算は日本人基地従業員の給与の一部に充てる62億円だったが、米国の景気回復後も減額されるどころか負担額は年々上がり続け、贅沢な娯楽費や施設整備費などに拡大してしまった。防衛省HPが公表している年度別予算を示しておくが、予算をむしり取って転用するルーズさに驚いた。
まさに一度走り出したら止まらない公共事業費と同じパターンだったことに、改めて驚愕した。「概算要求額一九一九億円のうち一一六四億円が、今回の仕分け作業の対象となる。…在日米軍基地では、司令部の事務職員、レストランやゴルフ場などの娯楽施設職員として計二万五四九九人(08年度末現在)が働いている。
日米両国の特別協定に基づき、このうち二万三〇五五人分の給与は日本政府が、残りは米軍が負担している。この日本側負担分が仕分けの対象になる」(『読売』11・7朝刊)とのことだが、基地従業員に跳ね返る問題だけに、仕分け作業は難航するだろう。しかし、「思いやり予算」垂れ流しにメスを入れなければならず、「米軍基地見直し」と連動して、「思いやり予算」減額に取り組む緊急性を痛感する。なるべく早く〝お人好し〟過ぎる不条理な慣行にストップをかけることが望ましく、米国の顔色を見て判断するような問題でないことを、国民すべてが気づくべきだ。
日米同盟の堅持だけに日本の外交を押しとどめてしまうなら、同盟によって何を実現するのか、そもそも現代世界ではどのような制度や政策が必要なのかという課題が忘れられてしまう。日米同盟の堅持が問題なのではない。
日米両国が現代世界で何を実現しようとするのか、そして実現すべきなのか、課題の設定こそが問題なのである。試みに幾つかを挙げるならば、世界金融危機のような市場破綻を阻止するための制度形成、アフガニスタンをはじめとする破綻国家への国際的関与、北朝鮮ばかりかイランにまで拡散しようとする核兵器の拡散阻止。
民主党政権に求められるのは、このようなグローバルな課題に答えるパートナーシップとしての日米関係の構築である」と、藤原帰一・東大教授の論評(『朝日』11・12夕刊)は、日米・民主党政権への力強いエールであり、両国首脳の目指す方向と重なるとの期待を深めた。
(池田龍夫=ジャーナリスト)
関連記事
-
-
池田龍夫のマスコミ時評⑰ 「日本政治の劣化」を危惧 民主党政権への期待感が揺らぐ
池田龍夫のマスコミ時評⑰「日本政治の劣化」を危惧 民主党政権への期待感が揺らぐ …
-
-
『日中台・Z世代のための日中近代史100年講座⑤』★『世紀の恋の果たし状ー九州の炭鉱王の良人・伊藤傳右衛門氏に送った「筑紫の女王」柳原輝子の絶縁状の全文ー愛なき結婚と夫の無理解が生んだ妻の苦痛と悲惨の告白』★『1921年(大正10)10月23日「大阪朝日」朝刊掲載』
1921年(大正10)10月23日 「大阪朝日」朝刊掲載 朝刊新報の「筑紫の女王 …
-
-
モンゴルメディアの変容
民主化後のモンゴルメディアの変容 前坂 俊之 (静岡県立大学国際関係学部教授) …
-
-
「Z世代への遺言「東京裁判の真実の研究➂」★「敗因を衝くー軍閥専横の実相』」で 陸軍を告発し東京裁判でも検事側証人に立った田中隆吉の証言①
ホーム > 戦争報道 >   …
-
-
日本メルトダウン・カウントダウンへ(901)『安倍首相の退陣すべきを論じる】② 空虚な安倍スピーチをおとなしく拝聴している記者の姿に 『日本沈没メディアコントロール現場』を見た
日本メルトダウン・カウントダウンへ(901) 『安倍首相の退陣すべきを論じる】 …
-
-
池田龍夫のマスコミ時評(23) 参院選・民主党敗北と政治不信- メディアの報道姿勢も検証
池田龍夫のマスコミ時評(23) 参院選・民主党敗北と政治不信 …
-
-
『 Z世代のためのス-ローライフの研究』★『元祖ス-ローライフの達人・仙人画家の熊谷守一(97歳)のゆっくり、ゆっくり、ゆっくり』★『小学校の時、先生はいつも「偉くなれ、偉くなれ」というので、「みんなが、偉くなったら、偉い人ばかりで困るのではないか」と内心思った』
2023/11/12の「」百歳学入門」の記事再録 <写真は5月29日 …
-
-
「Z世代のためのウクライナ戦争講座」★「ウクライナ戦争は120年前の日露戦争と全く同じというニュース➂」『開戦2週間前の『ノース・チャイナ・ヘラルド』(1904年1月8日付) 』★『ロシアは極東全体の侵略を狙っており、日本はロシアの熊をアムール川の向こうの自分のすみかに送り返して,極東の平和と安全を,中国人、朝鮮人,日本人のために望んでいるだけだ』
2019/11/22 『日本戦争外交史の研究』 …
-
-
世界/日本リーダーパワー史(914)-『米朝首脳会談(6月12日)で「不可逆的な非核化」 は実現するのか(上)
米朝首脳会談(6月12日)で「不可逆的な非核化」 は実現するのか 前坂 俊之(静 …
-
-
『Z世代のための日清戦争原因講座』★『中国行動学のルーツ③』-150年前の明治維新後の「日中外交交渉」での異文化コミュニケーションギャップ <中華思想対日本主義=エスノセントリズム(自民族中心主義)のすれ違いが日清戦争に発展した。』
逗子なぎさ橋通信、24/0704/am700]梅雨の合間の晴天なり。富士山うっす …
