日本リーダーパワー史(325)「尖閣問題の歴史基礎知識」日中、台湾、沖縄(琉球)の領土紛争の底にある『中華思想』と台湾出兵
日本リーダーパワー史(325)
よくわかる「尖閣問題の歴史基礎知識」
日中、台湾、沖縄(琉球)の領土紛争の底に
ある『中華思想』と台湾出兵との関係、交渉は・
前坂俊之(ジャーナリスト)
「欧洲古代ローマの盛時に周辺の異民族を差別し、対等の交際を認めないことがあった。古代以来、中国は四方の諸民族を夷狄(いてき)視し、対等の交際を許さず、四夷朝貢、国王封冊、正朔遵奉などの旧慣が続けられ、後までも教化を慕い朝貢する国を属国と見倣(みな)した。
● 小中華思想
● 冊封
しかも中国自身この属国の内治外交に関与せず、欧米諸国が、琉球、朝鮮、安南(ベトナム)、緬旬(ビルマ、ミャンマー)らの諸国を大清帝国の領土と認めなかった。
伝統の中華思想から、中外一統、四海一家、各国人民は皆中国皇帝の赤子であると号し、中国皇帝が交易を許すのも、万国を統駁する皇帝自身が四夷を撫育するために恩恵として認めるものであって、恭順の儀典を要した。朝貢関係にしても、中国皇帝が王位や爵位を授け、その制令に服して暦朔を用い、貢物を献上するとの形式を要し、両国対等な貿易を認めず、貢物に対し過分な恩賜の金品が授けられる形態であった。
既に緬旬(ミヤンマー)のごとき、冊封の慣例がなくなり、十年の貢献が断絶していたが、旧来からの属国であると云い、また○羅の三年一貢も、冊封の慣行がなく、献貢も七年から十年位であったという。
『官本大清会典』では、朝貢国に東洋各国の国名を挙げるばかりでなく、西南西洋と明記していた。清国皇帝の邦土は四海にあまねく、権勢は天下に窮りなく、阿片戦争、アロー戦争の敗戦の後でも、欧洲諸国までが臣服しているかのごとき制度を称していた。
他方、日本の琉球処分に対し、琉球と条約を締結していた米国、仏国、蘭国(オランダ)でも、無条約の欧米諸国でも、何等異論がなかった。
清国のみが抗議したが、清国とても慶長降服以来の薩摩藩(鹿児島)の統治、明治政府の藩王任命等、多年の支配の実績を否定できず、専属でないと唱えた。清国は内治外交に関与せず、琉球国王に対する冊封の儀礼、朝貢名義の交易の慣行、正朔遵奉の旧慣に基き、明朝以来の中国の属国と主張したが、日本は虚文空名と否認した。
事実、慶長十四年(明寓暦三十七年)島津家久の琉球遠征に際し、明国が出兵することがなく、抗議することもなかった。
薩摩藩の琉球統治に対しても、明国次いで清国は、二百数十年も放任して異論を唱えたことがなかった。
また明治五年九月、日本政府の藩王任命は、日本側の見解によると、慶長降服以来日本の属邦であった琉球国を、琉球藩として内藩に編入し、琉球併合を意味したと云うが、これに対しても、清国からは抗議がなかった。
「台湾事変(台湾出兵)」
宮古島島民遭難事件
琉球処分
「台湾事変(台湾出兵)」自体が、台湾南部で生蕃(高砂族)のために54人宮古島島民が殺害された琉球人のために生じたのに、
清国は琉球の地位を充分に論議しなかったばかりでなく、台湾事変解決のための日清条約の締結に際し、条約の前文中に明らかに琉球人を日本国の属民と認め、また第二款で被害の難民(琉球人)へ償金を払った。
後に清国では被害の難民とは琉球人を意味せず、日本の小田県備中浅江郡の住民四名が生蕃から掠奪された事例であるとの苦しい弁明を要した。
日本側は、米国グラント将軍の調停に従い、二島分界案、増加改約案を捏出したが、これは清国皇帝が、中外一統、四海一家、各国人民皆朕が赤子なりと称する中華思想を是認した訳ではなかった。
日清友好のため、勧告に従い、台湾の安全を計り、太平洋への通路を開き、ここに宮古及び八重山の割譲案となり、また日清修好条規に最恵国条款を加える等の条約案となった。両国全権が草案を合意した後、清国は徒らに条約に調印せず、談判が決裂した。条約を締結したが、清国が批准しなかったとする説は誤りである。
<以上は大山梓著「 日本外交史」の「琉球帰属と日清紛議」(149-152P)良書普及会(昭和55年)>
関連記事
-
-
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」/「日本側が伝えた日英同盟へのプロセス」⑥ー『各元老から日英同盟への意見聴取で賛成』★『伊藤公の外遊真相』●『桂と外遊中の伊藤との間に対英対露方針に関して、はからずも意見の食い違いが露呈』
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日本側が伝えた日英同盟へのプロセス」 …
-
-
『昭和史キーワード』浜口雄幸内閣のロンドン海軍軍縮条約批准【1930年)に対して、海軍艦隊派が猛反対し統帥権干犯問題を起こし、軍部の政治介入を招き、 政党政治に終止符をうち、軍部専制を許す引き金となった。
『昭和史キーワード』 浜口雄幸内閣のロンドン海軍軍縮条約の批准 に対して、海軍艦 …
-
-
『 F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(203)』★『2017/5月、6、7年ぶりに、懐かしのアメリカを再訪した』★『NYでは、コニーアイランドとNathansのホットドッグやシーフード、ブルックリンとイーストリバー、9.11 跡地、Staten島往復と自由の女神、 セントラルパークと5番街、有名教会見学、タイムズスクエア周辺ウオーキングとカフェ巡り。』
逗子なぎさ橋珈琲テラス通信(2025/10/07/am8) 2017/05/10 …
-
-
『Z世代のための百歳学入門』★『日本一の百科事典派(GoogLe検索のアナログ版)物集高量(106歳)』★『百歳は折返し地点、百歳までは予習時代。これからが本格的な勉強ですよ』
2024/12/02/記事再録 物集高量氏 …
-
-
知的巨人の百歳学(129)ー大宰相・吉田茂(89歳)の政治健康法②「こんな面白くない<商売>をしていて、酒やタバコをとめられるか」
記事再録2013/11/05 /百歳学入門(84) 大宰相・吉田茂(89歳)の晩 …
-
-
日本メルダウン脱出法(668)「人口減少=悪」ではないー発想を転換せよ」●「世界が本当に評価する日本ブランド「トップ30」など6本
日本メルダウン脱出法(668) 「人口減少=悪」ではないー次世代に向けて発想を …
-
-
『オンライン/『英タイムズ紙による海洋国家日本の900年の歴史講座』★『蒙古襲来(1274年)から日露戦争(1904)までの海の道』★『今こそ、第3の鎖国を解き、アジア太平洋海洋国家へ飛躍しようー』
2019/11/13 『リーダー …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(134)/記事再録★『山県有朋から廃藩置県の相談された西郷隆盛は 一言で了承し、即実行したその日本史上最強のリーダーシップ②』( 下中弥三郎『大西郷正伝第2巻』(平凡社、昭和15年))★『行財政改革を毎回唱えながら、中央省庁再編、道州制、都道府県市町村再合併、財政削減はなぜ進まないか、リーダーシップ不在が続く』
2012/03/26 /日本リーダーパワー史(248) …
-
-
日本リーダーパワー史(306)ベルツの「日中韓500年史②」『朝鮮が日本に併合されるまでの最後の五十年間の経緯』
日本リーダーパワー史(306) 『日韓外交衝突の歴史を検証する③』 …
-
-
日本メルトダウン脱出法(567)◎「アベノミクス:的を外す矢」(英FT紙) ◎「無能な経営者はどんどん廃業を」―
日本メルトダウン脱出法(567) &nbs …
