前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

池田龍夫のマスコミ時評(119)『九州電力・川内原発 火山列島に囲まれた原発の脅威(10/10)』

      2015/01/01

  

   池田龍夫のマスコミ時評(119

 

『川内原発 火山列島に囲まれた原発の脅威(10/10   

 

池田龍夫(ジャーナリスト)

 

 

長野、岐阜県境の御嶽山(3067㍍)が929日噴火してから10日。噴火はなお続いており、気象庁によると、10623回、7日も6回火山性地震が起きている。7日現在で50人を超す遺体が確認された。自衛隊員数百人が救出作業に当たるなど、戦後最悪の噴火災害とった。

 

                                             九州電力川内原発立地に問題

 

原子力規制委員会が審査書案をまとめた九州電力川内原発(鹿児島県)が立地する南九州には、過去に巨大噴火を起こした火山が複数あり、今まで以上に再稼働へも不安の声が高まっている。

 

南九州は、木曽御嶽山や富士山もおよびもつかない阿蘇カルデラ、加久藤・小林カルデラ(霧島山周辺)、姶良カルデラ(桜島周辺)、阿多カルデラかまって(開聞岳周辺)、鬼界カルデラ(薩摩硫黄島周辺)と巨大カルデラ火山が5個も存在している。

日経107日付朝刊社説は、「原子力規制委員会発足後3年目に当たって、改めて規制委に求めたい。例えば巨大な火山爆発のある川内原発の審査を通したが、地元住民への説明が足りない。9日に鹿児島県が開く説明会に、規制庁の委員は出席しないという。

 

(中略)規制委の仕事は原子力の安全向上だけではない。福島事故で損なわれた規制への信頼回復は重要だ。もっとオープンに対話力を持ってほしい」と指摘していた。

 原発の規制基準は半径160㌔圏内の火山を検討対象としている。川内原発では巨大噴火があったことを示すカルデラ(大きなくぼ地)が主なものだけで5つある。九電はうち3つについて、火砕流が川内原発がある場所に達した可能性を認めている。しかし、規制委の審査では、火山の専門家が九電の対策に直接意見を述べる機会がなかった。首都大学東京の町田洋名誉教授は巨大噴火の発生頻度が低いことを認めつつ、「自然は人の思うようには動かない」と強調。鹿児島大の井村隆介准教授も「近くのカルデラで、既にマグマが多量にたまっている可能性も否定できない」と懸念している。

 

規制委^会や九州電力は、「予知」した対策を講じることができるとして川内原発再稼働を進めている。全国各地に地震帯が潜んでおり、特に若狭湾や刈羽原発などの原発再稼働をどう判断するか。火山の専門家たちは「予知」は困難という懸念を示している。規制委は地震学者らの進言や意見を尊重して慎重審議に徹すべきだ。

規制委はもっと地震学者の意見を聞け

 

九電は、川内原発から半径160㌔以内の14火山を「将来活動性がある」「活動性を否定できない」と評価。たとえ噴火しても「敷地への影響はない」とし、火山灰の影響は、桜島の噴火で敷地内に15㌢積もる場合を想定して対策を講じた。規制委はこれらの結果を妥当と結論づけた。

御嶽山でも異常現象はあったが、噴火の前兆としては認識されなかった。巨大噴火の際、前兆現象があるかどうかも分からないが、あったとしても、それが噴火の前兆として認識されるかどうかも不明なのである。規制委は火山学者を集めた検討会を作り、観測態勢やどのような現象を噴火の兆候と考えるかの指針作りに着手。検討会で火山学者から「現在の火山学では巨大噴火の予測は困難」「巨大噴火の兆候とする判断基準がない」など疑問の声が相次ぎ、判断基準は今後の検討課題となっている。

 

しかし田中俊一委員長は「巨大噴火はここ30年、40年の間に起こるものではない。天災がいつ起きるか分からないので社会的活動をやめてください、という考え方では仕事はできない」と述べたそうだ。大嶽山惨事を軽視しすぎている。近くに原発がなかったからの話であってとんでもない認識不足である。この言葉が示すように、サイエンスではなくビジネスが問題なのである。川内原発再稼働の行方が日本の原子力行政の重大な転換点になることは必至である。 

 

フォームの終わり

 

 - 現代史研究 , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『日本の外交力の弱さの復習問題』★『日清戦争の旗をふった福沢諭吉の日清講和条約(下関条約)から3週間後の『外交の虚実』(『時事新報』明治28年5月8日付』を読む』★『三国干渉(ロシア、ドイツ、フランス)の強盗外交に日本は赤子の手をひねられるように屈し、臥薪嘗胆する』

   2019/01/31  記事再録/ …

『オンライン/阿部定事件と昭和』★『NHKBSプレミアム(2020年12年22日午後9時-10時)放送の『アナザーストーリー”妖婦”といわれた女「阿部定事件」と昭和』に出演しました』★『日本恋愛史における阿部定事件ー「私は猟奇的な女」ですか「純愛の女」ですか』

  NHKBSプレミアム(2020年12年22日午後9時-10時)放送 …

no image
速報「日本のメルトダウン」(494)「日本企業とアベノミクス:本音と建前(英エコノミスト誌」「社会主義と市場経済は両立するか」

  速報「日本のメルトダウン」(494)   ◎「 …

no image
記事再録/知的巨人たちの百歳学(133)ー「富岡鉄斎(87歳)ー『創造脳は長寿脳である』★『 万巻の書にかこまれて、悠々自適の晩年』★『万巻の書を読み万里の路を行くー鉄斎芸術の源泉とは』

『知的巨人の長寿学』・富岡鉄斎(87)に学ぶ   『創造脳は長寿脳であ …

no image
日本リーダーパワー史(624) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』 ⑱清仏戦争で台湾を占拠したフランス、イギリスは ロシアの朝鮮侵攻をけん制して巨文島を占拠、アメリカはハワイを併合、危機迫る日本の周辺事態!

  日本リーダーパワー史(624)  日本国難史にみる『戦略思考の欠落』 ⑱ 清 …

no image
速報(349)『日本のメルトダウン』尖閣問題は軍事衝突、経済制裁へとエスカレートするのかーこの難題を解決できるのか

             速報(349)『日本のメルトダウン』   尖 …

『Z世代のためのジェンダ―フリー歴史講座』★『日本初の女性学を切り開いた高群逸枝夫妻の純愛物語』★『強固な男尊女卑社会の<封建国家日本>の歴史を独力で解明した先駆者』

  2009/04/09 「国文学」09年4月号に掲載記事を再録 <結 …

no image
★(まとめ記事再録)『現代史の復習問題』★『ガラパゴス国家・日本敗戦史③』150回連載の31回~40回まで』●『『アジア・太平洋戦争全面敗北に至る終戦時の決定力、決断力ゼロは「最高戦争指導会議」「大本営」の機能不全、無責任体制にあるー現在も「この統治システム不全は引き続いている』★『『日本近代最大の知識人・徳富蘇峰(「百敗院泡沫頑蘇居士」)が語る『なぜ日本は敗れたのか・その原因』

★(まとめ記事再録)『現代史の復習問題』★ 『ガラパゴス国家・日本敗戦史③ 』1 …

「Z世代のためのウクライナ戦争講座」★「ウクライナ戦争は120年前の日露戦争と全く同じというニュース]⑥」『開戦37日前の『米ニューヨーク・タイムズ』の報道』-『「賢明で慎重な恐怖」が「安全の母」であり,それこそが実は日本の指導者を支配している動機なのだ。彼らは自分の国が独立国として地図から抹殺されるのを見ようなどとは夢にも思っておらず,中国が外部から助力を得られるにもかかわらず,抹殺の道を進んでいるのとは異なっている』

『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン』㉚   …

no image
日本メルトダウン脱出法(699)「インドの人口、2022年までに中国抜き世界最大に=国連予測」「フクシマ原発からの放射能漏洩はトテツモナイ量に!―全く報道されない「トリチウム」の危険」

   日本メルトダウン脱出法(699) インドの人口、2022年までに中国抜き世 …