前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『Z世代ための異文化コミュニケーション論の難しさ②』★『日本世界史』-生麦事件、薩英戦争は英国議会でどう論議されたか②ー<英国「タイムズ」の150年前の報道><日本の現代史(明治維新からの明治、大正、昭和、平成150年)は 日本の新聞を読むよりも、外国紙を読む方がよくわかる>

   

 『リーダーシップの日本近現代史』(144)再録★

2013/06/23  

 『日本世界史(グローバル・異文化・外交コミュ二ケーション史)』<日本の現代史(明治維新からの明治、大正、昭和、平成150年)は

日本の新聞を読むよりも、外国紙を読む方がよくわかる>

生麦事件、薩英戦争は英国議会でどう論議されたか②ー<英国「タイムズ」文久3年(1863)7月22日の報道>

①  この記事は19,20世紀にパックスブリタニカで世界の覇権を握ったイギリスの帝国主義、植民地主義的行動パターンを考えるうえで大変参考になる。

②  19世紀のイギリスはアジア、中近東、アフリカに進出して「世界帝国」を築いたが、その過程は対外戦争、侵略地支配の繰り返しである。物資の獲得、貿易を目指して世界に進出して異民族、異文化と接触すると、摩擦、衝突、対立が生じて、殺戮、戦争に発展する。

③  その面では、海賊のイギリスが「7つの海」を支配し世界帝国の確立のプロセスは海軍力の進出、対外戦争の歴史であり、一方「ユーラシア大陸」の北の巨熊・ロシアがヨーロッパから中央アジア、シベリア、樺太、満州までを侵略して、イギリスに対抗して日露戦争に発展したロシアの帝国主義・植民地主義も同じものである。

④  150年前の生麦事件、薩英戦争は日本の最初の対外戦争である。台湾戦争、日清戦争(明治37)などよりよほど前である。薩摩藩の参勤交代の大名行列の前を乗馬した英国人らが横切って、斬り殺されたという「異文化衝突」の事件であり、この賠償金と犯人の処罰を巡って、薩英戦争に発展する。

⑤  この英国議会での論議を読むと、まず世界に先駆けの民主主義・英国議会の情報公開による議員の知的レベルの高さと、英国の紳士道、大人の論議、自由闊達な意見交換と、公正な論議、合理的な判断力、その底にあるイギリス民主主義の市民意識、ディベイトのすごさを痛感する。

⑥  150年後の今の日本の国会での日本の対外紛争の論議(対中国、北朝鮮などの)比較しても、これだけのレベルであるのかどうか。日本の政治は政治家は本当に成熟しているのか。国民も同じだが・・

⑦  それにつけても、日本の国会レベルの論議で比較すると、いまから76年まえの日中戦争(1936年、昭和12年―この時、いまでも論争の続く南京事件も起きた)で斉藤隆夫議員が「聖戦とはなんぞや」としっもんして、議員を除名されたのと比較しても、150年前のイギリス議会での「ジャパンプロブレム」の論議は、いまのTPP参加問題などと比べても非常に興味深い。

 

1860年2月16日,イースト・インディア・アンド・チャイナ協会書記はこう記している。

「私はオールコック氏が言及している.痛ましいできごとが発生したため,日本との貿易が停止されたことに対し当協会が深く遺憾の意をいだいていることをお伝えしなければなりません。当協会はイギリス政府と同様,日本との通商関係を開き発展させるという偉大な成功を収めたあと.商用でかの国へ赴くすべてのイギリス人が,日本側の攻撃や怒りの正当な原因となるような粗暴で乱れた行為を避けるよう,当然の期待を持っています。また当地の有力な諸団体は日本における自分たちの関係者に,争いや口論,暴力沙汰になりかねない行為はすべて避けるよう十二分の注意と警戒をするよう今後必ず強調することを保証いたします」

そしてラッセル伯はこのように書いている。

「日本駐在のイギリス人商会の事務員あるいは代理人が,日本の習慣にそむく罪を決して犯さぬよう,われわれは十分注意しなければならないと,強く思います。なぜなら,彼らがそういう行為をやめない限り,われわれに対して加えられた不法行為を堂々と訴えることができず,両国間に満足すべき関係を維持していくことが不可能になるからです」

私は,受けた不法行為を堂々と訴えることができないというラッセル伯の意見に同意するとともに,現在政府が日本に対してとろうとしている方針は正しいとは認められない。

日本の大名のうち,30人は76万6000人もの兵士を戦場に送り込むことができ,薩摩侯は毎年大箱200個分の銀貨を収入として得ていると言っても,政府は信じないかもしれない。

しかし日本人には兵士や金よりも強い武器がある。彼らには大義名分がある。もしわれわれが侮辱されたとしたなら,戦費がいくらかか占うと大した問題ではない。だがこの事件の場合,われわれは,政府が事を進めているその正確な根拠ならびにイギリス代表が.現在の事態をできるだけ迅速に終結させるよう指示を受けているかどうかを知るべきだ。私は通商条約に反対はしない。暴力行為もなく,日本人の感情を損ねることなしに条約が実行されるならば。

 

しかし,この条約が幸福に満ち足りて暮らしている国民の血を流すことによってしか守られないとしたら,そんな条約はぴりぴりに引き裂いてしまったほうがよいと思う。(謹聴,謹聴の声)終わりにあたって,コクラン氏は書類の採択を申請した。

 

リデル氏はその動議を支持し以下のように述べた。審議が終了する前に政府からなんらかの声明を出してもらいたい。というのは,じきにわが国民が互いにこう尋ねるかもしれないからだ。

 

「なぜ日本と仲たがいしているのか?」とか「だれと戦おうとしているのか」とかである。最初の質問のほうが答えやすい。わが国が日本と仲たがいしている理由は,日本と性急に,また深く考えず条約を締結したからだ。アメリカ

人がまず条約を締結し,続いてわれわれの愛国的な誇りを清足させるためにエルギン卿が条約を締結した。それは,実のところ革命と言ってよく,日本人の恐怖につけこんでもたらされたものだ。

 

この条約は無分別なばかりか,性急に立案起草された条約であり,日本の最高権力者の裁可を決して受けていないということだ。エルギン卿が権限のある当事者と固く信じて条約を結んだ相手は,当時存在していなかった。

 

というのは大君はアメリカに譲歩したという理由で暗殺されていたからで,エルギン卿が

日本側の恐怖により条約を締結したとき.その死は秘密にされていた。それが最も重大な点だ。その条約は外国人に対し5港の開港を認めるものだが,そもそも日本人は長い間外国人に対して憎悪と不信の念しか感じていなかった。それはイエズス会宣教師の陰謀や.せり合うポルトガルとオランダ商人の詐欺のなせるわざだ。

 

イギリス海軍が攻めてくるかもしれないという日本側の不安につけ込んで.通商条約を結ぼうという無分別な試みをあえて行ったときにも,日本人のこういった感情はなかなか消えてはいなかった。そうして結ばれた条約は,国民が尊敬している中央権力の威厳を損なう,危険なものだ。そのうえ大君によって署名されたと思われている条約は大君の権限の及ぶ限られた範囲内で有効なだけだ。日本の法律によれば,その条約は少数独裁階級で強大な封建世襲貴族である大名およびその家臣に対してはなんの拘束力もない。したがって私は,日本にとっては革命にも等しい譲歩をした条約のために.わが国は日本との戦争を起こそうとしていると主張する次第であり,そのようなやり方は正当とは認めがたいと考える。

2番目の質問は「われわれはだれと争おうとしているのか?」である。相手は大君だろうか?もしそうだとしたら.大君こそがわが国の日本における唯一の友人である。

しかし.また一方では.イギリスが外国人の侵入を嫌悪している人々,すなわち強大な貴族である大名と争おうとしているのなら,その力がどれほどのものかはまだ知られていない?もっとも彼らが法律を守り外国人の侵入を阻むため,農奴の身分にある人々を召集することのできる強大な力を持つ領主だということはよく分かっている。

 

大名たちが戦いの準備を推し進めているという信ずべき理由が十二分にあるそのときに.地球の裏側で事を起こすというのは不安なことだ。地球の裏側で,確たる認識がなく想定だけで戦争をするというのは高くつくものだ。

というのは,戦争の相手方がだれだかわきまえずに戦うというのは,それこそ観念的なものだからである。私は議会が散会する前に,この最も関心を呼ぶ問題について政府がさらになんらかの説明をすることを望むものである。

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
速報(263)『米国を真似て財政破綻したがる日本』(田中 宇)●『製造業:安い中国の終焉』(英エコノミスト誌』

速報(263)『日本のメルトダウン』   ◎『米国を真似て財政破綻した …

no image
日本リーダーパワー史(245)尾崎咢堂の「宰相の資格(6)『宰相に最も必要なのは徳義。智慧・分別・学問は徳で使われる」

 日本リーダーパワー史(245)   <日本議会政治の父・尾崎咢 …

★『巣ごもり動画用(30分)に「75歳記念」鎌倉長寿カヤックフィッシング(2018/4/19)をプレゼントするよ!』★『百歳めざせ」-「筋トレ貯金1万回」-「深呼吸千回で仙人」ー「ゴミ箱のストレスクリーンアップ」★『ハッピーバッテリ100%充電!』

  「75歳記念」鎌倉長寿カヤックフィッシング(4/19)ー「百歳めざ …

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(167)』『オーストリア・ウイーンぶらぶら散歩』「シュテファン大聖堂」でモーツアルトを想う。

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(167)』 『オーストリア・ウ …

『Z世代のための日本政治・大正史講座』★『尾崎咢堂の語る明治・大正の首相のリーダーシップ・外交失敗史⑤>』★『加藤高明(外相、首相)―事務官上りが役に立たぬ例』★『志の高い政治理念集団としての政党』が日本にはない。派閥グループ集団のみ、これが国が崩壊していく原因』

    2012/03/17 &nbsp …

no image
戦うジャーナリスト列伝・菊竹六鼓(淳)『日本ジャーナリズムの光、リベラリストであり、ヒューマニストであった稀有の記者』★『明治末期から一貫した公娼廃止論、試験全廃論など、今から見ても非常に進歩的、先駆的な言論の数々』

  日本ジャーナリズムの光、リベラリストであり、ヒューマニストであった …

no image
片野勧の衝撃レポート『太平洋戦争<戦災>と<3・11>震災⑱』 『なぜ、同じ過ちを繰り返すか』
原町空襲と原発<上>

  片野勧の衝撃レポート   太平洋戦争<戦災>と …

ヨーロッパ・パリ美術館ぶらり散歩』★『ピカソ美術館編➅」ピカソが愛した女たちー《ドラ・マール》の傑作2点の明暗

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(117)』  &nb …

no image
高杉晋吾レポート(24)ルポ ダム難民⑧ ダム災害にさいなまれる紀伊半島⑧殿山ダム裁判の巻①

高杉晋吾レポート(24)     ルポ ダム難民 ⑧ ダム災 …

no image
日本の「フィランソロピ―」の先駆者だった『新聞界の巨人』毎日新聞の中興の祖・本山彦一

  経済週刊誌『エコノミスト』を創った新聞界の巨人   <日 …