『Z世代への日本現代史・決定的瞬間講座』★『1904年1月、ハルピン駅で暗殺された 初代総理大臣・伊藤博文の訃報を聞いた瞬間の山県有朋の談話』★『伊藤公狙撃さる・・龍顔を拝して涙下る公爵・山県有朋談』
日本リーダーパワー史(113)記事再録
『冒険世界』明治42年11月5日号
(1909年明治42年10月)

すると程なく外務省から、『伊藤公ハルビンにて狙撃さる』と云ふ電報が来た。けれども我輩は、今が今ま益田から安着と云ふ電報を聞いた計りなのぢやから、何うも事実とは思へん。けれどもこうわざわざ言ふて来た所を見ると、何か異変があったに相違ない。兎も角も出掛けて聞かうと思って早速、馬車を用意し念のため、もう一度外務省へ聞き合わせると、まさしく伊藤は狙撃されて重傷ぢやと云ふ。驚いて直ぐ外務省へ駆付けた。
所が未だ詳しい電報は来んので其後の消息が解らんと云ふ。其内に古谷の電報が桂の所へ着て居るといふので、今度は桂の家へ駆付ける。ここで古谷からの電報も見、-凶変の模様も詳しく解ったから、
是はこうして居る場合ぢや無いと思ふて、廿七日に参内した。其途中も気が気で無い。何と申して奏上致す可きものか、御慰め申す可きかと、胸中を往来する苦煩は何所までも止度(とどめ)がない。
陛下はかたじけなくもまことのほか御憂慮で、いろいろと公が狂変についての御下問があつたから、吾輩は詳しく知る限りを奏上申上げた所が、畏多くも愁雲の龍顔に漂ふを拝して、吾輩は実に胸も張りさけん計りの思がした。千万無量の感が胸に満ちる言葉も声も尽(ことごと)く涙ぢや。
吾等は伊藤に比べると三つも年上ぢやから、予々(かねがね)葬式を世話して貰ふ積りぢやつたのに今は夫さへ昔語りの一節ぢや。伊藤は未だまだ日本にも、世界にも無くてならぬ者ぢやが、吾輩の如きは真に天下の穀潰(ごくつぶ)しぢや。其の有用なものは逝き、無用な者は徒らに残って、医師などに勧められて、夏は涼しい所へ行き、冬は暖かな所へ行くと云ふ様ぢやから従って用も無い長生をするのぢや斯んな役にも立たん死骸は一刻も早く死んで了ふ方が、余程国家の為めなのぢやがなあ!
日清日露二大戦役の結果漸と終りを告げて、ここに初めて統監政治を見る事となり、元勲の随一、国家の柱石たる公は親(みずか)ら出でて此の難局に当り、東洋平和の大根元を確定する事となったのぢや。公がみずから出馬する事を聞いて吾輩は直ぐ公を訪ふた。

吾輩は実に此秋程、悲痛な感に満された事は無い。僅か一週間足らずの間に友達を四人迄亡くして了ふた。夫れは小川大将が敢ない事になったと思ふと直ぐ山崎少将が死ぬ、安保中将も亡くなって又今度の変ぢや。自分ではこうして呑気に山野を遊んで居るが、一夜静かに瞑目して、彼を思ひ此を思ふと、何んとも云へぬ悲痛の感が胸中に盗れ来る。吾輩も最う老いた。
関連記事
-
-
日本リーダーパワー史(697)日中韓150年史の真実(3)「アジア開国の父・福沢諭吉」ーなぜ「悪友とは交際を一切謝絶する脱亜論」に転換した理由<井上は朝鮮で最初の新聞「漢城旬報」を発行したが、清国側(中国)が猛反発して、井上の暗殺指令を出し、さらには『漢城旬報』の販売停止を命じたので辞任、帰国した③
日本リーダーパワー史(697) 日中韓150年史の真実(3)「アジア・日本開国 …
-
-
日本リーダーパワー史(425)日本外交の新展開―日英同盟による日露戦争の勝因を教訓に、日英防衛・安保協定を深める日本
日本リーダーパワー史(425) 日本外交の新展開― 日 …
-
-
高杉晋吾レポート⑥日本の原発建設は住民の命を「いけにえ」に、企業の利益を守る立場で出発①
高杉晋吾レポート⑥ 日本の原発建設は住民の命を「いけにえ」に、 企 …
-
-
『オンライン/<日中歴史認識>講座』★『袁世凱の政治軍事顧問の坂西利八郎(在中国25年)が 「日中戦争への原因」(10回連載)』●『万事おおようで、おおざっぱな中国、ロシア人に対して、 日本人は重箱の隅を小さいようじでほじくる 細か過ぎる国民性が嫌われて、対立がエスカレーとし戦争に発展した』
『リーダーシップの日本近現代史』(164) 2019/1 …
-
-
日本リーダーパワー史(459)「敬天愛人ー民主的革命家としての「西郷隆盛」論ー中野正剛(「戦時宰相論」の講演録①
日本リーダーパワー史(459) 「敬天愛人ー民主的革命家としての「西 …
-
-
速報(142)★<小出裕章情報>『発災6ヶ月の原子炉状況と燃料棒,除染の課題』「冷却失敗で2,3号機が水蒸気爆発の可能性 」
速報(142)『日本のメルトダウン』 ★<小出裕章情 …
-
-
「オンライン回想動画/鎌倉カヤック釣りバカ日記(2015/07/30 )★『海上散歩×釣り×筋トレ×リラックス×釣った魚の刺身×地産地消=最後にきたよ「33センチの大アジが」かわいいね
2015/07/30   …
-
-
『Z世代のための死生学入門』『中江兆民(53歳)の死に方の美学』★『医者から悪性の食道ガンと宣告され「余命一年半・・」と告げられた兆民いわく』★『一年半、諸君は短促なりといわん。余は極めて悠久なりという。 もし短といわんと欲せば、十年も短なり、五十年も短なり。百年も短なり。 それ生時限りありて、死後限り無し」(『1年半有』)』
★『中江兆民(53歳)の遺言』ー「戒名は無用、葬式も無用、灰 …
-
-
日本リーダーパワー史(813)『明治裏面史』 ★ 『「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、インテリジェンス㉘『戦争は外交の1手段で、外交交渉が失敗した場合に戦争に発展する』★『日露戦争はこのケースで、日本側はなんとか外交で、日本が朝鮮を、満州はロシアに任せる「満韓分割論」を主張、ロシアは「満韓全面論」を譲らず、戦争に発展した』
日本リーダーパワー史(813)『明治裏面史』 ★ 『「日清、日露戦争に勝利 …
-
-
人気記事再録『「新聞と戦争」の日本史』<満州事変(1931年)から太平洋戦争敗戦(1945)までの戦時期の新聞>
2009/02/10 「戦争と新聞」を検証する 講演録 1995年2月15日 …