前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(245)尾崎咢堂の「宰相の資格(6)『宰相に最も必要なのは徳義。智慧・分別・学問は徳で使われる」

   

 日本リーダーパワー史(245)
 
<日本議会政治の父・尾崎咢堂語る「宰相の資格」(6)

―150年かわらぬ日本の宰相の欠点とは―
 
宰相、リーダーに最も必要なものは徳義である。智慧や、分別や、
学問は、徳によって使われるべきものである。それらは道具であ
ってこれを使って行くものは、その人の性格、徳義である。
 
                                                                     前坂俊之(ジャーナリスト)
 
 
<日本の宰相、リーダーの必要条件とはなにか>
       総理大臣の資格として、包容、統御・調和の三能力が必要である
②         ②  智慧や分別は高の知れたもの、ただ徳望のみが.数万人を動かす力をもっている。力や腕だけでは敵を服従させることは出来ない。人の上に立つ者は人を使うのであるから、己の腕よりも、他人の腕を使わせる考えをもたねばならぬ。
高い地位には、腕や智慧をもって小仕事をする人間をすえてはならない。
腕や智慧はドロボウも持っている。同じ智慧でも、ドロボウが使えば社会の害をなし、徳のある君子が使えば、国家の用を為す
⑥       。宰相、リーダーは腕や仕事をやる能力がなくてもよい。実力、能力、仕事のできるものを使いこなす徳と人格があればよい。それこそ大切なのである。

<以下は尾崎行雄著『日本をどうする』(昭和12年=1937年刊)より>    

 
  宰相に最も必要なリーダーシップとは徳義である
 
総理大臣の資格として、包容、統御・調和の三能力が必要であることを述べたが、更に一層必要なものは徳望である。智慧や分別は幾らあっても高の知れたもので、ただ徳望のみが.数万人を動かす力をもっている。
 
ところが、近来不思議なことには、一般に腕とか力とかいうものばかりに重きを置いて、徳義に向って、カの入れ方が足りない。あの人は偉くないとかいう、その標準は、何かと尋ねると、腕があるとか無いとかいう事になる。腕だけでは敵を服従させることは出来ない。
特に、人の上に立つ者は人を使うのであるから、己の腕よりか、他人の腕を使わせる考えをもってその性格を養成して行かなければならぬ。それは主として徳である。一国の政治家などについても無論その通りである。
 
<以下は重要な歴史的な事実である。今でも大いに参考とすべきである>
 
太政大臣は才と学と徳、この三つを備えなければ、その位につく事は許されぬものと、わが国の昔の制度では決まっていた。
 これは中国の唐の制度を輸入したものであるが、この三つを備えた者が何れの世にもあるとはきまってはおらぬ。有る事もあるが、ない事も多い。
 故に「その人無ければ即ち欠く」と云ってある時代には太政大臣を置かない、位は設けて置くけれども、人を任命しないのである。今のやり方よりは制度上においてもよいやり方である。

 こういう高い地位には、腕や智慧をもって小仕事をする人間をすえてはよろしくない。仕事は次官以下の小役人にさせ、大臣たるものは、その上に立って、何も働かないでよいから国家の危急存亡のときに万民をして、安心してその業務に就かしめるようにすべきである。

今日に至るまで、汚職事件等が起るたびごとに、世間は大きく騒いだ。人心驚々としてさわぐ。何故騒ぐか、どうも上の方の取しまりをなすべき者が怪しいと思うから騒ぐ。これに反して取締りをなすべき者は必ず取締るに違いない。悪人は必ず罰せられ、善人は必ず賞せられるに違いないと世間が皆、思って居れば、如何なる事が起らうとも世間は騒がない。

裁判所に委せて置けば立派に裁きがつくと思うから、たとへ煽動者があって、如何に煽動しても何の騒ぎも起るはずはない。唯その位にいる者が、不幸にして、何だかそういう事には眞つ先に関係しそうに見えるから世間は騒ぐのである。査問委員会を設けても、それは怪しい。裁判所が独立していても、これも安心ならぬというようなことを考るからである。
       
学問は徳によって使われる

かりに、乃木大将の如き徳望ある人が、総理大臣の地位にあったと、想像して見よ。そしてある汚職事件が起ったとしても、これは大変だ、乃木が怪しい、といって騒ぎ立てる者はあるまい。巨万のワイロを取った者があっても「乃木がいる以上は、必ず立派に調べて、公平なる処分をするに違いない」というて皆、安心しているに違いない。
 
しかし上に立つ人が違うと、大騒ぎになる。即ち高き地位に居る人は、徳を主とせねばならぬ、という事を忘れて、腕や智慧の方を働かせるために、治まらないのである。

 腕や智慧は、スリも持っている。智慧がなければ、スリも泥棒も出来ない。同じ智慧でも、スリが使えば、その智慧は世間の害をなし、徳のある君子が使えば、国家の用を為す、丁度一つの刀でも、強盗が握れば、人殺しに使うが、忠臣義士が用いれは、これを以て君を守り、国を安んずるようになるわけである。

然るに、その危瞼な智慧や働きを大層、大切に考へて、これをよく駆使すべき道徳を軽くみるというのは、最も大切なものを忘れて比較的、大切でないものを重んずることである。手腕がなければいかぬとか、働きがなければいかねとかいうことが、当世の流行語になっているのは、まことに悲しむべきことである。

 智慧や、分別や、学問の如きは、徳によりて使われるべきものである。それらは寧ろ道具であってこれを使って行くものは、その人の性格、徳義である。

 - 人物研究 , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
 世界、日本メルトダウン(1036)– 『4/25は北朝鮮軍創立記念日、まだまだ続く朝鮮半島チキンレースの行方はどうなる!』●『対北朝鮮「武力行使なら全面戦争」=米専門家にインタビュー』★『北朝鮮危機は金正恩の「怯え」が原因だった 米国のメッセージで彼が感じる「命の危険」』●『トランプ政権がこのままいくと「リーマンショック」が再現されるのではないか』

 世界、日本メルトダウン(1036)– 『4月25日は北朝鮮軍創立記 …

no image
★『オンライン/天才老人になる方法⑦』★元祖ス-ローライフの達人「超俗の画家」熊谷守一(97歳)③『(文化)勲章もきらいだが、ハカマも大きらいだ。ハカマがきらいだから、正月もきらいだという。かしこまること、あらたまること、晴れがましいこと、そんなことは一切きらい』

  2016/07/13   記事転載 …

no image
『大谷翔平「三刀流(打投走)」のベーブ・ルース挑戦物語②』★『2018/04/05 /MLBデビュー戦で,これは[スポーツ界の大事件」を超えて「世界的な事件」であるとはヤンキース4番、アレックス・ロドリゲス選手(現在、野球解説者)のコメントだが、私は「メジャーリーグの星」への奇跡のストーリの始まりではないかと思った』

2018/04/05   2018/04/12記事転載 前坂 …

日本リーダーパワー史(701)日中韓150年史の真実(7)<ロシアの侵略防止のために、山県有朋首相は『国家独立の道は、一つは主権線(日本領土)を守ること、もう一つは利益線(朝鮮半島)を防護すること」と第一回議会で演説した。

日本リーダーパワー史(701) 日中韓150年史の真実(7) 「福沢諭吉の「西欧 …

no image
『オンライン/鎌倉1日ハイキング』★『鎌倉大仏を見物に行くのなら、すぐその先の800年 前の中世の自然、面影が一部に残る「大仏切通」(鎌倉古道)を 見に行こう」★『朝比奈や名越切通とは風情が異なり、苔むして古色蒼然とした岩崖の迫力は鎌倉七切通で­はここが一番ではなかろうか。』

 2013/12/10 動画再録  『鎌倉紅葉チャンネル』 …

『オンライン講座/日本を先進国にした日露戦争に勝利した明治のトップリーダーの決断力②』★『2011/ 3/11から2週間後に書いた記事- いまリーダーは何をすべきかー「海軍の父」山本権兵衛 から学ぶ』★『山本権兵衛は歴代日本宰相のーのベスト3に入るリーダーパワーを発揮した『坂の上の雲』の真の主人公>

    2012/05/27 &nbsp …

no image
日本リーダーパワー史(194)<国難を突破した吉田茂の宰相力、リーダーシップとは・・>「首相なんて大体バカな奴がやるもんですよ。

  日本リーダーパワー史(194) <国難を突破した吉田茂の宰相力、リ …

no image
「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』の真実㉗「朝鮮,属国状態にされる」「日本は高圧的手法で全行政官庁を掌握.朝鮮人を国なき民として放置」

「 英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が 報道した「日韓併合への道 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(251)/東武鉄道創業者/根津嘉一郎(79)ー「借金が恐ろしいのではない。利子が恐ろしい」「克己心」(己に克つこと)こそが健康長生法」★『長生する大欲のためには、日常生活での小欲を制しなけれならぬ』

     2015/08/20 知的巨人 …

no image
『日米戦争の敗北を予言した反軍大佐/水野広徳の思想的大転換➀』-『第1次世界大戦でフランス・連合軍とドイツ軍が対峠,70万人以上の戦死者を出した西部戦線随一の激戦地ベルダンを訪れた』

 日米戦争の敗北を予言した反軍大佐、ジャーナリスト・水野広徳 &nbs …