★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟の影響」⑩ 1902年4月9日『英タイムズ』/『朝鮮と日英同盟』●『日本は.ロシアが南部朝鮮に海軍基地を得ようとするなら,朝鮮に対する侵略行為となり,それは日英同盟の発動を促すものと決めたのだ。言い換えれば,日英同盟は,ロシアに朝鮮でも満州でも約束を守らせる保障と見なすことができよう。』
2016/12/01
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」-
「日英同盟の影響」⑩
1902(明治35)年4月9日『英タイムズ』
『朝鮮と日英同盟』通信員記事 ソウル(朝鮮)2月24日
① ここ2,3年の間,ロシアの影響力のもとで,朝鮮の最悪の高官の1人が政治的独裁をほしい
ままにしてきたが,この人物は20年間,政府の重要な地位にあった。
②日本は.ロシアが南部朝鮮に海軍基地を得ようとするなら,朝鮮に対する侵略行為となり,それは日英同盟の発動を促すものと決めたのだ。言い換えれば,日英同盟は,ロシアに朝鮮でも満州でも約束を守らせる保障と見なすことができよう。
中国と朝鮮の独立を保障する英日協約の内容の発表は朝鮮の首都で大反響を呼んでおり,朝鮮政府には寝耳に水のできごとだった。
この条約の文言には.イギリス,日本政府のいずれもが,これまでに折に触れ行使してきたのより,さらに直接的な干渉に乗り出す意志を示すものはないが,まさ,にそのことを朝鮮政府が行間から読み取り,重要な変革を迫られるだろうとひそかに予想しているのは明白なことだ。
この推測が正しいだろうというのは,同政府が,一定の変革が絶対必要だという通告をすでに受け取っているからだが、これら一切は.朝鮮の最高当局には不愉快きわまると言ってよい。
ここ2,3年の間,ロシアの影響力のもとで,朝鮮の最悪の高官の1人が政治的独裁をほしいままにしてきたが,この人物は20年間,政府の重要な地位にあった。
朝鮮の内政は成行きに任せるという,このロシアの傾向は,上層部にはまことに結構だったから,それをいくぶんとも是正するとなれば,それだけ嫌われるわけだ。「朝鮮はすでに独立しているではないか?ではなぜ外の連中が朝鮮の独立維持のたあ同盟する必要があるのか?」という反論が出ている。
過去数年間,朝鮮が大いに独立を享受してきたという事実が.同国民をして,英日同盟は,軍事的には防衛的でしかないが,政治的にはそれにとどまらないと思わせるのだ。朝鮮人にとっては,この同盟は.イギリスも日本も朝鮮の政治の現状に満足せず.変革を起こさせる決意であることを暗に意味しているようだ。
この推測が正しいことはほぼ疑う余地がない。少なくとも,日本に関しては,通商上の利益が最優先するし,朝鮮との通商を育成するのが日本の政策である。
だが.問題は日本が朝鮮貿易を増やすというより,日本がすでにここに維持している通商を保持することなのだ。過去2,3年間に朝鮮は自前で財政運営を行うようになり.その結果.政府の歳入を貨幣鋳造によって増やすという,昔からの過ちをまたも犯すこととなった。
もちろん,こうしたやり方から生じる利益はすべて国民に対する間接税となり,貨幣の交換価値はちょうどその利益分だけ必ず下落する。それは貨幣本来の価値の損失を意味する。さて,これが朝鮮における日本の通商に大打撃となった。
為替の急激な変動のため,少しでも安全に商売をすることが不可能になった。商売はただの投機でしかなくなり今日ボロもうけをしても,あした損をして帳消しになるだけだ。
綿製品の貿易を例にとってみよう。
朝鮮人はほぼ皆が外国の綿製品を買う。だが,周知のように,この商売の利幅はきわめてわずかだから,為替の小幅な変動ですら,損得を左右する。だが朝鮮におけるような,突然の,絶望的な変動に見舞われては,投資は富くじや競馬となんら変りがなくなってしまう。この理由から,日本がすでに朝鮮の商業に占めている有利な地歩を失うまいとすれば,朝鮮の行政に干渉せざるを得なくなったというわけだ。
ロシアの朝鮮における商業はゼロに等しいが,日本が自国の通商の利益にはっきりと有害な状況に立ち至って,いても立ってもいられなくなったのは,驚くにあたらない。
朝鮮政府もこの焦燥に十分気づいているらしく,英日同盟の中に,朝鮮の財政悪化の進行を断固食い止めようとする決意を読み取っているようだ。
それが証拠に.同盟の内容が発表されるや,少なくとも閣僚級の,政府人事の大幅異動が行われた。権威筋によれば,これらの異動は必ずしも自発的ではなく,日本公使が自ら,また日本政府が電報で,こうした異動を行うよう迫ったという。
その結果,陸軍,大蔵,司法,農業の各閣僚の地位は,これまで積極的な親日派ではなかったにせよ,過去2年間の政権に徹底的に反対していた連中に,即座に移された。内務,外務両相は,日本とロシアの間では中立的だが,刷新された政治を支持する方向でその影響力を使うこことは間違いなかろう。
最も驚くべき結果は李容イクの将来におこった変化で、李はなりあがり者で,過去2年間.絶大な権力をふるい,その権力の使い方のため.彼の滅亡を狙う大勢の敵を作った。
彼の運命はおそらくすべての成上がり者と同じになるだろうが,これら成上がり者たちは,家柄の後ろ盾がなく,身分の高い者にできない公務に従事して,一時は大いに役に立つが,絞るだけ絞られた後は必ず捨てられるのだ。
まだ情勢はきわめて混沌としており,ばかげたうわさがやたらに流れているが,1つ
つだけ確実視されているのは,これからは日本が朝鮮の全般にわたり,絶大な影響力
を行使するだろうということだ。ロシアはできるだけその勢いを止めようとしている。
皇帝の身近の宮内省に日本人顧問を据えると知って,ロシアは,そんなことをするなら,大蔵省顧問にK・アレクセーエフ氏を起用するよう期待すると政府に申し入れたが,同氏は数年前,税関長マクレヴィー・ブラウン氏の後任にロシアが推して果たさなかったいきさつがある。
またロシアは同国のウラジオストクからの電信線を元山【原文Wousan】からの朝鮮の線に接続する問題の決着を迫った。後者の要請については朝鮮外務省は,応じることができない旨,すでに回答している。
馬山浦港についてロシアと朝鮮が2年前に結んだ条約の全文が公表されたことも,風がどちらへ吹いているかを示している。
この重要な戦略港にロシアが下心を持っていると考えている人々は,その発表が,ロシアを含めてだれにも,馬山浦やその出入口に隣接する朝鮮海岸のいかなる部分の宗主権をも,買収や移譲により取得させないという,両国間に交わされた保障をはっきりと記録にとどめることを企図したものと見ている。
ちょうどこの時期にこの発表を確保することにより,日本は.ロシアが南部朝鮮に海軍基地を得ようとするなら,朝鮮に対する侵略行為となり,それは英日協約の実施条項の発動を促すとして,この間題にはっきりけじめをつけたわけだ。言い換えれば,英日同盟は,ロシアに朝鮮でも満州でも約束を守らせる保障と見なすことができよう。
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