世界リーダーパワー史(940)ー注目される「米中間選挙」(11/6)と「トランプ大統領弾劾訴追」はどうなるのか、世界がかたずをのんで見守る(下)
2018/10/02
注目される「米中間選挙」(11/6)と「トランプ大統領弾劾訴追」はどうなる(下)
★弾劾訴追と上院、下院の関係の手続きについて
「弾劾については、最初からたびたび話題となっている。トランプ大統領の就任わずか1週間後に、「トランプを追放する方法」の1つとして週刊誌「ニューズウイーク」にも取り上げられた。
弾劾の規定は合衆国憲法第2条第4節にあり、「大統領並びに副大統領、文官は国家反逆罪をはじめ収賄、重犯罪や軽罪により弾劾訴追され有罪判決が下れば、解任される」と定めている。この弾劾のポイントは、反逆罪や殺人罪の重罪に限定しているのではなく、幅広く軽犯罪であっても弾劾できることです。」
「トランプ大統領の弾劾訴追理由は数多くある。利益相反問題(トランプ氏が大統領就任後も自分の企業の所有権を手放さず、個人の利益と公務を分離していないこと)、ロシアゲート事件(ロシアが米大統領選に介入したとされる問題でロシア側とトランプ陣営との連携、情報漏洩、スパイ行為、金銭の授受などが数々の疑惑)、トランプ大学の詐欺訴訟(ニューヨーク州検察は13年、トランプ大学を詐欺罪で刑事訴追し、16年11月、この集団損害賠償訴訟で、総額2500万ドルを支払った事件)、大統領宣誓下での偽証罪、今回の不倫事件の口止め料を選挙資金から支払われたのではないかという選挙資金違反容疑や偽証罪など山ほどあります。
特に重大なのはロシアゲート事件で、もしトランプ氏がロシア側と連携したことを示す証拠が出れば、明らかに「国家反逆罪」で弾劾訴追される。」
「前掲の「ニューズウイーク」が指摘するもう1つのトランプ氏をクビにする方法は、今回の「ニューヨークタイムズ」の匿名高官が検討していう合衆国憲法修正第25条のことで「副大統領と各省長官の過半数」が、大統領には「職務上の権限と義務を遂行できない」と判断した場合、「副大統領が直ちに大統領代理として、大統領職の権限と義務を遂行する」との規定です。これまでの日常的な常軌を逸したトランプの言動はこれに該当すると、匿名高官グループは判断し、そのタイミングを見図っているということです。トランプも震え上がったことでしょう(笑)。そういえばお目付け役のペンス副大統領がこの2年間、ほとんど沈黙している点が大いに気になりますね」
「連邦議会の弾劾手続きはこうです。現在の下院(定数435)は、共和党236議席、民主党193議席などで、中間選挙では全議席が改選される。上院(定数100)は、共和党51議席、民主党47議席、無所属2議席。中間選挙では35議席が改選対象です。
弾劾訴追権は下院が、弾劾裁判権は上院が持つ。下院では下院議員は誰でも弾劾を発議でき、下院司法委員会が調査した後、下院全体で協議、下院の単純過半数(51%)が支持すれば、上院に送付する。
上院の弾劾裁判では最高裁長官が判事となり、下院議員が検察、上院議員が陪審団となり、大統領は弁護人を指名できる。上院3分の2以(67%)の同意すれば、大統領は罷免される、残る任期は副大統領が昇格するというわけです。
これまでに罷免された大統領はいないが、最近ではクリントン元大統領が1999年に不倫疑惑での偽証をめぐってそれぞれ弾劾裁判に持ち込まれた。いずれも無罪となっている。ニクソン元大統領は74年、ウォーターゲート事件をめぐる司法妨害などで下院司法委員会が弾劾の勧告を決めたが、ニクソン氏が辞任したため弾劾裁判は行われなかった。」
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中間選挙の情勢は一変したのか、民主党に逆転の可能性?
「だが、これまでは弾劾裁判を行う上院、下院のいずれも与党・共和党が過半数を握る現状では罷免のハードルは高いとみられていた。ごく最近でも「アメリカ中間選挙、民主党の上院奪還は「絵に描いた餅」か」(「ニューズウイーク」9月1日付)などの記事も出ているほどだ。
とくに、「共和党が絶対多数の下院(下院(定数435)は、共和党236議席、民主党193議席などで、中間選挙では全議席が改選されるが、これをひっくり返すのは不可能」とみられていた。
ところが、情勢が一変してきた。中間選挙とは新任大統領の信任投票なのです。いつの大統領選でも注目州のオハイオ州の補欠選挙が8月7日に行われたが、共和党が大接戦の末にわずか1%未満の僅差で民主党に勝利した。この地区は前回トランプ氏が11%の大差の支持を得ていた共和党の厚い地盤地区。
吉川圭一氏のブログ「トランプは中間選挙に勝てるか?―対イラン、対中国戦争は、いつ起こるか?」(8月21日)によると、この原因は共和党候補に投票した共和党支持者が82%なのに、民主党候補に投票した民主党支持者は91%とその差11%もあり、無党派層の3分の2も民主党に投票していた、といわれる。つまり共和党支持者も投票にトランプ離れを起こし、勢いで明らかに民主党にある。
この傾向は全米の世論調査でも明らかで、NBCとWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)が7月に実施した世論調査では、民主党支持49%、共和党支持43%。エコノミスト誌等の調査では26%の無党派層がいて、このうち民主党支持34%対共和党28%、また米政治Weサイトの「The Hill」によれば、トランプ氏の共和党内での支持率は90%だが、全国的支持率は43.1%。不支持52.9%だった、といいます。トランプ氏は共和党をまとめる力はあるが、それ以外の人々の反感が高いということです。」
(「また、第二次大戦後の米大統領の中間選挙の歴史をみると、議会の共和党の議席を増やしたのは,2002年のブッシュジュニアしかいない。その理由は9・11とアフガン戦争から1年しか経っていなかったからだ、といいます。
「結局、トランプの「アメリカ・ファースト」で、米中貿易戦争勃発をはじめ、NATOや同盟国との軋轢、対立エスカレート、トランプ素人外交の失敗などに検察のロシアゲート事件の捜査急ピッチ、メディアの反トランプ砲の一斉射撃によるトリプルパンチがかさなって、「弾劾訴追の可能性が一挙に高まってきた、と言える。
「冷泉彰彦氏「トランプ弾劾が絡んで風雲急を告げる米中間選挙」(ニューズウイーク9月6日付)でも、下院では、多くの選挙区で民主党が議席を奪う構えとなっている一方で、主戦場は再び上院になっている。有名な政治サイト「リアル・クリアー・ポリティクス」によれば、上院は民主44、共和47、拮抗9(過半数は51)。下院は民主201、共和191、拮抗43(過半数218)となっている。下院は218票で大統領を罷免する弾劾裁判の起訴ができるわけで、これはトラン大統領には深刻な事態です」。
「オバマ前米大統領が「ニューヨークタイムズ」の高官匿名報道の翌日の9月7日から中間選挙に向けて本格始動したのが気になりますね。
連動した行為なのか、メディアの一斉号砲にあわせて『民主主義の根幹である言論の自由、メディアの自由』を守るために出陣したのか。これまでの沈黙を破ってトランプ大統領への厳しい舌戦を展開している。この方針を転換は「権力の乱用や悪い政策に目を光らせ、健全な政治を取り戻す」、
「気候変動はいまここにある問題だ」「国境の壁ではテロの脅威を防げない」など(日経9月9日付)と全米各地での遊説に出かけた。トランプ大統領も必死で防戦に回り、実績をアピールする遊説をしており、このガチンコの再戦から目が離せませんね」
「トランプ氏のスキャンダル連発で人気は最低です。 9月1日発表のワシントン・ポストとABCニュースの世論調査では不支持率60%、弾劾を49%が支持している。米政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス(RCP)」によると、トランプ氏の支持率は13日に40.8%となり、3月以来半年ぶりの最低を更新。CNNテレビの世論調査でも民主党が共和党を約8ポイント引き離している。
ブルームバーグの世論調査では「ワシントンの茶番劇」で、経済は絶好調なのにレーガン元大統領以来の歴代政権の中で前代未聞の不人気の大統領になった、という。
それなのに、9月21日にニューヨークタイムズがすっぱ抜いた匿名高官はロシアゲート事件を統括しているローゼンスタイン米司法副長官であるとの記事を同紙が再び掲載。同氏は直ちに報道を否定したが、辞任を申し出た。トランプ大統領が解任するか、どうか見ものですね」
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