百歳学入門(61)地球物理学者で地震学を確立、航空工学を創始、ローマ字を普及させたマルチ東大教授田中館愛橘(95)
百歳学入門(61)
「地球物理学者で地震学を確立し、航空工学を創始し、
ローマ字の普及に取り組んだマルチ東大教授
ローマ字の普及に取り組んだマルチ東大教授
・田中館愛橘(95)」
浜名 純(ジャーナリスト)
田中館愛橘の健康法
村夫人子然の風貌で異才赴くままに
田中館愛橘(たなかだてあいきつ)安政三年九月十八日(1856年十月十六日)~昭和二十七年(1952年)五月二十一日
国際社会への日本の旅

田中館愛橘(たなかだてあいきつ)は多くの顔を持っている。地球物理学者であって地震学を確立し、専門外でも航空工学を創始し、さらにメートル法やローマ字の普及に尽力するという、異才の科学者である。
その愛橘が大正五年(一九一六)十月七日、小石川植物園で催された愛橘の東京帝大教授在職二十五年祝賀会で同僚や友人たちをあっと言わせた。
大学関係者や友人たちの祝辞の後に壇に立った愛橘は、祝賀会を開いてもらったことに謝意を述べた後、
「身はすでに頽齢(たいれい)に近く本年を以って還暦に達した。教授二十五年を機会に、これまでの無功漕職の罪を謝するため、ただいまこの席に出る途中で、事務所へ辞表を出してきた」は一瞬静まり返り、次いで辞表撤回を求める声で騒然となった。
しかし、辞意を翻さず、翌年四月に依願退職した。大学への定年制導入は愛橘の持論で、この退職が東京帝大の定年制導入のきっかけとなった。
愛橘は教授を退職したが、国際的な活動は退職後の方が目覚しい。大正七年五月に国際学術研究会議のために欧州各国へ出張したのをはじめ、ほぼ毎年のように欧米諸国に渡って国際会議に出席している。
大正十四年十月には帝国学士院代表として貴族院議員に選出され、これにより国際議員商事会議なども加わった。
昭和十年(一九三五)などは七月から十月にかけてパリ、ワルシャワ、ロンドンなどで開かれた天文学会、国際音声学会議、気象学会、国際航空連盟会議、列国議会同盟会議など七つの国際会議をこなした。まさに国際社会に対する日本の科学者の顔、国会議員の顔であった。
明治二十一年(一八八八)にイギリスのグラスゴー大学に私費留学して以来、昭和十二年までに海外渡航は二十四回にもなり、戦前の科学者の最多記録となっている。
武士道がバックボーン
愛橘は安政三年九月十八日(一八五六年十月十六日)に陸奥国二戸郡福岡(現岩手県二戸市)で南部博士の家に生まれた。
曾祖母は南部騒動で有名な相馬大作こと下斗米秀之進の姉である。長男であった愛橘は五歳から手習いを始め、七歳から秀之進の直弟子の門に入って兵法を修練する。
その兵法は実用流と称し、剣術、槍、薙刀、柔術を普段の生活中で鍛錬する特異なもので「スパルタ式硬教育」であった。この修練が後の愛橘のバックボーンとなった。
開設二年目の東京帝大理学部に入学して地球物理学を学んだ。物理学を専攻したのは、西洋より遅れている学問を究めるべきだとの考えから。パイオニア精神旺盛の人である。
愛橘は下着に潔癖だった。
昭和十六年に雑誌『ローマ字の世界』に書いた「わが健康法」に次の四点を特に強調している。一、眠ること、二、便通をよくすること、三、下着の着替え、四、入浴。下着の着替えが健康法というのはユニークだが、「汚れたシャツを着ていることは不健康だ」と言って、日に何度も替えていた。
また、海外に行くと一日に三回もワイシャツを替え、洋服はちり一っ付いていないよう気を払った。「紳士のエチケット」だということだが、幼少時に身に着けた「武士道」の片鱗をうかがわせる。
田中館愛橘の健康法
関連記事
-
-
『Z世代への遺言』★「日本史最大の国難を4ヵ月で解決した救国のトップリーダー・鈴木貫太郎首相(78歳)を支援して、終戦を実現させた昭和名僧、山本玄峰(95歳)とは一体何者か?(上)』★『力をもって立つものは、力によって亡ぶ。金で立つものは、金に窮して滅び、徳あるものは永遠に生きる』
2021/10/01「オンライン・日本史決定的瞬間講座 …
-
-
「日本スタートアップ・ユニコーン史」★『アメリカ流の経営学を翻訳・マネする前に、明治のスタートアップ起業者のスゴサに学ぶ』★『「資源もない」「金もない」「情報もない」「技術もない」「学歴もない」「ないないづくし」の地方、過疎村で、独創力で真珠養殖に成功した不屈の御木本幸吉(97歳)』★『エジソンも「私もできなかった」と真珠発明を激賞した』
2019/03/22/ 日本リーダーパワー史(972) …
-
-
日本メルトダウン脱出法(832)「日本は「構造改革」から逃げてはいけない」●「欧州諸国の関心は、日本より中国へ」●「起業家がデンマーク人の働き方に学ぶ4つのこと」●「コラム:マイナス金利でも円安進行は期待薄=山田修輔氏
日本メルトダウン脱出法(832) 日本は「構造改革」から逃げては …
-
-
百歳学入門(44)カルピス創業者・三島海雲(96)の健康法>一に散歩、二に日光浴、三に食養生。早朝散歩と日光浴を毎日実行。
百歳学入門(44) <カルピス創業者・三島海雲(9 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(161)記事再録/日中北朝鮮150年戦争史(6) 日清戦争の発端ー陸奥宗光『蹇々録』の証言②『頑迷愚昧の一大保守国』(清国)対『軽佻躁進(軽佻浮薄)の1小島夷(1小国の野蛮人)』(日本)と互いに嘲笑し、相互の感情は氷炭相容れず(パーセプションギャップ拡大)が戦争へとエスカレートした。
2016/06/20   …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・ ニュース・ウオッチ(181)』市川海老蔵さんの妻・乳がん会見に感動!(動画30分)『歌舞伎界の世嗣ぎの成功例」一方、「二世、三世のオンパレードの政界・永田町C級田舎芝居に日本沈没が見える」「安倍、舛添の作文(セリフ)棒読みの会見と比べてみると天地の差!。
『F国際ビジネスマンのワールド・ ニュース・ウオッチ(181)』 …
-
-
日本メルトダウン脱出法(755)「経済失速は大きな誤解、今こそ中国ビジネスの好機」●「「既存技術を一歩一歩改良」のトヨタとは正反対、グーグルはなぜ一気に完全自動運転を目指すか」●「アフガニスタンの泥沼にはまり込んだオバマ大統領 出口の見えない辛い旅路」(英FT紙)
日本メルトダウン脱出法(755) 経済失速は大きな誤解、今こそ中国ビジネスの好機 …
-
-
知的巨人たちの百歳学(126)カルピス王・三島海雲(96)の「天行健」(てんこうけん)>①に散歩、②に日光浴③に食養生④に早朝散歩を毎日実行する
知的巨人たちの百歳学(126) <カルピス王・三島海雲(96)の …
-
-
『Z世代への遺言』★『終戦80年・日本敗戦史の研究』★『「生きて虜囚になることなかれ」の戦陣訓こそ日本軍の本質』★『死ぬまで戦い、玉砕、最後は自決して、捕虜には絶対にならない、他国の捕虜も同じく「虐殺」「飢死」させた』
2015/07/16終戦70年・日本敗戦史(90)記事再録・再編集 …
-
-
『リモート京都観光動画』/心にしみる京都古寺百景ー足利尊氏の菩提寺『等持院」(右京区)の全記録
心にしみる京都古寺百景ー足利尊氏の菩提寺『 …
