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「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など 外国紙は「日韓併合への道』をどう報道したか⑥ 「英タイムズ」<明治40年7月19日付>「朝鮮・ハーグ密使事件』

      2015/09/02

 「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など

外国紙が報道した「日韓併合への道』の真実⑥

 「英タイムズ」<1907(明治40)年

7月19日付>の論評「日本と再編成ー朝鮮との問題

(ハーグ密使事件)』

「記事前半略」

ここしばらく本紙に届けられてきた朝鮮関係の情報によると,この地域だけをとっても,日本の直面している事業が困難かっ慎重を要するものであることは明らかだ。

明らかにあの国の皇帝が行っている背信行為は,東京をひどくいらだたせる結果を招いている。

皇帝が,統監府と日本政府に隠れてハーグ万国平和会議に使節を送るという愚挙を演じたこと,その事実を否定するほど意気地がなく,不正実であったことは全く明白だ。彼の行いは当然,1905年11月17日に彼が日本と締結した協約への直接的かつ目に余る違反行為だった。

この協約文書により,皇帝は「朝鮮の外交に関する事項の管理と指揮」を日本政府にゆだねる義務を負っているのだ。

彼が協約にあまり好ましい感情を抱いていなかったのは当り前の話かもしれない。彼は.協約の承諾が自分自身の統治権の一部放棄につながると認識していたので.周知のごとく.なかなかそれに同意したがらなかった。

しかしながら,とにかく彼は協約を認めたのであり,それによって皇室の安寧のために非常に価値のある保証を付け加えたのだ。それを今になって反故にしようともくろむなど,全く愚かなことだ。

仮にハーグ会議のような集会に群がるどこかのお節介な人間が,彼にこうしたやり方を吹き込み,あるいは,その会議に訴えるよう唆したとすれば,彼にひどい仕打ちをしたことになる。皇帝は,大臣たちに,日本側に対してその怒りを和らげるような形で事態の釈明を行うよう命じたと言われる。

だが,事はそう簡単に運びそうにない。大臣たちは皇帝の退位が賢明な善後策だと考えていたので,哀れな皇帝には.自らその解釈に最善を尽くす以外に残された道はない。

本紙東京通信員によると日本の首都の世論は,朝鮮の宮廷が握っている有害な諸権限を規制するため抜本的な処置を支持しているという。

伝えられるところでは首相に対して強硬な策を講じよとの要請がなされ,すでに外務大臣がソウルに赴いた。さらには皇帝が退位を勧告されるかもしれないとのうわさも流れている。朝鮮の君主と宮廷勢力の背信に対する日本人のいらだちは理解できるし,それは十分に正当なものでもある。

だが,彼らは,ソウルのような宮廷に対処する際にはその種の振舞いはまさに予期されるものであることを銘記すべきだ。わが国自身の東洋での外交と統治の歴史を見ても,そこにはやはり,衰退した王朝の代表者や油断のならない助言者からの同様の欺瞞的行為を受けた長い経緯がある。

とはいえ,政治家や統治に本能を持っ国民であれば,そのようなことで理性を失ったりはしない。後進的な元首や後進民族を相手にする場合は,忍耐力こそがおそらくは最善の政治的才能だろう。

ソウルで軽挙盲動すれば,日本の政敵は容易にそれに誤った解釈を与えるだろう。宮廷の反逆に対する予防措置を講じるのは確かに望ましいことかもしれないが,その措置がさほど目立たず,穏便であればあるほど.目的は達成しやすくなる。

でき得るならば現体制のもとで朝鮮の刷新を実現した方が明らかに日本の利益につながるし,伊藤公爵や林子爵のような賢的な政治家の力量をもってすれば,それは十分に可能なはずだ。

中国との関係で.今後長期にわたって日本の政治的手腕が大きく問われそうなもう1つの地域は,満州だ。

鉄道建設に充てられる400ポンドの新たな公債は,今まさに日本がこの地域の開発事業へ真剣に乗り出そうとしている証拠だ。われわれの知るところでは,日本政府は,この鉄道がこの地方の膨大な資源を「あらゆる国の貿易に平等な立場に立った恩恵をもたらすために」開発する手段となることを確信しているという。

これもまた「門戸開放」原則主義の表明にはかならないが,満州地域における日本の全政策は・この主義を土台にしており,わが国と日本の条約でも,その点は正式に宣言され.認められている。

日露戦争から今日までの期間を通じ,門戸開放主義の実現にさほどの誠意を示してこなかった日本の政財界に対しては,予想以上の不満の声があがっていただけに,膨大な輸送量の要求に応えて鉄道建設事業が開始されつつある現在,この主義が再度確認されたことは喜ばしいことであり、,特に戦争以来の移行期に日本の商人も役人も必ずしもこの原則を実行に移す稜極的な意思を見せなかったことに,われわれの期待以上に多くの不満が寄せられてきたので,なおさらのことだ。

 「英タイムズ」<1907(明治40)年

7月20日付>の論評「朝鮮の危機ー皇帝の退位」

 

伊藤公爵は本日午後5時30分,皇帝の懇願に応じて彼を訪問した。この会見に先だつできごととしては,皇帝が,2週間にわたる蟄居の後,昨日の午後早く伊藤公へ書面を送り.ハーグにおける朝鮮代表団の存在を双方が憂慮していることを理由に公爵に宮廷への来訪を要請したことが分かっている。

これに対して統監は,3日後の林子爵の到着以降の謁見を求めたが,皇帝からは,この日1日公爵を待つつもりだとの返答があった。

7月19日(注)

譲位を宣言した詔書の中で皇帝は,44年にわたる自らの在位期間中,国家的災厄が絶えず続いてきたことに遺憾の意を表明した。さらにこの詔書は,国民の不幸がきわめて深刻なものになっている以上.皇帝が先祖代々の慣例に従って皇太子に帝位を委譲する時機が到来したと見なしたことを付け加えている。

「民衆の興奮」

続報(注)

皇帝が内閣の譲位要求を黙諾した昨夜の接見のさなか,5000人の朝鮮人の群衆が庭の門から排除された。数人の学生が皇帝に嘆願書を提出しようと試みて警官隊に阻止され,東宮まで押し戻された後も終夜その場に踏みとどまり,指導者たちが交代で熱弁をふるった。

深夜には警察の長官である丸山氏が宮廷警護の警官隊にカービン銃を支給したが,群翠の数は増える一方だった。ただし彼らは秩序のとれた態度を保った。

本日午後,皇太子への皇位の委譲が入念な儀式によって執り行われた。商店経営者の中には,皇帝に対する同情の念を示すために店を閉めた者もいる。日本の新聞は不穏なうわさについて伝えているが.異動の兆候は全くうかがえない。現在街頭に出回っている朝鮮の官報は皇太子への譲位についての最初の公式声明を掲載しており,それには皇帝および外部大臣の署名がある。

「日本の公式声明」

伊藤公爵と林子爵は,皇帝の行為の影響,日本と朝鮮の間の全般的関係の収拾に及ぼすその重大性,そしてそれが日本の計画に従ったものであるか否かという質問に対し,目下のところ見解を表明する準備はないと答えた。

しかしながら伊藤公爵は,彼の昨日の謁見およびその前後に,皇帝と内閣が譲位問題を検討していたとき・それに加わることを一切拒否したことを強調してもらいたいと望んだ。皇帝は,自分はハーグへの朝鮮の使節団派遣に責任はないという主張を繰り返した。

皇帝は,譲位を求める内閣の要請に関して,伊藤公爵の意見を求めた。

日本の統監は,この一件がひとえに皇帝自身の問題であり,日本代表としての自分の関知するところではないと返答した。さらに伊藤公爵は,内閣の行動が一貫してその自発的な意志に基づいたものだったことを言明した。

東京 7月19日(注)

ソウルからの情報によると,皇帝は本日午前1時に元老たちを召集した。閣僚が隣室で待機する中,会議は2時間にわたって続いたたが,陛下は最終的に屈服して譲位を決断し,本日午前10時から譲位式を挙行するための手はずが整えられた。

宮殿付近は騒然たる雰囲気に包まれている。2000人の群衆が市の別の一角に集結し,デモ隊多数が国民新聞社の社員を襲ったが,追い散らされた。被害は甚大だった。

昨日の伊藤公爵の皇帝への謁見は1時間にわたった。皇帝は公爵に対し朝鮮皇室の権威を失墜させず.日本にとっても満足のいくような方法で朝鮮を救ってほしいと懇願したと言われている。日本の統監は慎重に確答を避けた。

林子爵は昨夜日本から到着し温かい出迎えを受けた。彼はすぐさま伊藤公爵の自宅に赴いた。自らを元老と呼ぶ人々は伊藤公爵に書面を送り.皇帝への処遇が公正なものであれば日本人は彼らからの援助を受けられるが,さもなければ元老および全国民は殉教者として死ぬ覚悟があると暗に通告した。

「宮殿の光景」

ニューヨーク 7月19日(注)

AP通信はソウルから以下の本日付の電報を受け取った-

「昨夜,総理以下の全閣僚が宮中に出向き,内閣の最終的な意向を表明して皇帝に譲位を促したが,その際の宮廷の光景は劇的だった。皇帝は非常に気を高ぶらせていたが,総理は慎み深い態度ながらも断固として皇帝の政策に用心深さと思慮が欠けていたために国家が危権に陥ったことを指摘した。

総理の理論にうまく太刀打ちできなかった皇帝は,元老会議を召集した。本日午前1時、4人が召集に応じたものの・閣僚の判断に全員一致で同意したため・皇帝は計り知れないほどの落胆と驚きを味わった。そこで彼は.すべてを断念した。譲位詔書草案への署名を求められた皇帝は,興奮狼狽しながらもそれにサインし,玉璽を押した」

(注)ロイタ細通信経由

 

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