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「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など 外国紙は「日韓併合への道』をどう報道したか④ 「英タイムズ」<明治39年6月26日付>の論評「日本と中国』(下)

      2015/09/02

「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が

報道した「日韓併合への道』の真実④

 「英タイムズ」<1906(明治39)年6月26日付>

の論評「日本と中国』

(本社通信員記事)東京5月12日(下)

<朝鮮は日本の評判を傷っけるようにプロパガンダ工作する一方、

朝鮮人を日本の暴虐で身勝手な搾取の犠牲者として印象

づけるよう指示している。>

 

わが同胞の間に1人たりともそうしたよからぬ性癖の者がいようなどとは,容易に信じがたい。きりながら,血気にはやる若輩者は.ことによると四囲の状況にあおられてわれを忘れ,正気であれば口にするはずもない言辞を弄するかもしれない。

さらにまた,中国人が所有し編集する新聞の中には,中国の司法権の支配を免れる目的で,経営者が日本人の名義を借りているものもいくつかある。

名義を貸した日本人は,もとよりその新聞が表明する見解とはなんの関係もない。しかし,もしもそういう新聞の時評柵がこじっけの暴論を表明するなら,実際の事情を知らない外国人とすれば.日本人が共謀しているとか,あるいは扇動しているとまで疑うようになるのも無理からぬことだ。

そして,その種の疑念はしだいに積み重なって膨れ上がり,ほかならぬわが国の外交関係にとってさえ妨げの原討となりかねない。

早くもタイムズ紙の上海通信員は,中国における排外感情を取り上げた電報記事の中で日本人の側に不届きな行動があると指摘している。

 

またもう1人の通信員のモリソン博士は,かねてから終始,日本にはきわめて好意的な態度をとってきたのだが、やはり上海通信員と同じような言辞を用いている。これらの有力な外国通信員が,そうした見解を抱くに足る理由があると考えているのは,まことに遺憾なことであり,わが同胞がさらに一段と慎重な行動をとる必要があるという警告として受け取るべきだ。

また,中国において日本人名義で発行されている新聞に対し正当な抑制を加えるため,わが国の政府が中国政府と協議することが望ましい。

要するに,わが国の政府当局者と国民は最大の注意を払って外国の

疑念を晴らし,隣国に対する真の友好という日本の義務を遂行に当たるべきなのだ。

この見解が教養ある日本人のすべてに共通するものだということは,あまりきちんと評価されていないようだ。ことによると.この新聞の問題については若干の説明が必要なのかもしれない。

中国で中国語の地元紙が外国人所有者の名義で発行されているのは租界に住む外国人が享受している司法の独立権がもたらしたものだ。

 

中国には新聞条例は存在せず.言論の自由についてもなんら公的に認知されていない。したがって,中国人が所有し発行する新聞は,完全に時の権力者の思いのままにされる。それはどういうことかと言えば,歴史の問題になる。

つまり,中国の新聞事業の黎明期に,北京の政府当局は新聞というものが実際はどういう性格のものかを知ると,すぐさま布告を発し.それらの「危険な道具」を完全に抑圧して封じ込め,編集者に最大限に厳しい法を適用し訴追することを命じた。

新聞の所有者として外国人の名義を借りるという便法がはやりだしたのは,それ以後のことだ。

そして,名目的に外国人が所有して外国人租界で発行する新聞雑誌は外国の法にのみ従えばよかったから,中国人はこの治外法権の制度の中に,自分たちの新聞事業を妨害なしに続行できる後ろ盾を見出した。

これと同じ問題は,今から40年ばかり昔に日本にもあったことだが・サー・ハリー・パークスは枢密院令で授かった権限に基づき,イギリス人所有者の名義で日本語の新聞を発行した場合は例外なく処罰の対象とする旨の告示を出し,手際よく解決した。

当時のイギリスは,西洋の列強に対して東洋でのやり方を示したわけで,サー・ハリーの告示は広く注目を集めた。もっとも,ほかの国々の駐日代表がそれぞれこの告示をそっくり借用したわけではないが,実のところは,そうする権限を持ち合わせていなかったのだ。サー・ハリー自身は,このことで同胞たちにさんざん罵倒された。

同胞たちに言わせると,サー・ハリーは越権行為をしたことになり、その禁制権限は諸条約が保証した生計を立てる行動の自由を不当に妨害するものだった。

だが,サー・ハリーはそういう批判に反論して,条約の起草者は日本の安寧と秩序を破壊するような特権まで条約が与えることを意図しはしなかったし,イギリス人の言論の自由の権利は自国において英語で行使すべきものだと主張した。

要するに・サー・ハリーは例によって断じて自説を曲げようとはせず,最後にはその行為の賢明だったことが広く認められるようにな

った。実のところ,日本での経験がそのような禁制権限を是認しなかったとしても.中国に見る現在の状況は,きっとそれを認めることだろう。

なにしろ,外国人所有者の名義で発行されている新聞がいくつもあり,外国人名義の故に中国当局の規制を免れて大いに言論の自由を行使しているが,そうなると中国の世論は明らかに対応できずにいるからだ。

北京には現在,サー・ハリー・パ-クスに匹敵する人物は見当たらないが,たとえいたとしても,この悪習に単独で取り組むには力不足だったろう。

しかし西洋諸国としては,中国政府当局と協力してなんらかの新聞規制の方式を案出するときが来ているのではないかと考えるのは,もっともなことだ。

ただし,仮に今そういう手を打つにしても,あまり信用できない事実がなお残ることだろう。それはつまり,とうの昔に中国の権利に注意を払ってしかるべきだった問題に対し西洋列強が腰を上げるのは,自分たちの利益が脅かされた場合に限るという事実にはかならない。

東洋には「飼い犬に手をかまれる」ということわざがあるが,それこそまさに,現在起こっている事態を言い得て妙だ。というのも,外国人所有という仮面のもとで言論の自由を享受している新聞雑誌は,その特権を利用して読者の間に排外感情を広めているからだ。そういう名目だけの新聞の編集方針にどういうやり方にせよ指図をしたりしてはいないこと昼,まず間違いない。

しかし,あの「黄禍」の悪夢にうなされた者なら,もちろん,そういう日本人に共謀の疑いなしと無罪放免にすることは,決してない。

その他のことについては,日本人は自らのアジア政策において愛他的な良心のとがめに悩むことはないと確信して差し支えあるまい。日本人は激しい競争がもたらすあらゆる利益に飛びつくだろうし.何であれ今は外国人が日本人に代わってやっていることを自分でやれると思うなら,その自信のほどを実地に試してみようと全力をあげるだろう。

しかし,中国を唆して排外運動に乗り出させるとか,「東洋人のための東洋」というなんらかの政策を取り上げるといった問題については,いやしくも日本人の心情と野心をよく承知している者なら,日本人がそのような愚行に走っているなどと疑うはずもない。

日本人がめざしているのは.世界の半分だけでお山の大将となるのではなく,全世界を通じて偉大な国となることなのだ。

 - 現代史研究

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