前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『オンライン講座/ウクライナ戦争と安倍外交失敗の研究 ④』★『「ロシアに対して日本式な同情、理解で仕事をしたら完全に失敗する。ロシアは一を得て二を望み、二を得て三を望む国であり、その飽くところを知らず、彼らに実力を示さずして協調することは、ロシアの思うままにやれと彼らの侵略に同意するのと同じことだ」(当時のロシア駐在日本公使・西徳二郎の警告)』

   

 2016/09/25  日本リーダーパワー史(739)記事再録

『大丈夫か安倍ロシア外交の行方は!?』(歴史失敗の復習問題)

前坂俊之(ジャーナリスト)

 
山県全権の「ノー天気」な腹の中を見て取ったロマノフ外相は、さらに有利な協定にするために踏み込んできた。
「このような原則的な簡単な協約では、これをわざわざ日露議定書として調印するまでもなかろう」と否定して、山県をあわてさせたうえ、
良ければと一言し上で
「朝鮮とロシャが約束して実行した、ロシャ国境(豆満江)から京城(ソウル)に至る間の電信線架設に関する権利(北朝鮮内)を日本も事後承認ではあるが、これを認めたという一項を後に添えてはくれまいか、それだったらロシャとしては議定書に調印してもよい。」(島貫重節『戦略・日露戦争 』原書房 1980年 42-43P)
ただし、この電信仮設承認の調印式は現在多忙なので、今日ここで調印はすることはできないが、日本側が口頭でもみとめていただければありがたい」と一パイ食わせた。
しかし結局は、時間的制約があり、山県全権はせっかく全権の資格を帯びて来て、なにかお土産がないと帰れないという気持ちから、うかうかこのロマノフ提案にのってしまった。
何のことはない、わざわざロシアのニコライ皇帝の大戴冠式に出席して、ロシア側の朝鮮侵略の行動、布石をそっくり認める議定書にサインしたのである。
もともと、ロシアの満州侵略、朝鮮へ併呑を阻止するための山県派遣だったのだが、その交渉下手、弱気のために、一方的にロシアの行為を認める内容となった。
ここにいう弱気の外交、軟弱外交とは『正当な自国の権利を主張せず、相手の主張とたたかわない』ことをいう。
このロマノフ提案に簡単に同意調印してしまったことは、後日批判を受けるはめになった。
結局、この日本側の正当な権利の主張をしない、言葉、態度で示さず、相手ににすぐ迎合する弱腰の態度が、ロシア側のその後の傍若無人の暴走、侵略を一層加速させていく。
ロシャは三国干渉以後、余り急激に日本を怒らせないよう慎重を期していたが、山県全権の軟弱な態度を見て、従来の方針を再確認した。
それは日本を無視して、遠慮なく今後は積極的に施策を進めていくことで、満州問題はロシア・清国の2国間の問題で、日本には関与すべきではないと決定したのである。
日本が旅順を清国に返還する時も、旅順は他のいかなる国にも譲渡をしない約束を清国に迫ったが、『露清密約』、『山県・ロマノフ会談』によってか、ロシアの租借地にされてしまったが、これも山県外交の弱腰にあったのだ。
このようなロシャの外交戦略、謀略に『赤子の手をひねるようにやられた』最大の原因は日本の長期国家戦略の策定とそのためのインテリジェンスが欠如していたためである。
山県こそ陸軍参謀総長、その上の陸軍の最高ポストに座りながら、そのインテリジェンス、外交力は低レベルで、西欧列強にはるかに及ばなかった。
そのための情報と知識がどうしても欠かせないのである。
福島中佐が単騎シベリヤ横断中に露都駐在の日本公使・西徳二郎
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%BE%B3%E4%BA%8C%E9%83%8E
から対ロ戦略(軍事・外交) の奥義をききだした。

西は「ロシャという国に対しては、日本式な同情、理解で仕事をしたら完全に失敗する。ロシャは一を得て二を望み、二を得て三を望む国であり、その飽くところを知らず、このようなものに実力を示さずして協調することは彼らの思うままにやれと彼らの侵略に同意するのと同じことだ」

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
梁山泊座談会★『若者よ、田舎へ帰ろう!「3・11」1周年―日本はいかなる道を進むべきか③』『日本主義』2012年春号

《日比谷梁山泊座談会第1弾》 超元気雑誌『日本主義』2012年春号(3月15日発 …

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(22)』★『世界漫遊・街並みぶらり散歩』★『ハンガリー/ブタペスト点描』★『世界遺産としてのブタペストの街はリスボン、パリ、プラハ、ワルシャワの美質を集約した深い憂愁さが漂う』

  2017/08/26  『F国際ビジネスマンのワールド・ …

『Z世代への日本リーダーパワー史』『 決定的瞬間における決断突破力の研究 ㉓』★『 帝国ホテル・犬丸徹三は101年前の関東大震災でどう対応したか、その決断突破力に学ぶ①』

9月1日は「防災の日」。1923年に発生した関東大震災に由来している。関東大震災 …

no image
『オンライン/日本リーダーパワー史講座』◎国難最強のリーダーシップ・勝海舟に学ぶ(11) すべて金が土台じゃ、借金するな』★『政治家の秘訣は正心誠意、何事もすべて知行合一』★『借金、外債で国がつぶれて植民地にされる(中国の一帯一路戦略、アフリカ各国援助がこの手口』

    2012/12/04  日本リー …

no image
日本世界史応用問題/日本リーダーパワー史(273)-『ユーロ、欧州連合(EU)の生みの親の親は明治のクーデンホーフ光子(青山光子)①』

  記事再録/2012/07/01 / 日本リーダーパワー史 …

no image
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』㉕「開戦2ゕ月前の『ロシア紙ノーヴォエ・ヴレーミヤ』の報道』-『満州におけるロシアの権利は征服に基づくものであり、これほど多くの血を流し,金を費やした国で活動していく可能性をロシア人に与えなければならない。』

  『日本戦争外交史の研究』/ 『世界史の中の日露戦争』㉕ 『開戦2ゕ月前の19 …

『スマート ファクトリーJapan2018(5/30)』ー「ウイングアーク1STのMotion Boardのプレゼン」★『静岡県藤枝市の先進的な「LPWAを活用したIoT実証実験の取組み」のプレゼン』

 日本の最先端技術『見える化』チャンネル スマート ファクトリーJapan201 …

no image
野口恒のインターネット江戸学講義⑨>第4章 網の目のように広がった情報通信のネットワ-ク(上)ー垂直回路と水平回路

日本再生への独創的視点<インターネット江戸学講義⑨>   第4章&nb …

『オンライン講座/歴代”宰相の器”とな何か!』★『日本政治リーダーシップの研究』★『日本の近代化の基礎は誰が作ったのか』★『西郷隆盛でも大久保利通でも伊藤博文でもない』★『わしは総理の器ではないとナンバー2に徹した西郷従道』

  日本リーダーパワー史(317)再録  「明治維新は西郷隆 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(12)記事再録/『世界史の中の『日露戦争』ー<まとめ>日露戦争勝利の立役者―児玉源太郎伝(8回連載)★『児玉は日本のナポレオンか』

2016年3月5日/日本リーダーパワー史(683) 日本国難史にみる『戦略思考の …