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『オンライン/2022年はどうなるのか講座①』★『異常気象とコロナ共生、経済再生の2022年(上)』★『コロナ収束と感染拡大の米英、EU,ロシア』★『デルタ株は自壊したという仮説』★『世界気象機関(WMO)異常気象の日常化と警告』★『石炭火力は「段階的な廃止から削減へ」★『中国の脱炭素・グリーン戦略のスピード』

   

 

(以下は2021年11月15日までの情報分析で、3人による放談です)

   『異常気象とコロナ共生、経済再生の2022年(上)』

 前坂俊之(静岡県立大学名誉教授)

 

新型コロナウイルスの感染者数は日本では急激に収束してきたが、「コロナ共生社会」に突入した英国、EUでは再び激増し第5波となってきた。各国では「経済再生とコロナの共生」を目指して11月から入国規制を大幅に緩和して、外国人の受け入れを再開した。2022年はコロナ脱却、CO2排出規制、SDGs、米中新冷戦、石油高、半導体不足、輸送コスト高などで、日本の経済成長はどうなるのか、3人の対談を継続した。

(以下は11月15日までの情報分析で、3人による放談です)。

 

(A)「それでは恒例の世界各国・地域の新型コロナ感染者数(死者数)から入りましょうか。米ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめでは、11月15日までの数字は以下の通りです。

世界全体の累計感染者は約2億5333万(死者数約510万人)です。

米国        4707万(76万3千)                           

インド       3445万(46万4千)

ブラジル      2196万(61万1千)

英国         961万(14万3千)

ロシア        892万(25万1千)

トルコ        841万(7万4千)

フランス       739万(11万9千)

イラン        604万(12万8千)

アルゼンチン     531万(11万6千)

ドイツ         506万(9万8千)

スペイン        508万(8万8千)

番外日本・ 172万5175人  1万8323人

 

(B)「11月1日のWHO(国際保健機関)の発表では新型コロナウイルスの死者は世界全体で500万人超えた。死者数の増加のペースは100万人を超えるまでは250日、200万人までは108日、300万人までは93日、400万人までは82日、500万人を超えるまでは116日かかった。ワクチンの普及により重症化が抑えられたため、死者も減少した」

  • コロナ収束と感染拡大の米英、EU,ロシア

(C)「今年もあと1ヵ月余となりましたね。新型コロナウイルスパンデミックと東京五輪開催をめぐって大騒ぎをした前半とはうって変り,猛威を振るったデルタ変異株はいつの間にか消えてしまった。まるで狐につままれたような気分だよ。

8月後半には新規感染者は連日2万3,4千人を突破したが、以後、下がり続けて9月、10月と急減した。10月1日に緊急事態宣言が解除された。11月1日には、東京都内の感染者は1年5か月ぶりに一桁の9人、死者も1人となった。11月7日には全国の感染者は162人、死者は約1年3カ月ぶりにゼロ。ヨーロッパ、米国の状況と比べると「奇跡の逆転劇!?」と思えるほどの劇的変化ですね」

 

(B)「WHO(世界保健機関)は11月4日の記者会見で、「2022年2月までに欧州は再びパンデミックの「震源地」になり、50万人以上が死亡する恐れがある。ワクチン供給は十分なのに、過去4週間で欧州全体の感染者数が55%以上も増加した」と警告した。また、WHOが管轄する中央アジアの一部を含む欧州地域53カ国では感染拡大が続いて約140万人が死亡した。ワクチンの接種率が低く、公衆衛生対策の不備が原因だという。

欧州でのワクチン接種率はスペイン(約80%)、フランス(68%)、ドイツ(66%)でほぼ70%近い。ところが、ロシアは半分以下の32%で、中欧や東欧の一部の国、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、ラトビアなどの接種率はさらに低い。

オランダは新規感染者が1万6000人を超え過去最高に達したため、13日から部分的なロックダウン(都市封鎖)を実施した。冬の大流行期にはいったドイツでも10月末から感染者は約3万人を超えており、11日には約5万人を突破した」

 

(B)「米国では、11月9日の新規感染者数は125,491人、死者1,218人。日本は感染者102人、死者3人と比べると天文学的な差である。ワクチン接種率(2回)を比較すると、米国はバイデン米大統領のトップダウンで、今春にいち早くスタートしたが、11月9日現在でま59.15%にとどまている。40%がワクチン接種を拒否している。一方、お願いします調で国民協力一体型で、遅れてスタートした日本は逆に74.26%とリードし、米国を追い抜いたのですよ」

  • デルタ株は自壊したという仮説

(C)「では、なぜ、デルタ株の新規感染者はこのように激減したのだろうか。国立遺伝学研究所と新潟大学の共同研究によると「8月下旬のピークの前に、ほとんどのウイルスが増殖できないようなタイプに置き換わって、ウイルスが死滅し、第5波の収束の一因になった可能性がある」と発表した。

ウイルスは体内の細胞(酵母)に入り込むと自分を作る「設計図」を大量にコピーしてどんどん変異、増殖する。ところがその酵母(nsp14)が設計図を破壊する作用があり、設計図のコピーミスで増殖力が弱まり死滅したのではないかという仮説である。

同研究所によると、「日本人を含む東アジアの人や、オセアニアの人には設計図の修正を邪魔する酵素の働きが活発だ」といいます」

(C)「結局、感染者、死者数の激減の原因は①2回のワクチン接種が集団免疫ができる70%以上になったこと②デルタ株の自壊作用日本のマスク文化(マスク、うがい、手洗いぼ励行), 清潔文化(玄関でスリッパに履き替える、ごみ掃除など)の三密拒否の習慣化-などが一体となって効果を上げたのではないだろうかとみられます。ただし、ここで気を付けなければならないデルタ株は「収束」したが、決して「終息」したのではないということ。来年に別の変異株が出てくる可能性は否定できないし、海外から入ってくるか可能も高いので油断してはならない」。

(B)「そに点ついては岸田首相は11月10日の記者会見で「最悪を想定して」、第6波の総合的な対策を組んだと発表した。日経新聞(同11日付)などによると

  • 今夏の「第5波」はデルタ株の伝染力を30%超える変種型が来年2月ごろから流行することを想定し、11月末までに3万7千人分の病床を確保、重症用の医療施設や入院待機施設は4倍弱の3400人が入院できる体制を築く。
  • 12月から3回目のワクチン接種はまず医療従事者を対象に始め、年3月をめどに企業や大学などの職場接種を始める。
  • 「今後の切り札」の飲み薬の経口治療薬「モルヌピラビル」の年内実用化を目指す。厚生労働省が薬事承認し次第、計160万回分を医療現場に提供する。

―など方針を発表している。これまでの「コロナ対策の失敗」を反省し「スピード決断・実行力」を期待したいね」。

  • 世界気象機関(WMO)異常気象の日常化と警告

(A)「国連の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が英グラスゴーで10月31日に開幕したが、それに合わせてWMOは2021年版の気候報告書を発表した。「猛暑や大洪水などの異常気象は、もはや新しい平常になっている。20年間2002年から今年までの20年間平均気温は、産業革命前と比べて初めて摂氏1度以上上昇する見通し。海面の上昇も今年、過去最高を更新した」と警告した。

異常気象の概要について

①グリーンランド氷床の最高地点で史上初めて、雪ではなく雨が降った。

②米国南西部を直撃した熱波で、カルフォルニア州のデスバレイーの気温は554,4℃に達した

➂ヨーロッパの一部では深刻な洪水がが発生し、数十人が死亡、多大な経済損失が生じた

④南アメリカの亜熱帯地域は2年連続で干ばつに見舞われ、河川流域の水流が減り農業、交通、エネルギー生産に大きな影響が出た

➄地球規模の海面上昇は1993~2002年には年2.1ミリのレベルで上昇。2013~2021年には上昇レベルが年4.4ミリに倍増した。氷河や氷床がどんどん解けているのが原因です」

  • 石炭火力は「段階的な廃止から削減へ」

(B)「COP26の議長国の英国のジョンソン首相は11月2日の記者会見で「サッカーの試合にたとえれば、人類は気候変動に1対5で負けていたがCOP26の開催で1点返し2対5となった。延長戦に持ち込むこともできる」と語り、世界各国の積極的な取り組みを望んだ。

首脳級会議では温室効果ガスの一種「メタン」の削減に100カ国以上の首脳が合意した。石炭火力発電の廃止については英、フランス、ドイツ、EUなど46カ国・地域が署名したが 日米中などは署名しなかった。世界最大の排出国・中国の習近平国家主席は一連の会合には出席せず、ビデオメッセージで「2030年までにCO2排出量を減少に転じさせ、60年までに実質ゼロにする」と従来通りの目標を繰り返し、排出削減目標の前倒しを見送っていた。バイデン米大統領は「中国は大きな過ちを犯した」と非難。温暖化対策でも米中対立の構図が再現された。」

 

(C)「一方、岸田首相は3日の首脳級会合に急きょ出席、演説。「5年間で最大1兆円を超える発展途上国への追加支援」を表明した。その中で「通常の石炭火力発電よりも温室効果ガスの排出削減が期待できるアンモニアや水素などのエネルギーを活用する技術を日本が主導して推進する」とアピールして、国際的デビューを果たした。しかし、石炭火力発電の廃止の決議はせず、NGO団体から温暖化対策に消極的として化石賞のやり玉にあがられた」

 

(C)「G7と排出国のインドなどとの対立が解けず、会期を1日延長して議論を続けた。結局、13日に成果文書「グラスゴー気候合意」を採択して閉幕した。最大の焦点だった石炭火力発電の利用については、議長国の英国が石炭火力の「段階的な廃止」を成果文書に盛り込むよう強く主張して、各国と交渉、調整を続けたが、インドなどの反発が強く、結局「段階的な削減」と表現を後退させて産業革命前からの気温上昇は1.5度以内に抑える努力を追求する」と明記するにとどまった」

  • 中国の脱炭素・グリーン戦略のスピード

(A)「COP226で私が1つ気になったのは日本ではタブーとなったいる小型原発が脱炭素の切り札として世界では開発、設置が増えていることですね。電力輸出国フランスはCOP26期間中、原発建設の再開を発表した。EU加盟の9カ国とともに原子力共同宣言をまとめ、無炭素電源としての原子力活用の重要性を訴えている。 一方、日本ではエネルギー基本計画で、排出削減に貢献するとして原発再稼働は盛り込んだが、原発立て替えや新設の議論は反発を恐れて,全く論議もされていない。難問先送りの逃げの政治が延々と続いているのです」

 

(C)「その点で中国はまるで逆で、時代の先を見通して政治経済外交をスピーディーに進めているよ。COP26と同じ時期の11月5日に上海で輸入見本市が開催されたが、習近平主席はビデオメッセージを寄せて、脱炭素社会を目指し、低炭素グリーン経済、自由経済などで世界をリードしていくと宣言した。脱炭素の投資額は5年間で2兆1100億円で、米国につぐ第2位、脱炭素市場も中国が抑えており、世界シェアの上位企業国5社でみると①太陽光パネル(中国4、カナダ1)、②洋上風力発電(中国3,デンマーク1、スペイン1)➂車載用リチュームイオン(中国2,韓国2、日本1)、④陸上風力発電(中国2,デンマーク1,スペイン1、米国1)という具合で、中国が圧倒している。日本の存在感は全くない状態ですね」

つづく

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

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